R136a3

 R136a3
ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTが撮影した高解像度のR136星団の近赤外線画像。画面中央にあるのがR136a1で、そのすぐ傍にR136a2、右下にR136a3、左にR136bがある。 (提供: ESO / VLT)
ヨーロッパ南天天文台(ESO)のVLTが撮影した高解像度のR136星団の近赤外線画像。画面中央にあるのがR136a1で、そのすぐ傍にR136a2、右下にR136a3、左にR136bがある。
(提供: ESO / VLT)
星座 かじき座
見かけの等級 (mv) 12.93[1]
13.02[2]
分類 ウォルフ・ライエ星
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  05h 38m 42.33s[1]
赤緯 (Dec, δ) −69° 06′ 03.27″[1]
距離 163000 光年
(~49970 パーセク[3]
絶対等級 (MV) −7.39[4]
物理的性質
半径 19.0 R[4][5]
質量 180 M[4]または130 M[5]
スペクトル分類 WN5h[1][4]
光度 3800000 L[4][注 1]
表面温度 53000 K[2][4]
色指数 (B-V) 0.05[2]
年齢 30万+40万
−30万
[4]
他のカタログでの名称
BAT99 106[1]RMC 136a3[1]
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R136a3とは、かじき座に位置する巨大星団であるR136ウォルフ・ライエ星である。既知の星の中で最も大きな質量光度を持つR136a1の付近に存在する。R136a3は質量が太陽の180倍[4]、光度が太陽の380万倍[4]であり、質量と光度は恒星の中では最大級である[4]

正式名称はRMC 136a3であり、RMCとはラドクリフ天文台(R)の大マゼラン雲(MC)を調査するサーベイを意味する。そのサーベイによって、大マゼラン雲の中で光る天体が特定され、この内最も明るい恒星の1つがRMC 136であった。現在RMC 136は一般にR136と短縮して呼ばれ、R136はタランチュラ星雲NGC 2070星団の中心部に位置する、非常に年齢が小さい密集した散開星団であることが知られている。その後、中心に位置する天体がR136aと呼ばれるようになり、R136aが8つ以上の恒星で構成されている[4]ことが判明すると、この内の1つがR136a3と呼ばれるようになった。

R136a3はスペクトル分類によるとウォルフ・ライエ星に分類される。ウォルフ・ライエ星のスペクトルではヘリウムや窒素の輝線が見られ、外層を失っている進化した恒星であるが、年齢は極めて若い。スペクトルにはまだ水素の輝線が見られ、恒星表面には40%も残っていると分析されている。若い恒星でも大気中のヘリウムや窒素が確認されるのは中心核の質量が大きく、CNOサイクルと呼ばれる核融合反応が激しいため、ヘリウムや窒素が生成され、対流により混合されたからである。スペクトルに輝線が見られるのは核融合による産物や莫大な光度を放ったためにかなり質量を損失したことを示している[4][6]

脚注

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注釈

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  1. ^ 出典ではlog L=6.58 L☉となっているため、10^6.58を計算した。

出典

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  1. ^ a b c d e f BAT99 106 -- Wolf-Rayet Star”. ストラスブール天文データセンター. 2020年4月22日閲覧。
  2. ^ a b c Doran, E. I. et al. (2013-10). “The VLT-FLAMES Tarantula Survey. XI. A census of the hot luminous stars and their feedback in 30 Doradus”. アストロノミー・アンド・アストロフィジックス 558: A134. arXiv:1308.3412. Bibcode2013A&A...558A.134D. doi:10.1051/0004-6361/201321824. 
  3. ^ Pietrzyński, G. et al. (2013-03). “An eclipsing-binary distance to the Large Magellanic Cloud accurate to two per cent”. ネイチャー 495 (7439): 76–79. arXiv:1303.2063. Bibcode2013Natur.495...76P. doi:10.1038/nature11878. PMID 23467166. ※本恒星が大マゼラン雲にあることから大マゼラン雲までの距離≒R136a3の距離として出典として用いている。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l Crowther, Paul A. et al. (2016-05). “The R136 star cluster dissected with Hubble Space Telescope/STIS. I. Far-ultraviolet spectroscopic census and the origin of He II λ1640 in young star clusters”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 458 (1): 624–659. arXiv:1603.04994. Bibcode2016MNRAS.458..624C. doi:10.1093/mnras/stw273. 
  5. ^ a b Hainich, R. et al. (2014-05). “The Wolf-Rayet stars in the Large Magellanic Cloud. A comprehensive analysis of the WN class”. アストロノミー・アンド・アストロフィジックス 565: A27. arXiv:1401.5474. Bibcode2014A&A...565A..27H. doi:10.1051/0004-6361/201322696. ※当出典ではR136a3をBAT99 106と表している。
  6. ^ Crowther, P. A.; Schnurr, O.; Hirschi, R.; Yusof, N.; Parker, R. J. et al. (2010-10). “The R136 star cluster hosts several stars whose individual masses greatly exceed the accepted 150 M stellar mass limit”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 408 (2): 731–751. arXiv:1007.3284. Bibcode2010MNRAS.408..731C. doi:10.1111/j.1365-2966.2010.17167.x.