Bugtraq(バグトラック)は、コンピュータセキュリティに関するメーリングリストである。脆弱性に関する議論(攻撃方法やそのexploit、回避方法や解決方法も含まれる)、脆弱性を持つ製品情報などが主な議題として挙げられる。
1993年11月5日にScott Chasinによって創設され、1996年5月14日にAleph One(en)が管理を引き継いで今に至る。
創設当時、脆弱性に関して議論可能な場には「firewall」メーリングリストがあったが、脆弱性に関する話題は議論の主題ではなく、exploitコードの投稿が避けられる場であった。その他には、Bugtraqよりも5年前、1988年に設立されたCERT/CCがあった。CERT/CCの設立目的の一つに「セキュリティ脆弱性の認定、修復する研究者コミュニティの中心となること」というものがあったが、当時のCERT/CCは単に脆弱性報告の場でしかなかった。Aleph Oneは当時のCERT/CCのことを以下の様に批判している。
このような歴史的背景の中で、「セキュリティにおける秘密主義」に対抗して登場したセキュリティ理念がフルディスクロージャであり、そのフルディスクロージャ運動の具現化の一つがBugtraqである。そのような背景から、Bugtraqでは詳細な攻撃手法はもちろんのこと、その実行コードであるexploitの投稿も認められている。
Scott ChasinからAleph Oneに管理が移るころまでの約3年間は、メーリングリスト参加者はせいぜい1,000人にも満たないものであったが、Aleph Oneに代わってからは徐々に増え、(Aleph Oneに行なわれた2001年のインタビュー時点で)40,000人を超える規模となった。初期においてはモデレータ制を採用していなかったが、徐々にS/N比が低下し、1995年6月5日からはモデレータ制となっている。サーバーには初期にはCrimelab.comを用いていたが、モデレータ制採用のタイミングでNetspace.orgに移行、その後、1999年に現在のSecurityFocus.comに移行している。なお、SecurityFocus.comを運営していたSecurityFocus社は、2002年8月6日にSymantec社によって買収されている[2][3]。
Bugtraqには一時、日本語版が存在していた。Bugtraq-JPと呼ばれ、1999年8月4日にLAC社の三輪によってSecurityFocus内に創設。終了時点では参加者は10,000人近い規模であったが、日本での脆弱性情報の取り扱いに関する整備が進んだことを受け、2006年3月17日に終了している[4]。
2009年現在もなお、発表される脆弱性の情報はほとんどBugtraqが網羅しており、最大手の交流の場として知られる。また、Bugtraq創設に伴って起こったフルディスクロージャの理念は、以下のように多数のセキュリティ関連の動きに影響を与えている。