血球貪食症候群(Hemophagocytic syndrome; HPS,欧米ではHemophagocytic lymphohistiocytosis; HLHなど、国際的に統一の呼び名はまだない)は、医学の発達に伴って明らかとなってきた疾患のひとつで、本来人間をまもるべきマクロファージや好中球といった免疫細胞が暴走し、自らの血球(とくに血小板)を食べてしまう病気である。小児で先に報告されたが、成人に起こることは現在ではわかっている。きわめて重篤な致死的疾患である。突然健常者におこることもある。
型 | 蛋白 | 責任遺伝子 |
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FHL1 | HPLH1 | 不明 |
FHL2 | PRF1 | Perforin |
FHL3 | UNC13D | Munc13-4 |
FHL4 | STX11 | Syntaxin11 |
FHL5 | STXBP2 | Munc18-2 |
型 | 蛋白 | 責任遺伝子 |
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XLP1 | SLAM-associated protein | SH2D1A |
XLP2 | X-linked inhibitor of apoptosis(XIAP) | BIRC4 |
型 | 蛋白 | 責任遺伝子 |
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Griscelli Syndrome ll | Rab27A | RAB27A |
Chédiak-Higashi Syndrome | LYST(Lysosomal trafficking regulator) | CHS1/LYST |
Hermansky-Pudlak Syndrome ll | AP3のβサブユニット | AP3B1 |
発熱、汎血球減少、肝脾腫、播種性血管内凝固症候群(DIC)、全身倦怠感、リンパ節腫脹、腹水、出血などである。
血球を食べてしまうので、赤血球、白血球、血小板が激減する。特に血小板の減少があまり激しいと、治療するまもなく重篤な出血(脳出血、消化管出血など)をひきおこし命を落とす。凝固能も低下する。トリグリセリドが異常に上昇するのは特徴的といわれる。フィブリノーゲンは低下する。フェリチン、可溶性IL-2受容体の上昇は(発熱+血球減少という検査前情報を含めれば)診断的な情報である。腫瘍マーカーのひとつであるNSEも上昇するという[2]。
骨髄生検による。異常なマクロファージが自らの血球を貪食している像が見られる。
基本的には基礎疾患の治療であるが、EBウイルスによる最重症型などでは早期にエトポシドのようなきわめて強力な(そして副作用の強い)治療に踏み切らなければならないといわれている(HLH-94プロトコル)。新しい治療法ではさらにシクロスポリンを早期から併用する(HLH-2004プロトコル)。