環太平洋合同演習(かんたいへいようごうどうえんしゅう、英語: Rim of the Pacific Exercise)は、アメリカ海軍主催によりハワイの周辺海域で実施される各国海軍の軍事演習のこと。リムパック(RIMPAC)とも呼ばれる。
演習の主目的は、参加国間の共同作戦能力の向上にある。
初めて開催されたのは1971年。その後、1974年まで毎年開催されたが、規模の拡大に伴い隔年実施に変更された[1]。
日本の海上自衛隊が参加したのは1980年からであり、非英語圏からの参加は初であった。現在では非英語圏からも多くの海軍が参加しており、海軍組織を持つ海洋国家同士での親善交流に大きく役立っている。
参加国はアメリカ合衆国の同盟国に限定されているわけではなく、かつての仮想敵国であるロシアや中国なども参加した実績がある[2]。これは、同盟国以外の海軍関係者が軍軍関与(mil-mil engagement)を深めることが信頼醸成を促進し、不測の衝突を避けることにつながるとの考えによるもので、演習以外に相互に他国の海軍関係者を広く軍艦に招いて行われるレセプションなどの儀礼で人的交流も行われている[3]。ただし、ロシアと中国は演習中にバルザム型情報収集艦[3]、情報収集艦「北極星」を派遣したこともあるなど信頼醸成に反する動きも出ている。
期間:1971年(昭和46年)11月8日 - 11月18日[4]。
期間:1972年(昭和47年)9月5日 - 9月14日[4]
期間:1973年(昭和48年)9月10日 - 9月21日[4]
艦艇23隻、航空機200機、約14,000人の人員が参加[4]。
期間:1975年(昭和50年)3月11日 - 3月21日[4]
艦艇31隻、航空機200機、約17,000人の人員が参加[4]。
期間:1977年(昭和52年)2月17日 - 3月11日[4]
艦艇38隻、航空機225機、約20,000人の人員が参加[4]。
期間:1978年(昭和53年)4月4日 - 5月4日[4]
艦艇42隻、航空機200機、約22,000人の人員が参加[4]。
期間:1980年(昭和55年)2月26日 - 3月18日[5]
5カ国、艦艇43隻、航空機約200機、人員約20,000人が参加[5]。 当年度から日本の海上自衛隊が参加する。
期間:1982年(昭和57年)3月22日 - 4月29日[6]
5カ国、艦艇60隻、航空機120機以上、人員約29,000人が参加[6]。
期間:1984年(昭和59年)5月14日 - 6月28日[7]
5カ国、艦艇80隻、航空機250機、人員約50,000人以上が参加[7]。
期間:1986年(昭和61年)5月18日 - 6月27日[8]
5カ国、艦艇50隻、航空機250機、人員約50,000人以上が参加[8]。イギリス海軍が初参加。ヨーロッパの国家としては初、北大西洋条約機構 (NATO) 諸国としては米国、カナダに続き3例目。
期間:1988年(昭和63年)6月16日 - 8月5日[9]
4カ国、艦艇45隻以上、航空機約200機、人員約50,000人以上が参加[9]。
期間:1990年(平成2年)4月10日 - 6月2日[10]
5カ国、艦艇55隻、航空機200機、人員約50,000人が参加。大韓民国海軍が初参加。
期間:1992年(平成4年)6月1日 - 8月24日[11]
5カ国、艦艇45隻以上、航空機約200機、人員約20,000人が参加。
期間:1994年(平成6年)5月24日 - 7月7日[12]
5カ国、艦艇50隻以上、航空機約200機、人員約25,000人が参加。
期間:1996年(平成8年)5月23日 - 6月22日[13]
6カ国、艦艇45隻以上、航空機約250機、人員約30,000人が参加。 チリ海軍が初参加。ラテンアメリカ諸国としては初、非英語圏諸国としては日本、韓国に続き3例目。
期間:1998年(平成10年)7月7日 - 8月7日[14]
6カ国、艦艇50隻以上、航空機約200機、人員約25,000人が参加。
期間:2000年(平成12年)5月30日 - 7月6日[15]
7カ国、艦艇50隻以上、航空機約200機以上、人員約22,000人が参加[15]。
期間:2002年(平成14年)6月24日 - 7月22日
7カ国、艦艇36隻、航空機26機、人員約11,000人が参加。ペルー海軍が初参加。
期間:2004年(平成16年)6月29日 - 7月27日
7カ国、艦艇28隻以上、潜水艦8隻、航空機90機、人員約11,000人が参加
期間:2006年(平成18年)6月26日 - 7月28日
8カ国、艦艇約40隻、潜水艦約6隻、航空機約160機が参加。
当初は、DDG ミサイル護衛艦「きりしま」を含めた護衛艦4隻が参加予定であったが、北朝鮮によるミサイル発射実験に対応するため、「きりしま」は参加を中止し、日本近海に引き返したことが2006年(平成18年)6月29日に発表された。
なお、「きりしま」は6月23日(日本時間で。米国時間では22日。)に、ハワイ沖で行われた海上配備型迎撃ミサイル迎撃実験に参加し、模擬ミサイルの捕捉・追尾に成功していた[17]。
期間:2008年(平成20年)6月29日から7月31日
10カ国から艦艇約35隻、潜水艦約6隻、航空機約150機以上、人員約20,000人が参加する。シンガポール海軍が初参加。東南アジア諸国としては初。
当初は「CVN-73 ジョージ・ワシントン」が参加予定だったが2008年5月22日中南米沖を航行中に船尾の一角で火災が発生。火災の影響により参加中止(「キティホーク」が急遽代理を務めた)を初め、6月上旬のハワイでの「キティホーク」との交代式の実施、8月19日に横須賀入港・配備が延期となった。
期間:2010年(平成22年)6月23日 - 8月1日
14カ国の艦艇34隻、航空機100機以上、人員約20,000人が参加。海上自衛隊は参加するに併せて派遣部隊はカナダ海軍創立百周年記念観艦式へ参加。
期間:2012年(平成24年)6月23日 - 8月3日
計22カ国、艦艇42隻、潜水艦6隻、航空機約200機、人員約25,000人が参加。この回ではロシア海軍が初参加している。また、中国海軍から人員だけがオブザーバーとして参加した[3]。他にチリ、コロンビア、ペルー、インド、タイ、フィリピン、オランダ、ノルウェーおよびイギリスからも演習に参加している。
期間:2014年(平成26年)6月26日 - 8月1日
計23カ国、艦艇55隻、航空機200機以上、人員約25,000人が参加。この回では中国海軍が初めて正式参加したが、演習参加艦艇以外に情報収集艦「北極星」を近海へ派遣し、他国艦艇の諜報活動を行ったため顰蹙を買った[3]。
多国間で行った「人道支援・災害救援(HA/DR)訓練」では海自指揮官の中畑康樹海将補が米国以外で初めて指揮を執った[18]。また、日本からは海上自衛隊のほか、陸上自衛隊の西部方面普通科連隊(現:第1水陸機動連隊)が米海兵隊との水陸両用戦訓練に初参加した[18]。西普連を海兵隊・海軍陸戦隊と見なすのであれば、アメリカ海兵隊に続き2例目のRIMPAC参加となった。他にマレーシア、オランダ、ペルー、フィリピン、トンガ、イギリスが演習に参加している。
期間:2016年(平成28年)6月30日 - 8月4日
計26カ国、艦艇45隻、潜水艦5隻、航空機200機以上、人員約25,000が参加。デンマーク、ドイツ、イタリアが初参加。前回に続き陸自部隊が参加。陸自からは西方、西普連、中央即応集団などの隊員約50人を派遣。太平洋海兵隊司令部と第3海兵連隊と共同で水陸両用訓練を実施[19]。
期間:2018年(平成30年)6月27日 - 8月2日
計26カ国、艦艇47隻、潜水艦5隻、航空機約200機、人員約25,000人以上が参加。3回目の参加となる陸上自衛隊は西方、西方特科隊、第5地対艦ミサイル連隊などから約100人と12式地対艦ミサイルシステム一式を派遣し、海自部隊のほか、米陸軍第17野戦砲兵旅団の高機動ロケット砲システム(HIMARS)などと共同して陸自SSMと米陸軍HIMARSによる対艦射撃の一連の行動を演練した。このほか、陸上総隊司令部や水陸機動団第2水陸機動連隊などから約70人を派遣し、米海兵隊との水陸両用訓練を実施[20]。
期間:2020年(令和2年)8月17日 - 8月31日
計10カ国、艦艇22隻、潜水艦1隻、約5,300人の人員が参加。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大という状況を鑑み、参加者の感染リスク最小化を考慮して、地上での訓練をやめ、艦船による洋上訓練のみを実施。実施期間も2週間に短縮された[23]。
期間:2022年(令和4年)6月29日 - 8月4日[25]
欧米やアジア、オセアニアなどの26カ国[26]、艦艇38隻、潜水艦4隻、航空機約170機、人員約25,000人以上が参加した[27]。
また、本訓練に参加した自衛隊は他国が攻撃を受けて日本の存立が脅かされる「存立危機事態」を想定した訓練を行ったことを岸信夫防衛大臣が8月8日の記者会見で明らかにした[28]。同訓練は7月29日から8月3日まで日本政府が安全保障関連法の存立危機事態を認定し、武力行使に踏み切るシナリオで行った[28]。
期間:2024年(令和6年)6月27日 - 8月2日[29] 約29カ国、艦艇40隻、潜水艦3隻、航空機約150機、14カ国の陸軍部隊など、人員2万5000人以上が参加[29]。
今回のリムパックのテーマは「パートナーズ:統合と準備(Partners:Integratedand Prepared.)」[30]。海上自衛隊水上部隊の指揮官である横田和司海将補がチリ海軍のアルベルト・ゲレーロ准将とともに統合任務部隊の副司令官を務めた。海自の参加艦艇と航空機は対潜訓練、人道支援・災害救援(HA/DR)訓練などさまざまなシナリオ訓練を行った[30]。 陸上自衛隊は、7月8日から7月13日の間、米陸軍および米海兵隊と共同対艦戦闘訓練を実施した[31]。