『ラ・パロマ』(スペイン語: La Paloma)は、スペイン語圏の有名な楽曲。19世紀中頃にスペインのセバスティアン・イラディエルによって作曲された。
ラ・パロマとはスペイン語で「鳩」を意味し、ハバナを去る自分を鳩に托す歌詞を持つ。
イラディエルはキューバに滞在したときに当地のハバネラについて知り、このリズムを使って書かれたのが『ラ・パロマ』である[1]。正確な作曲年は不明だが、マドリードの著作権管理局に1859年のイラディエル作曲「ラ・パロマ(ピアノ伴奏つきアメリカ歌曲)」(La Paloma (Canción Americana con acompañamiento de Piano))として登録されているのが文献上の初出である[2]。
メキシコでは第二帝政時代の1866年にソプラノ歌手のコンチータ・メンデスがこの曲を歌って非常に有名になり、今もメキシコ音楽と思っている人が多い[3]。
スペイン語圏に限らず、世界各地の言語で歌われている。1961年の映画『ブルー・ハワイ』でエルヴィス・プレスリーの歌う「ノー・モア」も本曲の編曲に英語の歌詞を加えたものである。ドイツでは1944年の映画『グローセ・フライハイト7番地』で主人公を演じたハンス・アルバースの歌う「ラ・パロマ」がヒットし[4]、1958年にビリー・ヴォーンのオーケストラ版[5]、1961年にフレディ・クインの歌った「ラ・パロマ」がミリオンセラーになった[6]。チェコでは「Hřbitove」(墓場にて)という全然異なる歌詞がつけられ、曲調もかなり変化している[7]。
スペイン語 | 日本語訳 | |
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1. | Cuando salí de la Habana, ¡Válgame Dios! | 私がハバナを去ったとき(ああ何たることか) |
Nadie me ha visto salir si no fui yo, | 誰も私が去るのを見なかった | |
y una linda guachinanga[注 1] sí, allá voy yo, | かわいいメキシコ娘だけが(ああ私は行くよ) | |
que se vino tras de mí, ¡Que sí, señor! | 私についてきた、というわけだ | |
Coro: | (リフレイン) | |
Si a tu ventana llega una Paloma, | もし君の窓に1羽の鳩がとまったら、 | |
trátala con cariño que es mi persona. | 私自身である彼女を愛情をもって扱ってくれ | |
Cuéntale tus amores, bien de mi vida, | 私の命から出た彼女に君の愛を語ってくれ | |
corónala de flores que es cosa mía. | 私のものである彼女に花の冠をかぶせてくれ | |
¡Ay! ¡Chinita[注 2] que sí! ¡Ay! ¡Que dame tu amor! | ああ、いとしい人よ、私を愛してくれ | |
¡Ay! Que vente conmigo, chinita, a donde vivo yo! | ああ、一緒に来てくれ、いとしい人よ、私の住むところへ | |
2. | El día que nos casemos ¡Válgame Dios! | 我々が結婚する日(ああ何たることか) |
En la semana que hay ir, me hace reír, | 出発するその週に、彼女は私を笑わせる | |
desde la Iglesia juntitos, que sí señor, | 教会の集まりの後に | |
nos iremos a dormir. Allá voy yo. | 我々は眠りに行くだろう | |
3. | Cuando el curita nos eche la bendición | 司祭が我々に祝福を与えるとき |
en la iglesia Catedral allá voy yo, | 聖堂で | |
yo te daré la manita con mucho amor | 私は愛をこめて君に手を与え | |
y el cura dos hisopazos. ¡Que sí, señor! | そして司祭は2ふりの聖水を与えるだろう | |
4. | Cuando haya pasado tiempo ¡Válgame Dios! | 結婚してからしばらく(ああ何たることか) |
De que estemos casaditos pues sí señor, | 時がたって | |
lo menos tendremos siete, ¡Y que furor! | 我々は少なくとも7人の(何とすごい) | |
O quince guachinanguitos… ¡Allá voy yo! | あるいは15人のメキシコっ子に恵まれるだろう…… |
ポーランド出身のツトガ科の研究者であるスタニスワフ・ブウェシンスキ (Stanisław Błeszyński) の命名した蛾の学名に「La paloma」がある(Laが属名、palomaが種小名)[11]。同じ属にLa cucarachaもあり、明らかにダジャレによる命名である。