ニトロソニウムイオン

ニトロソニウムイオン
識別情報
略称 NO(+)
CAS登録番号 14452-93-8
PubChem 84878
ChemSpider 76569?
ChEBI
Gmelin参照 456
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ニトロソニウムイオン (: nitrosonium ion) は、化学式 NO+ と表されるオキシカチオンである。ニトロシルカチオン(nitrosyl cation)と呼ばれることもある。窒素原子と酸素原子は結合次数3で共有結合しており、全体的に正電荷を帯びている。 このイオンは CON2等電子的である。 NO+は、NOClO4NOSO4H(正確には ONOSO2OH、すなわち混合酸無水物である)、NOBF4 (英語版のような塩として存在する。ClO4-BF4- との塩はアセトニトリルにわずかに溶ける。NOBF4 は、200-250 °C、0.01 mmHg (1.3 Pa) で昇華によって精製することができる。

NO+は酸性条件下、亜硝酸との平衡にある。ただし、亜硝酸は不安定であるため、NO+を発生させる目的には通常、亜硝酸塩亜硝酸エステルが用いられる。

HONO + H+ is in equilibrium with NO+ + H2O

化学的性質

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加水分解

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NO+ は、と直ちに反応して亜硝酸を生じる。

NOBF4 + H2O → HONO + HBF4

このために、NOBF4 は水または湿った空気から保護されなければならない。塩基との反応では亜硝酸塩が生じる。

NOBF4 + 2 NaOH → NaNO2 + NaBF4 + H2O

ジアゾ化剤

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ニトロソニウムとアニリンからジアゾニウム塩が生じる反応。

NO+ は、アリールアミン ArNH2 と反応してジアゾニウムイオン ArN2+ を与える。結果として生じるジアゾニオ基は、アミノ基と違い、いろいろな求核剤によって容易に脱離反応を起こす。

酸化剤

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NO+、例えば NOBF4 は強い酸化剤である[1]

  • ジクロロメタン中の NO+ に対する Fe(Cp)2/Fe(Cp)2+ 系の酸化還元電位は1.00 Vである (1.46-1.48 V vs SCE)。
  • アセトニトリル中の NO+ に対する Fe(Cp)2/Fe(Cp)2+ 系の酸化還元電位は0.87 Vである (1.25-1.27 V vs SCE)。

気体の副生物である NO は、反応で使用する窒素気流で取り除くことができるため、NOBF4 は便利な酸化剤である。NO は空気と接触すると直ちに NO2 となり、これが取り除かれないと余計な反応を引き起こすことがある。NO2 は、その特徴的なオレンジ色のためにすぐに発見できる。

アレーンのニトロシル化

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電子豊富なアレーンは、NOBF4 によってニトロシル化英語版ニトロソ化とも)される[2]。例としてアニソールのニトロシル化が挙げられる。

CH3OC6H5 + NOBF4 → CH3OC6H4-4-NO + HBF4

ニトロソニウムイオン NO+ は、ニトロ化反応の活性種であるニトロニウムイオン NO2+ と混同される場合がある。しかし、これらは全く異なる化学種である。前者が弱酸(亜硝酸)、後者が強酸(硝酸)に由来するという事実によって予想されるように、NO2+は NO+より強力な求電子剤である。

NO 錯体の原料

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NOBF4 はいくつかの金属カルボニルと反応して、対応する金属ニトロシルを与える[3]。NO+ による配位子置換反応の際は、空気による酸化に注意しなければならない。

(C6Et6)Cr(CO)3 + NOBF4 → [(C6Et6)Cr(CO)2(NO)]BF4 + CO

出典

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  1. ^ N. G. Connelly, W. E. Geiger (1996). “Chemical Redox Agents for Organometallic Chemistry”. Chem. Rev. 96: 877–910. doi:10.1021/cr940053x. PMID 11848774. 
  2. ^ E. Bosch and J. K. Kochi, "Direct Nitrosation of Aromatic Hydrocarbons and Ethers with the Electrophilic Nitrosonium Cation" Journal of Organic Chemistry, 1994, volume 59, pp. 5573–5586.
  3. ^ T. W. Hayton, P. Legzdins, W. B. Sharp "Coordination and Organometallic Chemistry of Metal-NO Complexes" Chemical Reviews 2002, volume 102, pp. 935–991

関連項目

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