1964年4月、ヤングはキャピトル・レコードからボビー・スコット(Bobby Scott)のプロデュースによるデビュー・アルバム『ザ・ソウル・オブ・ア・シティ・ボーイ(The Soul of a City Boy)』[1]を発表した。当時のグリニッジ・ヴィレッジでは、雑多な交流から生まれたセッションや即席のフォーク・グループがステージに立ち、デヴィッド・グリスマン(David Grisman・英語版)が結成したブルーグラスのジャグ・バンドには様々なミュージシャンが参加して演奏を繰り広げていた[注釈 1]。ヤングはデビューの前後に、ジェリー・コービット(Jerry Corbitt、本名Jerry Byron Corbitt)と知り合った。意気投合した二人はカナダのフォーク・クラブなどを回る遠征を行ない、この旅行中にバンドの結成を思い立った。
ヤングは帰国後、2作目のアルバムの制作の為にマーキュリー・レコード(Mercury Records・英語版)と契約した。彼が結んだ契約の付帯項目では、アルバムの制作とは別枠でスタジオをバンドセッションのリハーサルとデモ・テープ制作に使う時間枠が確保され、ジェリー・ロス(Jerry Ross)が全ての作品のプロデューサーに指名されていた。デモ・テープのセッションには、のちにラヴィン・スプーンフルを結成したジョン・セバスチャンがハーモニカでゲスト参加した。また4人前後のメンバー候補の中から、コービットのジャグ・バンド仲間で、ボストンのセミ・プロバンド[注釈 2]を辞め将来の模索にニューヨークへ移住してジャズ・バンドに臨時に雇われていたバナナ(Banana、本名Lowell Levinger III)と、その友人で社交ダンスホール専属の無名のジャズ・バンドにいたジョー・バウアー(Joe Bauer)という、それぞれ細々と糊口を凌いでいた2人が選ばれた[注釈 3]。メンバーが揃ったヤングブラッズは、グリニッジ・ヴィレッジに1964年2月に開店したクラブのカフェ・ア・ゴー・ゴー(Cafe au Go Go)に出演して評判を集めて、やがて専属契約を勝ち取った。
RCAとの契約の中での異例の条項の一つだったスタジオ使用条件とは、要約すると、ヤングブラッズに作品制作の締切り期限まで会社が使用しない空き時間に限ってスタジオを自由に使用できるという占有権を与え、録音経費に含まれる時間制貸切のスタジオ使用料金にはあらかじめ上限額が設定され、RCAは貸切時間超過の使用料についてはヤングブラッズに追加の精算を求めない、というものだった。彼等はこの条項を盾に深夜早朝に施錠を無理強いして解いてスタジオを自由に使い、スタジオ使用明細書の束と共に、アルバム『ザ・ヤングブラッズ(The Youngbloods)』と『アース・ミュージック(Earth Music・英語版)』をパパラルディのプロデュースで完成した[注釈 6]。因みにヤングブラッズとの交渉を拗らせ契約を逸したマーキュリーに残された音源は、Jesse Colin Young With The Youngbloods名義の編集アルバム『トゥ・トリップス(Two Trips )』(1970年)[3]に収録された。
1966年11月、ヤングブラッズはシングル「グリズリー・ベア(Grizzly Bear)/ティアーズ・アー・フォーリン(Tears Are Falling)」[4]でデビューした。1967年1月に発表されたデビュー・アルバム『ザ・ヤングブラッズ』は、ボブ・ディラン、ビートルズやバーズなど影響にを受けたサイケデリック・ロック風のリード・ギター、他のバンドがこぞって取り上げたブルースロック調で最先端のロックミュージックが中心だった。6月にシングル・カットされた「ゲット・トゥゲザー(Get Together)」はディノ・バレンティ(Dino Valenti/Chet Powers・英語版)が書き下ろした楽曲で、1964年6月にキングストン・トリオによって発表されて以来、フォーク/フォークロックの数多くのグループやミュージシャンに取り上げられていた。ヤングブラッズのヴァージョンは全米ホットチャートのマイナー部門シングル盤ランキング最高62位と健闘した。また《ビルボード》イージー・リスニング・チャートで37位を記録した[5]。しかしアルバムのセールスは振るわなかった。
彼等はサンフランシスコを中心に国内各地やカナダで公演を続け、この模様と音源で1970年10月『ロック・フェスティヴァル (Rock Festival)』を発表した。プロデューサーにゼーガーとエバンズ(Zager and Evans)[注釈 16]を迎えた同アルバムは、ビルボード・チャートで最高80位を記録。ダニエルズのプロデュースによって翌1971年7月に発表された『ライド・ザ・ウィンド(Ride the Wind・イタリア語版)』は新曲を含むライヴ・アルバムで、同チャート最高157位。同年11月発表の『グッド・アンド・ダスティ(Good And Dusty・イタリア語版)』は最高160位。同アルバムでは収録する楽曲を巡る各自の配分に対立が生じた。以後、ヤングはバンドの出演や演奏参加の一部に条件を立てて拒絶し、バウアーが71年にラクーンから発表したソロ作品[13]の制作には一切関与しなかった。バナナとバウアーは補助メンバーにマイケル・ケイン(Michael Kane)を雇った。1972年、ヤングはコービットなどのミュージシャンを招聘して、バナナとバウアーの手を借りずソロ・アルバム『トゥギャザー(Together)』[注釈 17]を完成させた。そして同年春、ヤングブラッズの次作の録音を前に脱退を表明。ここでヤングブラッズの解散が決定した。有名無実と化した彼等はケインを補助メンバーから正式メンバーに昇格させて最終作を制作。ヤング作の一曲を除いてカバー曲が占めヤングとスタジオ・ミュージシャンを務めるバナナ、バウアーとケインで収録。その後、既に9月まで決まっていたコンサートの日程を消化して解散した。11月に最終作『ハイ・オン・ザ・リッジ・トップ (High on a Ridge Top・イタリア語版)』が発表された[注釈 18]。
Four In The Morning/You Gotta Fix It/Rye Whiskey/Whoa Baby/Susanne/Black Eyed Susan/Same Old Man/Drifter Blues/Talk To Me/Stranger Love/I Think I'll Take To Whiskey
Young Blood(1965年3月)マーキュリー・レコード MG 21005/SR 61005
Rider/Doc Geiger/ Lullabye/Brother Can You Spare A Dime/Trouble In Mind /Little Suzie/Nobody's Dirty Business/Green Hill Mountain Home/Summer Rain/Walkin' Off The Blues/Cotton Eyed Joe
Good Times/Sweet Little Child/Together/Sweet Little Sixteen/Peace Song/Six Days On The Road/It's A Lovely Day/Creole Belle/6000 Miles/Born In Chicago/Pastures Of Plenty
Grizzly Bear/All Over The World (La-La)/Statesboro Blues/Get Together/One Note Man/The Other Side Of This Life/Tears Are Falling/Four In The Morning/Foolin' Around (The Waltz)/Ain't That Lovin' You, Baby/C.C. Rider
The Youngbloods Get Together "The Youngbloods First Album" (1969年月)RCAヴィクター・レコード LSP-3724
※The Youngbloods、LSP-3724のジャケット装丁変更。
Earth Music (1967年5月)RCAヴィクター・レコード LSP-3724
Euphoria/All My Dreams Blue/Monkey Business/Dreamer's Dream/Sugar Babe/Long And Tall/I Can't Tell/Don't Play Games/The Wine Song/Fool Me/Reason To Believe
Elephant Mountain (1969年)RCAヴィクター・レコード LSP-4150
Darkness, Darkness/Smug/On Sir Francis Drake/Sunlight/Double/Sunlight/Beautiful/Turn It Over/Rain Song/Trillium/Quicksand/Black Mountain Breakdown/Sham/Ride The Wind
Two Trips Jesse Colin Young With The Youngbloods (1970年)マーキュリー・レコード SR- 61273
※ジェシ・コリン・ヤングソロ作Young Bloodとデモ・テープを編集したもの。
Hey Babe/Sometimes/Another Strange Town/No More Pain/Nobody's Dirty Business/Summer Rain/Brother Can You Spare Dime?/Walkin' Off The Blues/Doc Geiger/Lullabye
Rock Festival (1970年)ワーナー・ブラザース・レコード WS 1878(ラクーン#1)
It's A Lovely Day/Faster All The Time/Prelude/On Beautiful Lake Spenard/Josiane/Sea Cow Boogie/Fiddler A Dram/Misty Roses/Interlude/Peepin' 'N' Hidin' (Baby, What You Want Me To Do)/Ice Bag
Ride the Wind (1971年)ワーナー・ブラザース・レコード BS 2563(ラクーン#4)
Ride The Wind/Sugar Babe/Sunlight/The Dolphin/Get Together/Beautiful
Good And Dusty (1971年)ワーナー・ブラザース・レコード BS 2566(ラクーン#9)
Stagger Lee/That's How Strong My Love Is/Willie And The Hand/Circus Fire/Hippie From Olema #5/Good And Dusty/Let The Good Times Roll/Drifting And Drifting/Pontiac Blues/Moonshine Is The Sunshine/Will The Circle Be Unbroken/I'm A Hog For You Baby/Light Shine
High On A Ridge Top (1972年)ワーナー・ブラザース・レコード BS 2653(ラクーン#15)
Speedo/She Caught The Katy & Left Me A Mule To Ride/Going By The River/Running Bear/I Shall Be Released/Dreamboat/She Came In Through The Bathroom Window/Donna/La Bamba/Kind Hearted Woman
Beautiful ! Live In San Francisco1971 (2005年月)サンデイズド・レコード LP5442/CD SC 11148
Six Days On The Road/Country Home/On Sir Francis Drake/Dreamboat/Drifting And Drifting/Interlude/Old Dan Tucker/You Can't Catch Me/On Beautiful Lake Spenard/Josiane/Explosion/Beautiful/Get Together
Let The Music Come Inside/Out Of The Question/Country Girl/Delight In Your Love/Queen Of England/The Psong/I Love You All/The Rain Song(ヤングブラッズと同曲)/Banned In Boston/Tribulations/Kahuna Song
Jerry Corbitt (1976年)キャピトル・レコード ST 771 ※Till You Come Back Home Againにジェシ・コリン・ヤング参加
Country Boy Blues/Burning In Your Love Light/Georgia/Till You Come Back Home Again/Pain/Load On/Happy Times/Canada/Get On Back To The Land
Jerry Corbitt & Charlie Daniels – Corbitt & Daniels Live I (1976年)Tiger_Lily_Records TL 14001
Great Big Bunches Of Love/Sweet Gentle Lovin'/Till You Come Back Home Again/Thirteenth Hour/Caldonia/Stormy Monday - Part 1/Orange Blossom Special
J. B. Corbitt - On The Line (1984年)Line Records LRLP 5394 AP ※西ドイツ発売
On The Line/Double A/Defend On Me/Pool Hall/Country Home/Snoe Job/Grizzly Bear/Sit Down Rock And Roll Man/Shasta Daisy/Load On
Jerry Corbitt & Charlie Daniels – Live II (2011年)Big_Pink – 147 ※韓国発売、CDのみ
Country Boy Blues/John Lee Walker/Thirteen Hour/Stormy Monday (Part 2)/John Deere Tractor/The Pope & The Dope/Pain
^クラシック音楽の録音手法を用いたホーン、ストリングス・パートやブレーク無音状態から立ち上がりといった、パパラルディが行なったような「丹精な格調ある音質とアレンジ」のCD盤化では、デジタルリミックスの担当者が安易なレベルアップ、ノイズ除去処理を施した変換を行なって、度々批判されている。パパラルディがプロデュースしたクリームの再発CDボックスセット「THOSE WERE THE DAYS」(1997年)は雑誌レコード・コレクターズなどで批判され、デジタルリマスター技術の過渡期の失敗例に挙げられている。2000年代以降、同技術は向上して評価の高い成果を上げる一方、一例で「レット・イット・ビー...ネイキッド」のような錯誤も繰り返されている、
^録音作業はパパラルディを交えて開始されたが、彼は自分のバンドであるマウンテンの活動などで多忙を極めていたことから降板した。収録曲'Rain Song (Don't Let the Rain Bring You Down)'はコービット、パパラルディ、パパラルディ夫人のゲイル・コリンズがクレジットされ、録音中断の痕跡が垣間見える。