eEF2K(eukaryotic elongation factor 2 kinase)は、ヒトではEEF2K遺伝子によってコードされる酵素である[5][6]。CAMKIII(calmodulin-dependent protein kinase III)などの名称でも知られる[7]。
eEF2Kはカルモジュリンを介したシグナル伝達経路に関与する、高度に保存されたプロテインキナーゼであり、上流の複数のシグナルをタンパク質合成の調節と関連付ける。eEF2KはeEF2をリン酸化し、その機能を阻害する[5][8]。
eEF2Kの活性は、カルシウムとカルモジュリンに依存している。eEF2Kの活性化は、連続的な2段階の機構で進行する。まず、カルシウム-カルモジュリンが高い親和性で結合してキナーゼドメインを活性化し、Thr348の自己リン酸化を迅速に開始する[9][10]。次の段階では、Thr348の自己リン酸化がキナーゼのコンフォメーション変化を引き起こす。この過程はキナーゼドメインのアロステリックなリン酸結合ポケットへのリン酸化Thr348の結合によって行われていると考えられている。その結果、eEF2Kの基質であるeEF2に対する活性が増大する[10]。
eEF2KはSer500の自己リン酸化によって、カルシウム非依存的な活性を獲得する。しかし、その活性が維持されるためにはカルモジュリンが酵素に結合したままでなければならない[9]。
eEF2Kの活性は多くのがんで増大しており、抗がん治療の有効な標的である可能性がある[5][11]。
eEF2Kは、神経のタンパク質合成の調節を介して、ケタミンの迅速な抗うつ効果に関与している可能性がある[12]。
eEF2Kの発現は乳がんや膵臓がんなどのがん細胞でアップレギュレーションされていることが多く、細胞の増殖、生存、運動性/遊走、浸潤性や腫瘍形成を促進する[13][14]。