インスリン様成長因子2受容体(インスリンようせいちょういんし2じゅようたい、英: insulin-like growth factor 2 receptor、略称: IGF-2受容体、IGF2R)は、ヒトではIGF2R遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6]。カチオン非依存性マンノース-6-リン酸受容体(cation-independent mannose-6-phosphate receptor、CI-MPR)とも呼ばれる。IGF2Rは多機能なタンパク質受容体で、細胞表面ではインスリン様成長因子2(IGF-2)を、トランスゴルジ網ではマンノース-6-リン酸(M6P)が付加されたタンパク質を結合する[6]。
IGF2RはI型膜貫通タンパク質(1本の膜貫通ヘリックスを持ち、C末端が細胞質側に位置する)で、大きな細胞外/内腔ドメインと比較的小さな細胞質側のテールを有する[7]。細胞外ドメインは、フィブロネクチンのコラーゲン結合ドメインに相同な小さな領域と、約147アミノ酸からなる15個のリピート構造を含む。これらのリピート構造は、マンノース-6-リン酸受容体の157残基の細胞外ドメインと相同である。IGF-2への結合はリピート構造の1つによって行われ、マンノース-6-リン酸の結合は2つの異なるリピート構造によって行われる。IGF2Rは約300 kDaで、二量体として存在し機能するようである。
IGF2Rの機能は、IGF-2によるシグナル伝達を減弱させるために細胞表面からIGF-2を除去すること、そしてゴルジ体からリソソームへ酸性加水分解酵素を輸送することである。細胞表面ではIGF2Rは、IGF-2の結合の後、クラスリン被覆小胞の形成の際に集合しエンドサイトーシスされる。トランスゴルジ網の内腔では、IGF2RはM6Pでタグ付けされた積み荷タンパク質に結合する[7]。積み荷に結合したIGF2RはGGAファミリーのクラスリンアダプタータンパク質によって認識され、クラスリン被覆小胞の形成の際に集合する[8]。IGF2Rを含む小胞は細胞表面またはゴルジ体からいずれも初期エンドソームへ輸送され、エンドソームの比較的pHの低い環境で積み荷を解離する。IGF2Rはレトロマー複合体によってゴルジ体へ送り返され、再びGGAや小胞との相互作用を行う。積み荷タンパク質はその後、IGF2R非依存的に後期エンドソームを介してリソソームへ輸送される。
IGF-2受容体は、ペリリピン3(M6PRBP1)と相互作用することが示されている[9][10]。
IGF-2受容体としての機能はカチオン非依存的マンノース-6-リン酸受容体としての機能から進化したもので、単孔類で初めて出現する。IGF-2結合部位はエクソン34のエクソン性スプライシングエンハンサー(ESE)クラスターの形成によって偶然に獲得されたようであり、このESEは先行するイントロンへの数キロ塩基にわたるリピートエレメントの挿入に対する応答として形成されたと考えられる。その後の獣亜綱の進化の過程で親和性の6倍の増加と遺伝子のインプリンティングが同時に生じており、これは親子間対立の一例であると考えられる(ただしヒトではIGF2R遺伝子のインプリンティングは消失している)[11]。