柯潔(か けつ、柯洁、Ke Jie、1997年8月2日 - )は、中国の囲碁棋士。浙江省麗水市出身、中国囲棋協会に所属、九段。三星火災杯世界囲碁マスターズ、百霊愛透杯世界囲碁オープン戦、Mlily夢百合杯世界囲碁オープン戦優勝など。ニックネームは「大帝」[1]。
6才で囲碁を覚え7才から故郷を離れて北京聶衛平道場に囲碁留学した。当時の道場には范廷鈺(現九段)らがいた[2]。2007年全国児童少年戦児童組優勝。
2008年世界青少年囲碁選手権大会少年組優勝、初段。2010年二段。プロ入りすることが出来たが同期の棋士がチームに勧誘されていくのに対し、柯潔にはどのリーグチームも関心を持たなかった。チームに入ることができなかったため大きい大会にも出場できず公式戦も10~20局しか打てなかった。そこで柯潔はネット碁(東洋囲碁)で打つことにした。2011年から2015年の4年間に打ったネット碁は4千局を越えた。運がいい日は朴廷桓九段とも打つことができた。20秒碁で1日に5~6局程度打った。そのおかげて大きな大会でも緊張しない心を訓練することができた。さらに読みの正確性と速度も鍛えた[3]。
2011年世界青少年囲碁選手権大会青年組優勝、三段。2012年四段。2013年新人王戦ベスト8、Mlily夢百合杯世界囲碁オープン戦出場しベスト32、三星火災杯世界囲碁マスターズでベスト16。2014年名人戦ベスト8、天元戦挑戦者となり陳耀燁に1-2で敗れる。同年阿含桐山杯決勝で唐韋星を破り棋戦初優勝。
2015年百霊愛透杯の準決勝で朴廷桓を2-0、決勝で邱峻を3-2で破り、世界戦初優勝、これにより九段昇段。同年リコー杯、威孚房開杯棋王戦に優勝、三星火災杯で決勝で時越を2-0で破り優勝。2016年にMlily夢百合杯世界囲碁オープン戦で李世乭を破って優勝し、年間で世界戦三冠を達成。世界三冠王は2010年孔傑以来、また史上最年少の三冠王となった。さらに国内戦をあわせて五冠王となり優勝賞金中国棋士歴代最高の760万元を稼いだと推定されている[4]。2016年三星火災杯2連覇。2019年には国内棋戦の棋聖戦、倡棋杯に優勝。
2019年、競技に専念してきたプロ選手を無試験で名門大学へ推薦入学させる制度により清華大学工商管理学専攻へ入学[5]。
2020年、ネット上で女性の出産やフェミニズムを揶揄する内容を多数投稿したことに対し、多くの批判が寄せられたため、ウェイボーの更新停止を宣言した[6][7][8][9]。同年、2018年に続いて三星火災杯で4回目の優勝。2024年、清華大学卒業[10]。
甲級リーグには2011年から出場、2013年15勝6敗の成績で新秀賞、2014年に18勝2敗の成績で大連チーム優勝に貢献。2015年にも16勝5敗で2年連続最多賞。2016年はMVP、優秀主将、最多勝を獲得。2023年に深圳チームで優勝。中国棋士ランキングでは2014年6位、2015年9月に1位となり2020年8月まで維持。
2024年応氏杯では準決勝で一力遼九段に逆転負け。さらに9月の農心杯金明訓戦で勝勢を見せるもまさかの時間切れ負けを喫した。
2016年3月、AlphaGo対李世ドル第一局の終局後、李世乭に9勝している柯潔は「AlphaGoは李世乭に勝っても、私には勝てない」と豪語した[11]。国際囲碁連盟事務局長で国家体育総局棋牌運動管理センターの中国共産党委員会書記である楊俊安は想定外のことがなければ年内にAlphaGoと柯潔は「人間と機械の最終決戦」[12]として対局を行うと発表した[13]。翌年2017年4月、AlphaGo開発者のデミス・ハサビスは、同年5月23日から27日にかけて囲碁の発祥地中国の浙江省烏鎮インターネット国際会展センター(世界インターネット大会の永久開催地)にてGoogleと中国囲棋協会と中国政府が共催するフューチャー・オブ・ゴ・サミットで非公式棋士レーティング世界1位[14][15]の「世界最強の棋士」柯潔とAlphaGoは対戦を行うと発表した[16]。AlphaGo対柯潔の第1局はAlphaGoが柯潔に勝利し、柯潔は「人間では想像もつかない手を打ち、強かった」と述べた[17][18]。第2局もAlphaGoの勝ちとなり、シリーズの勝ち越しが決定。デミス・ハサビスは「100手までは今までの人間との対局で最も接戦だった」と柯潔の健闘を称えた[19]。第3局もAlphaGoが勝ち、シリーズはAlphaGoが3局全勝となった[20]。デミス・ハサビスとGoogleはこの試合を人間との最後の対局としてAlphaGoの引退を発表した[21][22][23]。中国囲棋協会は、柯潔に勝ったAlphaGoにプロの名誉九段を授与した[24]。試合中に涙も拭った柯潔は閉会式で「僕は僕自身でありたい。囲碁は楽しいものと伝えていきたい」と述べた[25]。その2日後に行われたLG杯世界棋王戦で韓国の元晟溱に勝利した際に「人類との対局はこんなにも気楽」とウェイボーで呟いたことが話題になった[26]。 2018年1月17日、中国企業テンセントのAI「絶芸」に二子局で負け、強豪の棋士がAIにハンディキャップを負わせた試合で敗北したのは史上初として話題となった[27]。2018年から5月時点でAIだけでなく、プロ棋士相手にも10勝10敗であるなどスランプに陥ってるとする見方もある[28]。
国際棋戦
国内棋戦
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2015年百霊杯、三星火災杯の優勝に続いて、Mlily夢百合杯でも決勝戦に進出。李世乭との決勝五番勝負は、第1局李、第2、3局柯、第4局は李が勝って2勝2敗となり、第5局は2016年1月5日に江蘇省如皋市で行われた。序盤はじっくりした布石で、左上でも先番柯潔は黒1(図1、53手目)から二子を捨てて左辺黒の安定を図る。李は右下白10から利かし、白14は黒17まで一子を犠牲にするが、白20、24の切断から30までで16の石と連動して攻勢に立った。
その後は白優勢に進んだが、柯は図2黒1(113手目)から下辺白の分断を狙い、それに対して中央の利かしを狙った白4が黒5と替わって損な手で、白6の時に黒7が妙手で、黒17までつながって白18の連絡を強要して先手を得て、黒19に回って僅かに逆転した。その後黒はヨセで損をするが、最後半コウに勝って281手まで半目勝ち、3勝2敗で優勝を飾った。[30]