プロディプロキノドン
地質時代
後期白亜紀
分類
学名
Prodiplocynodon Mook, 1941
種
Prodiplocynodon langi Mook, 1941 (タイプ)
プロディプロキノドン (学名 :Prodiplocynodon )は、絶滅 した基盤的なワニ の属 [ 1] 。アメリカ合衆国 ワイオミング州 に分布する上部白亜系 マーストリヒチアン 階のランス層 で化石 が産出している[ 1] 。ランス層はティラノサウルス やトリケラトプス といった恐竜 の化石が産出する地層でもあり、プロディプロキノドンはそうした恐竜と共存していた属でもある[ 1] 。なお学名は「ディプロキノドン の前」という意味であるが、命名当時と異なり、ディプロキノドンとの近縁性は支持されていない[ 1] 。
頭蓋骨の個々の骨の輪郭を描く縫合線の大半はホロタイプ標本において見ることができず、多くの場合は亀裂によって曖昧になっている。しかし、プロディプロキノドンの頭蓋骨の全体的な形状は基盤的アリゲーター上科のものと類似す[ 2] 。プロディプロキノドンに見られる特徴は多くが正鰐類 と共通する。頭蓋骨は短くかつ三角形で、長さは約50センチメートルである。眼窩 は極めて大型であり、三角形に近い。歯は短く、ある程度鋭利であり、現生のワニと比較して変化はほぼ無い。眼窩は直接上に向いているが、これはホロタイプ標本が僅かに圧縮されたためである可能性がある。外鼻孔の開口部は非常に大型である。前上顎骨 と上顎骨 が接する地点は狭窄されており、下顎に生えた大型の歯がここで接する。プロディプロキノドンの狭窄は深くなく、アリゲーター属 とクロコダイル属 の中間である[ 3] 。
Mookはプロディプロキノドンがアリゲーター科 とクロコダイル科 の両方の特徴を兼ね備えていることから、2科の祖先である可能性を提唱した。しかし、Mookは現生のクロコダイル類に認められるプロディプロキノドンに見られる特徴のうちいくつかが収斂進化 に起因する可能性も指摘していた[ 3] 。このため、プロディプロキノドンはアリゲーター亜科の属として提唱された[ 4] [ 5] 。
プロディプロキノドンが系統解析の内群として扱われたのは1996年が初めてのことであった。当該の研究では、プロディプロキノドンはアリゲーター亜科 (英語版 ) が持つ7個の明確な共有派生形質 を全て欠いていたためアリゲーター亜科から除外されることとなった。1996年の研究によれば、プロディプロキノドンをアリゲーター亜科から除外した形質の例としては、前上顎骨と上顎骨の間に明瞭な外側の狭窄が存在すること、鼻骨 と涙骨 が接すること、物体を破砕する強靭な歯を口器の後側に持たないことが挙げられる。この時の系統解析でプロディプロキノドンはクロコダイル亜科 (英語版 ) ではなくアリゲーター亜科の姉妹群として扱われており、その理由はプロディプロキノドンの頬骨 と涙骨の縫合線が眼窩の腹側の縁よりも短かったためである。しかし、本研究の著者らはこの特徴が派生的なクロコダイル亜科にも見られること、またアリゲーター亜科の内集団のいくつかでは失われていることを指摘し[ 6] 。
その後の系統解析では、プロディプロキノドンはアジアトスクス と共に基盤的なクロコダイル上科 として扱われている[ 7] [ 8] [ 9] 。以下のそのクラドグラムを示す。
形態情報・分子情報・層序情報を用いたLee & Yates (2018)の解析ではワニ目の内部の類縁関係が確立され[ 12] 、絶滅したヴォアイ (英語版 ) のDNAを抽出することでHekkala et al. (2021)がパレオゲノミクスを用いてこれを拡張した[ 13] 。以下はプロディプロキノドンはをクロコダイル上科の外に置き、ロンギロストレス類 (英語版 ) よりも基盤的な属として扱ったLee & Yates (2018)に基づくクラドグラムである[ 12] 。
^ a b c d 小林快次 『ワニと恐竜の共存 巨大ワニと恐竜の世界』北海道大学出版会 、2013年7月25日、39頁。ISBN 978-4-8329-1398-1 。
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