ヴィンディクティヴ (空母)

ヴィンディクティヴ
HMS Vindictive
竣役時の「ヴィンディクティヴ 」
基本情報
建造所 ハーランド&ウォルフ社ベルファスト造船所
運用者  イギリス海軍
艦種 航空母艦重巡洋艦
前級 フューリアス
次級 アーガス
艦歴
起工 1916年6月29日
進水 1918年1月17日
就役 1918年10月1日
除籍 1945年
その後 1946年に解体
要目
常備排水量 9,750トン
満載排水量 12,190トン
全長 184.4 m
最大幅 19.8 m
吃水 5.9 m
機関 蒸気タービン
ボイラー ヤーロー重油・石炭混焼水管缶4基
主機 パーソンズ直結タービン2基
推進 2軸
出力 60,000 hp
最大速力 30.0ノット (55.6 km/h)
燃料 重油:1,480トン
石炭:860トン
航続距離 5,400海里 (10,000 km)・14ノット時
乗員 560名
兵装 19.4 cm(45口径)単装速射砲4基
7.6 cm(50口径)単装高角砲4基
53.3 cm三連装魚雷発射管2基
搭載機 6~8機
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ヴィンディクティヴHMS Vindictive)は、イギリス海軍ホーキンス級重巡洋艦[注釈 1][注釈 2]。建造中に航空母艦に改装されて1918年9月に竣工、第一次世界大戦に参加した[3]。 艦中央部に艦橋や煙突が聳えており[4]、実質的には航空巡洋艦[5] (Aircraft cruiser) と表すべき艦型である[注釈 3]。大戦終結後、航空装備を撤去して巡洋艦に戻った[3]

概要

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1919年に撮られた水上機を運用している本艦

キャベンディッシュ (Cavendish) 級巡洋艦一番艦として建造が開始されたが[注釈 4]、建造途中に航空母艦へ改装され、改造空母となった[3][注釈 5]第一次世界大戦中のオステンド閉塞艦として沈められたアラガント級防護巡洋艦ヴィンティクティヴから艦名を受け継いでいる[注釈 6]。 本艦は1918年9月に空母として就役した。カレイジャス級巡洋戦艦英語版 (Courageous-class battlecruiser) を改造したフューリアス (HMS Furious, 47) と共に[注釈 7]黎明期の空母として実戦投入された[注釈 8]

艦前部に滑走用の飛行甲板を、艦後部に着艦用飛行甲板を装備したが、艦中央部には艦橋や煙突がそびえている[12]。「航空母艦」に分類されるが、実態は航空巡洋艦というべき軍艦である[4][注釈 3]

全通飛行甲板を備えた空母の元祖は、貨客船改造空母アーガス (HMS Argus, I49) であった[13][14]

第一次世界大戦後、ヴィンディクティヴは1923年から25年にかけて通常の巡洋艦に改造された[注釈 5]。旧式化したあとも練習艦工作艦として長く運用され、第二次世界大戦後の1946年に売却された[3]

艦形

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船体形状は長船首楼型船体で、凌波性のよい鋭角なクリッパー型の艦首から艦首甲板上に主砲の19.1cm速射砲が防盾の付いた単装砲架で1基。その背後に上部構造物を設けて、航空機の発艦施設とした。その背後に司令塔を組み込んだ艦橋を基部として、頂上部に射撃方位盤と測距儀を載せた三脚式の前部マストが立つ。船体中央部に2本 煙突が立つ。その周囲は艦載艇置き場となっており、2本1組のボート・ダビッドが片舷2組ずつ計4組で運用され、舷側甲板上に19.1cm速射砲が片舷1基ずつ配置された。2番煙突背後の後部見張り所から後部は航空機の運用スペースに当てられており、甲板一段分下がった艦尾に19.1cm速射砲が後ろ向きに1基が配置された。53.3cm魚雷発射管は船体に内蔵され、固定発射管で片舷3門ずつ計6門を配置した。 艦の中央部は巡洋艦のままであり、前方に発艦用に100フィート、後方に着艦用に215フィートの飛行甲板と8機の航空機を搭載する格納庫を設けていた。

艦歴

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1937年に撮られた練習艦時代の「ヴィンディクティヴ」


1919年7月、ソヴィエト・ロシア海軍基地があるクロンシュタットの攻略を支援するためバルト海へ進出している。

1924年、重巡洋艦への改装が行われ、19.1cm速射砲6門、10.2cm高角砲3門と武装が強化され後部の運用施設は撤去された。艦の前方にカタパルトによる航空機運用設備が残され、水上機の代わりにカタパルトを有する最初のイギリス巡洋艦となった。このカタパルトは1928年に撤去された。1937年には練習艦とするためにボイラー4基を撤去して速力は24ノットまで低下した他に1本煙突の外観となった。既存の武装はすべて撤去され、代わりに12cm速射砲3門となった。

1939年工作艦として改装された。1940年5月にはノルウェー攻防戦に軍隊輸送艦として参加した(ナルヴィク攻防戦アルファベット作戦など)。1942年までは南大西洋で、以後1944年までは地中海でイギリス海軍の活動を支援した。1945年本国艦隊予備として保管されたが、ほどなく解体された。

脚注

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注釈

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  1. ^ 『世界の艦船、近代巡洋艦史』(2009年12月)では「カヴェンディッシュ級軽巡洋艦」と表記している[1]
  2. ^ ドナルド・マッキンタイヤー著『空母 日米機動部隊の激突』(1985年、原著“Aircraft Carrier: The Majestic Weapon”、1968)ではローリィ級巡洋艦と記述する[2]
  3. ^ a b 十、航空巡洋艦[6] 昭和六年(一九三一年)の倫敦軍縮會議では、列強の戰艦又は巡洋艦の多くは偵察飛行機の類を搭載して居つて、その出發は射出機により、歸還収容は起重機によつて爲される状況であることが議題となつて、結局「巡洋艦保有總噸數の二五%には、飛行機着艦用の甲板又はプラットホームを設けてよい」こととなりました。これを主張した國は米國でありまして、米國海軍は二十糎砲装備の巡洋艦に代るもとして立案したのでありますが、未だ何れの國でも實現するには至つてゐません。唯一隻、大戰中英國で竣工した「ヴィンデクチーブ」は航空巡洋艦といふに適當なものでありました。この艦は「ホーキンス」級の大型輕巡洋艦の一つでありまして、後部砲塔を撤去し、煙突の後方から艫部まで飛行機歸着甲板が作られました。然し一九三六年に、飛行甲板を取り壊し、元の巡洋艦として、候補生の練習艦に改装されたとのことです。
  4. ^ 艦艇研究家(海軍技術少佐)福井静夫は、1944年(昭和19年)に造船科技術学生向けに執筆した冊子で「ローリー (Raleigh) 型」と解説している[7]
  5. ^ a b 英吉利 巡洋艦ヴェンディクテーヴ(一九一八年十月竣工)[8] 排水量九九九六噸、時速三〇節。建艦は非常戰時計畫案に基き、一九一六年六月イムプローヴドバッミンガム級の一としてカーヴェンデイッシュの名で工事を始められたるも改名の後航空母艦として完成、二三年より五年へかけて巡洋艦に改造さる。寫眞に格納庫及び起重機を見るも目下飛行機を搭載せず。
  6. ^ ヴィンディクティヴの艦名をもつイギリス艦艇一覧。
  7. ^ 1917年(大正6年)7月に竣工したフューリアスは、艦前部に飛行甲板、艦中央部に艦橋煙突マスト、艦後部に18インチ単装砲を備えた航空戦艦的な姿であった[9][10]
  8. ^ なおイギリス海軍は水上機母艦エンガーダイン (HMS Engadine) を実戦に投入し、ユトランド沖海戦水上偵察機による偵察を実施している[11]

出典

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  1. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 35aイギリス/軽巡洋艦「カヴェンディッシュ」級
  2. ^ マッキンタイヤー、空母 1985, p. 22b.
  3. ^ a b c d 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 35b.
  4. ^ a b 福井、世界巡洋艦物語 1994, p. 108英航空巡洋艦ヴィンディクティブ
  5. ^ 航空母艦の話 1938, p. 55原本88頁
  6. ^ 航空母艦の話 1938, p. 43原本66-67頁
  7. ^ 福井、世界巡洋艦物語 1994, pp. 228–231第一次大戦終了まで/英国の軽巡洋艦
  8. ^ 世界海軍大写真帖 1935, p. 38.
  9. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 27aイギリス/大型軽巡洋艦「フューリアス」 FURIOUS
  10. ^ マッキンタイヤー、空母 1985, p. 20(フューリアス写真解説)
  11. ^ 福井、世界巡洋艦物語 1994, pp. 104–106航空巡洋艦(2)巡洋艦式の水上機母艦と航空巡洋艦
  12. ^ 福井、世界巡洋艦物語 1994, pp. 107–108航空巡洋艦(3)陸上機を搭載した巡洋艦
  13. ^ マッキンタイヤー、空母 1985, pp. 22a-24本格的空母「ハーミーズ」と「アーガス」
  14. ^ 航空母艦の話 1938, pp. 35–37(原本53-57頁)(ロ)英國の航空母艦

参考図書

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  • 世界の艦船 増刊第46集 イギリス巡洋艦史」(海人社
  • 「世界の艦船 増刊第71集 イギリス航空母艦史」(海人社)
  • 編集人 木津徹、発行人 石渡長門『世界の艦船 2010.No.718 近代巡洋艦史』株式会社海人社〈2010年1月号増刊(通算第718号)〉、2009年12月。 
  • 福井静夫 著、阿部安雄、戸高一成 編『福井静夫著作集 ― 軍艦七十五年回想 第八巻 世界巡洋艦物語』光人社、1994年6月。ISBN 4-7698-0656-6 
  • ドナルド・マッキンタイヤー 著「1 海軍航空化への道ひらく」『空母 日米機動部隊の激突』寺井義守 訳、株式会社サンケイ出版〈第二次世界大戦文庫23〉、1985年10月。ISBN 4-383-02415-7 

関連項目

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外部リンク

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