『トム氏の優雅な生活』(Life with Tom、1953年11月21日)は「トムとジェリー」の短編作品のひとつ。
トムは自分のメールボックスを覗くが今日は何もなし。それに対してジェリーのメールボックスにはひとつの小包と一通の手紙が届いていた。
小包の中身が気になったトムは封を破ってみた。その中身は『Life with Tom(トム氏の優雅な生活)』という一冊の本だった。偶然流れてきたラジオのコマーシャルによると、この本はジェリーが著した全世界で大評判の小説らしい。トムの知らぬ間に、ジェリーは期待の新人作家として名を馳せていたのだ。トムは早速本の中身を拝見してやることにした。
「 | 『Life with Tom』 ジェリー・マウス著 この本をトム氏に捧ぐ。―――いなけりゃもっと良かったんだけど |
」 |
そんな前書きから始まるこの本に書いてあったことは「変な魚釣り」「台所戦争」「なかよし」に基づいた内容であり、いずれもトムにとっては屈辱的な内容のものばかりであった。
周りではスパイク・タイク親子やブッチをはじめトムの悪友たちが本を読んで大笑いしていたが、大衆の笑い者にされたトムにしてみれば、ただただ不愉快でしかなかった。トムは作者であるジェリーに抗議しに向かい、穴が開いて彼の身体を貫く程の強烈な一打を、ジェリーの脳天に目掛けて本で叩き付ける。
だが、最初に小包と一緒に届いた封筒には印税5万ドルの小切手が入っていた。ジェリーは同封された手紙をトムに読ませる。
「 | ジェリー様。印税として5万ドルの小切手を同封しました。また、総額の半分はご指示通り、ご親友のトム氏に支給致します | 」 |
出版社からの手紙が示す通り、中にはトム宛に2万5000ドルの小切手までもが同封されていた。ジェリーが印税を折半してくれたと知ったトムは態度を急変させ、穴の空いた本を読み、「この中のおかしな姿は俺」と言わんばかりに、自分で自分を指差しながら笑い声を上げる。ジェリーは、そんな「トム氏」の「現金」な姿をにこやかに見ていた。