海賊とよばれた男 | ||
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時事通信社『時事通信 日刊時事解説板』第2235号(1953)より日章丸(2代目)。右上は新田辰夫船長 | ||
著者 | 百田尚樹 | |
発行日 | 2012年7月11日 | |
発行元 | 講談社 | |
ジャンル | 歴史小説、経済小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 四六変型 | |
ページ数 | 上巻384頁、下巻368頁 | |
公式サイト | bookclub.kodansha.co.jp | |
コード |
ISBN 978-4062175647(上) ISBN 978-4062175654(下) ISBN 978-4062778299(上)(A6) ISBN 978-4062778305(下)(A6) | |
ウィキポータル 文学 | ||
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『海賊とよばれた男』(かいぞくとよばれたおとこ)は、百田尚樹による歴史経済小説である。
出光興産創業者の出光佐三をモデルとした主人公・国岡鐡造の一生と、出光興産をモデルにした国岡商店が大企業にまで成長する過程が描かれている。
第10回本屋大賞受賞作品[1]。2016年(平成28年)12月現在、上下巻累計で420万部突破のベストセラーとなっている[2]。
2016年(平成28年)12月10日に映画化作品が全国公開された。
1945年(昭和20年)8月15日。連合国と日本の戦争は終わった。東京をはじめとする主要都市は徹底的に爆撃されて瓦礫の山となり、海外資産の全てを失って莫大な賠償金が課せられようとしていた。これから日本はどうなっていくのだろうかと、日本国民の誰もが途方に暮れて失意に打ちひしがれている時、既に老境に入っていた国岡商店の国岡鐡造店主は、わずかに残った社員を前に訓示を行う。三千年の歴史を誇る日本人としての誇りを失わぬように活を入れ、さらに「ひとりの馘首もならん!」と、社員を一人も解雇せずに、日本と国岡商店の再建に挑む。
売るべき商品「石油」がそもそもないという現実に直面した国岡商店は、社員一丸となって新しい仕事を求め、様々な業種に取り組む。鐡造は愛蔵の美術品を手放してでも、金銭を工面した。やがて海軍からの人材を中心にラジオ修理を手掛け、全国の店舗の営業を再開する。しかし、戦前から国内の同業他社と対立し、石油配給統制会社(石統)からも締め出されていた。
その石統は、日本への石油輸入再開の条件としてGHQから出された、旧海軍の燃料タンクから燃料を浚うという、非常に過酷な仕事を国岡商店に受注させる。その後も国岡商店は、販売業者指定案から除外されそうになるが、国岡商店の社員たちが必死になって働く姿が、特にGHQに強い印象を与えたことから、除外は撤回される。販売業者指定を受けた国岡商店は、ようやく石油販売業者として再出発するのだった。
神戸高商在学中、国岡鐡造は石油の将来性に目を付け、また消費者の利益のために、問屋を介さず広範囲に直営店を展開する「大地域小売業」の夢を持つ。大商社鈴木商店を蹴って、神戸の酒井商店に丁稚として就職した鐡造は、ここで商売の心構えを学び、また台湾での商談を成功させたところで、神戸高商時代に知り合った資産家:日田重太郎から多額の資金援助を得て、郷里に近い門司に「国岡商店」として独立する。
国岡商店は、石油卸売業者として漁船の燃料を扱い、好評を得る。さらなる販路拡大のため、下関と門司での住み分けを図る協定をかいくぐり、下関側の漁師に海上で燃料を売るため、従業員とともに伝馬船で海に漕ぎ出す姿は「海賊」と呼ばれた。さらには寒冷な満州でも使用可能な、良質な機械油を南満州鉄道に売り込むことにも成功する。こうして海外にも販路を拡大するが、一方で、同業他社からの反発も強く、さらに日本の石油政策の統制化を受けて、国岡商店は日本国内での営業が困難になる。念願のタンカー日章丸を就航させて程なく、米国の対日石油禁輸を発端に、大東亜戦争が始まる。鐡造も、日本のためという一貫した姿勢を貫くが、大局の前になすすべもなく、敗戦を迎える。
国岡商店は次々と苦難を乗り越え、石油タンクの所有、そして二代目のタンカー日章丸の建造を果たし、外国資本によらない「民族系」石油元売として順調に事業を拡大していた。しかし欧米資本の7つの石油メジャー、通称「セブンシスターズ」の妨害により、北米からの石油輸入が困難になった。
ある日、鐡造は同じ福岡出身の実業家石橋正二郎の紹介で、米国籍のイラン人:ホスロブシャヒと知り合う。昭和26年(1951年)、イランは石油の国営化を宣言し対外関係が不安定になっていた。鐡造はイランが英国との契約を反故にした経緯を快く思わず、イランからの石油輸入を断る。しかし、イランが長年にわたり英国から搾取されている実態を知ると、海外渡航や保険の問題の解決、そしてモサデク首相らとの石油売買の交渉をまとめ上げさせ、石油購入のため、ついに日章丸のイランへの派遣を決心する。昭和28年(1953年)、日章丸は極秘裏にアバダン港に到着し、イラン民衆の大歓迎を受ける。復路では英国東洋艦隊の海上封鎖をかいくぐり、無事に日本に到着する。この「日章丸事件」は、石油貿易自由化や日・イラン友好の嚆矢として期待されたが、モサデクの失脚によりわずか3年でイランとの貿易は終わった。
鐡造は石油メジャーと対決するためには、産油国から原油を直接輸入し、自ら精製する必要性を痛感する。バンク・オブ・アメリカから巨額の融資を受けることに成功すると、アメリカ人の懐の広さに感じ入る。そして、昭和32年(1957年)、徳山に、自らの理念を込めた製油所を常識外れの速さで完成させた。
老齢になっても鐡造の反骨精神は、なおも健在であり、消費者や日本の利益にならないと考える生産調整や石油業法には強硬に反対した。やがて恩人である日田との死別を経て、鐡造はついに引退を決意する。ある時、やむを得ず離別した先妻:ユキの消息を知り、若かりし頃に思いを馳せるが、すぐその感情を打ち消す。
晩年、敗戦直後に手放した美術品を買い戻していた鐡造は、昭和56年(1981年)にようやく仙厓の「双鶴画賛」を買い戻し、意味を悟る。同年、大勢の家族と「双鶴画賛」に看取られ、95歳で生涯を終える。
なお、この小説は出光佐三の事実とは異なる点が多いとの指摘が出光関係者から出されている。特に、出光興産の出身で、出光佐三から直接に薫陶を受けた奥本康大(「空の神兵顕彰会」会長)は、「正伝 出光佐三の生涯」(展転社)を上梓し、2021年6月20日(出光興産の創立110周年記念日)に行われた出版記念講演会[3]で、次のように発言している。
一方百田は自身のTwitterで
と反論した[4][5] 。また、映画のクレジットでは「取材協力・資料提供」として「出光興産株式会社」と記載されている。
2014年(平成26年)にオーディオドラマ化され、同年1月1日よりオーディオブック配信サービスの「FeBe」でオンライン配信がスタートした。ナレーションはニッポン放送アナウンサーの上柳昌彦。また、同局開局60周年記念特番として、同じく上柳のナビゲーションでそのダイジェスト版が同年1月1日・1月2日の2夜連続で放送された[6]。
須本壮一の作画で、『イブニング』(講談社)において2014年(平成26年)6号から[7]2017年(平成29年)1号まで連載された[8]。単行本は全10巻[8]。
海賊とよばれた男 | |
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Fueled: The Man They Called 'Pirate' | |
監督 | 山崎貴 |
脚本 |
山崎貴 守屋圭一郎 |
原作 | 百田尚樹「海賊とよばれた男」 |
製作 |
阿部秀司 中山良夫 古川公平 市川南 藤島ジュリーK. 薮下維也 加太孝明 |
製作総指揮 |
阿部秀司 門屋大輔 |
出演者 |
岡田准一 吉岡秀隆 染谷将太 鈴木亮平 野間口徹 ピエール瀧 綾瀬はるか 小林薫 光石研 堤真一 近藤正臣 國村隼 黒木華 須田邦裕 小林隆 |
音楽 | 佐藤直紀 |
撮影 | 柴崎幸三 |
編集 | 宮島竜治 |
制作会社 | ROBOT |
製作会社 | 「海賊とよばれた男」製作委員会 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2016年12月10日 |
上映時間 | 145分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 23.7億円[9] |
2016年(平成28年)12月10日に公開された。監督は山崎貴、主演は岡田准一。映画化にあたり、2014年(平成26年)年間邦画興行収入ランキング第1位に輝いた『永遠の0』の製作チームが再集結した[10]。脚本・監督は『ALWAYS 三丁目の夕日』『STAND BY ME ドラえもん』『永遠の0』を手掛けた山崎貴、主人公・国岡鐵造役は『永遠の0』の主人公役で第38回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した岡田准一が務め[10]、劇中で20代から90代までを演じた[11]。
監督の山崎は本作を映画化しようと決めたきっかけについて、「終戦直後のあの時代、皆が下を向いていたときに、とんでもないことをしでかした男達が居たということへの驚きが原動力。その背景を探求したくなった。」と述べている[12]。本作におけるVFXのカット数は、『ALWAYS 三丁目の夕日』の3倍に及んでいる[13]。
2015年(平成27年)11月4日に、2016年(平成28年)冬に映画化されることが発表された[12][14]。11月28日には東宝スタジオにて製作報告会見が行われ、追加キャストが発表された[15]。
2016年(平成28年)3月10日にキャスト陣の劇中ビジュアルが公開され、公開日が12月10日となることが発表された[16]。7月28日に公式サイトにて特報映像が公開され[17]、9月17日には公式サイトにて予告編映像が公開された[18]。11月14日、東京国際フォーラムにて完成記念イベントと舞台挨拶が行われた。舞台挨拶へは主演の岡田や監督の山崎をはじめ、吉岡秀隆、染谷将太、鈴木亮平、野間口徹、ピエール瀧、綾瀬はるか、堤真一、國村隼、小林薫がレッドカーペットに登壇した[19]。
ほか
劇中歌
『『 海賊とよばれた男 』 オリジナル・サウンドトラック』 | |
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佐藤直紀 の サウンドトラック | |
リリース | |
ジャンル |
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時間 | |
レーベル | ソニー・ミュージックマーケティング |
全作曲: 佐藤直紀。 | ||
# | タイトル | 時間 |
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1. | 「海賊とよばれた男 ~Main Title~」 | |
2. | 「門司の海」 | |
3. | 「記念日」 | |
4. | 「融資」 | |
5. | 「輸入再開へ」 | |
6. | 「GHQ」 | |
7. | 「満州」 | |
8. | 「巨影」 | |
9. | 「南方石油政策」 | |
10. | 「長谷部の死」 | |
11. | 「交渉」 | |
12. | 「覚悟」 | |
13. | 「アバダン」 | |
14. | 「スンダ海峡」 | |
15. | 「ユキ」 | |
16. | 「国岡商店社歌」 | |
17. | 「海賊とよばれた男 ~End Title~」 | |
合計時間: |
映画版で国岡鐡造役を演じる岡田准一がイメージキャラクター「超ひらパー兄さん」を務める大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」では、映画版の公開を記念したコラボレーション企画として、既存のフリーフォールを利用したアトラクション「国岡ライド」を2016年(平成28年)11月12日から2017年1月15日までの期間限定で開設した。ポスターも映画版のパロディとなっており、国岡が超ひらパー兄さんに、「海賊とよばれた男」の部分が「結局やらされた男」にそれぞれ変えられている[22][23]。
回数 | テレビ局 | 番組名(放送枠名) | 放送日 | 放送時間 | 放送分数 | 視聴率 | |
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1 | 日本テレビ | 金曜ロードSHOW! | 2018年9月28日 | 21:00 - 23:29 [25] | 149分 | 8.4% |