ウルグアイスクス | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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ウルグアイスクスの復元図
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地質時代 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
白亜紀 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Uruguaysuchus Rusconi, 1933 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Uruguaysuchus aznarezi Rusconi, 1933 |
ウルグアイスクス[1](学名:Uruguaysuchus)は、南アメリカ大陸のウルグアイで化石が発見された、中正鰐類に属する小型のワニ形類。タイプ種はUruguaysuchus aznareziで、ホロタイプ標本として部分的骨格と頭蓋骨が発見されており、また新標本として頭蓋骨・下顎・頸椎が報告されている。U. terraiという別の種も知られていたがSoto et al. (2011)によりU. aznareziのジュニアシノニムとされたため、本属は単型になっている[2]。
ウルグアイスクスの化石はウルグアイのパイサンドゥ県で井戸の採掘中に発見された[2]。発見された小型陸棲ワニ形類の化石は7体分以上に上った。これらの化石は農学者のJorge Aznárezからアルゼンチンの古生物学者Lucas Kraglievichへ送られたが、Kraglievichは研究に着手できずに死去した。Kraglievichの妻が同じくアルゼンチンの古生物学者であるCarlos Rusconiに化石を送ったことで、Rusconiが研究を行い、Rusconi (1933)により標本が記載された。この記載により、新属ウルグアイスクス属が設立され、またU. aznareziとU. terraiの2種が設立された[2]。
Rusconi (1933)による記載が詳細であった反面、標本自体の管理は研究に理想的なものとは言えなかった。まず、U. terraiのホロタイプ標本は輸送中に大きく破損しており、Rusconi (1933)時点で指摘されている。加えてSoto et al. (2011)時点でU. aznareziとU. terraiのホロタイプ標本はいずれも研究機関でなく個人所有の化石コレクションに加えられており、またそれ以外の5個の標本は紛失している。U. aznareziのホロタイプ標本は全長約1.2メートルの関節した成体の骨格標本で、完全な頭蓋骨・下顎・右前肢・18個の頸椎・両腸骨・部分的な右後肢・数枚の皮骨板が保存されているが、化石のプレパレーションが完全には行われていない[2]。
Soto et al. (2011)はウルグアイの首都モンテビデオで脊椎動物の化石コレクションからLambert (1940)で言及されたU. aznareziの新標本を発見し、これを記載した。本標本は頭蓋骨の一部と下顎および3個の頸椎を保存したものである。またSoto et al. (2011)はRusconi (1933)がU. aznareziとU. terraiの区別の根拠としていた歯の本数の差異を種内変異で説明できるものとし、またU. terraiがより小型であることを併せ、U. terraiをU. aznareziの幼若個体としてジュニアシノニムに指定した[2]。
Soto et al. (2011)によるウルグアイスクスの記相には、複数の形質状態の組み合わせが用いられている[2]。
歯列には切歯状・犬歯状・後犬歯状といった異歯性が認められる。第2あるいは第3上顎骨歯は肥大している。後犬歯状歯は頬舌方向に薄く、頬側あるいは舌側から見て亜円形で、中央の突出した歯尖と近心・遠心の縁に沿った細かい鋸歯を伴う。歯冠の基部に強い狭窄があり、歯根の舌側面に沿って頂底方向の溝が走る[2]。
後鼻孔の隔壁は完全に開口部を二分しており、後側領域で腹側に広いT字型の断面を持つ一方で前側で亜円形の断面を持ち、また隔壁の腹側面には長軸方向の溝が走る。隔壁の前端部は鋭利で、左右の口蓋骨に挟まれる。基蝶形骨と基後頭骨は頭蓋骨の腹側で露出しておらず、後側に突出した翼状骨の突縁に隠されている。翼状骨は後鼻孔の開口部と後側で癒合するが、後端に近づくにつれて2つの突縁が合流し、狭い皺(sulcus)を形成する。後鼻孔開口部の後縁は翼状骨の突縁の口蓋側面よりも腹側に突出した上行する隆起によって形成されている。方形骨の外側面は背側に位置するpreotic siphoneal openingという開口部によって穿孔されており、部分的に耳の開口部の背側縁を超過している[2]。
これらの特徴のうち後犬歯状歯の形状、後鼻孔の隔壁の断面の前後変化、翼状骨の突縁に隠された基蝶形骨と基後頭骨、後鼻孔開口部後縁の構造、方形骨外側面の形状は本属の固有派生形質である[2]。
Gasparini (1971)はウルグアイスクスとアラリペスクスの類似性を指摘し、2属をウルグアイスクス科に分類した[2]。以下はSoto et al. (2011)に基づくクラドグラム。
ノトスクス亜目 |
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Adams (2013)の系統樹では、ウルグアイスクス科は側系統群となり、ウルグアイスクスがアラリペスクスの種よりも派生的な位置に置かれている[3]。より新しいPochat-Cottilloux et al. (2023)の系統樹ではウルグアイスクスとアラリペスクスは1つの単系統群として纏まるが、この分岐群にコマフエスクスも加わる樹形が得られている[4]。また、この系統樹においてもウルグアイスクスはアラリペスクスのいずれの種よりも派生的である[4]。
ウルグアイスクスの標本はいずれもGuichón層から産出している。Guichón層の下位層は放射年代測定で約132Maの値が得られているArapey層の洪水玄武岩層で、上位層はカンパニアン階からマーストリヒチアン階のMercedes層である。これらの層の間には不整合面が存在する。本層は淘汰のピンクがかった灰色から赤色を示す中粒~細粒砂岩で構成されており、チャネル充填堆積物や氾濫堆積物などを伴う堆積構造から、南西方向に流れる半乾燥気候下の河川系統で堆積したと推測されている[2]。
Guichón層の厳密な年代は判明しておらず、確実なことはオーテリビアン期よりも新しく、カンパニアン期よりも古いことである。鳥盤類に似た恐竜の歯や、獣脚類の恐竜の歯が発見されている[2]。