BRD4(bromodomain containing 4)は、ヒトではBRD4遺伝子にコードされるタンパク質である[5][6]。
BRD4はBET(bromodomain and extraterminal domain)ファミリーの一員であり、このファミリーには他にBRD2、BRD3、BRDTが含まれる[7]。BRD4はBETファミリーの他のメンバーと同様に、アセチル化されたリジン残基を認識する2つのブロモドメインを持つ[8]。BRD4には伸びたC末端ドメインも存在し、この領域に関してはBETファミリーの他のメンバーとの配列相同性はほとんど見られない[7]。
BRD4はBD1、BD2と呼ばれる2つのブロモドメインが存在し、これらは2つのループで連結された4本のαヘリックスから構成される[9]。ET(extraterminal)ドメイン構造は3本のαヘリックスと1つのループから構成される[10]。BRD4のC末端ドメインは転写伸長因子P-TEFbやRNAポリメラーゼIIとの相互作用を介して遺伝子の転写を促進する[11][12][13]。
BRD4タンパク質は、有糸分裂時に染色体に結合しているマウスMCAPタンパク質や、ヒトのセリン/スレオニンキナーゼBRD2(RING3)と相同である。これらのタンパク質には、クロマチンへの標的化に関与していると考えられる保存性配列モチーフである、2つのブロモドメインが含まれている。BRD4遺伝子はNUT正中線癌を特徴づける、t(15;19)(q13;p13.1)転座の19番染色体上の標的となっていることが示唆されている。この遺伝子には2つの選択的スプライシングバリアントが記載されている[6]。
NUT正中線癌の症例の大部分は、BRD4遺伝子のNUT遺伝子への転座が関係している[14]。BRD4は、Mycのほか、多発性骨髄腫、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病など血液のがんにおける腫瘍のドライバー遺伝子の発現に必要とされることが多い[15]。
BRD4はBET阻害剤の主要な標的であり[15][16]、現在臨床試験による評価が行われている。
特筆すべきものとしては、BRD4はPID(P-TEFb interaction domain)を介したP-TEFbとの相互作用が挙げられし、P-TEFbのキナーゼ活性を刺激して、RNAポリメラーゼIIのCTDのリン酸化を刺激する[17][18]。
BRD4はGATA1[19]、JMJD6[20]、RFC1[21]、RFC2[21]、RFC3[21]、RFC4[21]、RFC5[21]と相互作用することが示されている。
BRD4はジアセチル化されたTwistタンパク質への結合への関与も示唆されており、この相互作用を破壊することでbasal-like乳癌の形成が抑制されることが示されている[22]。
BRD4はMS417など多くの阻害剤と相互作用することが示されており、MS417によるBRD4の阻害はHIV関連腎症でみられるNF-κB活性をダウンレギュレーションすることが示されている[23]。BRD4はアパベタロン(RVX-208)とも相互作用し[24]、アテローム性動脈硬化や心血管疾患の治療への利用に対する評価が進行している。