本作の表題曲「風にきえないで」は、1996年2月に行った各メンバーがデモを披露する曲出し会において、tetsuyaが提出したデモを基に制作された[2]。この曲出し会は、アルバムに先駆けて発売する一作目のシングル表題曲を決めるもので、この曲以外に「Lies and Truth」や「the Fourth Avenue Café」が提出されていたが[2]、夏に発表するシングルとして「風にきえないで」が表題曲に決定している。なお、本作の収録曲は、1996年4月3日から同年5月29日にかけて開催したライヴツアー「Kiss me deadly heavenly '96」の一部公演で先行披露されている。この曲は、本作以降にtetsuyaが作曲したL'Arc〜en〜Cielの楽曲に通ずる、疾走感溢れるポップでメロディアスなロックナンバーとなっている。なお、この曲のデモ制作において作曲者のtetsuyaは、オケに加え歌のメロディも制作している。これまでのL'Arc〜en〜Cielの楽曲制作では、コード進行やオケを作った者を作曲クレジットするという慣例になっており[3]、歌メロはボーカリストであるhydeがほぼすべて手掛けていた。こういった制作手法をtetsuyaは「昔のヘヴィメタルバンドにありがちな作り方[4]」と表現している。そのためこの曲が、hyde以外のメンバーが歌メロを手掛けたバンド初のシングル表題曲となっている。この新たな制作手法で、1996年12月に発表したアルバム『True』に収録された楽曲の多くが手掛けられており、このアルバム以降の作品では基本的に作曲者が歌メロまで制作する決まりになったという。余談だが、2021年に受けたインタビューにおいてtetsuyaは「バンド30年の歴史の中でのターニングポイントとなった曲」としてこの曲をあげている[5]。tetsuyaは同インタビューで「この曲がヒットしたとは思ってないんですけど、なんというか"風にきえないで"から、曲の作り方がちょっと変わったかなって感じがするんですよね。"風にきえないで"からアレンジをしっかり決めていくようになりました。それまでよちよち歩きだったバンドが、そこで初めて立ち上がったというか、今のL'Arc〜en〜Cielの原型が作られた印象ですね、個人的には[5]」と語っている。(詳細は楽曲解説の項目を参照)
また、カップリング曲には、新曲として「I'm so happy」が収められている。この曲はカップリング曲という位置付けでありながらリスナーからの人気が高く、2006年にバンド結成15周年を記念し行ったライヴ「15th L'Anniversary Live」の開催前に、公式サイトで実施した「演奏曲目リクエスト投票」で5位にランクインしている。ただ、投票が行われた結成15周年ライヴでこの曲は演奏されず、約5年後の2011年1月1日に開催したバンド結成20周年の幕開けとなるライヴ「20th L'Anniversary Starting Live "L'A HAPPY NEW YEAR!"」で、ライヴ「1997 REINCARNATION」以来約13年ぶりに演奏されている。ちなみに、メンバーであるsakuraもこの曲を気に入っており、本作発売当時のインタビューで「この曲のすべてが好き。各メンバーのプレイもすべて[6]」とコメントしている。余談だが、2012年5月29日に放送されたテレビ朝日系番組『musicる TV』における「3曲で通になれる」というコーナーでL'Arc〜en〜Cielが取りあげられた際、司会のヒャダインは"オススメ曲3つ"のうちの1位として「I'm so happy」をあげている[7]。また、「I'm so happy」は、2014年11月8日に行われた音楽雑誌『音楽と人』主催イベント「TOKYO ACOUSTIC SESSION」おいて、小林祐介(THE NOVEMBERS)と波多野裕文(People In The Box)によりカバーされている[8]。
なお、本作に収録された楽曲はhydeがこれまでに手掛けてきたリリックと比べ、比較的にポジティブな歌詞が綴られている。これはhydeの作詞作業に対する姿勢の変化が大きく影響しており、hydeは「アルバム『heavenly』の頃とか、詞を書いててつらかったんですよ。もう、吐きそうな気分で書いてたり。そういうのが嫌になったし、なんかスッキリしないなって思って。もちろんこれまでの詞を否定するつもりもないし、ウソついてたつもりもないけど、今、僕が書きたいのはこういう前向きの詞なんです[9]」と本作発売時に受けた音楽雑誌のインタビューで語っている。そのためhydeは、本作を「自分の殻を壊した詞を作りたいなと思ってて、その第1弾がこの作品[9]」「僕にとっては愛にあふれた作品[10]」と表現している。特に、カップリングとして収録した「I'm so happy」について、hydeは「今まで書いた詩の中では、一番前向きな気持ちの詩[10]」と本作発売当時に語っている。
余談だが、この曲は1998年に開催したライヴツアー「Tour '98 ハートに火をつけろ!」の後、長きにわたりライヴで演奏されていなかったが、2020年に開催したライヴツアー「ARENA TOUR MMXX」において約22年ぶりに披露されている。
4thアルバム『True』にはアルバムバージョンとなる「"True" Mix」としてこの曲を収録している。アルバムに収録されたバージョンでは、シングルバージョンを手掛けたレコーディング・エンジニアとは異なるエンジニアを起用している[15]。このアルバムミックスについてtetsuyaは「僕、(アルバムバージョンを手掛けた)このエンジニアの人の低音の感じとか好きで。すごく響くんですよね。だから、そういうところをこの曲でも出してくれたらなと思ってたんですけど、すごくよく出してくれて。シングルとはまた違ったよさを引き出してくれてるんじゃないかと思います[15]」と語っている。また、このアルバムミックスではミックス変更以外に、イントロのギターをカットし、一部ギターのリテイクも行っている。ちなみに、本作に収録されたシングルバージョンは、2003年に発表したベストアルバム『The Best of L'Arc〜en〜Ciel 1994-1998』に初収録されている。
歌詞は、ヘヴィーで内省的な詩の裏に、前向きな想いが隠されているリリックとなっている。歌詞について、hydeは「パッと見はきつい言葉ばかり書いてるし、ダークな詩だと思うんですけど。僕は今まで書いた詩の中では、一番前向きな気持ちの詩だと思ってる[10]」と本作発売当時のインタビューで語っている。また、歌詞には<I love you>という、ストレートな愛情表現を綴ったフレーズが何度も登場しており、曲中でhydeはそのフレーズを荒々しく歌唱している。このフレーズについて、hydeは「(<I love you>は)"こう歌いたい"って自然と出てきたんです。詩が浮かんできた時点でライヴで歌う姿が想像できたし、自分でも感動できるんじゃないかなとも思えましたね[10]」と語っている。
さらに、この曲はsakuraにとって非常に思い入れのある楽曲となっており、本作発売当時のインタビューにおいてsakuraは「この曲のすべてが好き。各メンバーのプレイもすべて。hydeの書く詩って、俺は好きだけど、「I'm so happy」は、今までの詩の中ではいちばん好き。だって珍しくツアーで"コーラスさせろ"って立候補したもの[6]」「俺にとっては、いちばんリアルな歌だった[6]」と絶賛している。
余談だが、本作発売から約8年後の2004年3月14日には、hydeがソロ名義で開催したライヴツアー「2004 FIRST TOUR 666」のZepp Sendai公演において、hydeがゲストドラマーとしてsakuraを招き、この曲をセルフカバーしている。また、2006年12月25日に行われた所属事務所主催のライヴイベント「天嘉 伍 -DANGER Ⅴ-」では、hydeとsakuraと事務所のミュージシャンでこの曲を披露している。さらに2024年には、tetsuyaが企画したL'Arc〜en〜Cielのトリビュートバンド、Like〜an〜Angel主催のライヴで、tetsuyaとsakuraがこの曲を演奏している[18]。
2011年にはhydeプロデュースのもとで再びこの曲をアコースティックにリアレンジし、38thシングル「X X X」に「I'm so happy -L'Acoustic Version-」として収録している。このアコースティックバージョンでは、アレンジと歌詞を合わせるため[19]、オリジナルから一部歌詞が変更され、ボーカルの録り直しが行われている[19]。歌詞を変えた経緯について、hydeは「歌うときに少々メロディが変わるような歌い方をしたかったんです。フェイクがガンガン入るような。でも歌詞が決まっててもう何回も歌ってる曲って自分の中でメロディがロックされてて、すごく崩しにくいんですね。だったら一回、歌詞を失くして、ラララから歌ったほうがフェイクは入れやすい。それで一度自由に歌って、その後にもう一回歌詞をもってきたら、どうしても合わないところがあったので、じゃあ今の解釈で変えてみようって。当時は照れたり表現の方法を知らなくてできなかったことを今の俺がやるとどうなるのかなって気持ちも込めつつ、当時のわかりにくかったところをわかりやすくするのもアリだろうと[19]」と語っている。また、このバージョンのドラム録りではyukihiroがスティックの代わりにブラシを使っている[20]。