バサルトファイバー

バサルトファイバーとは、玄武岩を原料とした無機繊維の一種。バサルト繊維、玄武岩繊維とも呼ばれる。引張強度、引張弾性率、耐熱性、耐薬品性が高く、電気的に絶縁性である[1]

歴史

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バサルトファイバーは1920年フランスで開発され、1950年代までの間、軍事、航空宇宙向けとしてソビエト連邦アメリカ合衆国ヨーロッパで開発が進められた。

その後、高強度グラスファイバーの開発発展により開発は中止されていたが、1991年ソ連崩壊後にバサルト繊維開発の会社がロシアで設立され、2003年には中国がロシアやウクライナの技術を取り入れ生産を開始、2021年現在ではロシア、中国、ウクライナ、ドイツ等を中心に工業生産を行っている。なお2021年時点で日本では工業生産をしている企業はない[1]

グラスファイバーや炭素繊維同様に合成樹脂との複合材料として用いられており、オフィチーネ・パネライが「フィブラテック」として時計のケース用に実用化している[2]

物性

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バサルトファイバーとグラスファイバーの物性比較一例[1]
項目 バサルトファイバー Eガラスファイバー
熱特性 軟化温度(℃) 1050 840~846
溶融温度(℃) 1450 1120
連続使用最高温度(℃) 650 380
熱伝導係数(W/mk) 0.031~0.038 0.034~0.040
熱膨張係数(×10-6/-℃) 6.5~8 5
熱強度保持率(%)

[20℃強度を100]

200℃ 95 92
400℃ 82 52
物理特性 密度(g/cm3) 2.63ー2.80 2.54ー2.60
引張強度(GPa) 3.8~4.8 3.4
弾性率(GPa) 90~120 72.5~74.0
破断時伸度(%) 3.1 4.7
耐薬品性 質量損失率(%) 沸騰水 3h後 0.2 -
沸騰2NNaOH3h後 5 6
沸騰2N Hcl 3h後 2.2 38.9
耐アルカリ

性強度保持率 (%)

1N NaOH40℃×2h後 91 -
1N NaOH60℃×2h後 75 -
0.5N NaOH80℃×6h後 54 -
電気抵抗率(Ω・cm) 1×1011 1×1012~14

脚注

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注釈

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出典

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  1. ^ a b c 金山 賢治「解説 : 特集 高性能強化繊維 バサルト繊維」『成形加工』第33巻第4号、プラスチック成形加工学会、2021年、117-120頁、doi:10.4325/seikeikakou.33.117 
  2. ^ パネライ ルミノール マリーナ フィブラテック™ 44mm (PAM01663) 2020年新作HODINKEE、2020年4月25日