MAPキナーゼキナーゼキナーゼ

Mitogen-activated protein kinase kinase kinase
識別子
EC番号 2.7.11.25
CAS登録番号 146702-84-3
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MAPキナーゼキナーゼキナーゼ: MAP kinase kinase kinase、略称: MAPKKKMAP3K)は、MAPキナーゼキナーゼに対して作用するセリン/スレオニンキナーゼである。MAPキナーゼキナーゼキナーゼはMAPキナーゼキナーゼを活性化し、MAPキナーゼキナーゼはMAPキナーゼを活性化する。MAP3Kにはいくつかの種類が存在するが、主に活性化するMAPキナーゼによって特徴づけられている。MAP3Kは、細胞増殖、細胞分化アポトーシスなどさまざまな細胞機能を担う。MAP3Kシグナルの持続期間と強度によって、どの経路が続いて活性化されるかが決定される。また、MAP3Kとその基質を近接させて反応をさせるために、足場タンパク質が利用される[1]。MAP3Kはがんアミロイドーシス神経変性疾患の治療標的ともなっている。

種類

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ヒトでは次に挙げるMAP3Kが知られている。

MAP3Kの分類と機能

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MAP3Kにはいくつかの種類が存在し、それらすべてがMAPキナーゼの上流で機能する。MAPキナーゼにはERKJNKp38 MAPKという主要な3つのクラスが存在し、それぞれMAP3Kによって調節されている。ERKはRAFファミリーのMAP3Kによって調節され、細胞成長、分化減数分裂を担う。おそらく最も詳細な特性解析がなされているのはRAFファミリー(RAF1、BRAF、ARAF)のMAP3Kである。これらはMAP2K1(MEK1)とMAP2K2英語版(MEK2)を活性化し、MAPK/ERK経路英語版を活性化するRasシグナルのエフェクターとして機能する。JNKはMEKK1/4、MLK2/3、ASK1、TAK1、TPL2によって調節される。p38 MAPKはMEKK1–4、MLK2/3、ASK1/2、TAK1、TAO1/2によって調節され、炎症アポトーシス、細胞分化、細胞周期の調節を担う。どのカスケードが引き起こされるかは、シグナルの種類、結合強度、結合の長さに基づいて決定される[1][5]

MEKK1はSEK1(MAP2K4英語版)のリン酸化を介してMAPK8英語版/JNKを活性化する[6]

MEKK3はSEKの活性化によってMAPK8/JNK8を、MEK1/2の活性化によってERK経路を調節する。p38経路の調節は行わない[7]

TAK1はTGF-βによる転写調節に関与している[8]

MAP3Kの活性化と不活性化

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MAP3Kを活性化する上流の刺激の大部分はストレスもしくは成長因子である。そうした因子には、分裂促進因子、炎症性サイトカイン小胞体ストレス酸化ストレス、紫外線照射、DNA損傷などが含まれる。大部分のMAP3KはGPCRを介して活性化される。他の機構も存在し、例えばASK1はTNF特異的な受容体型チロシンキナーゼによって活性化される。MAP3Kはセリン/スレオニン残基へのリン酸基の付加によって活性化されるため、ホスファターゼによって不活性化される。ASK1の調節に一般的に用いられるホスファターゼはPP5英語版である[9]。MAP3Kは活性部位とは別にドッキングドメインを持ち、他の基質への接触を可能にしている。さらに、MAP3Kは特異的カスケードの利用を保証するためにいくつかの足場タンパク質を利用する。こうした足場はMAP3K、MAP2K、MAPKの結合部位を持ち、シグナルが迅速に伝達されるよう保証している[5]

臨床的意義

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MAP3Kは細胞質と核の双方で生じる広範囲の細胞応答に関与しており、これらをコードする遺伝子の変異はいくつかの疾患の原因となる。ERK1/2の上流のMAP3Kの過剰発現と上皮成長因子受容体(EGFR)の増加は、トリプルネガティブ乳癌などの腫瘍形成をもたらす場合がある[10]。JNKやp38ファミリーのMAPKもしくはそれらの上流のMAP3Kの変異はアルツハイマー病の原因となる場合がある。同様の状況は脳内の過剰な酸化ストレス時にも観察され、これらのMAPKがアポトーシスを引き起こすことで脳細胞が破壊される。MAP3Kの1種であるMLKはパーキンソン病と関係しており、MLK阻害薬はパーキンソン病の治療薬となる可能性がある。JNKやp38のカスケードの過剰発現はクローン病多発性嚢胞腎に関与している。これらの経路の阻害薬は疾患の症状の治療に有用である可能性がある[11]

画像

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出典

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  1. ^ a b Morrison, Deborah K. (2012-11-01). “MAP Kinase Pathways” (英語). Cold Spring Harbor Perspectives in Biology 4 (11): a011254. doi:10.1101/cshperspect.a011254. ISSN 1943-0264. PMC 3536342. PMID 23125017. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3536342/. 
  2. ^ TAOK3 TAO kinase 3 [Homo sapiens (human) - Gene - NCBI]”. www.ncbi.nlm.nih.gov. 2022年1月4日閲覧。
  3. ^ TAOK3 Gene - GeneCards | TAOK3 Protein | TAOK3 Antibody”. www.genecards.org. 2022年1月4日閲覧。
  4. ^ TAOK3 - Serine/threonine-protein kinase TAO3 - Homo sapiens (Human) - TAOK3 gene & protein” (英語). www.uniprot.org. 2022年1月4日閲覧。
  5. ^ a b Qi, Maosong; Elion, Elaine A. (2005-08-15). “MAP kinase pathways” (英語). Journal of Cell Science 118 (16): 3569–3572. doi:10.1242/jcs.02470. ISSN 0021-9533. PMID 16105880. https://jcs.biologists.org/content/118/16/3569. 
  6. ^ “Activation of stress-activated protein kinase by MEKK1 phosphorylation of its activator SEK1”. Nature 372 (6508): 798–800. (1994). Bibcode1994Natur.372..798Y. doi:10.1038/372798a0. PMID 7997270. 
  7. ^ “Direct activation of the stress-activated protein kinase (SAPK) and extracellular signal-regulated protein kinase (ERK) pathways by an inducible mitogen-activated protein Kinase/ERK kinase kinase 3 (MEKK) derivative”. The Journal of Biological Chemistry 272 (5): 2668–74. (January 1997). doi:10.1074/jbc.272.5.2668. PMID 9006902. 
  8. ^ “Identification of a member of the MAPKKK family as a potential mediator of TGF-beta signal transduction”. Science 270 (5244): 2008–11. (December 1995). Bibcode1995Sci...270.2008Y. doi:10.1126/science.270.5244.2008. PMID 8533096. 
  9. ^ Takeda, Kohsuke; Matsuzawa, Atsushi; Nishitoh, Hideki; Ichijo, Hidenori (February 2003). “Roles of MAPKKK ASK1 in stress-induced cell death”. Cell Structure and Function 28 (1): 23–29. doi:10.1247/csf.28.23. ISSN 0386-7196. PMID 12655147. 
  10. ^ Jiang, Weihua; Wang, Xiaowen; Zhang, Chenguang; Xue, Laiti; Yang, Liang (March 2020). “Expression and clinical significance of MAPK and EGFR in triple-negative breast cancer”. Oncology Letters 19 (3): 1842–1848. doi:10.3892/ol.2020.11274. ISSN 1792-1074. PMC 7038935. PMID 32194678. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7038935/. 
  11. ^ Kim, Eun Kyung; Choi, Eui-Ju (2010-04-01). “Pathological roles of MAPK signaling pathways in human diseases” (英語). Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Molecular Basis of Disease 1802 (4): 396–405. doi:10.1016/j.bbadis.2009.12.009. ISSN 0925-4439. PMID 20079433. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925443910000153. 

関連項目

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外部リンク

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