『シップ・オブ・メモリーズ-美の魔術-[注釈 1]』(Ship of Memories)は、オランダのプログレッシブ・ロック・バンド、フォーカスが1976年に発表したコンピレーション・アルバム。
フォーカスの2作目『ムーヴィング・ウェイブス』から5作目『ハンバーガー・コンチェルト』をプロデュースしたマイク・ヴァーノン(英語版)が、過去の未発表音源をまとめたアルバム。
サイド1の4曲とサイド2の「美の魔術」は、タイス・ファン・レール、ヤン・アッカーマン、ベルト・ライテル、ピエール・ファン・デル・リンデンの4名が『フォーカスIII』に続くアルバムを制作する為に、1973年5月にオックスフォードシャーのスタジオでヴァーノンと行ったセッションで録音された[2][注釈 2]。「美の魔術」は作曲、演奏ともファン・デル・リンデンが単独で行なった[2]。
「グライダー」は『ハンバーガー・コンチェルト』に続くアルバムの制作の際、1975年にブリュッセルのスタジオでファン・レール、アッカーマン、ライテルによりドラム・マシンを用いて録音された[注釈 3]。
「創造主は語る」は、ヴァン・レール、アッカーマン、マーティン・ドレスデン、ハンス・クルフェールによるデビュー・アルバムの制作中の1970年1月26日に録音された[2]。
「夜に燃える空」と「クラッカーズ」は、1975年6月の2度目の日本公演の後、ファン・デル・リンデンに代わってデヴィッド・ケンパーが参加して録音され[2]、アッカーマン在籍中の最後の楽曲となった。
本作の再発CDには、「悪魔の呪文」のアメリカ盤シングル・ヴァージョン[注釈 4]がボーナス・トラックとして追加された[5][6]。
アメリカの総合アルバム・チャートBillboard 200では163位を記録するが、フォーカスは本作を最後に、アメリカではヒットに恵まれなくなった[1]。
ベン・デイヴィーズはオールミュージックにおいて5点満点中2.5点を付け「ソングライティングの質に関しては決して最高ではないが、名手達の閃きは多くの場面で現れている」と評している[5]。
- Pの行進曲 - "P's March" (Thijs van Leer) - 4:49
- 信じがたき出来事 - "Can't Believe My Eyes" (Jan Akkerman) - 5:23
- フォーカスV - "Focus V" (T. van Leer) - 3:03
- ヴェスヴァイアス火山を抜けて - "Out of Vesuvius" (J. Akkerman, T. van Leer, Bert Ruiter, Pierre van der Linden) - 5:51
- グライダー - "Glider" (J. Akkerman) - 4:39
- 夜に燃える空 - "Red Sky at Night" (J. Akkerman, T. van Leer) - 5:51
- 創造主は語る - "Spoke the Lord Creator" (T. van Leer) - 2:33
- クラッカーズ - "Crackers" (J. Akkerman) - 2:43
- 美の魔術 - "Ship of Memories" (P. van der Linden) - 1:47
- 悪魔の呪文(USシングル・ヴァージョン) - "Hocus Pocus (US Single Version)" (J. Akkerman, T. van Leer) - 3:24
- タイス・ファン・レール – ハモンドオルガン、メロトロン、クラビネット、シンセサイザー、フルート、ボーカル
- ヤン・アッカーマン – ギター、エレクトリック・シタール
- ベルト・ライテル – ベース(#1, #2, #3, #4, #5, #8)
- ピエール・ファン・デル・リンデン – ドラムス(#1, #2, #3, #4, #5, #9)、ハーモニウム(#9)
- デヴィッド・ケンパー - ドラムス(#6, #8)
- ハンス・クルフェール – ドラムス(#7)
- マーティン・ドレスデン - ベース(#7)
- ^ ビクターエンタテインメントから発売された再発CD (VICP-61536 / 2001, VICP-64249 / 2008, VICP-70055 / 2009)の表記に準拠。日本初回盤LP (EMS-80881)のタイトルは『美の魔術』だった。
- ^ 結局、新作アルバムの制作は見送られて、代わりに、同じ月にロンドンのレインボウ・シアターで行われたコンサートを収録したライブ・アルバム『フォーカス・アット・ザ・レインボー』が発表された。
- ^ 後日、デヴィッド・ケンパーが参加して録音されて、新しいアルバム『マザー・フォーカス』のタイトル曲となった。
- ^ 1972年12月にファン・レール、アッカーマン、ファン・デル・リンデン、ライテルが、マイク・ヴァーノンをプロデューサーに迎えてロンドンで録音した。別名'Hocus Pocus II'として知られる。アメリカで、シングル用に短く編集された「悪魔の呪文」('Hocus Pocus')の裏面に収録され、1973年に発表された。
- Johnson, Peet (2015), Hocus Pocus: The Strife and Times of Rock's Dutch Masters, Tweed Press, ISBN 978-0-646-59727-0