高野山真言宗(こうやさんしんごんしゅう)は、真言宗の宗派である。総本山は金剛峯寺。別称として、高野宗・高野派。
全国約3700の末寺を包括する包括宗教法人である。
最高職は管長で、総本山金剛峯寺の座主を兼ねる。現在の管長は2022年11月に就任した第415世長谷部真道大僧正。任期は4年。
宗務は宗務総長及び各部長が方針を定める。各役員は、総本山金剛峯寺の責任役員を兼ねる。
高野山(和歌山県伊都郡高野町)は816年(弘仁7年)に嵯峨天皇より空海に下賜された。それ以後、高野山内に伽藍・諸堂を整備して、修法と門弟の教育を行った。
1593年(文禄2年)に豊臣秀吉が母・大政所の追善菩提のために高野山に建立した清巌寺と、その隣にあった1590年(天正18年)に木食応其が建立した興山寺を、1869年(明治2年)に合併して寺号を金剛峯寺とした。青巌寺は、建立当初は寺号を剃髪寺と称していた。興山寺は後陽成天皇より「興山寺」の勅額が下賜された勅願寺であった。
合併以前は、寺号の金剛峯寺は高野山全体を指す名称であった。現在のように特定の寺院を指して寺号とすることはなかった。現在の金剛峯寺の建物は1863年(文久3年)に建立され、高野山真言宗管長(兼金剛峯寺座主)の住居としても使用されている。
明治政府の宗教政策により、他の真言宗宗派と1879年(明治12年)に合同するが、1900年(明治33年)9月、金剛峯寺を本山とする真言宗高野派として独立する。
1926年(大正15年)には(真言宗御室派(総本山仁和寺)・真言宗大覚寺派(大本山大覚寺))と合同して古義真言宗を組織し、金剛峯寺は古義真言宗総本山となる。
1941年(昭和16年)3月、古義真言宗・新義真言宗系の宗派が政府の政策によって合同し、大真言宗が成立する。
大真言宗から1946年(昭和21年)高野山真言宗として独立、1952年(昭和27年)2月18日に包括宗教法人認証。
2013年(平成25年)2月末、資産の一部を金融商品で運用し、2002年(平成14年)4月から2012年(平成24年)5月までの間に9億0184万円の利益と6億8933万円の短期的な損失を出していたことが公になった。[1][2][3][4]。2月27日、宗会(=議会)で宗務総長不信任決議が行なわれ、これを受けて庄野光昭総長は宗会を解散した[5]。
2013年6月7日、総長選挙に末寺の住職一名が立候補をし、同月下旬に開催予定の臨時宗会で承認された。
2015年、高野山開創1200年記念大法会が執行された。
明治19年(1887年)金剛峯寺法規を制定し、金剛峯寺の最高位の役職である山主を座主と改称した。その当時の座主職は獅子岳快猛。仁和5年(889年)、第2世真然が東寺の一の長者であった時、壽長を奏薦して座主にした古例によった。高野山最初の座主である[6]。
対して、13世紀末に古義真言宗から別れ、覚鑁(興教大師)を派祖とする、大日如来の加持身説の教学(新義)を持った新義真言宗(新義派)があり、根来寺(新義真言宗総本山)(和歌山県)から分流した新義真言宗諸派(真言宗智山派・真言宗豊山派など)がある。
住職資格上記に加えて、法流禀承(ほうりゅうほんじょう)を受ける必要がある。
住職以外に、副住職を置く寺院がある。
高野山真言宗の寺院住職に補任されて、20年を経るなど、高野山真言宗の定める要件を満たすと、名誉住職(めいよじゅうしょく)の称号が許される。
高野山真言宗では住職には任期がなく、終身制を採っていたが、高齢などの理由で住職を辞した場合、辞した住職は、厳密にいうと身分上、その住職が務めていた寺院の徒弟となる。他の徒弟と同じ身分となる。これは、住職を辞して後も引き続き寺院に居住して、後継の住職に対して指導・教育に当たるとき、身分上と言えども、寺院の徒弟(前住職)が住職に指導するということになってしまうので、住職を辞しても身分を保障する配慮として、名誉住職という地位を設けた。また、名誉住職を設けることで、住職の交代を容易にして世代交代を活発化させる目的もある。
住職と名誉住職の、寺院内での職務上の権利の差異はほとんどないが、名誉住職に関しては、高野山真言宗管長の被選挙権がないなど一部制限が設けられている。
僧階以外にも、各種の階級・称号等が設けられている。
(級数・僧階・特遇称号・学階・教階)(資格認定・色衣) (称号が無い場合は無と記載する) ※特遇称号・学階・教階については、その僧階の者全てが持っているわけではなく、それぞれ協議が行われて任命あるいは贈呈などが行われる。
(緋色の折五条の着用を許される。)
(緋色の折五条(略式の袈裟の一種)の着用を許される。権大僧正に昇階した記念として、総本山金剛峯寺より、緋色の折五条を贈呈(1回限り)される。
宗務支所内の各種事務処理を行う機関であると共に、宗務支所内寺院を統括する。宗務支所ごとに代議員・副長などを置いて、宗務支所下の寺院住職・寺族がその役職に就く。宗務支所に置かれる役職は、各宗務支所ごとに概(おおむ)ね差異は無いが、宗務支所の状況に応じて、独自の役職を設けることがある。また、事務を行う事務局が設けられることもある。