「フライング 」(Flying )は、ビートルズ の楽曲である。1967年に放送されたテレビ映画『マジカル・ミステリー・ツアー 』の挿入歌で、同名のEP盤 とキャピトル編集盤 にも収録された。ジョン・レノン 、ポール・マッカートニー 、ジョージ・ハリスン 、リンゴ・スター (本名でクレジット)の4人のメンバー全員が共同でクレジットされた数少ない楽曲の1つ。テレビ映画では、不思議な別世界に旅立っていくシーンで使用された。
1965年にビートルズは、バンド初のインストゥルメンタル 「12・バー・オリジナル 」を作曲。同作は4人の名前がクレジットされた初の公式発表曲となった。「フライング」は、「12・バー・オリジナル」と同様に12小節のブルース形式 で書かれた楽曲である。
本作について、マッカートニーは「映画にインストゥルメンタルの曲が必要になって作った。ある晩にスタジオに集まって、みんなに「ちょっとしたテーマとバッキング・パターンは要るけど、基本はすごくシンプルな12小節のブルースを作ろう」という話をした。だから簡単な旋律を書いたんだ。これがないと本当にただの12小節のブルースのバッキングにしかならないからね」と語っている。
曲はギターのフレーズから始まり、メロトロン とオルガン が加わった後、メンバー4人による12小節のスキャット が3回繰り返される。その後、テープ・ループ (英語版 ) の音で締めくくられる。
「フライング」のレコーディングは、1967年9月8日にEMIレコーディング・スタジオ で開始され、9月28日にオーバー・ダビング が施された。制作当初のタイトルは、映画のサイケデリックな幕間の役割に由来する「Aerial Tour Instrumental 」。9月8日にレノンがオルガン 、マッカートニーがベース 、ジョージ・ハリスン がトレモロ をかけたギター 、リンゴ・スター がドラム という編成で、1分33秒の即興演奏を6テイク録音。残ったトラックに3種類のオルガンのパートをオーバー・ダビングし、ピンポン録音 を行なって2つのトラックにまとめた。その後、レノンはフルート にセッティングしたメロトロンの音、電子音、オルガンのメロディー、チャイムを録音したテープ・ループ (英語版 ) を作成。
元々の演奏時間は10分ほどあったが、EPおよびLPには2分弱に短く編集されて収録された。
『ニューヨーク・タイムズ 』紙のリチャード・ゴールドスタイン (英語版 ) は、本作について「楽器の間奏曲としての『フライング』は、アルバムに収録された他の楽曲よりも控えめであるというだけで、興味を起こさせる」と評している[ 7] 。ロバート・クリストガウ は、「ポール・モーリア のほんの上を行く曲で、悪くはないが、私が愛するボーイズではない」と評している[ 8] 。レックス・リード (英語版 ) は、『ステレオ・レビュー (英語版 ) 』誌に掲載されたアルバムのレビューの中で「古いマリア・モンテス (英語版 ) の映画のサウンドトラックのように聴こえた」と評している[ 9] 。
※出典(特記を除く)
四人囃子 - 1976年に発売されたアルバム『ゴールデン・ピクニックス』に収録。
レジデンツ - 1976年に発売されたシングル盤『The Beatles Play The Residents And The Residents Play The Beatles』のB面に収録[ 11] 。
ショッカビリー - 1984年に発売されたアルバム『Vietnam』に収録[ 12] 。
クアドラフォニクス - 1990年に発売されたアルバム『Blood and Snow』に収録[ 13] 。
マーク・ウッド (英語版 ) - 2001年に発売されたアルバム『These Are a Few of My Favorite Things』に収録[ 14] 。
^ Goldstein, Richard (31 November 1967). “Are the Beatles Waning?” . The New York Times : p. 62. https://archive.nytimes.com/www.nytimes.com/library/music/123167lennon-beat.html 2020年11月18日 閲覧。
^ Christgau, Robert (1968年5月). “Columns: Dylan-Beatles-Stones-Donovan-Who, Dionne Warwick and Dusty Springfield, John Fred, California ”. robertchristgau.com. 2015年6月29日時点のオリジナル よりアーカイブ。2020年11月18日 閲覧。
^ “HiFi-Stereo-Review” . Stereo Review : 117. (March 1968). https://www.americanradiohistory.com/hd2/IDX-Audio/Archive-Stereo-Review-IDX/IDX/60s/HiFi-Stereo-Review-1968-03-OCR-Page-0113.pdf .
^ “The Beatles [Residents] - The Beatles Play The Residents And The Residents Play The Beatles - Ralph - USA ”. 45cat . 2020年11月18日 閲覧。
^ York, William. Vietnam - Shockabilly | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年11月18日 閲覧。
^ “クアドラフォニクス / ブラッド・アンド・スノウ [再発][廃盤] ”. CDJournal . 株式会社シーディージャーナル. 2021年8月26日 閲覧。
^ These Are a Few of My Favorite Things - Mark Wood | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック . 2020年11月18日 閲覧。
Dogget, Peter; Humphries, Patrick (2010). The Beatles: The Music And The Myth . Omnibus Press. ISBN 0-8571-2361-0
Everett, Walter (1999). The Beatles as Musicians: Revolver Through the Anthology . New York, NY: Oxford University Press. ISBN 0-19-512941-5
Halpin, Brooke (2017). Experiencing the Beatles: A Listener's Companion . Rowman & Littlefield Publishers. ISBN 1-4422-7144-2
Lewisohn, Mark (2005) [1988]. The Complete Beatles Recording Sessions: The Official Story of the Abbey Road Years 1962-1970 . London: Bounty Books. ISBN 978-0-7537-2545-0
Winn, John C. (2009). That Magic Feeling: The Beatles' Recorded Legacy, Volume Two, 1966-1970 . New York: Three Rivers Press. ISBN 978-0-307-45239-9
Womack, Kenneth (2014). The Beatles Encyclopedia: Everything Fab Four [2 volumes : Everything Fab Four ]. ABC-CLIO. ISBN 0-3133-9171-8 . https://books.google.co.jp/books?id=xWRyBAAAQBAJ&pg=PA279&dq=Flying+Beatles+recording&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjU6Ii_ksjtAhVE72EKHS0KAx8Q6AEwAXoECAQQAg#v=onepage&q=Flying%20Beatles%20recording&f=false