ラウム(RAUM)は、トヨタ自動車が1997年5月から2011年10月まで販売していた1500ccクラスのセミトールワゴン型小型乗用車である。
本車が登場した平成9年時点においてこのクラス(いわゆるコンパクトカー)としては珍しく、左右のリヤドアにスライドドアを採用している[1]。このような車はその外観や形状、大きさから便宜的にハッチバックと呼ばれる場合があるが、ラウムのバックドアは右へ開く横開き式であってハッチではないため、ハッチバックには分類し難く、何方かと云えばレジャー・アクティビティ・ビークルの趣きが強い[2]。取扱いチャネルは、トヨタオート店(1998年8月にネッツトヨタ店、2004年5月にネッツ店に名称変更)で、車輌の製造はトヨタグループ会社のセントラル自動車(現・トヨタ自動車東日本宮城大衡工場)が行っていた。
ラインナップ体系が独特であり、標準仕様と複数のパッケージ仕様が用意されている[3]。
トヨタ・ラウム(初代) EXZ10/15型 | |
---|---|
![]() 前期型(1997年5月 - 1999年8月) | |
![]() 前期型 リア | |
概要 | |
製造国 |
![]() |
販売期間 | 1997年5月 - 2003年5月 |
ボディ | |
乗車定員 | 5人(「フラットデッキ」は4人) |
ボディタイプ |
5ドアセミトールワゴン[2] ※ルーフレール付はトールワゴン |
駆動方式 | FF/4WD |
パワートレイン | |
エンジン | 5E-FE型 1.5L 直4 DOHC |
変速機 | 油圧式4AT |
前 |
マクファーソンストラット式(全車フロント) トーションビーム式(FF車リヤ) トレーリングリンク車軸式(4WD車リヤ) |
後 |
マクファーソンストラット式(全車フロント) トーションビーム式(FF車リヤ) トレーリングリンク車軸式(4WD車リヤ) |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2520mm |
全長 | 4025mm |
全幅 | 1685mm |
全高 | 1535-1590mm |
車両重量 | 1090kg |
その他 | |
販売終了前月までの新車登録台数の累計 | 16万6855台[4] |
既存のスターレット、並びにターセル/コルサ/カローラII/サイノス(米国名:パセオ)の各種プラットフォームを母体に作られた新コンセプト車。この当時、トヨタが提唱していた『セダン・イノベーション』の一環として企画され、「乗る、使う、楽しむ」を具体化する「ヒューマン・フレンドリー・コンパクト」が開発テーマとなっている。当時のコンパクトカーとしては画期的なロングホイールベースを採用した。スライドドアを採用した2列シートのセミトールワゴンで、シンプルなフロント部と、卵型の縦長テールランプが特徴的なリア部とによる、やや丸みを帯びたシンプルなデザインであった。軽損傷時の修理費用の節減を図るため上下2分割バンパーを採用[5]。スライドドアの窓が固定式(はめ殺し)となることも珍しくなかった時代にもかかわらず、この車の後部スライドドアにはパワーウィンドウが採用されている。前席ドアはヒンジ取付角度を約7度ずらすことで床側より屋根側がより大きく開口する構造とし、乗降性に配慮した。
内装ではトヨタのコンパクトカーとしては初となる、オプティトロンメーターを採用し、オーディオ類もインパネ上部に配置するなどして扱いやすさを向上させている。コラムシフトの採用によりセンターコンソールが存在しないため、前後左右のウォークスルーが可能。
エンジンは1.5L・5E-FE型を搭載する。4WDも同じ型式のエンジンを積むが、馬力を落とす代わりに中・低回転域のトルクを向上させ、重量増に対応している。また、日本車としては初となる、電気式ブレーキアシストが搭載された[6]。
発売当初は標準仕様と、標準仕様から一部装備を省略・簡略化した「Eパッケージ」、標準仕様に電動格納式リモコンドアミラー、ワイヤレスドアロックリモートコントロール、オートエアコン&クリーンエアフィルターなどを追加した「Cパッケージ」、「Cパッケージ」の装備に加え、カラードルーフレールやカラードアウトサイドドアハンドルなどを追加した「Gパッケージ」の3種類のパッケージが用意されていた。
トヨタ・ラウム(2代目) NCZ20/25型 | |
---|---|
![]() 後期型(2006年12月 - 2011年10月) | |
![]() | |
概要 | |
製造国 |
![]() |
販売期間 | 2003年5月 - 2011年10月 |
設計統括 | 多田哲哉 |
ボディ | |
乗車定員 | 5人 |
ボディタイプ | 5ドアセミトールワゴン[2] |
駆動方式 | FF/4WD |
パワートレイン | |
エンジン | 1NZ-FE型 1.5L 直4 DOHC |
最高出力 |
2WD車:80kW(109PS)/6,000rpm 4WD車:77kW(105PS)/6,000rpm |
最大トルク |
2WD車:141N・m(14.4kgf・m)/4,200rpm 4WD車:138N・m(14.1kgf・m)/4,200rpm |
変速機 | 電子制御4AT(Super ECT) |
前 |
マクファーソンストラット式(全車フロント) トーコレクト機能付トーションビーム式(FF車リヤ) ラテラルロッド付4リンク式(4WD車リヤ) |
後 |
マクファーソンストラット式(全車フロント) トーコレクト機能付トーションビーム式(FF車リヤ) ラテラルロッド付4リンク式(4WD車リヤ) |
車両寸法 | |
ホイールベース | 2500mm |
全長 | 4045mm |
全幅 | 1690mm |
全高 | 1535mm(FF)/1545mm(4WD) |
車両重量 | 1150kg(FF)/1220kg(4WD) |
その他 | |
販売期間中の新車登録台数の累計 | 16万5571台[11] |
系譜 | |
後継 | トヨタ・スペイド |
2代目は「クルマ作りにおけるユニバーサルデザインの追求」を開発テーマとし、全てのユーザーに優しく、使用しやすい車にこだわるため「ユニバーサルデザイン評価指標[12]」のもと、「人と地球にやさしく、使って楽しい、次世代ビークル」として、今後のトヨタ車の向かうべき道を示唆するものだとした。
プラットフォームは左右非対称構造のためにラウム専用の新開発のもの(NBCプラットフォームが母体)となったが、エンジン・サスペンション等は初代ヴィッツ系と共用し、より車重のあるラウムに合わせてセッティングを変更している[13]。
衝突安全ボディGOAを発展させ、自車より重い車[14]との衝突時の乗員保護性能を向上(全方位コンパティビリティ設計)[15]、万一の歩行者との衝突時における対歩行者傷害軽減設計[16]を採用。同時に、乗員の居住性とドライバーの有効視界をも向上させた。
初代で採用された前席ドアの開口構造は2代目でも踏襲された。電気式ブレーキアシストは引き続き標準装備され、ABSはEBD付きのものに変更。今回より新たにVSC&TRCを "S Package" と "G Package" の2WD車にメーカーオプション設定とし、昼間光に近い色温度と大光量をもつディスチャージヘッドランプは "S Package" と "G Package" にメーカーオプション設定された[17]。初代の一部パッケージ装着車において選択できたツインムーンルーフとルーフレールは廃止された。全車にメーカーオプション設定となる純正オーディオ[18]は、ラウムの車内音響特性にあわせて各種パラメーターが校正されており、ワンボタンで聞き取りやすさを向上させるクリアーサウンドモードを備える(後に廃止)。
助手席側の前後ドアがピラーごと開く新設計の「パノラマオープンドア(センターピラー内蔵ドア)」とした事に伴い、助手席には背面大型アシストグリップ・簡易テーブル機能付のタンブルシートが採用された[19]。また、助手席側のスライドドアは標準仕様車を除きパワースライドタイプとなった。助手席タンブルシートの採用により、前後ウォークスルーとフルフラットシートは廃止された。そのかわりに、"S Package" と "G Package" の2WD車のリヤシートには、カップホルダー一体型センターアームレストを用意して快適性を高めるとともに、6:4分割式ダブルフォールディング機構を備えたことで、先代と比べ2名乗車時の積載性が飛躍的に向上している。
計器類は、マスターウォーニングを配した常時点灯式センターメーター[20]に加え、ステアリングホイール奥に警告灯や表示灯を集約・配置したエリアを設け、視覚的なわかりやすさを重視したものとなっている。また、メーター内照明のカラーやスピードメーターの数字フォントのサイズにも独自の調査結果が反映されている。センターメーター内にはデジタル電波時計を用意し、時刻合わせの手間を軽減。随所に配置されたアシストグリップや新採用の楕円形ステアリングホイール[21][22]、前述のパノラマオープンドアなどの装備により、乗降性と使い勝手が大きく改良されている。
エンジン・トランスミッションは同社初代bBと同じDI方式のBEAMS 1NZ-FE型VVT-iエンジンとロックアップ機構付電子制御4速AT(Super ECT)を組み合わせ10ps以上のパワーアップが行われ、日常良く使う中低速域の扱いやすさも向上。また、環境・燃費性能にも磨きをかけ「平成12年基準排出ガス75%低減レベル(☆☆☆)」を達成するとともに、2WD車は「平成22年度燃費基準」も先行してクリアした。
2代目では標準仕様と、標準仕様に助手席側パワースライドドア、タコメーター、電動格納式カラードドアミラーなどを装備した "C Package"、"C Package" にスマートドアロックリモートコントロールやIR(赤外線)センサー式オートエアコン、フレシール加工シート表皮などを追加し快適装備が充実した "G Package"、"C Package" にカラードルーフスポイラーや専用デザインエアロパーツ、15インチタイヤ+アルミホイール[23]などを追加、内装色をグレーに変更してスポーティースタイルに仕立てた "S Package" の3種類のパッケージ仕様となった。