『カグラバチ』は、外薗健による日本の漫画。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて、2023年42号から連載中[1]。第14話の扉ページにある漢字での表記は「神楽鉢」[3]。2024年10月時点で累計部数は100万部を突破している[4]。
2023年9月11日発売の『週刊少年ジャンプ』41号より、「JUMP NEXTWAVE 新連載3連弾」を開始[5]。本作はその2作目として[6]、同年42号より連載を開始[1]。連載開始時にはPVを公開[1]。2024年2月3日より、単行本第1巻の発売を記念してボイスコミックを公開[7]。第1巻には堀越耕平[8]、2巻にはVaundy[9]、3巻には岸本斉史が[10]、それぞれ帯にコメントを寄せている。
2024年8月28日、「次にくるマンガ大賞 2024」コミックス部門にて1位を獲得[11]。
六平 千鉱は3年前のある日、尊敬していた刀匠の父・六平 国重を謎の妖術師らに殺される。奪われた6本の妖刀を取り戻し父の名誉を守るため、遺された7本目の妖刀を手に、父の旧友の柴 登吾と共に復讐の道を進む。
18年前、日本では斉廷戦争と呼ばれる大きな戦争があり、六平国重が作った妖刀六工が勝利に大きく貢献した。戦後、国重は結界で守られた隠れ家に妖刀を隠した。また六平千鉱は戦争終結の前後に生まれ、国重と二人で暮らしながら刀匠を目指していた。3年前、千鉱が15歳のときに、隠れ家の結界が破られ、妖術師集団「毘灼」の手の者が侵入して国重を殺害し妖刀を奪った。千鉱は突然父を失ったことで、妖刀をめぐる人々の思わく、父の刀への思いを実感し、奪われた妖刀を追って戦うことを決意する。その後、千鉱は遺された七本目の妖刀「淵天」を手に、国重の旧友の柴登吾とともに毘灼の情報を求めて各地の反社会的組織を殺してまわっていた。
ある日、東京に一度戻った際、情報屋のヒナオから妖刀の目撃者らしき人物がいたと連絡があり、二人はその人物に会いに行く。その目撃者とは「シャル」と名乗る孤児であった。シャルは「悪者から守ってほしい」と言い、真偽を疑いつつも詳細を尋ねようとする千鉱だったが、二人のもとに次々に妖術師が襲来する。柴や薊の助けもあり、なんとかヒナオの店「喫茶ハルハル」に生きて帰ってきたが、妖刀「刳雲」を所有する双城厳一に襲撃されてしまう。そうして、シャルと刳雲をめぐる千鉱と双城の争いが幕を開けた。
双城を殺しシャルを取り返した千鉱は引き続き妖刀と毘灼を追っていた。楽座市という闇の競売に出品される妖刀「真打」を回収しようとする千鉱は、楽座市を取り仕切る漣家に接触を試みる。その活動の中で漣家を追放された漣伯理と協力したり、神奈備所属の香刈緋雪に襲われたりしながらも、漣家当主の漣京羅を奇襲するが失敗に終わり、さらに伯理の命と引き換えに淵天を奪われてしまう。しかし、淵天を利用し漣家固有の「蔵の妖術」の謎を解き明かしつつ、楽座市当日11月8日、千鉱らは淵天と真打を取り返し楽座市を終わらせるべく潜入を開始する。
真打を再封印するため真打を神奈備に預けることにした千鉱は、神奈備に真打を悪用されないために自らも神奈備の戦力になることを決意する。その後、神奈備本部にて尋問を受ける千鉱だったが、その最中に妖刀所有者を匿うための神奈備の専有地である慚箱のひとつ、国獄温泉が毘灼の襲撃によって壊滅したとの報告を受ける。国獄温泉にて匿われていた妖刀の契約者である漆羽は脱出して逃走しており、神奈備からの信頼を得るべく千鉱と伯理は彼を護衛することになる。刺客を倒して漆羽と合流した千鉱と伯理だったが、毘灼の一人である昼彦がチヒロ達の前に現れ——。
声の項はボイスコミックの担当声優。
- 六平 千鉱(ろくひら ちひろ)
- 声 - 石毛翔弥[7]
- 本作の主人公[6]。18歳。8月11日生まれ。一人称は「俺」。妖刀「淵天」の所有者。刀匠の父である国重を尊敬し自らも刀匠を志していたが、毘灼の襲撃に遭い国重を殺され妖刀を奪われたことで、国重の信念を継ぎ妖刀を悪者から取り返すことを決意する。それまでは生活力のない国重に代わって家事をしつつ、妖刀について教わっていた。左のこめかみから頬にかけて傷がある。冷静だが独断専行の嫌いがあり、また寡黙ではないが必要なことを若干抜かして話す口下手なところもあり、感情が顔に出にくく、常に無表情気味である。得意料理は卵焼き。
- 六平 国重(ろくひら くにしげ)
- 声 - 藤巻健太
- 千鉱の父。享年37歳。6月5日生まれ。日本一の刀匠。特別な技法にて妖刀を製造する技術を持ち、六振りの妖刀を作り、斉廷戦争を勝利に導いたことで英雄と呼ばれるようになった。戦後15年ごろに毘灼の妖術師に狙われ命を落とした。いつも変わったTシャツを着ており、生活力がなく、家事は千鉱に任せっきり。
- 柴 登吾(しば とうご)
- 声 - 福島潤[7]
- 元神奈備の妖術師。39歳。10月15日生まれ。国重や薊の旧友で千鉱とも交流がある。国重亡き後は千鉱とともに行動し、復讐を手伝っている。情報を得るためには平然と拷問を行う冷酷な人物であるが、急を要する事態で千鉱が独断で無謀な動きをすることをしぶしぶ容認している。柴と千鉱の間での意思決定の主導権は大枠では柴の方にあるものの微妙な関係にある。瞬間移動できる妖術を持っているがただの瞬間移動ではない様子。
- 漣 伯理(さざなみ はくり)
- 闇の競売である楽座市を約200年に渡って取り仕切る一族・漣家の少年。17歳。3月27日生まれ。エリート妖術師を数多く輩出してきた漣家に生まれながら妖術を扱えず、兄からは愛と暴力を、弟からは蔑みの目を日々向けられていた。楽座市に商品として出される予定であった氷の肌の女に食事を持っていく仕事をしていたが、その女が自殺したことで漣家から追放された。千鉱の戦闘を目撃した際に衝撃を受け、その後ヤクザに捕まっていたところを偶然千鉱に助けられて以降、妖刀をめぐる謀略と戦闘に足を踏み入れる。比較的楽観主義者で人当たりがよく直情的であり、また年相応に言動が軽いところがある。
斉廷戦争後に設立された、妖術師を統括する公的組織。戦前には神奈備の前身となった組織があった。
- 香刈 緋雪(かがり ひゆき)
- 神奈備の最高戦力と称される妖術師。「個」で妖刀に対抗し得る妖術「炎骨」を持つ。炎骨のことを「陸郎」と呼ぶ。どんな信念があろうが個人で妖刀を振るうなら結局それは利己的なものであり、妖刀は神奈備によって管理されるべきという考えを持ち、千鉱と対立する。戦闘狂の節がある。敬語が使えず態度が悪く、考えることが多くなると思考を放り出す短気さを持つが、人命や大義がかかった場面での裏表や二枚舌を嫌がる美質を持ち、確かな善性を持った人物。スパゲッティが好き。
- 美原 多福(みはら たふく)
- 神奈備所属の妖術師。力士の恰好をしている。基本的に緋雪とタッグを組んで動き、暴走しがちな緋雪をサポートする役目を負う。自分の周囲の空間をコピーして自分とターゲットをその空間に移動させる隔離結界術を使う。パフェが好き。
- 薊(あざみ)
- 神奈備所属の妖術師。階級は大佐以上で神奈備上層部の一人でもあり、国重や柴とは旧知の仲で戦後の国重と千鉱に便宜を図ってきた。前髪で片目を隠している。妖術なしで敵を退けるほどの戦闘力があるという。
- 国獄湯煙スクワッド(こくごくゆけむりすくわっど)
- 国獄温泉にて保護されていた漆羽を護衛する妖術師たち。所有者襲撃編で昼彦ら毘灼の襲撃部隊に殺された。
- 神奈備御庭番・座村親衛隊「巻墨」(かむなびおにわばんさむらしんえいたいまきずみ)
- 仙沓寺にて保護されていた座村を護衛する妖術師たち。元は神奈備の前身となった組織を主として自我を払い忠を尽くしてきた忍の一族だった。
- 剣聖(けんせい)
- 斉廷戦争で真打「勾罪」を振るった人物。詳細不明。国重と巳坂の死後、他の契約者が保護されている中、一人だけ幽閉されている。
- 漆羽洋児(うるは ようじ)
- 斉廷戦争で「酩揺」を振るった人物。所有者暗殺編から登場。慚箱・国獄温泉に匿われていたが毘灼の襲撃を受け脱出し、千鉱と伯理と合流して昼彦らの襲撃部隊と戦い、昼彦らを引き付ける千鉱と別れて伯理とともに座村清市のいる慚箱・仙沓寺に向かい、そこでも毘灼と戦う。座村清市と同じく居合白禊流の門弟。
- 座村清市(さむら せいいち)
- 斉廷戦争で「飛宗」を振るった人物。所有者暗殺編から登場。人を斬る光景に対する煩悩を嫌うことから自身で眼を傷つけた盲人。音と臭いと気配で周囲を把握することができ、戦闘でもそれを活かして戦う。居合白禊流の師範代で、漆羽のかなり上の兄弟子に当たる。常にタバコをくわえているがあくまで気を紛らわしているだけで吸わない。柴とは旧友で、千鉱が14歳のときに一度千鉱と会っている。
- 巳坂(みさか)
- 斉廷戦争で「刳雲」を振るった人物。3年前に毘灼に殺されたという。
3年前、国重を殺し妖刀を奪った少数の妖術師組織。
- 幽(ゆら)
- 毘灼の統領。国重殺害の首謀者。己が真打を振るうために、妖刀をめぐる極限の謀略をしかける。
- 昼彦(ひるひこ)
- 毘灼の一員。所有者暗殺編から登場。「血鶴」という妖術を扱う。18歳。幽に目をかけられている。漆羽を逃がした国獄の護衛者を殺して見せしめにしたり、千鉱を歌舞伎の悪役に見立てて一般人が恐れ逃げる様を見せつけたり、同じ人殺しだと千鉱と「友達になれる」と宣ったりなど悪辣な手段を使う。両腕を失うも千鉱と同じ土俵に立ち対等に殺し合うと言っているが――?
- 双城厳一(そうじょう げんいち)
- 神奈備のブラックリストに載るほどの大物武器商人。30歳。6月6日生まれ。毘灼から「刳雲」を渡され、雫天石の実験を行い、成果を毘灼に授けるなど毘灼と協力関係にあった。「俺は六平国重を心から愛している」と国重に妄信的だが、「妖刀は殺戮兵器」だと間違った解釈をしている。とある理由で鏡凪シャルを追っており、その中で千鉱と出会い戦うことになる。
- 円法炸(まどか のりさく)
- 双城の手下。爆発するダルマを生成する能力を使う。妖術師の経歴は浅く、双城の命を受けシャルを捜索していたが、シャルを保護した千鉱と戦闘になって敗れて捕まり、柴の拷問のあと解放される。その後双城に仕事を全うしなかったツケとして家族もろとも殺された。
闇の競売・楽座市を200年以上に渡って運営している一族。
- 漣京羅(さざなみ きょうら)
- 漣家当主。漣家の相伝の「蔵」という妖術を用いる。「真打」を取り返そうとする千鉱らと戦うことになる。伯理の実の父親で、使い物にならないどころか楽座市の邪魔をした伯理を追放した。主席競売人らしく口が上手く交渉が達者。
- 漣宗也(さざなみ そうや)
- 漣家当主親衛隊「濤」の一員。23歳。9月16日生まれ。「威葬」という妖術を扱う。実の弟である伯理を溺愛しているが、暴力を愛情表現だと思っている。濤の中でも随一の実力者で、京羅よりも頭がキレる様子。
- 漣天理(さざなみ てんり)
- 漣家当主親衛隊「濤」の一員。16歳。2月8日生まれ。「威葬」という妖術を扱う。実の兄である伯理を無能だと罵り見下している。最年少で濤になった天才。
- 漣円慈(さざなみ えんじ)
- 漣家当主親衛隊「濤」の一員。29歳。「威葬」という妖術を扱う。
- 漣珠紀(さざなみ たまき)
- 漣家当主親衛隊「濤」の一員。22歳。「威葬」という妖術を扱う。
- ヒナオ
- 喫茶「ハルハル」にて妖術師とその雇い手を仲介する情報屋を営む人物。妖刀の情報を持っていると言うシャルを保護し、千鉱らに紹介した。
- 鏡凪シャル(きょうなぎ シャル)
- 高い治癒能力を持つ鏡凪一族の生き残りの少女。その治癒能力は他人にも効果があり、そのせいで双城に追われていた。
- Mr.イナズマ
- 一般人の少年。出品されている姉を救うために単身で楽座市に乗りこみ殺されそうになっていたところ、千鉱に助けられた。
- 玄力、妖術、妖術師
- 「玄力」は全ての人間に眠る超自然の生命エネルギーであり、訓練によって玄力を扱えるようにしたり、その容量を増やしたりする。玄力の修練度を上げることで得られる恩恵が身体強化と「妖術」である。妖術は人智を超えた不思議な力であり、爆発するダルマの生成や衝撃波の発生など多岐にわたる。妖術を使うには強化された肉体が必要であり、それを可能した人間を「妖術師」と呼ぶ。
- 妖刀
- 日本一の刀匠・六平国重によって作られた妖術を刻み込まれた特別な刀。斉延戦争中に6本が作られ、妖刀六工と呼ばれている。6本のうち真打を除く5本が劣勢だった戦況を好転させ、真打が日本を勝利へと導いた。戦後は国重の工房に保管されていたが、毘灼によって奪われた。千鉱が振るう淵天は、国重が戦後作った7本目の妖刀である。
一、淵天(えんてん)
- 戦後、国重が作った唯一の妖刀。所有者は千鉱。玄力反応は金魚。妖術は斬撃を飛ばす涅(くろ)、妖術を吸収・放出する猩(あか)、身体強化の錦(にしき)の3つ。
二、真打(しんうち)
- 斉廷戦争を勝利に導いた国重の最高傑作。所有者は剣聖。玄力反応は蝶などの虫。「真打」は通称であり、本来の名前は「勾罪(まがつみ)」。国重が「真打だけはもう二度と…誰にも使わせちゃ駄目なんだ」と言うほどの異質な妖刀。妖術は足止めの蛛(クモ)、花畑を伴う侵食する玄力を放つ蜻(トンボ)、全方位に斬撃を飛ばす蜈(ムカデ)。
三、刳雲(くれぐも)
- 劣勢だった斉廷戦争の戦況を好転させた妖刀。所有者は巳坂→双城→千鉱。玄力反応は雲。妖術は雷を放つ鳴(めい)、水を放出する降(こう)、氷を発生させる結(ゆい)の3つ。
四、酌揺(くめゆり)
- 劣勢だった斉廷戦争の戦況を好転させた妖刀。所有者は漆羽→昼彦。玄力反応は花魁。
五、飛宗(とびむね)
- 劣勢だった斉廷戦争の戦況を好転させた妖刀。所有者は座村。玄力反応は鴉などの鳥。
六、?
七、?
- 命滅契約(めいめつけいやく)
- 六平国重が作刀時にすべての妖刀に施した制限機構。一度妖刀の所有者となれば、命が絶えるまで所有者のみが妖刀の力を扱えるというもの。その所有者が死亡すると妖刀が誰でも契約できる状態になる。この制限機構によって、毘灼は妖刀を奪っても所有者が生きているため妖刀を使うことができずにいた。6人の所有者のうち1人、刳雲の所有者は国重と同時期に毘灼に殺され、残りの5人は神奈備が保護もしくは幽閉している。
- 毘灼(ひしゃく)
- 10人の妖術師からなる少数組織。4年ほど前から活動が知られるようになり、3年前に国重と巳坂を殺し、妖刀六工を奪った。各地の反社会組織の後ろ盾にもなっている様子。
- 神奈備(かむなび)、慚箱(さんそう)
- 日本に雇われた妖術師の集団。前身組織があり、設立されたのは斉廷戦争後。5人の妖刀所有者を保護もしくは幽閉している。剣聖を除く4人は日本各地に散らばる神奈備の専有地・慚箱にて匿っているが、剣聖はなにもない暗闇に監禁している状態。毘灼によって妖刀が奪われて以降、所有者の護衛に人員を大きく割かれており、日本の治安維持にまで手が回らなくなっている。
- 斉廷戦争(せいていせんそう)
- 18年前、日本に襲来した"敵"との間に起こった戦争。日本中の妖術師の集結を以ってしても劣勢が長く続いたが、国重の生み出した六振りの妖刀により日本が勝利した。詳細は不明。
- 雫天石(だてんせき)
- 妖刀の原料であり、玄力を込めると人体では生成・保持できないほどに高密度な玄力に膨れ上がる。しかし、膨れ上がった玄力が人体にまで流れ込み、耐えきれなかった身体は張り裂けて死んでしまう。そんな中、歴史上で国重だけが雫天石の力を安定化させることに成功した。双城はこれを加工し、使うと妖刀レベルの玄力出力を得られるが、その後死に至る武器を開発した。
OKAMOTO'Sのオカモトショウによると、本作は「“刀”がポイントになっていて、妖術的な技を使う」点においては『BLEACH』に近く、ダークヒーロー系の作品である[2]。「コマ割りはわりと大きめで、細かい説明がなくてもしっかりストーリーが動いていく」よう描かれており、絵やデフォルメ表現も上手である[2]。刀を中心として、妖術のほか、「日本古来のファンタジーの要素」を盛りこんだ世界観となっている[2]。
東京が描かれている場面では、高層ビルやタワーのデザインがおしゃれに描かれている[2]。オカモトは日常のシーンとバトルシーンの緩急のバランスがよく、それでいて「違和感なくストーリーが進んでいく」点が本作の良さであると語っている[2]。
本作は作者の外薗による初の長編での連載作品である[6]。しかし第1話が掲載された時点の2023年9月19日、日本、中国、韓国を除いて世界中で配信されている集英社のアプリ「Manga Plus」でのランキングで、10位入りを果たした。[6]