開発元 | IBM |
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最新版 |
V6.3 / 2011年10月
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対応OS | クロスプラットフォーム |
種別 | システム管理 |
ライセンス | プロプライエタリ (IPLA) |
公式サイト | IBM Systems Director |
IBM Systems Director は、IBMのサーバー製品ブランドであるIBM Systemsの、プラットフォーム管理(システム管理)ソフトウェアである。
IBM Systems Directorは、IBMが提供するシステム管理ソフトウェアのシリーズである。特にハードウェアと密接に連携して、サーバーの監視・管理機能を提供する。歴史的にはIAサーバー(x86サーバー)を中心に名称変更を重ねながら発展し、現在ではハードウェアとしてはインテル及びx86互換プロセッサ、RISC (POWER)、System zをサポートし、OSとしてはWindows、Linux、AIX、i5/OS、VMware ESX Server、Hyper-Vなど幅広くマルチプラットフォームをサポートしている。日本市場においては日本アイ・ビー・エム株式会社が製品の提供、およびサポートを行っている。なお、IBMソフトウェア事業部が提供するTivoliブランドのシステム管理の製品群やCA Unicenter、HP Openview、Microsoft Systems Management Server、System Center Operations Manager(MOM)、BMC Patrol、NetIQとの連携機能により、メッセージ処理やサービス管理などに関して一部の機能を連動させることもできる。
IBM Systems Directorの原型はアメリカ合衆国ノースカロライナ州、リサーチ・トライアングルのIBM Raleighの開発部門で開発され、1993年にx86サーバ/クライアントPC管理用ツール NetFinity Managerとして発表された。NetFinityという名称はIBMの造語で、NetworkとInfinityを掛け合わせたものである。NetFinity Managerは当初OS/2 2.0での稼働を前提に実装され、その後 Windows,Netwareなど他のOSに移植されていった。NetFinity Managerの操作ユーザーインターフェースがOS/2のGUIであるワークプレース・シェルに準じているのは、この開発経緯によるものである。また提供開始後の数年間において、稼働環境や機能の拡張・変更とともに何度も名称変更が行われてた。1996年にはIBMのシステム管理製品である「SystemView」の一つとして位置づけられ、「IBM PC SystemView」に製品名称になったが、同年後半には、IBMが買収したTivoli社の管理製品の一つにリブランドされ、「Tivoli TME10(Tivoli Management Environment) NetFinity」に名称変更された。ただし、TME10の"10"が意味する10種類の管理製品の中にNetFinity Managerは含まれておらず、そもそもNetFinity Managerは当時のTivoli社の"TME"と呼ばれる管理製品が採用していたTivoliマネージメントフレームワーク(TMF)上で稼働する構造ではなかった。また製品の開発や提供は、TivoliではなくIBMのPC Server部門で管轄で行われておりTivoli社の製品群との関係性は薄かった。翌1997年には"TME10"の名称は外され、発表当初の名称を若干変更したIBM Netfinity Manager(fは小文字に変更)とされた。
NetFinity Managerの技術上の大きな特徴は一般的な管理ソフトウェアでは、管理サーバを中心としたクライアントサーバ型の実装をされることが多いが、NetFinity Managerは、「マネージャーモジュール」「エージェントモジュール」間のピアツーピア型の実装であり専用の管理サーバを必要としない構造であったことで、管理者端末から管理対象のシステムに直接の通信で管理操作を行うことが可能であり、小規模環境の管理には非常に適している。ただし専用の管理サーバを設置しない場合は、管理対象からの故障通知などは、管理者端末が稼働しているときしか受信できないことになることや、NetFinity Manager自体は管理対象のインベントリ情報を蓄積するデータベースを持っていないことから、実際の利用では、専用の管理サーバを用意して「マネージャーモジュール」を導入することも多い。NetFinity Managerは管理対象情報を蓄積するインベントリデータベースを含んでおらず、インベントリ管理が必要な場合には製品に、DB2,Oracle DB, Lotus Notes,SQL Server等へのエクスポートをサポートしている。
管理対象との接続に利用可能なネットワークプロトコル対応の柔軟性にも特徴があり、TCP/IPや、当時のクライアントサーバで主流だったNetBIOSやIPXを介してのプロトコルを混在した管理も可能であるのはもちろん、IBMメインフレーム環境で主流だったプロトコルであるSNAにも対応していた。軽量なソフトウェアであり当時の低速なPC,サーバの能力でも軽快な操作が可能であったが、ピアーツーピアの構造上、管理操作は、同時並列ではなく、順次実行であり、多台数の管理対象への管理操作を同時に行うことが必要な管理業務には、完了に時間がかかるなど、多分に適していない面があった。ただし、管理中継サーバを一定の管理対象数ごとに配置することなど、現場での工夫である程度の最適化を行うことは可能である。管理者の使い勝手がよい小回りの利く管理ソフトウェアであったことから利用者の評価は高くLAN Magazine誌「LAN Management」部門にて「Products of the year」を受賞している。
なお、IBM製 x86サーバでは初期から、OSを介さずに直接ハードウェアにログインして管理する機能を「Advanced Systems Management Adapter」、「システム管理PCIアダプター」、「リモート管理アダプター」などのオプション(一部のハイエンド機種では標準)として提供していたが、それらの機能はこのNetFinity Managerからの操作でも利用可能であった。
1998年にはNetfinity ManagerのアドオンソフトとしてNetCube V1.0が発表された。NetCubeは日本アイ・ビー・エム大和研究所が日本市場の顧客の要望に応えるために独自開発した製品であり、Netfinity Managerでは標準提供されていなかったソフトウェア開発キット(COMコンポーネント)、トポロジー管理、ソフトウェア配布、後にジョブ管理などの機能がV2.0で追加提供された。
一方でIBMのPC部門(現Lenovo)では,1996年にIntelが発表したクライアントPCの管理規格の構想であるWfM(Wired for Management)及び IntelとIBM間で結ばれた AMA (Advanced Manageability Alliance) の技術提携やDMTFで提唱されたAOL(Alert on LAN)やWBEM(Web-Based Enterprise Management),DMI(Desktop Management Interface),SMBIOS(System Management BIOS)に基づいたクライアントPC管理ソフトウェアの開発を進めており、1997年にはWake-on-LAN及びRIPL(LCCM v2.0以降はPXE)により、ネットワーク経由でBIOSのプログラム・設定更新やOS配布を実施するLCCM(LAN Client Control Manager) (後にRDM(Remote Deployment Manager)に名称変更)を提供、さらに1998年にはAOL,WBEM,DMI,SMBIOSなどのDMTF規格に基づいて独自にクライアントPC(IBM PC/ThinkPad)専用の管理ツールUMA(Universal Management Agent)(後にUMS(Universal Management Services)に名称変更)の発表を行った。これらの管理ツールは当時において非常に先進的な技術を採用した製品であり、また一部の機能についてはTivoli NetView,Tivoliマネージメントフレームワーク(TMF),Microsoft SMS,Netfinity Manager,LANDeskなどのシステム管理製品と組み合わせての利用を想定した連携機能を提供していた。
これらの別々の目的で開発された管理ツール群を統一するため、IBMは前述のTivoliのTivoli IT DirectorをベースにしたNetfinity Director with UM Servicesを新製品として開発することを決め、Netfinity Manager,UMS,RDMはこの新製品へ統合されることとなった。これがIBM Systems Directorに繋がる直接の原型となっている。Netfinity ManagerとUMSの機能の中で、クライアントPCとサーバに共通して必要となる管理機能はNetfinity Director with UM Services本体で提供されており、サーバのみで必要になる管理機能とクライアントPCのみで必要になる管理機能はそれぞれ、Netfinity Director with UM Servicesへのアドオンソフトウェア(UM SERVER EXTENSIONS/ UM DESKTOP EXTENSIONS/ RDM(Remote Deployment Manager))として提供され、利用者は管理対象となる環境や要件に応じて、必要とする管理機能を選択できるようになった。
Netfinity Director with UM Servicesが発表された当初(1999年)はライセンスキー変更のみで日本チボリシステムズが提供するTivoli IT Directorへのアップグレードが可能であることなど、Tivoli社からTivoli IT Directorからソフトウェア配布機能などを省略したサブセットの提供を受け、同製品にIBMサーバ/IBM PC/Thinkpadの管理機能を追加した製品であった。しかし、まもなくTivoli社はワークグループ管理製品に関しての戦略を転換し,2000年にはTivoli IT Directorの製品開発と提供を終息したため、IBMが製品を引き継ぐ形で開発と提供を行っていた。
2000年にIBMはIAサーバー(x86サーバー)のブランド名をこの管理ソフトウェアの名称から"Netfinity Server"とした。2001年にはIAサーバーのブランド名がNetfinityからxSeriesとなったのを受けてNetfinity Director with UM Servicesから"IBM Director"へと名称が変更され、その後、管理対象がIA (x86) アーキテクチャーだけではなくIBM Systems全体にサポート範囲が拡大されたことを受けて、2008年第4四半期にIBM Directorから現在の名称である"IBM Systems Director"へと名称が変更された。
V5.2までのIBM Systems DirectorはTivoli IT Directorをベースとしたソフトウェアであったが、2008年に構造を一新し,WebSphereをベースとしたV6.1をリリースし、機能やユーザーインターフェースを一新した。2014年に実施されたIBMのx86サーバ事業のLenovoへの事業移管ではIBM Systems Directorは、移管対象に含まれなかったため、2016年現在もIBMが引き続き製品の販売とサポートを行っている。ただし2016年現在のLenovo社の現行販売サーバはIBM Systems Directorへの対応をサポートしておらず、自社製サーバ専用のシステム管理製品として、IBM Systems Directorとは互換性のない別のソフトウェアとして、2015年に「Lenovo XClarity」を発表している。なお、IBM Systems Directorのリリースは2011年に発表されたV6.3以降、後継バージョンはIBMからリリースされていないが、既存顧客へのサポートは2018年4月30日まで提供することが表明されている。
IBM Systems Directorはエージェント、コンソール、サーバーの3つのコンポーネントで構成される。
監視対象システムに導入するソフトウェアで、共通エージェントとプラットフォームエージェントの2つのモジュールから成る。共通エージェントはサーバーとの接続、認証に用いられ、プラットフォームエージェントはサーバープラットフォームの管理を担う。エージェントを導入しないエージェントレスでの管理も可能であり、収集できる構成情報は限定されるが、軽度・暫定的な管理操作やDirectorエージェントの導入を行う場合に活用できる。
管理者が監視対象システムに対する管理操作やDirectorサーバーの設定操作を行うGUIで、ウェブブラウザからサーバーに接続して起動する。専用のシステムやソフトウェアの導入は不要で、Firefox、Internet ExplorerなどサポートされるウェブブラウザとIBM JREがインストールされたPCで実行できる。ログインユーザー毎に異なる操作権限を持たせコンソールの初期画面をカスタマイズしメニューを制限することが可能である。
サーバーはコンソールで行った管理操作の実質的な処理を行う。またその前提としてエージェントと通信して監視対象システムを検出・登録し、その構成情報をデータベースで管理する。
Plug-inと総称されるアドオンソフトウェアをダウンロードしSystems Director環境にインストールして利用できる。
IBM Systems Director 6.1がサポートするプラットフォーム/OSは以下である。
プラットフォーム | OS | サーバー | 共通エージェント | プラットフォーム・エージェント |
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Windows(32ビット) | Windows Server 2003 Datacenter Edition R2 | OK | OK | |
Windows Server 2003 Enterprise Edition/Standard Edition R2 | OK | OK | OK | |
Windows Server 2003 Datacenter Edition (SP1/2) | OK | OK | ||
Windows Server 2003 Enterprise Edition/Standard Edition (SP1/2) | OK | OK | OK | |
Windows Server 2008 Datacenter Edition (SP1) | OK | OK | ||
Windows Server 2008、Enterprise Edition/Standard Edition (SP1) | OK | OK | OK | |
Windows Vista Business/Enterprise/Ultimate | OK | OK | ||
Windows XP Professional Edition (SP1/2) | OK | OK | ||
Windows(64ビット) | Windows Server 2003 Datacenter x64 Edition R2 (SP1/2) | OK | OK | |
Windows Server 2003 Enterprise Edition/Standard x64 Edition R2 | OK | OK | OK | |
Windows Server 2003 Datacenter x64 Edition (SP1/2) | OK | OK | ||
Windows Server 2003 Enterprise Edition/Standard x64 Edition | OK | OK | OK | |
Windows Server 2008 Datacenter x64 Edition (SP1) | OK | OK | ||
Windows Server 2008 Enterprise Edition/Standard x64 Edition | OK | OK | OK | |
VMware: | VMware ESX Server 3.0/3.0.1/3.0.2/3.5/3.5.1/3.5.2 コンソール | OK | OK | |
VMware ESX Server 3.0/3.0.1/3.0.2/3.5/3.5.1/3.5.2 ゲストOS | OK | OK | OK | |
その他Windows | Microsoft Virtual Server R2 SP1(ゲスト・オペレーティング・システム) | OK | OK | |
x86 Linux(32ビット) | Red Hat Enterprise Linux AS 4.0 (Update 5/6/7) | OK | OK | OK |
Red Hat Enterprise Linux ES/WS 4.0 (Update 5/6/7) | OK | OK | ||
Red Hat Enterprise Linux AS 5.0 (Update 1/2) | OK | OK | OK | |
Red Hat Enterprise Linux ES/WS 5.0 (Update 1/2) | OK | OK | ||
Red Hat Enterprise Linux AS/ES/WS 5.0 Xen Kernel (Update 1/2) | OK | |||
SUSE Linux Enterprise Server 9 for x86 (Update 3/4) | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 for x86 (Update 1/2) | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 for x86 Xen Kernel (Update 3/4) | OK | |||
x86 Linux(64ビット) | Red Hat Enterprise Linux AS 4.0 AMD64/EM64T(Update 5/6/7) | OK | OK | OK |
Red Hat Enterprise Linux ES/WS 4.0 AMD64/EM64T(Update 5/6/7) | OK | OK | ||
Red Hat Enterprise Linux AS 5.0 AMD64/EM64T(Update 1/2) | OK | OK | OK | |
Red Hat Enterprise Linux ES/WS 5.0 AMD64/EM64T(Update 1/2) | OK | OK | ||
Red Hat Enterprise Linux AS/ES/WS 5.0 AMD64/EM64T/Xen Kernel (Update 1/2) | OK | |||
SUSE Linux Enterprise Server 9 for x86 AMD64/EM64T(Update 3/4) | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 for x86 AMD64/EM64T(Update 1/2) | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 for x86 AMD64/EM64T/Xen Kernel (Update 3/4) | OK | |||
POWER Linux(64ビット) | Red Hat Enterprise Linux AS 4.6/4.7 | OK | OK | OK |
Red Hat Enterprise Linux AS 5.1/5.2 | OK | OK | OK | |
Red Hat Enterprise Linux AS 5.2 (IBM BladeCenter QS21/QS22) | OK | OK | ||
SUSE Linux Enterprise Server 9 | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 | OK | OK | OK | |
AIX | IBM AIX 5.3 (TL06 SP4以降) | OK | OK | |
IBM AIX 6.1 (TL01 SP1以降) | OK | OK | ||
IBM i | IBM i 6.1 (i5/OS 6 リリース 1) | OK | ||
IBM i 5.4 (i5/OS 5 リリース 4) | OK |
プラットフォーム | OS | サーバー | 共通エージェント | プラットフォーム・エージェント | IBM z/VM MAP エージェント |
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z/Linux(31ビット) | Red Hat Enterprise Linux AS 4.0 Update1/2/3/4/5/6/7 | OK | OK | ||
SUSE Linux Enterprise Server 9 SP1/2/3/4 | OK | OK | |||
z/Linux(64ビット) | Red Hat Enterprise Linux AS 4.0 (64bit) Update1/2/3/4/5/6/7 | OK | OK | OK | |
Red Hat Enterprise Linux AS 5.0 (64bit) Update1/2 | OK | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 9 (64bit) SP1/2/3/4 | OK | OK | OK | OK | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 (64bit) SP1/2/ | OK | OK | OK | OK |
仮想化プラットフォーム | バージョン |
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ハードウェア管理コンソール | 7.3.3 SP2 (PTF MH01146)以降 |
7.3.4以降 | |
Integrated Virtualization Manager (IVM) | 1.5.2.1 以降 |
2.1 以降 | |
Microsoft Virtual Server | Microsoft Virtual Server 2005 R2 SP1 |
Virtual I/O Server | 1.5.2.1 以降 |
VMware ESX Server | VMware ESX Server 3.0.x サービス・コンソール |
VMware ESX Server 3.5.x サービス・コンソール | |
VMware ESXi | VMware ESXi 3.5 Update 2 以降 |
VMware VirtualCenter | VMware VirtualCenter V2.0.x |
VMware VirtualCenter V2.5.x | |
Xen | Red Hat Enterprise Linux 5.0 (Xen 3.0.3) |
Red Hat Enterprise Linux 5.1 (Xen 3.1) | |
Red Hat Enterprise Linux 5.2 (Xen 3.1.2) | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 (Xen 3.0) | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 SP1(Xen 3.0.4) | |
SUSE Linux Enterprise Server 10 SP2(Xen 3.2) | |
z/VM | z/VM 5.4 |
IBMソフトウェア製品(IPLA)であるが、IBM System機器上での利用には無償のライセンスとサブスクリプションが提供される。IBM製でないIAサーバーでのエージェントの利用には20台まで無償ライセンスが付与され、20台を超える場合はnon-IBMライセンスの購入が利用の条件となっている。
かつてはIBM System x、BladeCenterにCDが同梱されていた。現在はIBMサポートWebサイトからもダウンロード可能である。