プレストスクス | ||||||||||||||||||||||||||||||
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プレストスクス
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分類 | ||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Prestosuchus von Huene, 1938 | ||||||||||||||||||||||||||||||
タイプ種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
Prestosuchus chiniquensis von Huene, 1938 | ||||||||||||||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||||||||||||||
他の種 | ||||||||||||||||||||||||||||||
プレストスクス(学名:Prestosuchus)は、サウロスクスやポストスクスを含む分類群である、ロリカタ類に属する絶滅した偽鰐類の属。巨体と直立姿勢は恐竜と類似するものの、恐竜よりも現生のワニに近縁な主竜類であった。中期三畳紀のブラジルに生息した。全長は当初5メートルと推定されていたが、2010年に発見された標本から全長7メートル近くに達したことが示唆されている。この体サイズ推定に基づけば、ファソラスクスやサウロスクスと並ぶ三畳紀最大級の偽鰐類ということになる[1]。
Prestosuchus chiniquensisのホロタイプ標本はRauisuchus tiradentesのホロタイプ標本とともに、1928年あるいは1929年にサンタマリア層で発見され、ドイツの古生物学者であるフリードリヒ・フォン・ヒューネの研究のためにドイツへ輸送された。フォン・ヒューネは1938年にブラジルの古生物学者Vicentino Prestes de Almeida (en) にちなんで本属をPrestosuchusとして命名した[2]。
プレストスクスの最初の2個の標本はブラジルのリオグランデ・ド・スル州で発見された。1つはSNSB-BSPG AS XXV 1-3、5-11、28-41、および49という標本番号が付けられており、顎と吻部の断片を含む部分的な骨格である本標本は1972年にPrestosuchus chiniquensisのレクトタイプ標本に指定されている。もう1つの標本であるSNSB-BSPG AS XXV 7は腰帯の上部と仙椎から構成されており、本種のパラレクトタイプ標本に指定された。Kischlat (2000)は腰帯の要素を"Karamuru vorax"に再分類したが[3][4]、Desojo et al. (2020)は本標本をレクトタイプとともに再記載してP. chiniquensisに分類した。これら2標本は元々von Huene (1938)により記載されたものであり、ドイツのミュンヘンに位置する古生物学博物館に所蔵されている[5]。
ヒューネはその後にもプレストスクスに類似する爬虫類を記載しているが、これらをPrestosuchus chiniquensisとの同種とはみなさなかった。SNSB-BSPG AS XXV 131-139は新属新種Procerosuchus celerとされ、別の標本SNSB-BSPG AS XXV 13–24、26–27、44–48はプレストスクス属の第二の種Prestosuchus loricatusに分類された[5]。これらの標本をP. chiniquensisに含める研究者もいれば、Procerosuchus celerだけでなく"Prestosuchus" loricatusをプレストスクスとの別属と考える研究者もいる[6]。
Kischlat (2000)は"Prestosuchus" loricatusを"Abaporu" loricatusとして再分類したが、この名前は正式化されておらず、これ以降使用されていない。またKischlat (2000)はP. chiniquensisのパラレクトタイプと「ポルト・アレグレ標本」(例:UFRGS-PV-0156-T)を含む複数のプレストスクスの標本を異なる新属"Karamuru vorax"とした[4]。しかし、この名前は定義が不十分で正式化されておらず、"Karamuru vorax"は"Abaporu" loricatusとともに裸名として取り扱われている[7][8][5]。Kischlat (2023)はPrestosuchus chiniquensisを新属Huenesuchusに分類した。Kischlat (2023)はPrestosuchusを有効名と認めつつ、タイプ種が国際動物命名規約のガイドラインに明示的に沿って設立されていないという主張の下で名前の変更を求めた[9]。他の古生物学者は非公式にこの主張に反対しており[10]、プレストスクスに関する出版物は一貫してP. chiniquensisを有効なタイプ種として取り扱っている[8][11][5]。
Desojo & Rauhut (2024)は"Prestosuchus" loricatusの化石を再記載し、Prestosuchus chiniquensisと近縁でないポポサウルス上科の有効な種として同定した。この発見に基づき、"Prestosuchus" loricatusは新属Schultzsuchus (en) に編入された[6]。
ポルト・アレグレのリオ・グランデ・ド・スル連邦大学(UFRGS)には4個の標本が所蔵されている。このうち最初に記載されたUFRGS-PV-0156-Tは頑強で保存の良好な頭蓋骨で、脊柱の大部分とともに同州Candelária (en) のPascual Sanga露頭で発見されている。Barberena (1978)で最初に記載され[12]、ミュンヘン標本との間の類縁関係をめぐって議論が交わされてきた。同州Vale Verde (en) で産出したより完全な部分的頭蓋骨UFRGS-PV-0152-Tは、スターリング・ネスビットによりNesbitt (2011)でミュンヘンのレクトタイプやUFRGS-PV-0156-Tとともに研究された。この頭蓋骨は後者2標本と解剖学的に類似していたが、完全な記載は行われていない[13]。
UFRGSの所蔵する最も完全な標本UFRGS-PV-0629-Tは, Mastrantonio (2010)で記載された部分的骨格であり、同州Dona Francisca (en) で産出している[14]。本標本は2013年に神経頭蓋[15]、2019年に頭蓋骨[16]、2024年に体骨格[17]の記載の対象になっており、また腰帯の筋肉の復元も行われている[1]。UFRGSが所蔵する中で最も完全度の低い標本は単離した神経頭蓋であるUFRGS-PV-0473-Tで、Dona Franciscaの"Posto de Gasolina" 露頭から産出した可能性がある[15]。
ポルト・アレグレからはUFRGSが所蔵していないプレストスクスの標本MCP-146も産出している。当該標本は腰帯の部位が保存されており、リオグランデドスル・カトリック大学の科学技術博物館 (en) に所蔵されている[18][8]。
プレストスクスの標本を所蔵する博物館は他にも多く存在する。"Posto de Gasolina"露頭で発見された非常に大型かつ完全な頭蓋骨と部分的体骨格からなる標本ULBRA-PVT-281はカノアスのLutheran University of Brazil (en) に所蔵されている。本標本は2010年に発見され、Roberto-Da-Silva et al. (2018/2019)で完全に記載された[19][11]。同州São Pedro do Sul (en) に位置する古生物学・考古学博物館 (en) ではCPEZ-239bと総称されるプレストスクスの化石のセレクションが保管されている。CPEZ-239bはBaum (Tree) Sanga 露頭で発見された最低2頭の幼若個体に対応するものであり、これらはLacerda et al. (2016)で記載された[8]。
ブラジルとドイツ以外の国で所蔵されているプレストスクスの化石には、アメリカ合衆国の比較動物学博物館のMCZ 4167がある。これは"Posto de Gasolina"露頭で発見された断片標本である[20]。日本の東京都に位置する国立科学博物館にもリオグランデ・ド・スル州から産出した実物化石を含むとされるプレストスクスの組み立て骨格が展示されているが、種は未定である[21]。
タンザニアのマンダ層から化石が産出しているロリカタ類のStagonosuchus nyassicusは、von Huene (1938/1939)により記載された。Desojo et al. (2020)では、本標本はプレストスクス属の有効な第二の種 Prestosuchus nyassicus に属すとされている[5]。
近縁属と同様に、プレストスクスには上下に深い頭蓋骨と鋸歯状構造を伴う歯が存在した[11]。四足歩行性であったが、現生ワニと異なり、後肢が骨盤の下に位置する半直立姿勢を取っていたと見られる[1]。
前上顎骨は上下に高く、主要部は箱型をなしており、4本の歯が存在する。また前上顎骨には複数本の細い枝が存在しており、これには湾曲した前背側突起、長い上顎突起、発達した口蓋突起がある。これらの突起は三角形の鼻孔を形成しており、その形状はサウロスクスのものに類似する一方でバトラコトムスのものと大きく異なる[12][8][16][5]。上顎骨は深く、表面が粗く、低い三角形の前眼窩窓が存在し、11~13本[16]の大型の歯が生えている。多くの標本では長く狭い鼻骨の正中線に沿って薄い1本の凸の稜が走ることを見て取ることができ、これはルペロスクスやバトラコトムスと同様である[12][11]。しかし、この外見上の特徴を単なる化石の歪みと主張する古生物学者もいる[8][16]。吻部の上側の縁では、これに沿ってラウイスクスのものと同様にさらなる低く粗い外側稜が鼻骨から涙骨・前前頭骨にかけて走る。最大の標本では眼瞼骨が眼窩上に存在するが[22][11]、他の頭蓋骨では存在しない[16]。眼瞼骨が眼窩上縁の全体を形成するポストスクスやルペロスクスと異なり、プレストスクスでは後前頭骨が常に眼窩に寄与し、眼瞼骨を欠くより小型の標本では前頭骨も寄与している[11][16]。
他の多くのロリカタ類と同様に、眼窩は全体として鍵穴型であり、上半分が滑らかかつ幅広な境界を持つ一方で下半分が狭く突出している。この形状は後眼窩骨の下側の枝がわずかに前傾しているためであるが、その前傾の程度は標本間で差異が見られる[12][11][16]。頬骨は表面が比較的滑らかであり、上顎骨・涙骨・後眼窩骨・V字型の方形頬骨との間で広範囲の縫合線を持つ。鱗状骨の形態は複雑であり、丸みを帯びた前側の枝は断面が円形であり、また下側の枝は下側頭窓に突出する。方形骨は高く幅広であり、鱗状骨の後部で眼窩から方形頬骨の水準の直下に伸びる。また鱗状骨は翼状骨と方形頬骨に繋がる2枚の大型の骨の板を前側に送り出している[12][8][11][16]。
口蓋は固く平坦で歯を持たない骨から構成される。口蓋には細長い鋤骨や長方形の口蓋骨があり、これが頭蓋骨の他の骨と広範囲で接する。翼状骨はロリカタ類に典型的な形態をしており、長い板状の前側枝が内側の縁で上側に、より厚い外側枝が下側に湾曲し、方形骨との二又の接続部が存在する。また翼状骨は非常に厚いY字型の外翼状骨を介して頬骨とも接続する[16]。湾曲したロッド状の舌骨も存在する[11]。
左右の下顎は比較的長く、互いに下顎結合で緩く結合している。歯骨歯は14本[16][5]。歯骨の下側は直線状あるいは僅かに凸で[11]、顎の先端部で上側に拡大しており、サウロスクスと異なる[16]。プレストスクスの歯骨の内側面に存在する板状骨は異様に長く伸びており、顎の第二歯に届くほど前まで伸びる。歯骨の後部には浅い切痕が存在しており、これにより丸みを帯びた下顎窓の前側縁が限定される。下顎窓は下側の縁が主に角骨によって規定されており、上側の境界が上角骨によって形成されている[5]。下顎の後部の骨はプロポーションと構造が他のロリカタ類と類似する。こうした構造には、上角骨の後部に位置するshelfや、鼓膜神経によって穴の開く内側の突起を伴う高い後関節突起を持つ厚い関節骨が含まれる[16]。
頸椎は顕著に高く、その側面は大型の垂直な窪みが存在しており、その窪みによって下側縁にキールが形成されている。椎体には多数のラミナが発達しており、これらの多くは横突起を旁突起や関節突起および椎体の主部と接続している。また薄いラミナにより椎体と関節突起が接続されるほか、ある1個の頸椎では存在する旁突起から1枚のラミナが後側に突出している。肋骨の関節面との間には外側に窪みが発達しており、横突起と関節突起の間には三角形の窪みが存在する。神経棘は高く、その先端で横に拡大し、spine tableとして知られる構造を形成する。頸肋は2つの幅広な関節面を通してそれぞれの椎骨と関節する。胴椎は全体としてラミナや窪みや拡大したspine tableといった点で頸椎と類似する。両者の大きな差異は胴椎に非常に長い横突起が存在することと、胴椎が腹側のキールを欠くことである。胴椎は骨盤に近いものほど旁突起が横突起に接近し、それらが示す一部の特徴が排除されるか癒合する。一方で、頸椎に近い胴椎では後側の椎体-横突起間のラミナが非常に厚く、さらに1枚の追加のラミナが横突起と関節突起との間の窪みに存在する。背部肋骨はバトラコトムスと同様に2個の肋骨骨頭が存在しており、また腹肋は密である[14][5][11]。
2個の仙椎は互いに癒合していたか否かが不明である。仙椎は関節突起が頑強である一方、神経棘が頸椎や胴椎のものほど拡大していない。仙肋は上側から見た場合に扇形であり、最初の仙肋が2番目の仙肋に重なり、2番目の仙肋がさらに後方に拡大する。尾椎は数個しか知られていない。尾の付け根にあたる前側の尾椎は前後長を背腹高が上回っており、先端で僅かに拡大する高い神経棘を持つ。レクトタイプ標本とP. nyassicusの第一尾椎には腹側のキールと外側の窪みが存在するが、他の標本にこれらの特徴は存在しない。第三尾椎からはロッド状の血道弓が発達する。尾の先端に向かうにつれて尾椎は低く、長く、単純な形状に変化する。頸部と背部には2列、尾部には1列の皮骨板が存在する。個々の皮骨板は幅広で、おおまかにハート型をなしており、それぞれの椎骨に1列あたり1個よりも多く存在する[14][5][11]。
肩甲骨と烏口骨は強固に接続されているが、癒合してはいない。側面から見た肩甲骨はシャフトの中央部で狭まりって上側に拡大するが、こうした変化は他のロリカタ類ほど急激でない。肩甲関節窩の直上は三頭筋が付着する粗面が発達している。肩甲骨の下側の前側部に存在する大型の肩峰は、その上側の端に楕円形の切痕が存在することからP. chiniquensisのタイプ標本において通常フック型である[5]。大半のプレストスクスの標本では肩甲骨-烏口骨の縫合線の前縁にも低い切痕が存在する。この切痕は他のロリカタ類から報告されておらず、そのためプレストスクスの固有派生形質と考える研究者もいる[13]。烏口骨は低く、高さが長さの半分である。烏口骨の後縁は肩甲関節窩に大きく寄与しており、その前に1個の烏口孔、および水平方向の稜が存在する。水平方向の稜はP. chiniquensisの固有派生形質である可能性があるが[5]、プロケロスクスやバトラコトムスでも同様のものが報告されている[11]。ロッド状の鎖骨には肩甲骨の前側と接続する高い垂直部と、ネクタイ型の間鎖骨と接続する短い水平部分が存在する[14][11][5]。
上腕骨は厚く、その長さも大腿骨長の2/3から3/4に相当する。上腕骨は肩の付近で平坦化してかつ非常に幅広になっており、また肘の付近でもある程度拡大している。骨の関節(遠位顆など)と筋痕(三角筋稜など)はよく発達している。尺骨と橈骨は上腕骨よりも薄いものの強固に発達しており、尺骨には大型の肘頭突起が、橈骨には円錐形の内側突起が存在する。プレストスクスにおいて手はほぼ知られていない解剖学的領域であり、手首に近いほど幅広になる1本の中手骨のみが発見されている。前肢は全体としてポストスクスのような他のロリカタ類のものと類似する[14][5]。
プレストスクスの骨盤は複数の固有派生形質を持つ。これらの特徴はP. chiniquensisとP. nyassicus(Stagonosuchus)に存在する一方で、別属の可能性が高い"P." loricatusに存在しない。腸骨には深い骨質の寛骨臼が存在し、その上には水平方向の稜が存在する。他のロリカタ類と異なり、寛骨臼の領域の上に垂直方向の稜は存在しない。腸骨のうち寛骨臼の後側の部位には明確に窪んだ上側縁が存在し、寛骨臼の前側の部分よりも顕著に長い。恥骨は直線状で、閉鎖孔の直上で僅かに寛骨臼の形成に寄与する。シャフトの先端部は他のロリカタ類と同様にノブ状のピュービック・ブーツとして拡大しているが、サウロスクスやポストスクスといった近縁属のものと比較すると小型である[14][5]。
腸骨と同様に、坐骨もプレストスクスにおいて目立つもう1つの骨である。坐骨は恥骨よりも厚く、より広範囲で寛骨臼に寄与し、また腹側縁と背側縁に沿って稜が発達する。正中線上の大型の腹側稜はロリカタ類においてP. chiniquensis、P. nyassicusおよびバトラコトムスのみに見られているが、バトラコトムスの稜が坐骨の基部からシャフトにかけて滑らかに遷移する一方、P. chiniquensisとP. nyassicusの当該部位は急角度の切れ込みを観察できる。対をなす背側の稜はプレストスクスの固有派生形質であるが、P. nyassicusよりもP. chiniquensisにおいてよりシャフトの下方に伸びている。それらは長い窪みで縁取られ、坐骨の正中線に位置する浅い溝で隔てられており、そこで左右の坐骨が癒合する。他のロリカタ類と同様に、シャフトの先端はイスキアル・ブーツとして僅かに拡大する[14][5]。
大腿骨非常に頑強であり、大腿骨頭と大腿骨体を接続する明確な大腿骨頸が存在しない。第四転子は低い粗い領域として現れており、他の大半の主竜類に存在するような発達したノブや稜でない[14][11]。先細る内側顆を例外として、プレストスクスの大腿骨頭と遠位顆の構造は他のロリカタ類のものと全体的に類似する[5]。脛骨は大腿骨よりも短いが、厚く、膝関節付近で拡大する。上側の張り出しの部分では後内側部に深いpitが存在しており、プロケロスクスやバトラコトムスと同様である。腓骨はより細く、他の多数の偽鰐類に見られるようなノブ状の腸腓骨筋痕が発達する。踵の付近では腓骨の後部に深い窪みが存在する。この窪みはプレストスクスの固有派生形質であり、P. chiniquensisでは三日月形、P. nyassicusでは細長い[14][5]。
偽鰐類の足の関節の曲げ伸ばしは鳥類を含む恐竜のように近位足根骨と遠位足根骨との間の足根中央関節で行われるのでなく、距骨と踵骨との間の距踵関節で行われる[23]。この関節の状態はcrurotarsalと呼称される[23]。プレストスクスの足首も同様にcrurotarsalである。距骨は上側に脛骨との大型の関節面と腓骨との小型の関節面を持ち、前側が湾曲した窪みをなし、下側に遠位第III足根骨と第I中足骨および第II中足骨との関節面を持つ。踵骨は幅広で、他のcrurotarsalな主竜類と同様に凸なfibular knobとcalcaneal tuberを持つ。calcaneal tuberは幅が長さを上回っており、後部に高い骨質の拡大部を持つ。踵骨の下側には遠位第IV足根骨や第III中足骨および第IV中足骨との関節面が存在し、涙型の窪みが続く。遠位第III足根骨と遠位第IV足根骨は大まかに三角形状をなす。足の骨では第III中足骨が最長、厚くフック状の第V中足骨が最短で、第I中足骨がそれに続く。中足骨は全て蝶番関節が発達している。第IV中足骨以外の中足骨は断面が三角形状で、第IV中足骨の断面は砂時計型である。足の各趾の趾骨の数(phalangeal formula)は2-3-4-3-Xであり、第IV趾が第II趾および第III趾よりはるかに小型であることを示唆しており、これは初期のロリカタ類に通常みられない特徴である。第I趾は大型の湾曲した鉤爪が存在しており、第III趾は厚く、第II趾は両方の特徴を兼ね備えている[5]。
プレストスクスは歴史的に「ラウイスクス類」として分類され、またプレストスクス科を定義する属として扱われてきた。しかしこれらの分類群の有効性は疑問視されており、ラウイスクス類は側系統群、プレストスクス科は多系統群とみなされている[13]。以下のクラドグラムはDesojo et al. (2020)の厳密合意樹の簡略化版に基づく[5]。
主竜類 |
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2013年に発表された後肢の骨の構造の研究では、Prestosuchus chiniquensisがワニ目や鳥類と同様に13個の筋肉群を持ち、ワニのみと共通する筋肉群が2個のみであったことが明らかになった。これは、プレストスクスがワニ系統の主竜類あるいは偽鰐類との共有派生形質的状態でなく、基盤的・原始的な状態を示すことを示唆する。プレストスクスの後肢の筋組織は二足歩行性の三畳紀の偽鰐類であるポポサウルスのものとも比較されており、ポポサウルスの最も強靭な後肢の筋肉が二足歩行運動に必要な後肢の前後運動を駆動した一方、プレストスクスの最も強靭な脚の筋肉が四足歩行運動を示唆する四肢の回転を司っていたと考えられている[1]。
骨の微細構造の研究では、Prestosuchus chiniquensisは他の「ラウイスクス類」と比較して成長パターンが緩慢であり、ノトスクス亜目やワニ目に類似することが明らかにされている[24]。