『ガイア・ギア』(GAIA GEAR)は、富野由悠季による日本の小説。アニメ雑誌『月刊ニュータイプ』において1987年4月号から1991年12月号まで全60話が連載された後、 全5巻の文庫が刊行された。また1992年には、この小説を原作としたラジオドラマ作品が制作されている[1]。
ガイア・ギアは、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』から約110年後の宇宙世紀0200年代[注 1]を舞台に、シャア・アズナブルの記憶を受け継ぐ青年アフランシ・シャアの活躍を描いた作品。
『機動戦士ガンダム』の監督である富野由悠季の執筆した宇宙世紀を舞台とした小説およびそれを原作としたラジオドラマで、『ガンダム』と同じ宇宙世紀を舞台にしており、作中には「シャア・アズナブル」「ジオン」「地球連邦軍」といった直接的な関連用語が登場するなど、キャラクターやメカや設定などの世界観も共通している。富野による宇宙世紀作品としては『機動戦士ガンダム』から最も遠い未来が舞台であり、戦場ではモビルスーツに代わって作品タイトルにもなっている「ガイア・ギア」のようなマン・マシーンと呼ばれる人型機動兵器が主力となっている[注 2]。
現時点(2021年現在)では、サンライズによるガンダムシリーズの宇宙世紀の「正史」には含まれていない。商業メディアで"ガンダムシリーズ"として取り扱われたのは、ガンダムタイプのモビルスーツを題材としたカトキハジメの「月刊ニュータイプ」での連載およびそれをまとめた画集『GUNDAM FIX』に他のガンダムとともに掲載されたのが唯一の例である。しかし、その後『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』『機動戦士Vガンダム』などの作品で形を変えて使われる「マハ」「ミノフスキーフライト」「ミノフスキードライブ」といった設定のいくつかはこの作品で初めて登場している。
キャラクターデザインは北爪宏幸、メカニカルデザインは伊東守が担当し、デザイン協力として佐山善則(改修前のゾーリン・ソール)がクレジットされている[1]。また文庫版のイラストには大貫健一、仲盛文、西井正典、そしてGAINAXから当時同社に所属していた庵野秀明と貞本義行が参加している[1]。
現在(2021年)、『ガイア・ギア』は全5冊の小説版をはじめ、全5巻のCDにまとめられたラジオドラマ版も、すべて品切れ重版未定という名の絶版状態にある[1]。理由は、この作品が『機動戦士ガンダム』の設定と世界観を用いて富野由悠季が創作したオリジナル小説ということにある[1]。のちにガンダムシリーズのクレジットに原作者として記載されるようになった富野だが、最初の『機動戦士ガンダム』制作時に30万円ほどで原作権をサンライズに売り渡している[注 3][1]。そのため、本来は「ガンダム」シリーズに属する新作を立ち上げる権利はないはずであるが、『ガイア・ギア』の書かれた1980年代後半は「ガンダムシリーズ」自体が現在のようなビッグビジネスに成長しておらず、まだ方向性を模索していた時期であったこともあり、当初はサンライズも黙認していた[1]。しかし、その後『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』や『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』といったOVAシリーズが成功し、また富野自身が監督した『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』や『機動戦士ガンダムF91』のような続編シリーズが始まったこともあり、徐々に締め付けが厳しくなっていった[1]。実際、本作のタイトルは、「月刊ニュータイプ」誌上での連載開始前の予告では『機動戦士ガイア・ギア 逆襲のシャア』として告知されていたが、連載が始まるとタイトルが『機動戦士ガイア・ギア』(連載1話から5話まで)『ニュータイプサーガ ガイア・ギア』(連載6話以降)と次々に変更され、最終的に文庫として刊行された時にはシンプルに『ガイア・ギア』となっていた[1]。予告でのサブタイトル『逆襲のシャア』は後の劇場映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に受け継がれた。またラジオドラマがCD化された際、そのパッケージには『ガイア・ギア(c)富野由悠季・角川書店・ニュータイプ』と『機動戦士ガンダム(c)創通エージェンシー・サンライズ』の二つのクレジットが併記され、そのことからも、この80年代末から90年代初頭にかけて、サンライズ側が「ガンダム」シリーズの管理体制を強化し、それに対して富野が抵抗を示していたことがうかがえる(その後、サンライズとは和解)[1]。
こうした過去の争いもあってか、この『ガイア・ギア』という作品がガンダム関連の話題で取り上げられることはほとんどない[1]。
かつて復刊ドットコムで原作小説およびドラマCDの復刻を企画したことがあったが、著作者である富野自身が"クオリティの問題"から許諾しなかったという。しかし、富野自身にもいまだ本作への愛着はあるようで、アニメ『ガンダム Gのレコンギスタ』の原型となった小説『はじめたい キャピタルGの物語』において、人型機動兵器の名称を『ガイア・ギア』に登場する"マン・マシーン"としている[注 4][1]。
- 小説の文庫版は発行部数が少ない上に全て絶版となっている。復刊ドットコム(復刊刊員2005年当時22万人)のランキングで8位949票を獲得するなど、マニアの間では根強い人気を誇っていたが、著者の作品へのこだわりなどの理由から富野由悠季からの許可が出なかった。
- ラジオドラマのCDも全て絶版。こちらも権利関係が複雑で、ケース裏には『ガイア・ギア』は富野、月刊ニュータイプ、角川書店が、『機動戦士ガンダム』は創通エージェンシー、サンライズが版権を有していると記載されている。また1〜4巻には全巻購入特典応募券、5巻には応募用紙が封入されており、5枚全てを集めて送ると、メカニックデザイナーがマン・マシーンをテーマにアレンジを加えて描いたイラスト集『VIEW OF THE MAN MACHINES』が貰えたが、こちらの現存数はさらに少ない。サウンドトラック1・2は、コロムビアより「ANIMEX1200」シリーズで復刻された。
- マン・マシーンの玩具や模型は、権利と収益の関係から1991年にビルドアップから発売されたガイア・ギアα、ゾーリン・ソール、ガウッサのガレージキットのみとなっている。リリース時には「月刊ホビージャパン」において全3回の特集が組まれており、詳細なメカ設定や従来のガンダムシリーズにおける『モビルスーツバリエーション』のようなマン・マシーン・バリエーションが多数発表された[注 5]。
宇宙世紀203年、南太平洋の環境保護区で育った青年アフランシ・シャア。一年戦争の英雄シャアの記憶を受け継ぐメモリークローンであり、反地球連邦組織"メタトロン"のリーダーに祭り上げられた彼は、人型兵器"マン・マシーン"に乗り込み、連邦の秘密警察"マハ"と戦いを繰り広げていく[1]。
第1章
- 人類が宇宙に人口の捌け口を求めて、はや2世紀。地球の周りには、巨大な人工の植民島・スペース・コロニーがいくつも浮かびその中で暮らす人々と、地球に住む人々の心は離れてゆくばかり…、そんな時代。
- 地球の数少ない特別区の南太平洋の島で育った19歳の青年アフランシ・シャアは、星々の光による刺激で、彼の記憶巣の最も奥にある膨大なセル・チップが共振し目覚め、数千万の人の顔や意思、地球とそれを取り巻く自然、恐竜の絶滅、ヴィタミンの原子構造、金属粒子の衝突、マシーンたちの生成など、書くことができないほどの量の視覚現象を知覚する。「宇宙は、人で満ちている……」とアフランシは認識した。
- 孤児であったアフランシを育てた島の長老ガバ・スーは嵐の夜、老衰で亡くなる。その臨終の際、ガバはアフランシへ「お前は地球にいる人ではない…宇宙(そら)に出よ」との遺言を送る。満座の人々は頷いて、ガバの遺言どおりアフランシが宇宙に出るよう勧めるが、アフランシは宇宙に出るのが怖い事を吐露した。
- アフランシの美しい混血の恋人エヴァリー・キーは宇宙に行く事を反対し、相談しようとするアフランシから逃げていた。
- アフランシは、エヴァリーを説得して岬に流れ着いたとても不思議なものを見に行く。それを見たアフランシの記憶が、確実に始動を始める。サンゴ礁の外縁と、岬が接する部分に打ち上げられた人型の機械は表面がビッシリと貝や海藻に覆われていた。座席部分は海水に遣っていたが、その座席を取り巻く潮の中から、沈んでいた整備マニュアルを見つけたアフランシは、この機械がギャプランという名称だと突き止める。島の南西の方向から、宇宙行きのシャトルが上昇していき、スパーソニック・ウェーブ音が島を襲う。火の柱、島の人々が言うところの宇宙行きのシャトルの航跡の事だが、アフランシは火の柱の打ち上げられている所に行くとエヴァリーに言ったが、その言葉は彼女に聞こえていなかった…。
第2章
- エヴァリーはアフランシが宇宙に行くことに反対した。しかし、自分がどこから来たものか、どのようなものか知りたいアフランシは、彼女の頼みを聞き入れなかった。
- エヴァリーは、アフランシが宇宙に行ってしまうのはこのマシーンのせいだと思って、ギャプランにサンゴの破片を投げつけるが、その姿はまるで蟻が象に挑むようなものだった。アフランシ自身にも、なぜ自分が宇宙に行かなければならないのか分かっていなかったが、それを言葉にする勇気はない。なぜなら言葉にしたら、否定できない現実になってしまうという恐怖があったからだ。次の嵐が来るまでは、力一杯、エヴァリーを愛してやろうとアフランシは決心する。
- 嵐が頂点に達した夜、アフランシは家を出た。小屋で数日間、エヴァリーと短い新婚生活をしていたのだが、彼女には「ココナツの木を見て来なければ……」と嘘を言い、アフランシは単身、定期船が出る島までたどり着くため、ルガーのついたカヌーで荒れる海へ出るのであった。
- 嵐を乗り越えたアフランシは、水筒一本の真水とカヌにーくくりつけた椰子の実を命綱にして航海を続ける。
- ホンコン行きの船が出ている島へ上陸したアフランシは、食事をする為、一軒の飲み屋へ入る。そこでアフランシは、無精髭と荒れた肌をした中年男と遭遇する…。
第3章
- 男は名をトルース・シュトロンガーと言い、アフランシが店から出た後も追ってきて、無視しようとするアフランシから離れようとしない。結局行く宛のないアフランシは、彼と同行する事に。トルースは「アフランシ・シャアという名前が自由にされたシャアという意味で、生粋の白人である」と持論を語る。
- トルースの家では、引き続きトルースがアフランシに持論を語る、「白人は人類の貴族であって、民族じゃあない」。アフランシはトルースを人種偏見を持ったアルコール中毒者の哲学者だと感じていた。一通り語り終わるとトルースは眠っていた。
- 翌日、アフランシが起床するとトルースはいなくなっていたが、彼は魚を捕りに行っただけだった。アフランシはトルースの家に今夜も泊めてもらうよう交渉して、部屋の掃除を宿賃代わりとして、認めてもらう。夕食を食べ終えた後、トルースは「スペース・コロニーの発案者は白人なのだから、他の民族は、白人に従属するもの。地球も宇宙も、白人が分ち与えるために存在し、アフランシ・シャアとは、それを実行するために現れた若者である」と持論を語り始める。「ア、フランシとは、自由にされたフランク人。フランクは白人の総称。それに自由なるものという意味の接頭語、アが付く。アフランシという名前をつけた人が、白人の再生を考えなかったとは言わせないぞ?」トルースの言葉の意味は分からなかったが、アフランシは「アフランシ・シャアは白人の王なるもの?」と呟いていた。
- 翌日、アフランシは、ホンコン行きの定期便に乗るために桟橋に出て、トルースとはここで別れる事にした。そこへアフランシを追いかけてエヴァリーが現れるが、突如としてトルースはエヴァリーへ平手打ちを叩きつける…。
第4章
- トルースがエヴァリーへ暴力を振るったのは「アフランシは純血の神話なのだからそんな事も分からない女が近づくのが許せない」との事だった。そんな偏見で恋人に暴力を振るわれたアフランシは激怒し、トルースが自分に語った名前の由来は誤りであり、語源から遊離して言葉の意味などが変わってしまうことを認識せず、言葉に振り回されて誤った論理を構築し、真理を語っている様はお笑いであると彼を言い負かす。
- アフランシは、一応はトルースに礼を言って別れると、旅に付いてこようとするエヴェリーを同郷のキャリ・ハウに任せ、香港行きの定期船に乗り込むが海賊によって船をシージャックされてしまう。リボルバーや小型のマシン・ガンで武装した彼等はエヴァリーを人質にしており、自分たちを乗せないと人質を殺すと恫喝する。駆けつけたアフランシも結局海賊に捕まってしまい、銃身で殴りつけられるなどの暴行を受ける。海賊は船倉に人質全員を送り込もうとするが、彼等の余裕が、アフランシにつけ入る隙を作った。苦しそうに腹を押さえた演技をして、体当たりをかけると拳銃を奪い、シー・ジャックの青年たちを制圧したのである…。
第6章
- リムジンはスラムを通過し、廃ビルへと到着する。中では白の上下を着たバアム・ゼーゲンと名乗る中年の白人男が待ち構えていた。彼はアフランシが宇宙に行くことを望んでいたが、シャトルを調達するコネや資金は持っておらず、先人たちが残してくれた遺産を守るという消極的な興味は持っていた。その遺産とはマン・マシーン、ゾーリン・ソールであり、バアムはアフランシの事をキャスバル・レム・ダイクンと呼び、この機体はあなたのものであると譲渡した。そして、ジーク・ジオン(栄光のジオン)と言い残して退出するのであった…。
第7章
- 直感的にこのマシーンが人を殺す事を理解したエヴァリーは、それなら自分の手でアフランシを殺したほうがいいと思考の飛躍か思い至るが、そんな恐ろしい言葉は彼女自身を身震いさせた。アフランシを上手に殺す、階段からマシーンの足元へ突き落としてしまえば、アフランシの身体や仕草などもみな今あるまま自分の物になる、そんな理屈が絶対的な真実に思えていく。アフランシを見て、もう一度床を見たエヴァリーは呻いた。床の横にはマシンガンを身体に喰らい、糸が切れた人形のように空を舞うバアム・ゼーゲンを見てしまったのだ。
- 地球連邦政府の警察機構であるマハが続々とビルに侵入してくる。すると、自動的にゾーリン・ソールがエクスタシーを喚起させる音を出しながら起動、機体に乗り込んだアフランシは、エヴァリーも連れ込んでビルから脱出する。ミノフスキー・クラフト機のヘリコプターは明確に敵意を持ってアフランシ達を追撃。アフランシはヘリの追跡を振り切ると、エヴァリーを安全な島に降ろし別れた。その後、アフランシは宇宙に行く為、レールに乗ったスペースシャトルをゾーリン・ソールでハイジャックしたのであった…。
第8章
- シャトルの中にはいつの間にか、ミランダが搭乗しており、キャプテンのこめかみに拳銃を当てると、シャトルジャックを手助けした。何者かと聞かれたが、便宜上ネオ・ジオンであると答えておいた。しかし、ズィー・ジオンはネオ・ジオンとは関係のない組織である。
第9章
- アフランシとミランダがジャックしたシャトルは地球の周回コースから脱して、サイド4のあった暗礁空域へ向かった。そしてアフランシ達は、ズィー・ジオンの少女クリシュナ・パンデット達が操縦する鉱物運搬船『スパシアス号』と合流する。
第10章
スパシアス号はサイド2の初期コロニー『ヘラス』に向かい、アフランシ一行は既に法を犯している為密入国を行う事になった。
第11章
- ヘラスは、極端に高層化した街で構成されており、コロニー全体がスラムのようなもので治安は劣悪だった。
第12章
- コロニー内の街の一つ『グレンツェ』へ向かう途中、ハングライダーに乗った青年ウル・ウリアンがスパシアス号に接触してきた。申し合わせたように乗り込んできた彼に危険を感じたアフランシは、ミランダにゾーリン・ソールを解体するか別の場所に急いで移動するよう提案した。
- ミランダに命令したアフランシは、すでに自分が命令する立場にいることを自覚していた。しかし、その事が彼がシャア・アズナブル、その者だという証明になるとは思えなかった。なぜなら、自分の中の別の人格を容認できるかどうかというのは、別の問題だからだ。シャアの意思で自分が宇宙に出たのなら、それは理不尽な事だと、アフランシの表層の意思は考えた。事実そうならば、アフランシはは自分が気違いになるのではないかと恐れるのだった。
第1章
- アフランシは先程、スパシアス号に接触してきたウルの素性を怪しく思い、ヘラスの工業ブロック地帯にゾーリン・ソールを隠す予定だったが、その計画をクルーに命令して中止させた。クリシュナの運転する小型電気自動車エレカによってアフランシ達は、コロニー内の街グレンツェへと移動する。ゲートの向こうの道路には、人の群が地鳴りを起こすように揺れており、どこかスペース・コロニーはクリーンで整然としているものだと思っていたアフランシは呆気にとられた。しばらく一行を乗せたエレカは走行を続けていたが、突如、周囲に走っているのと同じようなバン・タイプの車が仕掛けてきた。それに乗っている数人の男達が汚い言葉を怒鳴り散らしながら、一見どこにでもいるチンピラ風ではあったが、バンを運転する男の雰囲気に嫌なものを感じたアフランシは、自分達の素性がバレていると考え、クリシュナに逃げるよう指示した。エレカをスラムへ向け追手を退けようとするが、袋小路に入ってしまいアフランシ達は徒歩で逃げる事になる。追われながら、とあるビルの非常階段から3階に滑り込んだ。その部屋には、ベールの下に白濁した眼光を放つ見知らぬ夫人がいた。
第2章
- アフランシ達が迷い込んだ部屋の主である中年女性は、星占いのエントーとも呼ばれる占い師エントー・シスメシアであった。「バビロニアの時代から人が作り出した知恵というものは、人を鈍らせるようように作用しているのはなぜか?」というエントーの問いに、アフランシは「人を鍛え、光になる為だ」と答え、「フォスの真理を知っているのか!?」とエントーを驚愕させた。しかし、アフランシはフォスの真理を知らなかった。エントーはアフランシが星を持っていない男だと思っていたが、よくよくアフランシの話を聞いてみると、幾重にも重なった星を持った男だから星はないように感じられただけだった。またアフランシは、ヌース(コプト語でいう神的精神、叡智)、そんな精神の存在を直感させるという。アフランシはそれでも、自分はアフランシ・シャアだと答えた。エントーは、アフランシの名前が吉か不吉な名前化は判定出来ないが、その名前が導くままにここまでいらっしゃったのなら、覚悟を持って生き伸びなされ。それが、貴公の命を救うただひとつの道だと助言した。アフランシはそれは誰でもそうだろうと反論するが、アフランシ・シャアの名前は冗談事ではないとエントーは言い、議論はまだ続くかと思われたが突如部屋の外から、ミノフスキー・クラフトの音が響いた。
- 今までの態度とは打って変わって、エントーは「アフランシの事を我々の敵にしかなれない存在なのか…力あるものでもその力を示さぬ限りは、騒動のもとになるしかないんだとは、なんと情けない男だ」と罵倒し始めた。「この部屋に自分達を足止めにしたのはエントーの方だ」とアフランシは言い返すが、エントーは「先が見えないプシュケーを持ったものに、ヘルマルメネの鍵を与えるのが、愚かなる自分の役目だった」と悟って、激しい後悔を含みながら絶叫した。
- 部屋に激しい爆風が吹き込み、アフランシは窓の向こうを見ると、空には奇妙な飛行物体ミノックスが掠めた。エントーの小さな背中を抱いて強引に立たせたアフランシは、クリシュナ達と共に部屋から飛び出した。建物の住人達も階段へ我先にと殺到しており、かなりの怒声と悲鳴が聞こえてくる。爆発音だけでなく、機銃掃射に似た連続音が階下に通っていたが、人々を押しやるようにしてアフランシ達は階下に降りていった。途中、アフランシはミランダ、クリシュナの姿を捜そうとして腕の力を抜いてしまいエントー夫人を手放してしまった。ミノックスは、ヘリコプターのような飛行をして、アフランシ達のいる場所を中心にして、軍事用火薬で威し爆撃を行った後、炙り出すようにその包囲網をじわじわと小さくしていた。この爆撃により、左右の崩れた建物の間には数十の焼け焦げた死体、手足がなくなった死体、衣類が剥がされて、水膨れのようになった生々しい腹を見せる死体、頭を割れて白っぽい脳漿が上半身を汚している死体などが散乱していた。アフランシ達はこれらの凄惨な現場を抜けて、シェルターへ逃げ込んだ。シェルターの奥は、民間人が絶対に出入りしない特別な区画へと続いていた。武装したマハの職員5人が待ち構えていたが、アフランシは咄嗟に信号弾を使って目眩ましで逃走に成功する。
第3章
- コロニー内で人の流れの間に焼夷弾を投下するミノックス。これを指揮しているのは、アフランシ達に接触してきた青年ウル・ウリアンだった。彼は実はマハの職員であり、スパシアス号で見せたような温厚な雰囲気を想像させるものはこの時、一切無かった。同じマハの職員であるジャンパーを着た男が反抗的な態度を見せるとこれを打ちのめし、気絶した男の身体を、悲鳴を上げる人々と乗り物の間に放り出すと、人知れず抹殺した。
- 闇雲にスペース・・コロニーの地下を一人で走るアフランシ、アフランシから逸れてしまったミランダとクリシュナの二人はノーマル・スーツを着用して、エア・ロックを開けて宇宙に出ると、スペース・コロニーの外壁上を移動していった。コロニーに慣れていないアフランシは気が済む距離だけ移動した後、シェルター経由で街に出ようとしたが、警察のパトロール・カーに発見されてしまい、警官達に捕まってしまった。意識が遠のくアフランシには知ることがなかったが、その後、ウルの指揮するミノックスの攻撃を制止しようとゾーリン・ソールが出てきていた。
- 気がついたアフランシは、警察署の独房の中で見知らぬ3人のチンピラ男達に囲まれていた。喧嘩した彼等達に殴られたが、次の手口が分かったアフランシは閃光のような動きで瞬く間に男達を打ちのめした。アフランシは自分がこんなに上手に出来るなど思っていなかったから、やりすぎたと思った。自分の手の甲に残る痛みを自分の運命を象徴するもののように感じながら、軽率な行動を呪った。
第4章
- アフランシは打ちのめした男達の中で巨漢の男トット・ゲーリングと打ち解け、警官に促され収監房から解放される。警官はアフランシとトットの会話が気に入らないのか、いきなりアフランシに手錠をはめて、乱暴な扱いで連れ行く。アフランシの手首に手錠が食い込んで、そこの皮が剥けてしまった。アフランシの性格にはなかったが、この警官に対して憎悪を抱いた。このスペース・コロニー『ヘラス』は人をそうしてしまうものがあるようだった。連れて行かれた先には、外に出られるドアがあって、傍には私服の男二人がいた。その二人が言うには、自分達は警官の行き過ぎた行為を監視する立場にいる者で、アフランシの逮捕は不法であったという状況証拠があったので、元々ここに収監される訳ではないという事になるらしい。アフランシは釈放された。アフランシは行くべき場所などないが、風を避ける為メトロへ行った。そしてメトロに向かうアーケードを通りながら、街中の喧騒や、ショーウインドーの向こうのテレビから流れるニュース映像などから情報収集し、ミランダ、クリシュナ、スパシアス号のクルーの誰かと接触しなければならないと決意した。
- アフランシは自覚していなかったが、警察に逮捕され収監房に移される前に、マハによって彼に尋問が行われていた。正気を保つレベルで自白剤を呑まされたアフランシは自白を強要されたが、彼はウル達、アフランシの敵になるかもしれない人々に具体的な情報を話す事はなかった。マハのビジャン・ダーゴル大佐は、ヘラス政庁から電話を受けて、官邸の方に行く事となった。
第5章
- スパシアス号のクルー達は、警察でアフランシに仕掛けられた発信器の電波をキャッチして彼を追尾していた。ズィー機構の基地である三十一の二乗にはガイア・ギアαが来ており、あそこまで行けばヘラスの制空空域から脱出出来るとの事で、船長のマドラス・カリアは撤退を考えていた。ガラスの破片を抜いて治療されたクリシュナは元気が無かったが、予定通りウルとのデートに行く事になった。
- 空襲の跡を迂回して歩くアフランシは空腹により頭をもたげ始める。ちょっとだけ上を見ている間に、右手から飛び出した男女のグループの最後尾の一人にぶつかってしまう。何もしていないのだが、こういう種類のチンピラ集団なのだから回り込んだ若者達は、アフランシに攻撃を加えようとする。警察で友達になったトットの事を話すと、和解した。彼等のリーダー格であるメッサー・メットと知り合いになった。
- 夜になったスペース・コロニー『ヘラス』で、高級な店が並ぶカンタベリー・ゼノア通りでは、インド・サリーを着込んだクリシュナがウルと約束の場所に向かった。約束の店ウンデンバーグで待っていたウルはクリシュナと軽食を済ませると、黒塗りのリムジンで移動する事を提案した。リムジンの運転手から、プロの運転手ではない鋭さをクリシュナは直感したが、これは当たっていた。彼はアフランシの捕まっていた警察で、わざと釈放させた私服の刑事らしい男の一人だった。リムジンの数10m後ろで、クリシュナがウルに連れて行かれる所をアフランシが目撃していた。
第6章
- ジョー・スレンに拾われてタクシーで仲間が待っているホテルまで連れられたアフランシ。警察署で仕掛けられた発信器を調べる為、一旦バスルームで衣服を全て脱いだが、見た目は傷一つない身体なので、となる胃か肛門に仕掛けられた推察出来た。胃にあると断定した一行は、下剤を使うと決めて、ミランダは買い出しへ、ジョーはキャンピング・カーをレンタルした。
- クリシュナとウルを乗せたリムジンは、鴨料理が有名な店アンデルセンへ到着した。ウルは世間話をする体でヘブライ語の話をしたが、それはクリシュナの所属するズィー・オーガニゼーションの基地を比喩していた。クリシュナはウルが全てを知っていると勘付いて、情報を与えないようシラを切り続け、遂にテーブル・クロスの端を掴んで立ち上がり逃げようとした。ウルはクリシュナの脚を狙って、彼女を押し倒し制圧した。その時、店の外からはマシンガンの甲高い音が闇の中で乾燥した音を響かせた。クリシュナは、ウルの二本指で握られているだけの手首を振り払えなかった。
- フォラーンのアンデルセンに、ウルとクリシュナが入った頃、アフランシは体内の発信器を出す為、下剤を飲まされ浣腸を二本使った。ホテルを後にして、ジョーの運転するキャンピング・カーで、クリシュナを救う為アンデルセンに向かうが、それをマハのミノックスが追跡する。アフランシは、キャンピング・カーの薄暗いトイレで一回目の排便を行うが大きなおならだけが出続けた。キャンピング・カーが跳ねるとその反動で、アフランシはかなりの量のものを放出した。
- クリシュナを押し込めたリムジンは、フォラーンの森林公園の暗い道を全速力で疾走。それを追うのは、三台のバイクと二台のエレカだった。クリシュナは、ウルからアフランシの素性やシャア・アズナブルとの関係を聞かれるが答えない。なんとか上体を動かそうとするが、それをクリシュナの手首を掴み、筋肉の節目の急所を抑えて、ウルの指は許さない。
第7章
- スペース・コロニーのセンター・コアに繋がる山岳地帯で、リムジンは激しいローリングとピッチングを始めた。それを追跡する三台のバイクとそれに少し遅れて二台のエレカ。リムジンの援護に三機のミノックスが上空から降下してきた。リムジンの振動でウルの身体が跳ねた時、偶発的に彼の手刀がクリシュナの首筋に入ってしまい、抗議しようとした彼女はさらに反射的に入れられたみぞおちへの突きで気絶した。シート下からマシンガンを取り出して応戦するウルと、エレカのバンからも牽制の射撃の銃火がきらめいた。
- アフランシは救急セットの中から整腸剤を水無しで飲み込んだ。戦闘はますます激しさを増して、至近で起きた爆発音はアフランシのカラッポの内臓からさらに残った液体を絞り出してパンツが汚れたが、そんな感覚は感じておらず、ただ吐き気を突き上げさせる嫌悪感だけが全身を揺すった。ミノックスが一機撃墜された。窓から飛び降りたアフランシは身体に全く力が入らず、這々の体で肘の力で土の斜面を這い登った。見慣れぬ人型の一機の機体が上昇して、ミノックスの上昇を抑えるように接近してきた。それはケラン・ミードの乗ったガイア・ギアαだった。
第8章
- 戦場に新たに地球連邦軍のマン・マシーンガゥッサが二機現れた。ガイアギアに乗ったケランは、追尾するエレカの無線で、ミノックスにはクリシュナが収容されていると知ったから、撃墜出来ないでいた。ミノックスのコックピットに移されたクリシュナはシート・ベルトが千切れるのではないかと思えるほどの衝撃を受け覚醒した。横ではウルがミノックスを操作していた、クリシュナから見ても彼の操縦はマニュアル的でフレキシブルではなかった。二機のガウッサを相手にするケランのアルパは、一機にビームを偶然直撃させたが、ビームを避けようとしてビルに機体半分を激突させて、半分、失神状態になった。
- 左の腰のバーニア二基を損傷し、その周辺部分のシールドを消失したガウッサ十八番に乗るジョナサン・リーヴは、実戦経験がほとんど無かったから、臨機応変な対処が取れず、機体を転倒させてしまった。そして、次に、開いたハッチの向こうからアフランシにオートマチックの拳銃で脅されて、機体を奪われた。無警告撃破は本意でないアフランシは、敵機に脱出するよう猶予を与えたが、スペック思考しか持たないパイロットは聞く耳を持たなかった。そんなパイロットをアフランシは憐れむしかなかった。敵の言葉とも気合とも取れない声をミノフスキー粒子のノイズの中で聞きながら、アフランシはビーム・ライフルを一射して、直撃させてビーム・ライフルを使えない状態にした。その時の閃光は、アフランシの再生……ひょっとしたらシャア・アズナブルの神話の復活を告げたのかもしれなかった。
- アフランシの空っぽになった腹腔は急に下痢症状を再発して、漏らした。
第9章
- ケランのアルパに続いて、アフランシはコロニーの『河』を飛んでいくが、コロニー内だというのに、敵は関係なくビームを連射してきた。二機のミノックスが迫り、コロニーに開いた穴からはマン・マシーン三機が飛び込んできた。敵の機体を使っているというアドバンテージを使って、アフランシは一機のミノックスに蹴りを入れるように落下して、リング・フィンを損傷させた。続けて、ガウッサの背中上部のテール・ノズルにライフルを差し込むように一射して撃破した。
- マハに捕まったクリシュナは、尋問を受けていたが、ウルが見た自白を書き並べた用紙には、新しい単語がない、つまりは基地の実態など情報を漏らさないでいた。
- アフランシの下痢の症状は収まり、下半身の衣服を着替えると、手足を消毒して、整腸剤や栄養錠剤、クラッカー食を食べ体調を整えた。アフランシは幾分か体調に余裕が出来たから、エヴァリーの若い肉の形を思い出していた。熱いコックピットの中で、エヴァリーの太陽に焼けた肢体を夢想せざるをえない。それは身体の芯を焦がすような恋しさと切なさを思い出させ、アフランシはいつの間にか涙を流し呻いていた。自分の泣き声に感情が沸騰して、得体の知れない運命を悲しむが、アフランシの深層意識はこの運命から逃げようというつもりはない。それがますます悲しい。戦闘の緊張感から解放された直後のアフランシは、感情が飽和して、行末も分からないのに自分の運命と対決しなければならないことに絶望も感じた。泣きじゃくりながらも、アフランシはここにいないエヴァリーに語りかけ、その肢体をイメージ出来れば、アフランシの男性器は力を漲らせ、視線の下には彼の男性を誇示していた。それを視覚すれば自分の状況の切なさに泣けた。あの島にい続ければ、エヴァリーの肉体を抱く事が出来るのに、それを永遠に繰り返すのはつまらないし、飽きるかも知れないが、こう切なくはない。この力を誇示するものを慈しみ、慈しみ合う方が正しい。本当にそう思う。アフランシの呻きが彼自身を弄び、アフランシは、自慰をした。
第10章
- アフランシはコックピットに一人籠もっている間に、感情の全てを吐き出した。それは本能的に彼が、これから激変する運命を受け入れる為の準備だったのだ。アルパに導かれて到着する場所はアフランシには、想像の出来ない所だ。基地は石の多い空域だった。オープン・タイプのコロニーを輪切りにしたよう残骸の隙間に一隻の宇宙船が係留されていて、そこが基地だった。提督アザリア・パリッシュは、怒声を発した。
第11章
- 周りの士官達になだめられた。アフランシは夜食を食べながら、クリシュナ一人のために、ズィー・ジオンの戦力を使うことを提案したが、それは無謀だとパリッシュ提督は呆れ果てる。ここで、アフランシは自分はシャア・アズナブルのコピーではなく、自分はアフランシ・シャアであると断定をするのだが、座はシラけた。そして提督は逆にアフランシを不穏分子、もしくは敵として待遇すると揺さぶりをかけた。流石にこれにはアフランシも絶句した。ミランダが言っていた通り、ここの連中は偏っていた。また、アフランシに助け舟を出したマドラス船長に対して、パリッシュは明日には、問責委員会を開催される立場だと、上司らしい威厳を見せた。何でも、アフランシがシャアであれば、危険を犯させすぎた罪があるから、もしくはシャアでなければ人物確認をしないでここまで連れてきた罪、どっちにしろ我々を混乱させた罪だという。アフランシは激怒した。パリッシュ提督が過去の問題で、現在進行している事態の危機的な状況を無視していると指弾し、自分の出生についてはバアム、ズィー機構のデータが示す通り、自分という生体はシャア・アズナブルその人の細胞から再生された個体であることは証明されているとして、提督を黙らせた。
- アフランシは、マイクを使って、ズィー・オーガニゼーション、準備時代、すなわち雌伏の時代は終わったと宣言。そして、明後日の早朝、三十一の二乗はヘラス政庁に駐留するマハに捕らわれている同士クリシュナを奪還の為出向するのだ。地球に発した人類の恒久的な平和の為、さらにあの水々しく輝く星、我ら地球を永久にあの姿のまま、子孫に残すための戦いに。
第12章
- ズィー・機関の終息を宣言したアフランシは、戦艦三十一の二乗をマザー・メタトロンに 組織名をメタトロンへと改名した。サイド2へと発信したマザー・メタトロンは、スペース・コロニー『ヘラス』政庁へ向けてズィー・オーガニゼーションを騙って活動した者、半地球連邦政府運動の容疑で逮捕された人々の保釈を即刻要求し、これが受け入れられなかった場合はコロニーを攻撃する事を無線、レーザー通信、発光信号を使って勧告を順次発信していく。これを受けて閣僚の一人はズィー・オーガニゼーションなどは、民間の地下組織だと信じていたから、信じられない事態に呻いた。このように閣僚は世界に対してはたえず不明で、目の前の利権にしか興味を持てない人種なのだ。同席していたダーゴル大佐は、彼等からマハに任せるという言質を取るという目的だけを持っていた。ダーゴルの提案でヘラス側は、マハが独自に逮捕した者達を出して攻撃のバリアーにするという。ウルはダーゴルにブロン・テクスターのテスト機を使うよう進言、また、大した戦力も整えずに動き出したメタトロンの感情的な行動から、捕虜となったクリシュナ一人のためだと申告した。ダーゴルはこれを容認して、軍と警察が恰好つけに二、三十人の容疑者をメタトロンに渡すから、ウルはその後に動いてメタトロンの全貌を掴むのだと。ウルから三百十四つまりはマザー・メタトロンが自分の為に動いていると聞いて、クリシュナは動揺する。自分はただの連絡員の一人でしかないからだ。クリシュナは、ウルの肩越しにブロン・テクスターのゼロ・ナンバーが、煌々とした光の中で佇立しているのを見上げて、全身が震えた。
第1章
- ガイアギア・アルパの機体チェックとパイロットスーツのバーニア操作訓練を済ませたアフランシは、出撃準備を完了させた。戦場には、マハの数隻のクエンゼリ・タイプの宇宙巡洋艦が出ていたが、ブロン・テクスターで出撃したウルは慌てることはない。そのマニピュレーターには、ノーマルスーツを着込んだ捕虜のクリシュナを固定していた。これは、マン・マシーン戦での楯に使おうというのではなく、アフランシ達メタトロンがなぜ、泡を食ったように出てきたのかを確かめる為だった。宇宙船マハ・ゲイジスで指揮を執るヘラスのマハの総司令ダーゴル大佐は、メタトロンにヘラスを攻撃してもらう腹積もりだった。一撃二撃くらいは攻撃を容認して、反地球連邦政府活動全般を武力で弾圧する口実を作りたかったのだ。
- ガイア・ギアに搭乗するアフランシは前方の空域から『人の気』そのものを感じていた、ガイア・ギアのサイコミュは作動させていないというのに反応が出ていた。それはつまり、アフランシの能力が本物だということだ。出撃するアルパ、ジョー・スレンとマドラスが乗ったゾーリン・ソール、そして僚機のドハディ。それに刺激されて地球連邦軍の艦艇からは撃破を意図して、数条のビームが発射される。ヘラス政庁は政治犯を釈放し、メタトロンに引き渡すと応答したのに、砲撃を無断で行った連邦軍を見て、バカ共がとウルは罵った。
第2章
- ガイア・ギアに乗っているアフランシは、外界に存在する意思あるものの状態を感知していた。眼の前の連邦軍は混沌状態にあり、ドハディに乗ったケランのような実戦経験があるパイロットから見れば、付け入る隙があると感じてしまう。しかし、せっかちは身の破滅を招く。アフランシはせっかちなケランが突撃しないよう注意したが、逆に指揮官であるケランから同情と怒りがない交ぜになった声で注意返された。連邦軍からは発光信号で一時間待つように通達されたが、アフランシは敵艦から感じられたあいまいな気配で、動揺が収まらない。 連邦軍は先に発砲してしまった事でその協議をする時間を欲しがっているのだ。連邦政府の高官は憎悪を喚起することで、自分達の指揮権を維持しようとする大人たちの集まりでそれは不自然だとアフランシは感じる。アフランシは自分がガイア・ギアのコックピットに座っているのは人の憎しみを喚起させるためではないという確信を持っている。ガイア・ギアの名称は地球を、地球の存在を許容する宇宙と地球に生息する命あるもの全てに対して繋げることに由来する。それは命名者の理想でもありアフランシの感性を刺激する、その時アフランシの深奥の意思シャア・アズナブルが「わたしが命名者だ……」とアフランシの表層意思に呼びかけるのだ。しかし、アフランシにそれは聞こえない。ヘラスの脇に滞空する光の数はますます増して、政治犯を出す気配はない。アフランシは、マザー・メタトロンの所まで後退して連邦政府が望むよう、ヘラスを攻撃して、事態を進行させる事にした。あえて敵の思う壺にはまるのだ。スペースノイド一般を敵に回したくはないのだが、きっかけがなければ政治犯の釈放も呑めないのが今のヘラス政庁である。だから条件を満たす。待っていれば連邦軍の戦力が増強して、メタトロンが撃沈されるだけだった。メタトロンから発した一条のビームは、ヘラスの十ほどの農業コアを撃破。その閃光が地球連邦政府とメタトロンの戦争の開戦の合図となった。ダーゴル大佐は快哉をあげたが、それは彼だけではない。どこかでシビリアン・コントロールに飽きていた軍人たちや急進的な人々の心の底に起こった喜びの声だったのだ。
- メタトロンの攻撃に呼応して、ようやく、地球連邦軍は一隻の船をマリオン・スラグに接舷するため、前進させる。三四名の政治犯が移乗させられるが、その中にクリシュナの姿はない。アフランシというアイドルが登場して、メタトロンのクルーたちは忘れていた感情を取り戻したから、ドハディに乗っていたジョーは、付近で報道を続けていた連邦軍のガウッサを拘束して、クリシュナを解放しなければ破壊すると要求する。マリオン・スラグによって連邦軍の艦艇に受信されるが、ウルはそれを知らない。サイコミュで脳波と五感を強化した彼は、自分の存在を世界に示すため、マハ・ゲイジスからブロン・テクスターを発進させた。
第3章
- アフランシは、突出するブロン・テクスターの『気』を感じ取る。マハ・ゲイジスの前方空域にまで出たウルは、クリシュナを自分の物にすると宣言して、発光信号を付けた彼女を宇宙空間に置き去りにした。
- ケラン達よりかなり先行してアフランシは、ブロン・テクスターとの戦闘空域に入った。ミサイルとビームを使ったアルパとブロンはどちらも決定打を与えられない。ビームの激突による干渉波の輪が起こった直後、アルパはブロンに急速接近して激突。ブロンの下部装甲板がブハーッと跳ね跳んでいき、アルパはマニピュレーターでブロンをガッチリ掴んだ。自分を呼んだ気配を持つこのマン・マシーンにクリシュナの居場所を問い質すアフランシ。ウルはうっかり自分の身分を明かしてしまう。ウルはクリシュナの居場所を知らないとシラを切るが、アフランシはアルパは世界の生きるものの気の全てを察知できると断言してなお食い下がる。ブロンは後退しようと加速をかけるが、アルパは左マニピュレーターを外さない。ブロンのビーム・サーベルとアルパのビーム・ガンサーベルは干渉波を引き起こして、アルパはフロント・ガラスが大破、ブロンは衝撃で右マニピュレーターが肩の所から使えなくなった。
- 一瞬の内に後退したブロンを目にしながらも、アフランシはそれを追わず、クリシュナを捜すことに気持ちを切り替えた。先程の会話で、クリシュナは近くに放出されたか、別のマン・マシーンに収容されているのだと当たりをつけていた。アフランシは意思を集中させ、現在の生の鼓動だけを感知する、その感知に同調したのかクリシュナの発光信号を見つける事が出来た。
第4章
- クリシュナを回収してマザー・メタトロンに帰投したアフランシをクルーたちは歓喜の声で迎えた。今日まで、用心深い大人たちの配慮で立てず、鬱積していた感情が解放されたからである。メタトロンは連邦軍の追尾を振り切って、全マン・マシーン部隊の帰投が完了していた。そして、次の拠点に直行する進路を取った。
- メタトロンが収容した政治犯の中には、ヘラスで知り合ったチンピラグループのメッサー、サエス、レーザム、レエの四人がいた。
- アフランシは大佐に命令して、メッサー達四人を隔離してもらい、団欒した。メッサー達は単純な窃盗や恐喝で警察に捕まっていた処を員数合わせとして引き出されたのだと言う。アフランシは彼等に、メタトロンで働きたいなら偉いさん達に声をかける、もしくは生き延びたいなら出ていってもいいと猶予を与えた。
- クリシュナと久々に再開したアフランシは、彼女からマハの歴史は警察力の強化で、行き着く先は大衆の管理、特定の人種排除と白人社会の建設にあると聞く。その話を聞いてアフランシはかつてトルースに言われて意味不明に思っていた「白人種は人類貴族で他の人種は白人を励ますために存在している奴隷であり、戦争とは白人が競争を知って、反映する手立てであるが故に、戦争が無くなるのは、魂と思考が減退することである」との言葉を思い出した。その言葉こそマハの秘密の教義だったのだ。
第5章
- アフランシ達マン・マシーン部隊は、コロニー残骸が浮遊する空域で戦闘になっていた。ゾーリン・ソールにメッサーは、アフランシが言うように宇宙の『気』を感じようとするが、意識がそうである限り、何も感じることなど出来ない。全て全滅させるとメタトロンに帰還した。
- アフランシは先程の戦闘で、不用意な射撃をして自軍の位置を知らせてしまったメッサーに対して体罰を行う。レーザムなどは無重力下で唾を吐くなどかなり重い軍規違反を行うなど態度が悪い。しかしアフランシが返事を強要すると、いやいや答えたので以前よりは素直になっていた。1ヶ月前までメッサー達は返答もせず、肩で風を切り艦内をほっつき歩いていたのだから、アフランシがそれを矯正するために自分の直轄マン・マシーン部隊に彼等を編入したのは効果があった。また、メッサー達は旧式ガソリンバイクを改造したり、マシーンを扱うだけの資質も持っていた。サイド2全体に徴兵制度が敷かれていた。メッサー達は今の境遇に満足せず、マン・マシーンを盗んで連邦軍以外の所に売り込む計画を立てる。決行時期は、メタトロンが地球周回コースに乗った時で、人工衛星に逃げるつもりだった。
- メタトロンの次の作戦は、マハ・ゲイジスの艦隊がなぜ地球に降りるかの偵察を行い、それが白人だけの地球逆民計画の実施であれば阻止するのが目的だった。3時間後、マハ・ゲイジスは大気圏突入の船を出し、それを追尾する。
第6章
- マハはついに地球連邦政府そのものを動かす勢力に発展して、マハ・ゲイジスを中心にした降下作戦を行う。一般には報道されていない艦隊行動だが、この行動を地球連邦政府に近い情報を入手するスタッフに恵まれていたメタトロンはキャッチしていた。
- マハは、サイド1の移民第一世代やマハの協力者の中から優先的に地球のヨーロッパ地域に逆移民権を与えると策動した。
- メタトロンの戦闘機エア・フォースはマン・マシーン大気圏突入用コンテナエアフレームを背負い出撃した。ガイア・ギアは単独で大気圏突入機能を有していたから、コンテナを使わず単独で出撃した。エア・フォース1は地球に降下する進路に入っていった。
- マン・マシーンに搭乗していたメッサー達は、自分達の逃亡計画が出来そうもない様子に荒れる。
- アフランシ達に追われるマハ・ゲイジス艦隊は低軌道を侵攻しつつあった。ダーゴルはヨーロッパの再開発と同時に、特別区の居留人を排除し、地球にマハの共和国を建設する野望を企んでいた。そして、この作戦を成功させることで、マハの第一の立場を手に入れ、ホンコン・マハに代表される警察機構までを統括することを目論んだ。マハ・ゲイジス艦隊はアフランシ達に対して、ブロン・テクスター以下三十数機のマン・マシーンを投入して防衛戦を張った。
第7章
- マハ・ゲイジス艦隊の先行している部分から数台のシャトルが発進する。搭乗するスタッフは、軍人と選ばれた政治家達の師弟だけでなく、一般の学生からの応募者もいた。彼等が地球を調査して、その成果を持ち帰れば、スペース・コロニー全体に地球回帰現象が勃発することは火を見るより明らかだった。
- メタトロンは偵察カメラが次々撃破される中、マハ艦隊からシャトルが発射されたのを観測していた。モーター・ボードと合体したガイア・ギアはエアフォースの前に出て、敵のシャトルを追尾していく。
- アフランシは、味方のエア・フォース二機を守るため、敵を引きつけることにした。相手は大気圏突入を想定したウルのブロン・テクスター。継続的に現れる敵は、友人以上に人生に関わり、殲滅しなければならない。正にウルの事だった。アフランシはあの白面の青年に、ドス黒い危険なものを感じていた。
- 相手の『気』を感知して、空中戦を繰り広げるアルパとブロンだったが、その空域にメッサー達の三機のドハディと一機のゾーリン・ソールが侵入してきた。その行動は迂闊だった。レーザム機はウルに瞬く間に撃破されてしまった。アフランシは激怒して、メッサーのゾーリン・ソールにエア・フォースに後退するよう命令。そうしないと大気圏突入で死んでしまうからだ。アフランシは無理矢理、ゾーリン・ソールを押しやり、エア・フォース1のキャビンに押し込むと、ガイア・ギアを変形させ大気圏突入に備えた。
第8章
- アフランシは機体を変形させながら怒りの感覚を、ガイア・ギアの外に向けて発信して索敵に利用。すると彼のささくれだった意思は、沈静し、外界を見るという意識に昇華していく。自身から放出される『気』を使って、自機を狙う白い球、マハ・ゲイジスが発射したミサイルを感知し冷静に迎撃していく。変形が完了すると、十数個の白い玉は消失していた。
- 大気熱に包まれたメタトロン、マハの機体、艦艇は何もすることが出来ない状態だった。周囲に起こる電離層のために、無線が使えないブラック・アウト時間も続く。アフランシが降下した地球は夜の部分、敵艦からミサイルを発射されたが、ミノフスキー・バリアーによってミサイルの信管をご作動させて爆発させた。重力にひかれて、落下するに任せたアフランシは、ウルを感知しようと意識を集中して、右方のミサイル・ポッドを開き、自分の意思を呈して発射した。
- アフランシはマハ・ゲイジスからのミサイルを回避しながら、ウルと自身の機体が共にミサイルを回避するならば、残った戦法は正面からの白兵戦のみだと断定。大気圏で飛行する形態のまま、機体の『柄』部分からビーム・サーベルを発振させてウル機と接触した。
第9章
- アフランシは『仲間』たちの位置を探知しようと意識を拡大。それが結果的に彼を正常な大気圏突入コースに向かわせた。
- アフランシの後続の二機のエア・フォースは戦闘の動揺から解放されて、順調に大気圏に突入していった。地球の夜の部分は大西洋。エア・フォースを攻撃するマン・マシーンを迎撃する為、ケラン達のマン・マシーン四機がエア・フォースから離脱していく。
- マハ・ゲイジス艦隊は、ガウッサ数十機の部隊を発進させて、大気圏突入作戦の最後の防衛線を張った。そして、ケラン達五機のドハディとの大気中での戦闘が開始された。この戦闘では、敵味方ともに大気内の戦いに不慣れなのが一目瞭然だったが、敵の追尾を振り切ったメッサー達三機のマン・マシーンがケラン達を掩護するように、敵部隊に猛烈な火線をひいて戦局を一変させた。マハの部隊は後退していったが、依然、ここは地球連邦軍の制空圏で危険なことに変わりはない。アフランシはメッサー、サエス、レエの三人を捜すが彼等は行方を眩ませていた。アフランシが帰投したエア・フォース三機はイギリスを離脱して、基地に向かった。
- メタトロン部隊から離れたメッサー達は、眼の前に広がる荒涼とした大地に感嘆を覚えていた。
第10章
- アフランシ達総勢一四名は、ノルウェーの湖に面するハーマルという街のホテルで食事を取る事にした。この一帯は宇宙移民に最も眼鏡に抵抗した歴史を持っていたので、メタトロンのような運動に協力的な非合法居留者はそこここにいた。そんな人々の掩護を受けて、公式には使われていない空港にエア・フォース二機を着陸させた。食事の支度は、統制が取れず、雑然として慌しかったが、そんな雰囲気は窮屈なマシーンの中で座り続けていたクルーの精神をおだやかにさせてくれた。
- メッサー達は、始めて着陸した海岸から、雨の中を東に三十キロほど移動し、街の郊外といった岩場に辿り着いた。早朝、マシーンを岩場に隠されているのを確認すると三人は街へ散策しに出かけた。グロリアという老婆の店で朝食を頼み、待っているとテレビからヌーボ・パリ近郊にマハが入ったとの情報が流れた。
第11章
- アナウンサーによれば、ヌーボ・パリ近郊に集結した地球連邦宇宙軍は、マハを中枢に置いたもので、不法居住者と反地球連邦政府運動家の掃討で全力を尽くすということだが、これも地球連邦軍に近い筋のコメントで、正確とは言い難かった。パリはジオン時代のコロニー落としがあって人が済まなくなり、大した人口はいない。食事を終えたメッサー達は、パリに行って、マハに投稿する事にした。
- ゾーリン・ソールと二機のドハディは旧大陸に飛んだ。ドーバー海峡を超えるとマハの勢力圏に入るから、移動しつつもメッサー達はお肌の触れ合い通信を使いながら色々協議もしていた。パリ湖周辺では、ミノフスキー粒子が高く、メッサー達はすぐに地球連邦駐在軍のツイ・イェンガン少佐と遭遇した。メッサーは投降の姿勢を見せるが、レエはツイ少佐の背後のトラックの方に乗る数人の男達の怒声から、彼等はただの捕虜ではないらしいと気付いた。
- 捕虜らしき人間、彼等政治犯の見た目は、連邦の一般兵士と変わらないようだったが、丸腰で人種も違えば職能も違う人々の集団だった。二十八番と呼ばれる初老の男はメッサー達にマハの危険性を伝えながら闘うよう絶叫するが、下士官がそれを制止してマシンガンの銃把で殴りつけた。なおも男は抵抗するよう叫ぶが下士官達が駆け寄って手足を取ろうとした。その隙にメッサーに捕虜の中からトット・ゲーリングが身を寄せてきた。ヘラスの警察の檻でアフランシと知り合ったトットは、かつてメッサー達のグループを束ねていた男であり、自分を連れて逃げるようメッサーに提案するのだった。
第12章
- トットと合流したメッサー達は逃げるが、数機のガウッサに追尾される。追撃してくるマハ側のパイロット達はまとも過ぎた為、メッサー達の待ち伏せ攻撃にまんまと嵌ってしまい、順に撃破されていった。トットの言うことに従った方が得策だと判断したメッサーは、アフランシ達と合流する為、一気にヌーボ・パリの空域を脱出した。
- ハーマルに滞在しているアフランシ達は、メッサーからの通信をキャッチする。アフランシは腹立たしくもあったが、彼等に対する自分の見込みが間違っていなかったと嬉しさが込み上げてきた。メッサー達との合流ポイントは直線で四百五十キロ、現在地点から約1時間程度の場所に決まった。
- エア・フォース1と先行したガイア・ギアは、クロスハンゼン・スティンスリードの作成してくれた進路に従って、ユトランド半島に入った。ミノフスキー粒子の気配もなく、メッサーの声が通信から聞こえてきた。目標のヘリポートの十数mをエア・フォースがゆっくりとパスした時、上空で警戒していたアフランシは、異物が迫ってくるのを感知して、ミノフスキー粒子散布を最高速で発振した。迎撃にガイア・ギアの機首近くから、サンド・バレルを下に向け発射すると、十数の小さな火球が咲いた。メッサー達の警戒が足りなかったのでも、追撃されたのでもない。マハは情報網を使って、アフランシがメッサー達と合流すべききた所で、一挙に殲滅する時を待っていたのだった。
第1章
- 地球降下以来、部隊から離脱していたメッサーの無線をキャッチしたアフランシは、救出に向かった。そして、かつてのデンマーク領のユトランド半島で、メッサー達と接触したと同時にマハからの攻撃を受ける。そのタイミングはまるで、メッサー達が囮に使われているかのようだった。アフランシは敵機が六機と確認すると、ガイア・ギアを上昇、マッハ2からマッハ3に加速させる。それを操作するアフランシは手足を使わず、ヘルメットの脳波感知システムで機体を操っていた。その応対は、コンピューターより早い。
- ウルは今日の敵は違うと感じていた。圧倒的に素早いのだ。一々見失う敵影に焦った。ファンネルを飛ばすが、アフランシの意識は、ウルの動揺してただ激発する意識にコントロールされるファンネルに容易に対抗して、ビーム・バリアーを少し強くして、ファンネルを自爆させた。一方、エア・フォースに乗っていたクリシュナは戦闘中落ちてしまい、一度はレエがドハディのマニピュレーターで受け止めたものの、爆風に吹き飛ばされて、いなくなってしまった。
第2章
- クリシュナがいなくなったアフランシ達は北海を低空で北上している。
- アフランシはノルウェーの北海に面した海岸線上に奇妙に白いものを見つけた。それは、クジラ、アザラシ、アシカ、魚などの膨大な白骨が堆積して形成された、長い海岸線だったのだ。海洋汚染の結果、作られた墓場というわけである。この激しい光景は、アフランシにいかに地球が危機的な状況にあるか、生理に突きいるように理解させた。その後、アフランシは地形をなぞるようにして、ハーマルに帰投した。
- 政治犯扱いにされてマハ・ゲイジスの艦隊に、地球のヌーボ・パリ開発の為、強制労働に就かされる所だったトットは、アフランシ達にマハのやろうとしている事を語った。ヌーボ・パリではマハの正規兵になれない男達が、去勢されていたという。人間至上主義を謳うマハの美学によれば、ロボットは使わず、女性であれば子宮を取ってしまうのだ。このやり方は人口増殖に歯止めをかける考えと合致する。そしてマハはヨーロッパを橋頭堡にして、ガイア・エンペラーという地球に独立国家を作るつもりであるらしい。マハを指揮するダーゴル大佐はワーグナーを愛し、ガイア・エンペラーの精神的な聖地をバイエルにする為、その手始めとしてヌーボ・パリから東を制圧していく。
第3章
- ウルにクリシュナが救出されてから、数日が経っていた。マハは連邦政府内部の特殊な警察組織であったが、中央政府に発言権を持ち始めて、連邦軍を管轄していた。
- クリシュナはマハに囚われの身であるが、散歩が許されているなど、ある程度自由が許された立場であった。
- クリシュナが再会したウルは、ビューシング・ナッグを任された隊長になっていた。クリシュナは催眠術により、意識が覚醒した時に、誘導催眠をかけられてメタトロンに関する情報は聴取された。そして、その後催眠術をかけられて記憶を消されていた。クリシュナはそれを酷いと思ったが、おかげで彼女は無罪放免となっていた。
- クリシュナは無罪放免の身となって好きにすればいいとウルに言われていたが、迂闊にここを飛び出して良いのかどうか懸念があったから、今しばらく辛抱していた。
第4章
- エア・フォースの飛行コースは、クリシュナが行方不明となったデンマーク領の半島を迂回し、さらに南下してかつてのベルギー領、リエージュにへ侵入していた。街は無人で緑に侵蝕されている。マドラス以下、誰一人としてクリシュナを捜索しようという者はいなかった。それがジョーを苛立たせる。
- ジョーとマドラスは電動バイクのエレカでリエージュの街に向かった。歴史ある街には大抵不法居住者がたむろしており、そのような人々を探し出して、マハの情報を集めることが二人の任務である。ルーバン亭を見つけた。
第5章
- マドラス、ジョー、レエ、サエスの四人はバイクで街へ出発した。ルーバン亭では、クリシュナを連れたウル達マハの部隊と銃撃戦になったが、ジョーの絶叫も虚しくクリシュナは姿を眩ませた。
第6章
- ウルはブロン・テクスターに乗って店に引き返して、強襲を仕掛けてきた。
- 戦場に到着したビューシング・ナッグには成り行きでクリシュナが同乗していた。
第7章
- サエスのドハディは、ウルのブロン・テクスターに食いつくが、彼の座るコックピットは灼熱の中に消え、ドハディは金属とプラスチックの溶解する塊となった。続けて、ケランのドハディはブロン・テクスターとの機体の性能の違いによって人智ではどうすることも出来ない局面に陥り、ファンネルで撃破されてしまった。ケラン機の核融合炉の爆発はディープ・ヨーロッパの一角に光の帯を作り、リエージュの街のかなりを消滅させた。
- ケラン機の爆発から退避するため、ビューシング・ナッグは町並みから離脱していく。それを後ろから追いかけるエア・フォースは、ジョーは向こうにクリシュナが乗っている事も忘れて正確にミサイルを発射した。が、バリアーによってビューシング・ナッグは無傷だった。元の仲間は自分達を殺そうとしたんだから、やってしまえとジョランに命令されたクリシュナはバルカン砲でエア・フォースの一機を撃墜してしまう。クリシュナはただただ、心の中で謝罪の言葉を絶叫するしかなかった。
- レエのドハディに苦戦するガミアンのガウッサに近づいたウルは、パイロットを捕虜にする為、撃破しないよう命令する。ブロンのビーム・ライフルでレエ機は機体の半分を焼かれ、大破した機体はそのまま新しく育った森に潜り込むようにして、大地に激突した。マドラスとジョーの乗るエア・フォース1もビーム攻撃を受けて火を吹いて、レエが墜落した森からかなり離れた森と草原の境目に突っ込んだ。
第8章
- アフランシは、マドラスたちを支掩するため、すぐ近くの空域まで侵攻していたのだが、サエス、ケランの戦闘にほんの少し間に合わなかった。詩的な言い方だと、これが運命の皮肉だろう。
- エア・フォース2の背中にのしかかるように飛行していたガイア・ギアは離脱して、単独飛行に入った。ガイア・ギアに搭載されたサイコミュに適合したアフランシはガイア・ギアを忘れないで執着してしまった。本来、組織そのものの指揮することを忘れてはならなかったのだが、アフランシはレエにこだわり、自分の感知能力を邪魔したものに拘ってしまった。この瞬間、アフランシは宇宙に帰ることを決的に拒否した。彼は、ものに縛られ、些末な情の世界に踏み入り、メタトロンに戻って総帥と呼ばれることを遺棄したのだった。正しいか、間違っているかはこの時点では分からないのだが、アフランシはそいういう青年だった。ウルはレエが脱出したコックピット・コアを楯にして戦場から逃げた。
- 戦闘の結果、アフランシ部隊は虎の子のエア・フォースとマン・マシーン、パイロットを失った。こんなに手酷い損害は初めてだった。生き残ったジョーも衰弱が見れたし、レエは全身打撲だった。リエージュに潜んでいたレジスタンスのファレスとジャコブはアフランシ達に協力してくれる。
第9章
- アフランシは、マザー・メタトロンの大量のミサイルでマハの進駐ポイントに銃弾爆撃する作戦を立案するが、それは乱暴過ぎるとマドラスに反対される。しかし、アフランシとしてはもういたずらな損失は出したくはないし、一挙にやらなれけば初期の予定通り戦力を補給される様子がないこの部隊では、潰されるだけだと判断していた。この性急な動きは、森林が既にマハの手によって破壊されている事が分かっていただけではない。電離層の状態が良くなってアジア方面の電波を受信すると、ホンコン・マハが動いているのもキャッチしたからだ。
- エレカを駆るアフランシ達は合流ポイントに向かい、そこにはメタトロンからの増援エア・フォース3が到着していた。乗っていたミランダにアフランシが話を聞いた所、提督たちご老体はアフランシがメタトロンに加わった事で、求心力が出来たと感じ、マハへの爆撃プランを受けいれた。だが事態は複雑だった。彼等はマザー・メタトロンを連邦政府に提供して、その代償に反地球連邦政府運動の罪を帳消しにしてもらい、連邦政府に吸収されるつもりだったのだ。シャア・アズナブルのクローンが再生するのを待つことだけで、初期のスタッフは十分歳を取った事を意味していた。アフランシが、マザー・メタトロンに迎え入れられた時に感じた違和感は正しかったのだ。ミサイル群の攻撃は実行されるし、マハは動いて第二波が来て逃げようもない。
- 静止衛星軌道上のマザー・メタトロンはいよいよ、ヌーボ・パリ周辺にミサイルの集中攻撃を開始した。驀進を続けるビューシング・ナッグの前方数十kmの空に数十条の白い筋が夜明けの空から、地に伸びていく。
第10章
- ミサイルによる爆発は大地を揺すり、土を刳り、森林を焼き、石造りの建物を粉砕して、田園の光景を曠野にした。連邦政府は公的にはヌーボ・パリのような都市が建設されているのは否定していたから、皮肉にもメタトロンの爆撃によって政府が公にしている状態に戻るという結果になった。再生しつつあるヨーロッパの森の一部が焼かれ、数万の人間が散財していた非合法地区は、こうして火の中に消えた。アフランシ率いるメタトロンが振り下ろした火であるが、核ミサイルを使わないことは地球にとって幸いだった。アフランシとマザー・メタトロンの良識が、クリーンな爆撃を心がけ、放射能汚染を恐れて、通常ミサイルによる防衛を遵守したから、核の冬は回避されたのである。とはいえ、膠着状態に陥る戦闘を避けるためとはいえ、この爆撃は過大だった。マハ・ゲイジスはビーム・バリアーで艦を守ることが出来たが、ダーゴル大佐は艦内で自分達のうぬぼれからこの攻撃を予測出来なかったのを悔いた。
- アフランシはガイア・ギアで空に生きを潜めながら、爆撃を遠望していたが、この爆撃でマハの中枢を全滅出来るとは思っていない。アフランシの部隊は、これによって遁走しようとするマハの艦艇を補足し、マザー・メタトロンから降下する第二波と合流する予定なのである。
- エア・フォースのレーダーで上空から接近する機影がキャッチされると、ガイア・ギアは先行した。
- 戦闘濃度にあるミノフスキー粒子下であっても、ガイア・ギアのサイコミュによる外界感知能力は、アフランシに敵の存在を認識させる。マハのものと思える五隻ほどの艦艇をキャッチしていた。ガイア・ギアの左右に三機のドハディが三km程の距離を置いて、横一線に展開させた。それに対して敵のマン・マシーンは二十を越えた。アフランシは僚機が撃破されないよう、集結を待ってさらなる上空で戦闘の終息を待っていたエア・フォース2と合流していった。
- アフランシはメッサー隊と合流して、エア・フォース3と旧フランス領のドゥー川沿いにあるブザンノンに集結した。マハは、旧ドイツ領でマハ専属の産業を起こす狙いがあったがそれが挫折した為、今度はホンコン・マハと接触して挽回策を講じるつもりだと、ミランダは予測した。
第11章
- 巨大爆発で黒い豪雨が降るヌーボ・パリの東方で、ビューシング・ナッグは地上部隊を糾合しながら、東に移動していた。かつてのミュンヘンは、ヨーロッパ地区において四番にランクされたマハの拠点になるべき場所で、イスタンブールまで進行しているはずのホンコン・マハ艦隊に一番近い場所でもある。
- アフランシ達は雨が降るブザンソンの小さな飛行場跡に部隊を集結させていた。マン・マシーンが二十機ちかく、エア・フォースは五機、支掩機と後方支掩のスタッフが極度に少ないのがこの部隊の泣き処で、本来は最低、この三倍の支掩が必要となるが、それは望むべくもなかった。
- ウルの気持ちを確かめないとビューシング・ナッグから逃げ出してしまう自分を感じて恐ろしくなったクリシュナは、ウルの元へ近づいて行く。
- ゾーリン・ソールに乗ったメッサーはアフランシが驚くほどに自分のものして、ロボットそのものを見せてくれていた。その姿は重いものを引き摺っているアフランシの気持ちを晴らすものがあった。アルプスを越えたメッサー率いるマン・マシーン部隊は、雲が点在する山岳地帯を眼下にして、ガイア・ギアはその後方に位置する。マハはメタトロンの部隊を探知しミノフスキー粒子を散布して、戦闘濃度にまで上がった。フライング・フォームのガイア・ギアは最大戦闘加速をかけて敵に切り込んでいく。
第12章
- アフランシの眼下に展開する見慣れない機体の編隊は、反撃をかけることなく上昇に転じ、次々とメタトロンの機体を撃破していった。彼等はウルのブロン・テクスター以上の俊敏さと強さを放出していた。アフランシの僚機は半分消失したが、ガイア・ギアはファンネルを敵に直撃させて、一瞬にして第二の結果を出した。
- アフランシに撃破された僚機の結果を戦闘中に知覚出来るホンコン・マハのジャンウェン・フー。彼はギッズ・ギースのパイロットで、ギッズの第一陣を移動させてきた指揮官である。バリアーを使って後退をかけるが、アフランシの類まれな能力でもう一機、味方が撃破された。あれほどの敵がいる、ダーゴルはいい加減すぎると罵った。
- アフランシは、討つべき相手ジャンウェン・フーが戦闘空域が脱出できたのだと理解した。また、その引き際は恐ろしいと感じた。ゾーリン・ソールは片腕を破損して、予備の部品はないから修理することは不可能だった。
- マハのガウッサ、ホンコン・マハのギッズ・ギースの模擬空中戦は三分とは続かなかった。ギッズのパイロットは、生き残った三人の中でも最も未熟な者だったが、数度と無く優位のポジションについて、素人が見てもその性能は圧倒的であると知れた。ダーゴル大佐は今後、地球連邦政府そのものが、マハの独走に反発してくるという政治的な問題が深刻だと感じていた。そのときは、不法に地球に居住している高官たちの家族を人質にとって、布陣する必要があった。
第1章
- ブザンソンに帰投したアフランシの部隊は、五機のドハディのうち四機が撃破され、無傷なのはエミール機とアフランシのガイア・ギアだけで、メッサーのゾーリン・ソールは左腕を無くしているという有様だった。戦力がないアフランシの部隊としては、貴重なパイロットや機体が失われてしまった事で、場をうっとうしい空気が支配するのも当然だった。
- 編成し直したマン・マシーン部隊は一台のマン・マシーンに二人のパイロットを配置することを基本として、余った機体は予備に回すというものだった。アフランシはガイア・ギアの二番手パイロットに回されたが、ガイア・ギアは自分の機体であるという思い込みがあったから、その提案は神経に障った。アフランシを二番手にしたのは、座ることを覚えてもらわなければ困るという、マドラスやミランダの目論見だった。人工衛星軌道上から、マザー・メタトロンはマハの工場群を撮影した写真を寄越したが、この写真を送った代わりに、第三波の増援は送れないと言う。このことでトットは、マザー・メタトロンの老人達は我々を地球連邦に売りかねないと疑心を抱く。それに関してはアフランシも同意見だった。アフランシは自堕落になっている自分を認識していた。パイロットという一個の歯車になることで本来の仕事を逃げたのである。正しいからではなく、それがアフランシ・シャアという個でいられるからだ。
- 通信部隊の声に呼ばれたアフランシがホテルだった建物に飛び込んだ時、ボーズ戦隊が敵の部隊と遭遇していた。通信によれば、敵はブロン・テクスターに似た機体だが、違うものに見えるというが、それを伝えたヘイラルは絶叫して戦死した。それっきりその周波地帯はノイズだらけになって、ボーズ戦隊は全滅した。真北に二百km、ミランダの提案でガイア・ギアはメッサーをパイロットに出撃することになった。
第2章
- ウルのブロン・テクスターはチューンナップされて強力になっていた。しかし、彼の追尾していたボーズ戦隊の三機のマン・マシーンは、降下行動を取って支掩部隊があるという芝居を打ってウルを騙していた。ウルがそそっかしい行動を取ってしまったのも、ダーゴル大佐の部隊にホンコン・マハの新型が合流したことやウル自身が局所的な戦果をあげるだけで、アフランシの部隊に決定的なダメージを与えられず候を焦っていたからである。メッサー達の部隊はミノフスキー粒子を戦闘濃度に散布して、仕掛けた。メッサーの意識がはじけ、ガイア・ギアのミサイルが、ブロン・テクスターの肩部のシールド・ファンネルポットを破壊し、頭部を損傷させた。
- メッサーの意識はサイコミュと連動して、彼の表層意識に表れない部分で、意識を伝達する光信号そのものの速度で、メッサーの行動を決定している。ガイア・ギアのメカニカルなシステムがそれに呼応し、メッサーの意思を核にしたガイア・ギアは一個の肉体に化していた。レエとキムリーのドハディが背部から攻撃をしかけ、ウルは打ちのめされた。ブロンは背後から両足を掴まれ、ガイア・ギアから投降を勧告される。ブロンのライフルは、ガイア・ギアのビーム・ライフルで焼かれ反撃の手段も失った。
- メタトロンに尋問を受けるウルは余裕の態度を崩さない。その様子をアフランシは別室のモニターから観察していた。ウルの口からクリシュナの名前が出た時は驚いた、忘れようとしていたものを、ドッと目の前に広げられたという感じだった。ウルによれば、クリシュナはマハの同士にはならず、ビューシング・ナッグから四日前に降りていた。もう一つ分かったのは、ブロン・テクスターの飛行記録からマハの集結場所がミュンヘン市街地の南であるという事だった。アフランシとトットは話し合い、ブロンを帰投させてメイン・エンジンを爆発させるプランを考えた。
第3章
- アフランシはウルとの会話で、マハという組織がひどく情緒的なものに支配されているのではないかと思いついた。それはビジャンがワーグナー好きという噂も冗談ではなく、本当のこと、いや全てといっていいのかもしれないと繋げた。スペース・コロニーに育ったスペースノイドは、地球に対する思い入れが異常だが、ホンコン・マハはそうではない、現実的で功利的だ。そして、ビジャンが期待するほど、組織的に厚くも強力でもない。ただ、ギッズ・ギースが出来すぎたマン・マシーンだったと帰結した。この推測が間違っていなければ、ビジャン・マハを潰すだけで、今回のマハの行動そのものを壊滅すると思えた。目の前の事態を潰せば、地球連邦政府の一部が地球に再移住するなどということもない。単純明快な論理で、ビジャン・マハの弱点も浮き彫りになって、アフランシは興奮した。アフランシは、ビジャンのエモーショナルな発想を突く戦術を考えようと取り掛かるが、左腕を失ったゾーリン・ソールに乗ってジョーが無断で出撃していった。
- ウルの尋問の時に立ち会っていたジョーは、クリシュナの話を聞いて彼女を探しに飛び出していった。ジョーを探しに、メッサーは鹵獲したブロン・テクスターに乗って出撃する。アフランシは各エア・フォースに直衛のマン・マシーンを一機ずつ付けて移動。それ以外のマン・マシーンは自分のガイア・ギアに随行するよう命令した。
- ジョーの乗ったゾーリン・ソールは、メタトロンの制式機種ではないため、整備が完璧でない状態のまま運用され酷使されてきたから、機体の振動がかなり激しかった。ジョーは小屋に住んでいる不法居住者の老人と中年夫婦にクリシュナの写真を見せて彼女を預かるよう頼んだ。
第4章
- 山岳地帯でマハの敵部隊と遭遇したアフランシは、フライト・フォームのままガイア・ギアを突進させる。敵からのミサイルの弾幕が前方空域に壁を形成し、それはなまじの数ではない。アフランシは、後続のメッサーのブロン・テクスターや同僚の七機のドハディのためにバリアーを形成しなければならなかった。メッサーは前方に突出し始めると、それだけアフランシは彼が何をしようとしているか分かり、ジグザグのコースを録りながら、ブロンの前方にバリアーになるようミサイルを連射した。
- メッサーは、ウルが使ったままの敵味方識別コードを使用しているブロンを使って、敵の艦艇に突撃をかけるつもりだった。眼の前に迫る艦艇はホンコン・マハの物だったから、コンピューターに艦艇の識別を拒否されてしまう。メッサーはホンコンの動きをキャッチ出来なかった自分の組織の脆弱さを痛感したが、戻ればやられるので離脱して、ガウッサ群の中に機体を放り込んでいった。一瞬、ウルのブロンだと誤認された事で、メッサーは付け入ることが出来た。ミサイルとビームを連射すると、ガウッサの核融合炉は爆発の渦を起こし、その爆発に巻き込まれた所属不明巻は、よろめくように数百m下の山岳地帯に沈没して第二の核融合炉の爆発が誘発。衝撃波は山塊を覆い、数千どの高熱で地を焼いた。アフランシは退避して、キノコ雲を数千m上空から見下ろしながら、感知される『気』からアルプス超えをしてきた迎撃してきたマン・マシーン、ギッズ・ギースを識別した。ギッズを中央に配置してガウッサが編隊を組んだものが三編隊と一つ。味方のドハディは減ってきているので、戦力差は四倍以上あった。アフランシはメッサーに後退するよう命令するが、上空から他の味方の『気』を感じた。マザー・メタトロンからの第三波だった。
- 戦闘のギッズ・ギースのパイロットジャンウェン・フーは上空から接近するメタトロン援軍と水平近くから白兵戦に持ちこもうとするアフランシの部隊に戸惑った。その上コイターベイまで撃沈された。メタトロンごとき私兵の集団に頭を抑えられるのは許せなかったので、ジャンのギッズはメタトロンの第三波の十数機のマン・マシーンの前衛と交戦に入っていった。ジャンは、ガイアスからガイア・ギアとすれ違った時と同じようなプレッシャーを感じていた。数回のビームを直撃させたが、バリアーに阻止されたようだった。
第5章
- ウルから離れたクリシュナは、肉体が衰弱していた。だから、パンケーキは半分も食べられずシュラフにドッと身を横にしていった。一人当てもなく原野と森を歩き回って、不法居住者の多い地域を彷徨っても人に出会わなかったクリシュナはよほど運が悪かった。だから、ゾーリン・ソールの飛行音が聞こえるとそれにすがりつこうとした。意外と早くゾーリン・ソールが接近してきたが、ジョーはクリシュナにとって一番来てほしくない相手だった。全身が羞恥心で満たされて、硬直した。ジョーはなにか別のものを求め続けたクリシュナが意識して拒否してきた青年で、ひと目見た時から努力しなくても、この男ならいつでも相手にしてくれると分かっていた。クリシュナの魂は羞恥した。ジョーはクリシュナの硬直したからだを包んで柔らかくしてくれたが、クリシュナは嗚咽することも出来ず、また寝入ってしまった。クリシュナに食べ物をくれたマリーン・ソーと名乗る人は性別も分からない。
- マリーンと名乗った人は、メタトロンの第三波の掩護部隊の隊長、ブノア・ロジャックのガイアスのフロッピーを拾って、ジョーに届けた。
- フロッピーには、ブノアの日記で、アフランシを暗殺する命令が出されているということが散文的に書かれていた。しかし、ブノアもそんなことができるかどうか悩んでいた。マリーンは身分を明かした、彼女はエヴァリー・キー、アフランシと島で暮らしていた女性である。この女ががアフランシの女か、その納得はクリシュナに絶対的なもので、神を見る思いだった。
第6章
- ベネチア湾の東北にあるトリエステ湾を入った北の産業都市モンファルコネでは、クロスハンゼン・スティンスリード達がアフランシ部隊の前線基地を設営することを任務にして、隠してあった輸送船を移送していた。
- ミュンヘンの方位から直視されないよう、アルプスの山並を遮蔽物にするようにしてゾーリン・ソールは低空で飛行していた。
第7章
- アルプスの山並をトレースするようにして飛行するウルのギッズ・ギースは、ベチネア湾を望む空域に入って、索敵行動に入っていた。そして、地上走行をするゾーリン・ソールらしい敵影を追った。片腕を失って、もう片方の腕でクリシュナの乗っていたワゴンを運ぶゾーリン・ソールは戦闘能力はほとんどない機体だった。あるとすれば、運だけが戦闘能力。石造りの建物の壁一枚でゾーリン・ソールとギッズ・ギーズは対峙した。エンジンをかけながら建物の外壁を破壊した為、初動が遅くなったギッズは殴りかかれはしても、ウルは実戦を経験したパイロットであるから、肉を斬らせて骨を斬る間合いは把握していたので、ジョー機のコックピットを撃ち抜く隙を与えていた。体当たりをかけたゾーリン・ソールはコックピットを焼かれ、エンジンを停止した。そして、右腕はすっと伸びてから横一直線に膠着してしまった。運がウルに傾いたから、ジョーを仕留められただけであって、そうでなければウルは武器らしいものを持たないゾーリン・ソールにやられていたのもかもしれなかった。丸腰のゾーリン・ソールの勢いには、異常な強さというよりも、人の持つ覇気そのものがあった。ウルはその勢いがなまじのゲリラではないと、全身を震わせた。
- ジョーは、死んだ。人型のゴミと化したゾーリン・ソールから数百m離れ路地で停車しているエヴァリーの車でも、それは分かった。ウルのギッズ・ギースは、ビーム・ライフルを車に突きつけて、外に出てくるよう勧告した。ウルに名前を聞かれたエヴァリーは、ヴァージニア・リーと偽名を答えたが、ウルの背後からクリシュナがウソを言うなとエヴァリーの本名を叫んだ。
- クリシュナ自身、なぜ悲鳴を上げたのか分からなかった。ジョーの死を報らされて動転したのではなく、自分だけが不幸で、エヴァリーだけが無事に地球を半周して、アフランシに会えるのかも知れないという、自分との格差に嫉妬したのだった。ウルはエヴァリーの名前を聞いて、アフランシの愛人かと尋ねるが、エヴァリーは妻ですと即答した。クリシュナは、教えるつもりじゃなかったと号泣するが、エヴァリーは応えない。ウルはクリシュナを哀れな少女だと軽蔑を含んだ笑いを浮かべるが、エヴァリーはそんなウルに対して理由のはっきりしない怒りを感じた。ウルはエヴァリーの鳩尾に拳を沈めて、彼女を気絶させた。ウルは、クリシュナに向かって、アフランシにエヴァリーを捕虜にしたと伝えるよう行ってその場を離れた。
第8章
- トリエステ湾の北に、かつての産業都市モンファルコネがある。そこにアフランシ部隊の指揮所があった。ブノア指揮の第三波の全マン・マシーンはブノア小隊を残し全て発進した。
- アフランシは、アルプス越えをしてミュンヘン爆撃を見せかけた作戦を部隊全員に説明した後、改めてワーグナーとバイエルンという土地の関係について勉強をしていた。ビジャンがマハの艦隊を地球に降下させたのは、ただ単に、ノイシュヴァンシュタイン城で、ワーグナーを聞くことだけを目的にしていたと想像した。平原都市であるミュンヘンで始まる決戦は数が物をいう。アフランシ部隊は圧倒的に不利である。しかし部隊が、ノイシュヴァンシュタイン城の方位に移動すれば、城を脅かされる事を恐れたビジャンは戦力を二分することをためらわないだろう。
- ビジャンの性癖を利用した作戦が了解され、マン・マシーン、エア・フォースの配置、集結場所が決定された。
第9章
- クリシュナはアフランシ達に合流して、エヴァリーがウルに連れて行かれた事を伝えた。アフランシ達は前線基地に自爆装置を起動して、後にした。証拠隠滅のために建物は爆破されたが、周囲の林には延焼することはなかった。
- ホンコン・マハのコイリューは、コイターベイの残していったギッズ・ギース十機弱を前衛として、出撃した。アフランシ部隊はアルプス山脈上で補足されて、大した時間は経っていない。これをアルプス山塊の北方で迎撃するというのである。ダーゴルは、捕虜にしたエヴァリーをマハ・ゲイジスに搭乗させた。
- ビジャンの手元に残った艦艇はマハ・ゲイジスを含めて三隻なのだが、第三波以降は支掩されていないアフランシの戦力と比較して、三倍以上の戦力に相当していた。地上には二十を超えるビューシング・ナッグも配備してあって、反連邦政府運動のゲリラなどには十分過ぎる戦力だった。
- 第二尋問室に収容されたエヴァリーを見て、ビジャンは失望していた。自分を悩ましている大将の女であるなら納得できる女であってほしいのだが、エヴァリーは小娘にしか見えなかった。ビジャンは+4までの薬物を使って虚ろなエヴァリーを、職権を濫用して部下に裸にさせた。エヴァリーの肉体は、女性そのもののしなやかさを見せながらも、生きていく上で必要な筋肉はその機能を十分に果たすであろう、という健やかさを見せ輝いてた。生命の宿る肉体、もしくは胎児を孕んだら確実に守りきるだろうと予感させる若さに張り詰められている生体。それをビジャンを美しいと感じた。
- ノイシュヴァンシュタイン城を保全しなければならないという命題は、ビジャンにとっては絶対的な要素だった。ビジャンはその事を憂いていたが、そのビジャンの横顔を凝視するウルは、ビジャンに厭がらせを考える。戦場の趨勢にかまけてノイシュヴァンシュタイン城が破壊されて、その時のビジャンの落胆を楽しもうと思うのだ。ウルは思いつきでビジャンを失望させることを行う良い餌になると考えて、エヴァリーを連れて行った。
- マハ・ゲイジスは、最大戦闘速度に達して、先に出撃したコイリューのマン・マシーン部隊が形成している戦闘空域に接触しようとしていた。ウルはエヴァリーを乗せて、ギッズ・ギースで出撃する。
第10章
- クリシュナの問題で、アフランの出撃が遅れたためにメッサーとレエの戦闘小隊は先行して、ブノア達が形成した第一の戦線の左翼に展開して、第二戦線を構成した。ウルの戦闘小隊はメッサーのブロン・テクスターを中核にした編隊と正面から接触した。改修しすぎたブロン・テクスターは機械的に左回りが遅くなっていた。そんな弱点からくる動きを先読みしていた元のパイロットであるウルは、ビーム・ライフルを一射して撃墜した。核融合炉が刺激されて、ブロン・テクスターから発生した灼熱の火球は、オーストリア湖、プランシーの水を蒸発させて、周囲の森林の梢を焼いて、ギッズ・ギースを水平に弾き飛ばした。
- ビジャンは、アフランシの部隊をバイエルンに入れないように、全マンマシーンと艦艇はアマガウアー・アルプスの線を越えて、殲滅するよう命令した。しかし、この決断によって、ビジャンは自らの墓穴を掘ることになった。作戦は、敵味方の戦力の事情によって変更されたのではなく、彼が憧れるノイシュヴァンシュタイン城でワーグナーを聞く為である。物理的な戦力の移動によって決定される戦場の原則(ルーティン)を無視したものは、それを喚起した側が自滅するのは理の当然だった。ビジャンは、部下からホンコン・マハのジャン達に思う通りに行動させるほうが適切だと進言されたが、その最後の適切な忠告をも却下した。ジャン機を含めた三機のギッズ・ギースを中心にして、左右に散開していたコイリューのマン・マシーン部隊はアマガウアーの前線ラインを超えて、プランしー湖の線上に次の前線を構築すべく集結していった。その動きを冷静にブノアは観察していた。
- 戦場でアフランシは、エヴァリーの『気』に似たものを錯綜する戦場の空域に感知して、緊張していた。フライング・フォームのガイア・ギアは加速をかけて、第二の戦線に突進していった。敵味方が接触して、無数の閃光をあげる空域を、高速下でミノフスキー・バリアーを展開するガイア・ギアはあたかも光の鳥のように見えた。ガイア・ギアから発した閃光の筋は、マハ・ゲイジスの前衛に位置するマン・マシーンの部隊を取り込むようにして、マン・マシーンの手にした兵器から発するビームは、ガイア・ギアのバリアーと干渉して爆発的な干渉波を咲かせた。その衝撃で自爆するマン・マシーン、核融合炉の爆発がまた起こり、アルプス山塊は灼熱の中に、地表を大地の殻から蒸発させていった。煉獄から地獄への道が地に開く。核爆発の閃光の中、ブノアは三隻の艦艇を捉えていた。ブノアはこの期を逃すまいと焦った。そのターゲットの背後では、まだ核爆発の渦が荒れ狂っていた。
第11章
- ブノア達の戦闘小隊が、ビジャンの艦隊に狙いをつけていた。マハ・ゲイジスの左前に位置したコイリューは艦艇から火を吹き、撃沈された。ビジャンの乗ったマハ・ゲイジスはその特異な艦型ゆえに崩れると酷く脆く、メイン核融合炉に火がつくこともなく、ブリッジそのものが火に包まれると、ブリッジを構成する外板そのものが爆発的に四方に散っていった。二艦の核融合炉の爆発は、山肌に伏せて攻撃を敢行したブノア部隊をも焼いた。人の手によって一度開かれた地獄の火は、プランシー湖を中心にした盆地そのものを巨大な溶鉱炉にして、地上に灼熱地獄を現出させた。アフランシは高空に飛翔させたガイア・ギアを、核融合爆発の巨大なキノコ雲に降下させながら、離脱しようとしているマハのマン・マシーンを、メイン・エンジンを誘爆させないよう撃破していった。
- 爆圧の吹き荒れる中、レエはガイア・ギアが射ちもらした敵機を補足して、撃破していった。ジャンのギッズ・ギースがビーム・サーベルで白兵戦を仕掛けてくる。レエ機はコックピット内に敵のビーム攻撃による損傷が走って、コックピットを構成する構造材の溶解した破片がレエを襲った。半秒ビームの接触が続けば、レエは即死していたが、アフランシはジャン機を狙撃して救助した。レエはパイロット・スーツによって焼け爛れた金属から守られていたが、数箇所に裂傷と火傷を負っていた。
- 傷付いたレエ機は地を這うように飛行したから、ウルのギッズ・ギースと接触してしまう。ビームがレエ機の下半身に直撃して、コントロールを失った機体は、レエの意思に反して左に流れる山田の斜面に機体をぶつけながら、構造物の石壁にぶつかって、停止した。山を這うように超えてきたレエ機に目を向けたウルは間違っていた。ガイア・ギアが上空から現れたのだ。ミノフスキー・バリアーを最大に、ミサイルとビームの連射を続けるガイア・ギアを正面から迎え入れるように、ギッズ・ギースは迎撃した。ビームが交錯して見えた刹那、機体を前のめりにしたガイア・ギアは、ウルの視界の中で爆発した。ガイア・ギアが爆発したと見えた空域から、別の影が現れて、コンマなん秒という間に、その影がビームのシャワーをウル機に浴びせて、ウルの意識も肉体も溶解して魂も霧消させた。
- ガイア・ギアの本体はウルの弾幕を、フライング・フォームを形成するバック・ブロックに受け、それが爆発する隙に切り離して、ウル機を狙撃したのだった。
第12章
- レエ機は、ノイヴァンシュタイン城の正面に当たる屋根を破壊して、前庭に不時着していた。バルコニーに立ってなにか叫んでいるレエに、アフランシは近寄った。レエはエヴァリーを見つけて、アフランシに彼女が向こうにいることを知らせた。
- ノイヴァンシュタイン城の玉座の間では、アフランシがレエをサバイバル・ケースで治療していた。レエは自分がもう保たないと分かっていたため、治療を止めさせ、台座の上で眠るエヴァリーの元へアフランシを送り出した。アフランシとエヴァリー二人の恋人たちは熱い抱擁に身を任せ、二人の鼓動は共鳴し合った。
- バイエルンの地から、ガイア・ギアの持つ最後の燃料を使い、アフランシとエヴァリーはイギリスへ渡った。アイリッシュ海を渡り終えた所で、ガイア・ギアは灰色の海へ投棄された。そして、大西洋を望める所までは行きたいという思いだけで、徒歩でエールの地を横断した。大西洋になだれ込む断崖に立った時、二人の旅は終わった。少し東に戻り、不法居住者の小さな集落で、二人は住まわせてもらった。アフランシの子供を身籠ったエヴァリーは妊娠6ヶ月。「……ミランダ、勘弁してくれっ!」それは、唯一アフランシがエヴァリーに内緒にしている口癖だった。
連載
- CHAPTER.1 「ON THE BEACH」
- CHAPTER.2 「SEPARATES WAY」
- CHAPTER.3 「語り継ぐ者」
- CHAPTER.4 「SEA JACK」
- CHAPTER.5 「火つけ」
- CHAPTER.6 「ジーク・ジオン」
- CHAPTER.7 「サヨナラ」
- CHAPTER.8 「海と陸を背に」
- CHAPTER.9 「イナーシャル・フライト」
- CHAPTER.10 「クリシュナ・パンデント」
- CHAPTER.11 「闇のモノローグ」
- CHAPTER.12 「ウル・ウリアン」
- CHAPTER.13 「グレンツェ・フィール」
- CHAPTER.14 「星のない男」
- CHAPTER.15 「アローン・ランナウェイ」
- CHAPTER.16 「釈放」
- CHAPTER.17 「ウルの仕掛け」
- CHAPTER.18 「トイレの底」
- CHAPTER.19 「マン・マシーン」
- CHAPTER.20 「セイ・シャア」
- CHAPTER.21 「マスターベーション」
- CHAPTER.22 「三十一の二乗」
- CHAPTER.23 「シャア閣下」
- CHAPTER.24 「メタトロン」
- CHAPTER.25 「インプレッション」
- CHAPTER.26 「フォールイントラップ」
- CHAPTER.27 「レスキュー」
- CHAPTER.28 「メタロトン・スペース」
- CHAPTER.29 「アフランシの周辺」
- CHAPTER.30 「ガイアの前」
- CHAPTER.31 「地球光の中」
- CHAPTER.32 「カミング・イン」
- CHAPTER.33 「コントラディクト」
- CHAPTER.34 「ミール・タイム」
- CHAPTER.35 「レエ・セイアス」
- CHAPTER.36 「ブレイク アウェイ アンド キャッチ」
- CHAPTER.37 「アカマデイト 収容」
- CHAPTER.38 「地球侵略」
- CHAPTER.39 「フォーリン・ラブ」
- CHAPTER.40 「リエージュのジョー」
- CHAPTER.41 「居酒屋で」
- CHAPTER.42 「クロス・ゲーム」
- CHAPTER.43 「敗北の色 夜の色」
- CHAPTER.44 「ハッシャバイ」
- CHAPTER.45 「渦中の痛み」
- CHAPTER.46 「ステップ1」
- CHAPTER.47 「シャドー イン バック」
- CHAPTER.48 「ギッズ・ギース」
- CHAPTER.49 「スタバン・アタック」
- CHAPTER.50 「プリズナー」
- CHAPTER.51 「ウルの挑発」
- CHAPTER.52 「ビフォーコンタクト」
- CHAPTER.53 「フゥ アー ユゥ?」
- CHAPTER.54 「コンプレックス・クライ」
- CHAPTER.55 「エヴァリーズ・リング」
- 最終回 「ペーパー・キャッスル」
文庫
- 第1巻
- 第1章 オン・ザ・ビーチ
- 第2章 セパレーツ・ウェイ
- 第3章 語り継ぐ者
- 第4章 シー・ジャック
- 第5章 火つけ
- 第6章 ジーク・ジオンの遺産
- 第7章 サヨナラ
- 第8章 海と陸を背に
- 第9章 イナーシャル・フライト
- 第10章 クリシュナ・パンデント
- 第11章 闇のモノローグ
- 第12章 ウル・ウリアン
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- 第2巻
- 第1章 グレンツェ・フィール
- 第2章 星のない男
- 第3章 アローン・ランナウェイ
- 第4章 釈放
- 第5章 ウルの仕掛け
- 第6章 トイレの底
- 第7章 ファー・チェイス
- 第8章 セイ・シャア
- 第9章 マスターベーション
- 第10章 三十一の二乗
- 第11章 閣下
- 第12章 メタトロン
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- 第3巻
- 第1章 インプレッション
- 第2章 フォール イン トラップ
- 第3章 レスキュー
- 第4章 メタトロン・スペース
- 第5章 アフランシの周辺
- 第6章 ガイアの前
- 第7章 地球光の中
- 第8章 カミング・イン
- 第9章 コントラディクト
- 第10章 ミール・タイム
- 第11章 レエ・セイアス
- 第12章 ブレイク アウェイ&キャッチ
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- 第4巻
- 第1章 アカマデイト
- 第2章 地球侵略
- 第3章 フォーリン・ラブ
- 第4章 リェージュのジョー
- 第5章 居酒屋で
- 第6章 クロス・ゲーム
- 第7章 敗北の色夜の色
- 第8章 ハッシャバイ
- 第9章 ペイシェント
- 第10章 ファースト・ステップ
- 第11章 シャドー イン バック
- 第12章 ギッズ・ギース
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- 第5巻
- 第1章 スタバン・アタック
- 第2章 プリズナー
- 第3章 挑発と倦怠と
- 第4章 ビフォー・コンタクト
- 第5章 アフター ザ スリープ
- 第6章 ニア ザ アクト
- 第7章 コンプレックス・クライ
- 第8章 ワーグナーの誘惑
- 第9章 エヴァリーズ・リング
- 第10章 ファイティング イン エコー
- 第11章 オール イン コクピット
- 第12章 ペーパー・キャッスルから[注 6]
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- ニュータイプ
- ニュータイプの能力には、あくまで個人に帰結するという問題がある。ニュータイプになる方法というのは他人には伝えられず、あくまでも個として習得しなければならないもので、そのやり方を組織に敷衍できるものではなかった。
- 作中でマハのスタッフであるウル・ウリアンは、「スペース・コロニーという人口環境の温室は人を鍛えず、そこでのレジャーや引退後の生活が楽しみなどという者は動物として退化している」「性の乱脈に警鐘を鳴らしたAIDSの治療法が開発されてから人類は本当に自由になり、混血は人を美しくしたが、その結果人類は何をやっていいのかわからなくなり、趣味の自殺まで流行るようになってしまった。これは自分たちの環境が汚染されている証拠である」と断じ、ニュータイプとは「それを乗り越える理性を持ち、死に至るまで幸福でいられる人」「イエス・キリストのようであっても十字架にかけられることなくキリストであり続けられる存在」、オールドタイプとは「個人のエゴを押し通すことが正義だと信じて平気で人間同士の関係を分断する人々」と規定する。そして「ニュータイプになるには、現在の問題はどこにあるのかを見極めて理性と想像力を鍛えながら夾雑物を排除する訓練をするしかない」と結論付けた。
- シムナウ・アバーンにマハ内でニュータイプだと噂されているという話を振られたウル・ウリアンは、「ニュータイプという呼称は皆が自分を識別するための呼び方にすぎず、自分は多少能力があって勘が良いだけの人間。マハ以外では嫌われている自分のような者が真のニュータイプであるはずがない」と否定している。
- 実力を認めたというケラン・ミードから「ニュータイプというものがいるならそれはあんたじゃないかな」と言われたアフランシは、用心深く「それは面白いことではないな」と答えた。
- エレカ
- 電気自動車のこと。またこの時代はバイクもほとんど電気式となっており、ガソリンエンジンの物は趣味性が強く、非常に稀。
- スペース・コロニー
- 200億を超える人が住む人類の新しい天地。そのおかげで人類はまだ地球圏に住んでいられる。直径三キロ余、長さ三二キロの巨大な円筒状をしており、円筒の下の方にせり出した巨大な二枚の鏡がゆっくりと右へ回転運動を行い、円筒内部に太陽光を取り入れている。
- コロニーのキャパシティを超えないよう住民の人口やその体重までチェックする必要があり、すべてコンピューターに管理されている。
- 円筒状のコロニーのシリンダーは内部に疑似重力を発生するために回転して遠心力を発生させている。シリンダーの中心部分は無重力となっており、宇宙船が航行できる。無重力区で車が走行する場合、事故が起こらないようガイド・レールの上を走るシステムが採用されている。
- エレベーター・ターミナルは直径400m程の円筒の内側面をフロアーにした区画となっている。
- コロニーのセンター・コアに繋がるシリンダー内の両端部分は中央から周囲のすそ野にかけて土砂を積み上げた1500mの傾斜となっており、地上でいう山に相当するマウンテンブロック(山部)と呼ばれている。人々はそこで登山やキャンピングを楽しみ、スキー場のゲレンデなどとして活用している。またその広大なスロープを利用して果実園、牧草地が作られている。自然らしい景観を残すのが人工的に内部が区画されているスペース・コロニー建設の不文律となっている。
- シリンダー内側面は縦に六等分され、人が住む居住区画と太陽光を取り入れるために外壁まで透明の強化プラスチックで構成された窓が交互に設置されている。一つの居住区は幅が1km半ほどで長さが30km近く。一つのシリンダーに三区画あって、旧世紀時代の大都市規模の人口密度を誇っている。透明な窓はコロニー居住者達に『河』と呼ばれ、数本の橋がかかって窓を挟んで隣り合う居住区同士をつないでいる。しかし、日中は差し込む太陽光で光の河になってしまうので、河と居住区の間に林を造成して下からの光を意識させないような努力が払われている。
- コロニー内壁は構造自体頑丈であるが、その上には数mの土があって建物はその上に立っており、たとえコロニー内で建物を半壊させるほどの爆発があっても、その『地面』を構成する構造材の底部まで損傷を与えることはないとされている。コロニーの外壁と内壁の居住区画を構成する『地面』の間の隙間には、通常は立ち入れないコロニー補修用の監視通路や各種の点検通路がある。
- 居住区には建設当初から緊急避難用のシェルターが設置されており、コロニー内の気密が維持されないような場合に利用される。その三重ハッチは老人や子供であっても手順通りに行えば開けられるような簡単な物となっている。さらに宇宙に出られるようエア・ロックも装備されている。しかし、コロニー時代が一世紀も過ぎると、シェルターを使うことなどありえないという常識が蔓延し、周りに物などが置かれてすぐには使えない状態のものも多い。
- コロニー内のゴミ処理は徹底的な再処理を予定されており、ゴミの全ては街の地下に相当するフロアーの下に流し込まれ処理されている。
- コロニー内壁・外壁にリニア・トレィンが整備されており、外壁のものは「メトロ」と呼ばれてる。
- コロニーへの隕石や漂流物による衝突事故は日常茶飯事であるため、直径数十メートル規模の穴が開いたとしても簡単に塞いでしまう。
- コロニー内の天候は予測不可能に近いものに設定されている。ただしそのデータはコンピュータに記憶されたものであり、決定的な打撃を与える気象状況は設定されていないし、建前上は予測不能だが闇で天気予報が売り出されてもいる。
- ダミー(ダミーバルーン)
- 柔軟で強度のあるプラスチック皮膜の風船。宇宙船やマン・マシーンが宇宙を航行する場合の進路の掃海や、戦闘中の囮として使用される。
- 旧世紀時代から無数の人工衛星などの宇宙ゴミの掃海作業は続けられていたが、完全に行うことはできない。そのために防御用のダミーが必要になる。
- 宇宙を高速で移動する際、空間に漂う小隕石やコロニーの残骸などの宇宙ゴミにぶつかると大砲の直撃を受けるに等しいダメージを受けるため、進行方向にダミーを放出して機体を守る。衝突すればダミーは破れるが、同時に爆発してそれらを四散させることができる。
- 進行方向に向けて射出し、何かの物体に接触するかあらかじめ設定しておいた空域に達することで爆発して進路上の障害物を無くす。
- トリモチ
- 「トリモチ」とそのまま発音する。
- 宇宙船内などに噴射器が設置されていて、空気漏れが起こると自動的にトリモチが噴射される。空気の流れに乗って空気漏れしている部分に接触すると硬化して穴を塞ぐ。
- ノーマルスーツ
- 人間が着用する宇宙服のこと。ノーマルスーツは一般用、パイロットスーツはマン・マシーンのパイロットなどが着用する戦闘用のもの。
- それ自体が小さな宇宙船のようなもので、着用した人間の生命を維持するためにいろいろな機器が組み込まれている。
- バック・パックには酸素固形剤が装填されており、酸素が無くなれば取り出して交換する。真空を感知すると人間の意思とは関係なく強制的にバイザーを閉じるセンサーが備わっている。関節部分には形状記憶繊維が埋め込まれており、身体の動きをアシストしてくれる。オール・レンジの無線が装備されており、他人の息遣いまで聞こえてきて不快と感じることもあるが、危険なので無線を封鎖することは原則禁止されている。発汗スピードに合わせて汗を吸い取る機能がある。
- この時代のスーツは、単身でも一分もあれば着用することが出来、真空と放射線に対して完璧な防御性能を持っている。着用の際は前にある酸素バブル・アタッチメントとバック・パックにあるパイプを連結させ、バック・パックの上からヘルメットを装着する。
- 「ノーマルスーツは白でなければならない」という時代は既に遠い過去のものになっている。個性を消してしまいがちな装備であるため、人々はスーツに色々な記号を書き込んだり、色違いを着て個性を出すことを好んでいた。
- パイロット・スーツには腰部分にバーニアが装備されており、宇宙ではそれが最後の移動手段であり最も重要な装備となる。バーニアは高圧ガスを噴出してその反力で無重力状態で浮いている人を移動させるのだが、バーニアのノズルの圧力と方向をコントロールするには多少の練習を必要とする。
- マン・マシーン
- この世界で使われている大型の人型機械の総称。
- ミノフスキー粒子
- 対電波撹乱粒子のこと。ミノフスキー粒子の散布された空域ではレーダーが使えない。移動するマシーンは、レーダーの代わりに推力と方位の変動をコンピューターに演算させて、自機の位置を特定する。しかし、この方法は大気の変動でかなりの誤差が生じるため、実視ディスプレーを映し出すカメラの性能とパイロットの勘で補うしかない。攻撃ではホーミングミサイルが使用不能になる。通信は機体同士を触れ合わせて行なう接触回線か、直線上で回線が開かれるレーザー通信でしか行なえなくなる。しかし、電波干渉されるかどうかはミノフスキー粒子の量が問題であり、コロニー内のように大した距離がないか、電波干渉するほど残留していなければ、多少雑音が入っても音声を受信出来る。光波も乱れるため、ミノフスキー粒子が干渉したカメラの映像にはノイズが入り、至近距離でなければ正確な読み取りは難しくなる。
- 一年戦争
- ジオン公国が地球の政権にスペースノイド(宇宙移民者)の独立自治権を要求して、起こした独立戦争。
- コロニー公社
- スペース・コロニーの運営会社で、コロニーの保守・管理を行っている。宇宙に出るエアロックなども管理しており、許可のない人間が勝手に通過する事は出来ない。しかし実際は管理が甘く、暗証番号を入手したメタトロンのメンバーにも簡単に解除されている。
- ズィー・ジオン・オーガニゼーション/メタトロン
- ズィー・機関(オーガニゼーション)とも呼ばれ、のちにメタトロンと改名される。反地球連邦政府組織の一つ。
- 地球連邦軍
- この時代では軍機構が形骸化しており、実戦経験のない素人ばかりのただの職業提供集団に堕落している。連邦軍は事実上マハの管轄下に置かれ、軍の統率権は彼らが握っている。
- 地球連邦政府
- 地球とスペースコロニーに住む200億を超える人類を事実上支配している全人類を統合する政治組織。
- 人々が宇宙に住み慣れた結果、その居住空間との距離が地球連邦政府に対する関心を希薄なものにし、連邦政府を腐敗の温床にしてしまっている。
- 地球に住む人が宇宙に行くにはスペースシャトルに乗るしかないが、そのチケットを手に入れることが出来るのは、連邦政府を支える官僚機構に所属しているかその官僚と良好な関係を維持できる才覚を持った特権階級の者たちだけである。それ以外の者は不法滞在者を宇宙に強制送還するシャトル定期便[注 7]に乗せられるしかない。政府の役人は怠惰であり、そしてなぜか嫌がる者だけを選ぶ才能を持っているため、宇宙に上がりたい者が人狩りを担当する役人にピックアップされて宇宙に上がろうとすれば10年はかかるとのこと。
- 月軌道内には連邦の管轄下にあるコロニーなどの残骸が膨大にあるが、連邦政府も連邦軍も、そのすべてを完全に管理することは出来ておらず、その存在を把握しているのはコンピューターだけというのが現状。そのため、反連邦政府組織のズィー・ジオン・オーガニゼーションが政府に察知される事なく、残骸を使って基地を建設することが可能であった。
- ネオ・ジオン
- シャア・アズナブルがジオン公国消滅後に父ジオン・ズム・ダイクンの志を継ごうとして起こした組織。
- マハ
- 地球連邦政府警察機構特捜第十三課、俗称『人狩り局』
- 自然保護監視地区
- 地球連邦政府が設置した極めて特殊な環境保護区で実験地区。「自然の環境は人に何を与えるのか?」その命題を知るために、地球連邦政府はこのような実験地区を地球上にいくつも用意している。スペース・コロニーのような人工的な環境は人を鍛えるのか退廃に追い込むのか、まだ分かっておらず、それはスペースコロニーまで含めた全人類の問題であった。そのためには、比較資料となる逆のケースも温存しておかなければならず、このような実験区が作られた。
- アフランシの生まれ育った太平洋上の南の島もその一つに指定された実験区だった。彼がその島で育ったのはメタトロンの組織によって仕組まれたことだった。
- いかにも「自然」に見える自然環境は管理された不自然な環境だった。木造に見える島の家も、材料は全て強化プラスチックで、腐食せず古くもならない。また宇宙世紀も2世紀は過ぎているこの時代に、十数世紀も昔の時代のままの生活を送る島に普通の人間が住めるわけはなく、そこには作為があった。島に住んでいるのはすべて意図的に集められ、許されて住んでいる人々であった。
- 島から出るホンコンへの定期便にはインド人、ベトナム人、中国人といったアジア人だけでなく、白人もいれば黒人も中東の人々もいて、それこそが、この地区が地球上の実験の地域にされているという証拠であった。
- 地球
- 旧世紀、人類は人口120億を超えれば滅びると言われていたが、スペース・コロニーのおかげで200億を超えた現在も人類は地球圏に住んでいられる。
- 大気は汚染され切っており、南洋の保護区にある島でも8等星まで見える夜は珍しかった。
- 一般的には地球は人類を生んだ故郷として、その環境を再生させるためにそのままにしておくべき聖域だと考えられている。
- 人類は変質しており、スペースコロニー育ちの人間は地球への興味や関心を失い、その本物の自然に触れても気持ちが良いとは感じない。
- それでも人類が地球で誕生した以上、地球移住は人の本能をくすぐる部分があり、マハはそれを餌にして協力者を募っている。そして強権を発動して人の選別をして適当な数の人間による地球の管理を考えている。
- ヌーボ・パリ
- 旧パリの東方十数キロに位置する。
- かつてのパリはコロニー落としによって壊滅し、現在は湖となってパリ湖と呼ばれている。
- ホンコン
- 宇宙行きのシャトルが打ち上げられるため、世界中から人々が集まる大都市。地球と宇宙とをつなぐ港町として『聖域化』しており、そのような都市は他にも地球上にいくつかある。
- 宇宙世紀に入っても、旧世紀時代の香りを残した「香港」はそのまま残っていた。
- 世界中から種々様々な人が集まった人種のるつぼ。ホンコンで過ごしたことのある白人のミランダ・ハウがアジア人に対する無意識の偏見を認めた際、アフランシは「スペース・コロニー移民時代に歪められすぎた土地だから止むを得ない」と擁護している。
- 街の中心部から一歩離れると、地球に残された他の都市同様に様々な言語が飛び交うスラムと化していた。
- ヨーロッパ地区
- 地球の不法滞在者が最も多い場所と言われている。少しずつだが森林は再生しているものの、旧世紀のような都市生活のインフラやシステムは修復されていない。
- 現在、反地球連邦政府活動家の巣窟となっている。
- 白人発祥の地のため、連邦政府による白人逆移民計画の目的地となっている。
- 暗礁空域
- 月と地球の引力が均衡している空域。破壊されたスペース・コロニーの残骸と隕石の破片が浮遊している為、高速で航行するスペースシャトルには危険が伴う空域。
- サイド
- 数10キロの間隔を置いて百数十基(バンチ)のスペース・コロニーが定点される空域。
- ヘラス
- サイド2初期のスペース・コロニーで、サイド2建設時代にはベース・キャンプとなっていた。その名残りで、種々雑多な人種・民族が集まり、混沌としている。一つのコロニー行政府に対して単一の人種や民族、宗教で人を整理した方が行政面は上手く行くので、他のコロニーは移民の際にもっと人を選別して受け入れている。
- 収容人口を増やすことを目的に建設されたコロニーのため、街は極度に高層化した建造物で形成されている。そのため、現在ではコロニー全体がスラム化している。
- グレンツェはヘラスの街の一つで、クリシュナ・パンデントやメッサー・メットらが生まれ育ったところ。本来の名称はジャフールだが、メッサーら街のチンピラは「端っこ」という意味のグレンツェという名前で呼んでいる。道路だったところには勝手にテントやプラスチック板で仕切った店や部屋が増築され、エレカの窓を開ければ子供たちが盗みをしようと中に手を突っ込んでくるほど治安は悪い。
- カンタベリー・ゼノア通りはヘラス内でもっとも高級な店が立ち並ぶ通り。
- フォラーンはヘラスの森林公園などがあるエリア。公園の一方はコロニーのセンター・コアの山に続いている。有名なレストランなどがある高級な土地だが、コロニーでこのような場所を手に入れられるのは特権的な会社か階級に限られている。
小説を原作としたラジオドラマが、バンダイ・角川書店・文化放送の共同制作で文化放送開局40周年記念とAMステレオ放送開始に合わせて制作された。放送期間は1992年4月12日から10月4日まで、放送時間は毎週日曜23:30〜24:00[注 8]、話数は全26話。その後、「サウンドシアター ガイア・ギア」としてCDにまとめられ、全5巻で発売された。
ラジオドラマ版では物語の大筋の流れは原作とほぼ共通しているものの、細部の設定やラストなど異なる部分も多い。特に登場人物は性格など細かい部分の違いが多く、ラジオドラマにしか登場しないキャラクターもいる。
- オープニングテーマ「VOICE OF GAIA」
- 作詞:篠原仁志 / 作曲:前田克樹 / 編曲:根岸貴幸 / 唄:市川陽子
- エンディングテーマ「STAY WITH YOU〜星のように〜」
- 作詞:篠原仁志 / 作曲:前田克樹 / 編曲:根岸貴幸 / 唄:市川陽子
- 第1話 「シャア再び」
- 第2話 「宇宙の呼び声」[注 9]
- 第3話 「メモリー・クローン」
- 第4話 「ミランダ・ハウ」
- 第5話 「ウルの追跡」
- 第6話 「シャトル強奪」
- 第7話 「マザー・メタトロン」
- 第8話 「ヘラス潜入」
- 第9話 「囚われたアフランシ」
- 第10話 「ゾーリン・ソール」
- 第11話 「ランナウェイ」
- 第12話 「目覚め」
- 第13話 「マハ追撃命令」
- 第14話 「大気圏突入」
- 第15話 「季節風(ミストラル)」
- 第16話 「コンタクト」
- 第17話 「敗北」
- 第18話 「ダーゴルの野望」
- 第19話 「クリシュナの苦悩」
- 第20話 「ヌーボ・パリ」
- 第21話 「戦いの果て」
- 第22話 「ギッズ・ギース」
- 第23話 「ジャン・ウェン・フーの挑戦」
- 第24話 「バイエルンの風」
- 第25話 「エヴァリーの声」
- 第26話 「ペーパー・キャッスル」
- サウンドシアターガイア・ギアCD-1(1992年11月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- サウンドシアターガイア・ギアCD-2(1993年1月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- サウンドシアターガイア・ギアCD-3(1993年3月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- サウンドシアターガイア・ギアCD-4(1993年5月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- サウンドシアターガイア・ギアCD-5(1993年7月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- ガイア・ギア オリジナル・サウンドトラック Vol.1(1993年3月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- ガイア・ギア オリジナル・サウンドトラック Vol.2(1993年3月21日、発売:バンダイ・ミュージックエンタテインメント、販売:アポロン)
- 〈ANIMEX1200 Special〉(13) ニュータイプサーガ ガイア・ギア オリジナル・サウンドトラック Vol.1(2005年7月6日、コロムビアミュージックエンタテインメント)
- 〈ANIMEX1200 Special〉(14) ニュータイプサーガ ガイア・ギア オリジナル・サウンドトラック Vol.2(2005年7月6日、コロムビアミュージックエンタテインメント)
- ^ ラジオドラマでは宇宙世紀0203年と設定されており、年表などではこちらが採用されている。
- ^ 作中にモビルスーツは改修前のゾーリン・ソールと海岸で朽ち果てたギャプラン(文中の名前の最初が「ギャプ-」で深い緑色の機体という描写と挿絵イラストから)しか登場しない。
- ^ 当時はアニメの原作権の概念が希薄な時代で、珍しいことではなかった。
- ^ 結局、『ガンダム Gのレコンギスタ』はガンダムシリーズに組み込まれ、マン・マシーンはモビルスーツと改称された。
- ^ ゾーリン・ソールの回では「ガンダムシリーズ」との繋がりにも積極的に言及されている。
- ^ 文庫刊行にあたり加筆されている。
- ^ 古代の奴隷船のようなもので、貧しい者や地球連邦政府が地球にいてはいけないと決めた者を強制的にコロニーに送り込むシャトルである。
- ^ 選挙特番のため、日曜12:00〜12:30に放送された回がある。
- ^ CDレーベル面の表記は「宇宙の呼ぶ声」。
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U.C.0079 - 0083 |
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U.C.0084 - 0107 |
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U.C.0112 - 0169 |
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U.C.0203 - 0224 |
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総括 |
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