ブルーエンジン4 (Blue Engine 4) またはBE-4は、アメリカ合衆国の宇宙企業ブルーオリジン社が開発した推力2,450 kNの大型の液体燃料ロケットエンジンである[3]
元々ブルーオリジン社が開発する大型ロケットのニューグレンに使用するべく開発されており、BE-4を第一段に7基用いるニューグレンは45トンの重量物を衛星軌道に乗せる能力がある。後にユナイテッド・ローンチ・アライアンス (ULA) 社のアトラスVの後継機ヴァルカンにも採用されており、最初の打ち上げは2023年初頭のヴァルカンの予定となっていた[5]。しかし、2023年6月30日の試験中に爆発事故を起こして改良が必要となり、時期が未定となっていた[6]。 ヴァルカンロケットは、2024年1月8日初打ち上げに成功した[7]。
ブルーオリジンは2011年にBE-4の開発を開始した。新型のエンジンは液体酸素と液化天然ガスに推進剤を変更したエンジンである。同社は2014年9月まで開発していることを公表しなかった[8]。
2014年9月にスペースニュースで[9]ULA社がブルーオリジンのBE-4を新型打ち上げ機のエンジンとして選択した事が取り上げられた[9]。
2015年4月には開発作業が並行して進められていることが報じられた。1つの計画は実物大のBE-4 パワーパックで、動弁系とターボポンプのセットで燃料/酸化剤を混合して噴射機と燃焼器に送る。2つ目の計画は縮小版のエンジンの噴射装置であり[10]、2015年初頭に試験に入る予定であるとされた。
その後、2016年末には実物大エンジンの試験に入るというスケジュールが報じられ[10]、2017年3月に1基目のBE-4が完成した事が発表された[11]。燃焼試験は2017年10月より開始され、2018年3月には65%の出力で114秒の試験に成功した[12]。
2023年6月30日の燃焼試験中に爆発事故を起こした[6]。
ブルーオリジンではBE-4を独自の人工衛星打ち上げロケットに搭載する他、エンジンの外販もできるように開発を進めており、ULA社の次期ロケットでの採用が伝えられている[13]。
2014年末、ブルーオリジンはULA社とBE-4エンジンの共同開発に合意し、新型のエンジンを改良型アトラスVの後継機であるヴァルカンのエンジンとして採用する事を決めた。ヴァルカンは2基のBE-4を搭載している[14]。
ULA社が共同事業を発表したのは、2014年ウクライナ騒乱によりロシア製エンジンの信頼性と供給について地政学的・政治的に深刻な懸念が出てきたためである[13]。ULA社はBE-4を搭載したヴァルカンの打ち上げを2019年以降に予定していた[8]が、BE-4開発の遅れに伴い、2024年1月と大幅に遅れた[14]。
ただし、このRD-180換装計画ではAR-1も長らく対立候補とされていた。メタンを推進剤とするBE-4と異なりAR-1はRD-180と同様にケロシンを推進剤とする[15]。ULAは2018年9月、AR-1ではなく、BE-4を1段目エンジンとして採用したことを発表した[16]。
ユナイテッド・ローンチ・アライアンスのメンバーであるボーイング社はDARPAのXS-1再使用型ブースター計画にBE-4を搭載できるか検討を行った[17][要文献特定詳細情報]。結果、2017年には、XS-1にはエアロジェット・ロケットダインのAR-22が採用、2021年に試験飛行予定と発表された[18]。しかし、XS-1は2020年に開発が中止され実際には利用されなかった[19]。
- 推力: 最大出力時2,400 kN (550,000 lbf)[8]
- ^ Achenbach, Joel (2014年9月17日). “Jeff Bezos's Blue Origin to supply engines for national security space launches”. The Washington Post. オリジナルの2014年9月25日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140925075923/http://www.washingtonpost.com/national/health-science/jeff-bezos-and-blue-origin-to-supply-engines-for-national-security-space-launches/2014/09/17/59f46eb2-3e7b-11e4-9587-5dafd96295f0_story.html 2014年9月27日閲覧。
- ^ “ULA taps Blue Origin for powerful new rocket engine”. Spaceflightnow.com (September 17, 2014). December 20, 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年4月8日閲覧。
- ^ “BE-4” (英語). Blue Origin. 2024年3月22日閲覧。
- ^ Roulette, Joey (2022年10月10日). “United Launch Alliance's debut Vulcan mission slips to 2023 -CEO” (英語). Reuters. https://www.reuters.com/lifestyle/science/united-launch-alliances-debut-vulcan-mission-slips-2023-ceo-2022-10-10/ 2022年10月26日閲覧。
- ^ a b Sheetz, Michael (2023年7月11日). “Jeff Bezos’ Blue Origin rocket engine explodes during testing” (英語). CNBC. 2023年7月16日閲覧。
- ^ ULA. “United Launch Alliance Successfully Launches First Next Generation Vulcan Rocket” (英語). newsroom.ulalaunch.com. 2024年1月8日閲覧。
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Ferster, Warren (2014年9月17日). “ULA To Invest in Blue Origin Engine as RD-180 Replacement”. Space News. http://www.spacenews.com/article/launch-report/41901ula-to-invest-in-blue-origin-engine-as-rd-180-replacement 2014年9月19日閲覧。
- ^ a b Gruss, Mike (2015年4月24日). “Evolution of a Plan : ULA Execs Spell Out Logic Behind Vulcan Design Choices”. Space News. http://spacenews.com/evolution-of-a-plan-ula-execs-spell-out-logic-behind-vulcan-design-choices/ 25 April 2015閲覧。
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- ^ “ブルー・オリジンの新ロケットエンジン「BE−4」、アマゾンCEOが完成を初ツイート”. Sorae.jp (2017年3月7日). 2017年3月9日閲覧。
- ^ “ブルー・オリジン、「BE-4」エンジンの認証試験を年内にも完了予定”. Sorae (2018年4月24日). 2018年10月6日閲覧。
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Foust, Jeff (2014年9月22日). “Commercial crew and commercial engines”. The Space Review. http://www.thespacereview.com/article/2605/1 2014年10月1日閲覧。
- ^ a b “ULA、新型ロケット「ヴァルカン」初号機打ち上げ 月着陸船ペレグリンの分離に成功”. sorae 宇宙へのポータルサイト (2024年1月8日). 2024年3月22日閲覧。
- ^ Mike Gruss (27 February 2015). “Timing of Russian Engine Ban Puts ULA, Air Force, in a Bind”. Space News. http://spacenews.com/timing-of-russian-engine-ban-puts-ula-air-force-in-a-bind/ 2015年4月8日閲覧。
- ^ “ブルー・オリジン「BE-4」、次期ロケット「ヴァルカン」に採用決定”. Sorae (2018年10月1日). 2018年10月2日閲覧。
- ^ http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2014/07/15.aspx
- ^ “ボーイング、スペースプレーン実験機「XS-1」製造へ 初飛行は2020年”. Sorea.jp (2017年5月25日). 2017年5月25日閲覧。
- ^ “宇宙分野で後退続くボーイング。衛星、宇宙船、スペースプレーンでも(秋山文野) - 個人”. Yahoo!ニュース. 2022年1月22日閲覧。
- FOUST, JEFF (2022年1月). "NASA'S SPACE LAUNCH SYSTEM WILL LIFT OFF". IEEE Spectrum. 59 (1).
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