REST(RE1 silencing transcription factor)またはNRSF(neuron-restrictive silencer factor)は、転写リプレッサーとして機能するタンパク質であり、ヒトではREST遺伝子によってコードされている[5][6][7]。RESTは神経以外の細胞において神経関連遺伝子の抑制に関与している[7][8]。切り詰めれらたRESTタンパク質が観察される結腸がんや小細胞肺がんなど、RESTの発現パターンの変化は多くの疾患と関連づけられている[9]。こうしたがん以外にも、RESTの欠陥はハンチントン病や神経芽腫、てんかん発作や虚血の影響とも関係している。
RESTは、神経以外の組織において神経関連遺伝子を抑制する転写リプレッサーであり、KLFファミリーに属するジンクフィンガー型転写因子である。NRSE(neuron-restrictive silencer element、もしくはRE1)と呼ばれるDNA配列エレメントに結合することで転写を抑制する。このタンパク質は未分化の神経前駆細胞にも存在し、神経発生のマスターネガティブレギュレーターとして作用している可能性が考えられている[5]。RESTには8つのCys2His2型ジンクフィンガーが存在し、いくつかのクロマチン修飾酵素をリクルートすることで遺伝子の抑制を媒介している[10]。
RESTはアルツハイマー病の高齢者でダウンレギュレーションされていることが知られている[11]。
また脳虚血のマウスモデルでは、RESTは虚血誘発性の神経細胞死を媒介する。虚血は組織への血液の灌流の低下を原因とし、栄養素や酸素の供給低下が引き起こされた状態である。RESTは虚血によって誘導されて核内に蓄積し、神経遺伝子のエピジェネティックな抑制によって神経死をもたらす[12]。低酸素時のRESTの核内移行と低酸素依存的な遺伝子発現抑制は密接に関連している可能性があり、RESTは低酸素状態における遺伝子抑制のマスターレギュレーターとしての機能を果たしていると考えられる[13]。
RESTはRCOR1と相互作用することが示されている[14]。