PHP Data Object (PDO) とはPHPに拡張モジュールとして標準で提供されているデータベース抽象化レイヤであり、各種データベース(DBMS、RDBMS)への接続を抽象化する。
2005年11月24日にリリースされたPHP 5.1.0から標準でバンドルされるようになった拡張モジュール(PECL)であり、データソース名(DSN)によって使用する内部エンジンを切り替えることで各種データベースに対する統一的なアクセスインターフェイスを提供する。
<?php
try {
$pdo = new PDO("mysql:host=localhost;dbname=pdotest",
"username", "password");
} catch(PDOException $e){
var_dump($e->getMessage());
}
?>
例えば、上記のコードではPDOクラスの第一引数にDSNを与えており、mysql:
がMySQL或いはMariaDBに接続するための内部エンジンを使用することを表している。
この部分をpgsql:
などに変更することで使用するデータベースをMySQLからPostgreSQLなどに変更することが出来る。
多くのデータベースに対応する必要のあるシステム開発や、システムを異なるデータベースに移行するときなどに、特に威力を発揮する。 またDoctrineやEloquentのようなORMライブラリの内部でデータベース接続を行うバックエンドとして利用されている。
PDOは、以下の機能を提供している[1]。
例えば userテーブルに変数$nameに'ウィキペディア'という文字列をSQLに挿入する例(prepareメソッド):
<?php
$names = 'ウィキペディア';
$stmt = $pdo->prepare('INSERT INTO user (name) VALUES (:name)');
$stmt->bindValue(':name', $names, PDO::PARAM_STR);
$stmt->execute();
?>
または:
<?php
$names = 'ウィキペディア';
$stmt = $pdo->prepare('INSERT INTO user (name) VALUES (:name)');
$stmt->execute([':name' => $names]);
?>
PHPはWebアプリケーション作成の開発に適した言語であり、Webアプリケーションと連携する多くのデータベースにアクセスする機能も、モジュールとして標準で備えている。しかし、その接続するための関数とそれに渡す引数はそれぞれのデータベース毎に異なっていた。
MySQLやMariaDBではmysql_connect関数に代表されるMySQLモジュール[※ 1](PHP7.0現在はmysqli_connnectに代表されるMySQLi[※ 2]に置き換えられた[※ 3])、PostgreSQLではpg_connect関数に代表されるPostgreSQLモジュール[※ 4]など、データベース毎に実装が異なっていた。また、関数に渡すパラメータなども各データベースによって異なるなど、複数のデータベースをサポートする開発者にとって多大な負担になっていた[1]。
PHP4では、PEARの1つとして、PEAR::DBがあり、これがデータベースへのアクセス機能をまとめ、共通のAPIを提供していた。しかし、この機能はPHPスクリプトで書かれているため、速度面で遅くなりがちという欠点を抱えていた[2]。中小規模のシステムならともかく、大規模なシステムではその速度の遅さが欠点となっていた。
そこで、PHP5からはC言語で書かれた拡張モジュールとしてPDOが作成・提供されることとなった。
PDOはデータベースへの接続を抽象化するライブラリであり、SQLに対する抽象化は殆ど行わないことに注意が必要である。 すなわちデータベース毎の独自拡張の利用やSQL構文の差異の吸収はプログラマが手で行うか、クエリビルダやORMなどのより高度な抽象化を行うライブラリを利用する必要がある。
また、プリペアドステートメントを用いることでSQLインジェクションの脆弱性をより安全に回避することができるが、環境によっては対応が不完全で問題が発生したケースもある[3]。