NRXN1またはニューレキシン1(neurexin 1)は、ニューレキシンをコードする遺伝子の1つである[5]。
ニューレキシンは、脊椎動物の神経系において細胞接着分子、そして受容体として機能するタンパク質ファミリーである。ニューレキシンは、互いに連鎖していないいくつかの遺伝子にコードされている。これらのうちの3つの遺伝子(NRXN1、NRXN2、NRXN3)では2つの選択的プロモーターが利用され、また多数の選択的スプライシングエクソンによって多くの異なるmRNA転写産物やタンパク質アイソフォームが生み出される。転写産物の大部分は上流のプロモーターから産生され、これらはαニューレキシンアイソフォームをコードする。下流のプロモーターから産生される転写産物の量ははるかに少なく、これらはβニューレキシンアイソフォームをコードする。αニューレキシンには複数のEGF様配列とラミニンGドメインが含まれ、ニューレキソフィリン(neurexophilin)と相互作用することが示されている。βニューレキシンはEGF様配列を欠き、ラミニンGドメインの数もαニューレキシンより少ない[5]。
ニューレキシンはシナプス前膜に位置する細胞接着分子であり、自閉症と関係するタンパク質であるニューロリギンに対して主に結合する。自閉症は広範囲の社会的・認知的欠陥によって特徴づけられる疾患であり、シナプスを介した神経細胞間のコミュニケーションの欠陥が部分的要因となっているとされる[6]。こうしたコミュニケーションの欠陥はしばしばNRXN1の変異と関係している。NRXN1a(ニューレキシン1α)の構造的多様性は自閉症の素因となる変異と一致している[7]。αニューレキシンは、カルシウムチャネルと小胞のエキソサイトーシスとを共役する機構を介して神経伝達物質の適切な放出を保証することで神経細胞間のコミュニケーションに関与しており、より具体的にはグルタミン酸とGABAの放出に必要とされる[8]。ニューレキシンが自閉症に関与している可能性は、NRXN1aをコードしているエクソンの欠失、特にノックアウトマウスモデルでの研究から示された。これらのマウスでは、社会的機能の欠陥、新奇環境での運動反応の低下、オスの攻撃的行動の増加が示された[6]。
NRXN1はNLGN1と相互作用することが示されている[9][10]。