『The 7th Blues 』(ザ・セヴンス・ブルーズ)は、日本 のロック ・ユニット 、B'z の2枚組オリジナル・アルバム である。なお、「Blues」の読み方は、「ブルース」ではなく「ブルーズ 」だが、メンバーはどちらでも良いと述べている[ 2] 。
前作『RUN 』より約1年5ヶ月ぶりのリリースで、B'z初の2枚組オリジナル・アルバムである。直近5作のB'zのオリジナル・アルバムの収録曲数は10曲〜11曲であったのに比べ、本作はDISC1とDISC2合わせた収録曲数は20曲となっており、ほぼ倍のボリュームになっている。
アルバムタイトルは「7枚目のオリジナル・アルバム」ということに加え、ブルースでよく使われる「7thコード 」をもじったもので、松本曰く「酔った時の思いつき」[ 注釈 1] とのこと。しかし、本作はブルース のみならず、ジャズ 、ソウル 、サイケデリック など多くのジャンルを取り入れている[ 5] 。様々な楽器が使用され、特にブラス が多用されている。また、他のアルバムに比べ演奏時間が長い曲が多く、6分を超える曲が6曲あり、半数の曲が5分を超えている。
歌詞カードには曲ごとに松本が使用したギターが記載されている。
松本は、「作っていくうちに少し欲が出て、“2枚組もどうか?”という話も出たけど、そのためには曲も時間も必要になるでしょ?だからレコーディングの前半は弱気にもなった。でも後半になってから、“ここまで来たらいこう!”と思うようになった。同じ曲は作らないとか、バリエーションのことは考えずに、最初から出来たものをどんどんレコーディングしていった。10曲を2枚組にするとバランスが悪いから、12〜3曲出来たあたりから少しバランスを考え出した。」とコメントしている。稲葉は本作(2枚組)の制作は自然の流れの延長だったとし、通常の1枚ものの制作と意識は変わらず、時間はかかってもレコーディングのやり方は変わっていないと述べている[ 7] 。
前作『RUN』以降に発売されたシングルのうち、「愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない 」と「裸足の女神 」は未収録となった。
なお、需要減少により本作限りでアルバムのカセットテープ の生産・販売を中止した[ 注釈 2] 。
ミキシング エンジニア は、後にグリーン・デイ などを手掛けるクリス・ロード・エルジ (英語版 ) が担当。また、レコーディングには東京スカパラダイスオーケストラ など多くのミュージシャンが参加している。
当時のインタビューで松本は、これまでは意識して売れる作品を提供してきたと認めた上で「今までは僕らのことをアイドル的に見てる人もいた」「このアルバムには自分達のルーツみたいなのがはっきりと出ている。それをこれからの人達にも伝えたい」と答え、翌年のインタビューでは「去年(『The 7th Blues』)はこちらから啓蒙させようという意識があった」と述べている。また、2008年のタワーレコードの携帯サイトでは「『The 7th Blues』は当時の邦楽で一番洋楽の音に近く、そこから洋楽を聴く人が増えた」と指摘し、「邦楽と洋楽の距離を縮めた啓蒙的作品」という評価もある[ 8] 。
また、稲葉は当時「これからの基本姿勢ができた」と本作を気に入っており、松本も後に「大きなターニングポイントとなった」と語っている。
2018年に結成30周年記念として『DINOSAUR 』までのオリジナル・アルバムと共にアナログレコード 化された[ 9] 。
オリコンチャートで3週連続1位となり、累計売上約163万枚と2枚組オリジナル・アルバムとしては史上初のミリオンセラーとなり[ 注釈 3] 、2枚組以上のオリジナル・アルバムでは歴代最高の売上を記録。
DISC 1 全作詞: 稲葉浩志、全作曲: 松本孝弘、全編曲: 松本孝弘・明石昌夫 。 # タイトル 作詞 作曲・編曲 時間 1. 「LOVE IS DEAD」(ホーン配置・アレンジ:勝田かず樹 (DIMENSION )) 稲葉浩志 松本孝弘 6:18 2. 「おでかけしましょ」 稲葉浩志 松本孝弘 3:27 3. 「未成年」 稲葉浩志 松本孝弘 4:33 4. 「闇の雨」 稲葉浩志 松本孝弘 4:48 5. 「MY SAD LOVE」 稲葉浩志 松本孝弘 3:58 6. 「Queen of Madrid」 稲葉浩志 松本孝弘 4:49 7. 「ヒミツなふたり」 稲葉浩志 松本孝弘 4:01 8. 「Strings of My Soul」 稲葉浩志 松本孝弘 5:51 9. 「赤い河」 稲葉浩志 松本孝弘 6:21 10. 「WILD ROAD」 稲葉浩志 松本孝弘 4:20 合計時間:
48:26
DISC 2 # タイトル 作詞 作曲・編曲 時間 1. 「Don't Leave Me 」 4:23 2. 「Sweet Lil' Devil」 6:13 3. 「THE BORDER」 4:50 4. 「JAP THE RIPPER」 5:51 5. 「SLAVE TO THE NIGHT 」 5:08 6. 「春」 5:39 7. 「破れぬ夢をひきずって」(ストリングスアレンジ:日色純一) 6:26 8. 「LADY NAVIGATION 」 6:09 9. 「もうかりまっか」 3:16 10. 「farewell song」 6:22 合計時間:
54:17
LOVE IS DEAD
おでかけしましょ
未成年
闇の雨
2013年に行われた『B'z Special LIVE at EX THEATER ROPPONGI』で約19年ぶりに演奏され、51stシングル『有頂天 』の特典DVDにて初映像化となった。2020年の無観客配信ライブ『B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』のDay2でも演奏された[ 11] 。
MY SAD LOVE
昔の恋を煩い悩んでいる女性と付き合っている男性の感情がテーマになっている。
2009年に行われた『B'z SHOWCASE 2009 "B'z In Your Town"』で約15年ぶりに演奏された。
Queen of Madrid
ヒミツなふたり
歌詞では、倦怠感に差しかかりつつあるカップルの男性側の心情が描かれている。
歌詞中の「男は無口な方がいいと誰か 歌ったなあ」の「誰か」は八代亜紀 のことで、「舟唄 」の歌詞が元である[ 注釈 4] 。
Strings of My Soul
赤い河
WILD ROAD
ハモンドオルガン とディストーション ギターが要となっている。
バンド構成・編曲自体は簡潔だが、ハモンドオルガンやボーカル 、コーラス で厚みがだされている。
B'zの楽曲で唯一、メンバー以外の人物(高嶋りん )がボーカルのメインパートを一部歌っている。ライブでは、このパートの歌詞が一部変更され稲葉自身による歌唱で演奏された。
JAP THE RIPPER (LIVE ver.)
台湾盤、香港盤にのみ収録されているボーナス・トラック。音源は、過去の映像作品のもの。
Don't Leave Me
Sweet Lil' Devil
ギターリフやバンドのユニゾンが多く、ボーカルを含め各パートの即興的要素も多分にあり、当時のサポートメンバーとで組まれたバンドとしての一体感が現れている。
ギターソロ後の疑似ライブのようなパートは、レッド・ツェッペリン の「HeartBreaker」の間奏を演奏している。
アルバムツアー『B'z LIVE-GYM '94 "The 9th Blues"』の〈PART1〉では、オープニングナンバーとして演奏された。その際の一部公演ではこの曲の間奏で様々な洋楽のカバーが日替わりで演奏され[ 注釈 5] 、続く〈PART2〉では「GIMME YOUR LOVE -不屈のLOVE DRIVER-」の一部が演奏された。
THE BORDER
ストリングスのアレンジが前面に出た楽曲。
女性コーラス群やワウエフェクト のかかったギターなど、ファンク やソウル ・R&B のようなアレンジが施されている。
アルバムツアーでは演奏されず、現在もライブ未演奏である。
JAP THE RIPPER
SLAVE TO THE NIGHT
「ハートも濡れるナンバー 〜stay tonight〜 」のリメイクバージョン。
1992年に行われた『B'z LIVE-GYM Pleasure '92 "TIME"』、1993年に行われた『B'z LIVE-GYM Pleasure '93 "JAP THE RIPPER"』でのアレンジが元だが、歌詞は全英詞でタイトルごと作り直されており、曲構成も変更されている。サウンドデザインもブラスセクションだけではなく、女性コーラス群がフィーチャーされ、本作なりの形になっている。
1分ほどのソロギター・イントロの中盤では、ジミ・ヘンドリックス の「Little Wing 」のイントロを引用している[ 注釈 6] 。
春
泣きのギターがイントロの全編短調 のバラード。
曲後半ではティンパニー が使用されている。
ベスト・アルバム『B'z The Best "ULTRA Treasure"』のファン投票では29位にランクインし、収録された[ 10] 。
2007年に行われた『B'z SHOWCASE 2007 -19-』で約13年ぶりに演奏された。
破れぬ夢をひきずって
シンセチックな音色 にギターが絡まってくるイントロから始まり、ストリングスによるスローテンポのアウトロで終わる。
LADY NAVIGATION
もうかりまっか
おもちゃの銃の発する電子音で始まる。本作の中で、ブルース という意味では、伝統的な12バー構成のブルース形式 に最も忠実な楽曲。
レコーディングはバンドによる一発録りで行なわれた。歌詞は全て関西弁 で、サポートメンバーの名前[ 注釈 8] が登場したりと面白おかしく描かれている。当時稲葉はスタジオでサポートメンバーがいる中で歌詞を制作しており、稲葉自身が関西出身ではなかったため、関西出身である明石(大阪府 出身、兵庫県 西宮市 育ち)にニュアンスを確認しながら作詞が進められた。明石は当時を振り返り、稲葉から「借金を踏み倒して逃げるっていう表現でなんかいい言葉ない?」と尋ねられて「トンズラこく」という言葉を提案したり、「裏の飲み屋で朝まで行きましょうという歌詞で、飲み屋以外のいい言葉ない?」と尋ねられて「お好み 」という言葉を提案したり、歌詞には明石のアイデアが多分に含まれていることを明かしている。また明石は歌詞にサポートメンバーが登場することについて、レコーディングの際には知らされていなかったとのことで、演奏中にいきなりメンバーや自分の名前が登場したために、大笑いしながらのレコーディングだったと当時を振り返っている[ 19] 。
ライブでは歌詞を変更して稲葉が各メンバーに「もうかりまっか?」と問いかけ、それに対して各々が答えるという形式でメンバー紹介が行なわれた。
2020年の無観客配信ライブ『B'z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820-』のDay2で約26年ぶりに演奏された[ 11] 。この際、『B'z LIVE-GYM '94 "The 9th Blues"〈PART2〉』での演出を踏襲したぼやきコーナーが再現されたが、「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ 」の替え歌を挿入するなど新たなアレンジも加えられた。
farewell song
ブラスセクションのイントロから始まる楽曲で、全体的にコーラスやホーン、ストリングスが大々的に取り入れられている。
エンディングは、ビートルズ の「ヘイ・ジュード 」を意識したものになっている。
ちなみに、曲終了直前の歓声の中に、よく聴くと「こひしかるべき〜」と「LADY-GO-ROUND 」の一節が歌われているのが分かるが、これもビートルズのオマージュ[ 注釈 9] [ 23] 。
Don't Leave Me (LIVE ver.)
台湾盤、香港盤にのみ収録されているボーナス・トラック。音源は過去の映像作品のもの。
松本孝弘 :ギター 、エレクトリック・シタール (DISC1#3, 6・DISC2#2)、作曲 ・編曲
稲葉浩志 :ボーカル (DISC1 #8除く)、コーラス (DISC1 #8・DISC2 #7, 8, 9除く)、作詞 (DISC1 #8除く)
明石昌夫 :ベース 、マニピュレーター 、編曲
青山純 :ドラム 、ティンパニー (DISC2 #6)
増田隆宣 :ハモンド・オルガン (DISC1 #2, 6, 10・DISC2 #1, 5)、アコースティック・ピアノ (DISC1 #8)
小野塚晃 (DIMENSION ):アコースティック・ピアノ(DISC1 #1, 3, 4 DISC2 #6, 8, 9, 10)、コルグ SG-1.KORG(DISC1 #5)、ローズ・ピアノ (DISC2 #3)、エレクトリック・ピアノ (SG-1&DX-7 )(DISC2 #7)
厚見玲衣 (元VOW WOW ):ハモンド・オルガン(DISC2 #4)
勝田かず樹 (DIMENSION):ホーン 配置・アレンジ(DISC1 #1)
数原晋 :ホーン・セクション(DISC1 #1)
JAKE.H.CONCEPTION :ホーン(DISC1 #1)
DE LA LUZ HORN SECSSION(オルケスタ・デ・ラ・ルス ):[寺内茂:トランペット ・佐々木史郎:トランペット・福本佳仁:トランペット・中路英明:トロンボーン ・青木タイセイ:トロンボーン(DISC1 #2, 7)]
SKA-PARA HORNS(東京スカパラダイスオーケストラ ):[名古屋君義(現・NARGO):トランペット・北原雅彦:トロンボーン・冷牟田竜之:アルト・サックス ・GAMOU(現・GAMO):テナー・サックス ・谷中敦 :バリトン・サックス (DISC1 #5・DISC2 #1, 5)]
菅坂雅彦:トランペット(DISC1 #9・DISC2 #6, 10)
横山均:トランペット(DISC1 #9・DISC2 #6, 10)
村上準一郎:トロンボーン(DISC1 #9・DISC2 #6, 10)
西山健治:トロンボーン(DISC1 #9・DISC2 #6, 10)
山岸博:ホルン (DISC1 #9・DISC2 #6, 10)
飯笹浩二:ホルン(DISC1 #9・DISC2 #6, 10)
妹尾隆一郎 :ブルース・ハープ (DISC2 #1, 2)
日色ストリングス:ストリングス (DISC1 #8, 9・DISC2 #3, 7, 10)
日色純一:ストリングスアレンジ(DISC2 #7)
高嶋りん(現・浦嶋りんこ ):コーラス (DISC1 #3, 10・DISC2#1, 2, 3, 5, 10)
岩切玲子:コーラス(DISC1 #2)
生沢佑一 :コーラス(DISC2 #1, 8)
MICHELLE MURPHY:ギャングボイス(DISC1 #10・DISC2 #2, 4, 10)
KURT SCHAELER:ギャングボイス(DISC1 #10・DISC2 #2, 4, 10)
CAROL DAVIS:ギャングボイス(DISC1 #10・DISC2 #2, 10)
BILL KINSLEY:ギャングボイス(DISC1 #10・DISC2 #2, 10)
JEFF LOAD-ALGE:ギャングボイス(DISC1 #10・ DISC2 #2, 4)
KOJI NUMAZAKI:ギャングボイス(DISC1 #10・ DISC2 #2, 4)
J.D.COUNTS:ギャングボイス(DISC2 #4)
シングル曲については各作品の項目を参照
LOVE IS DEAD
おでかけしましょ
闇の雨
Strings of My Soul
赤い河
JAP THE RIPPER
春
もうかりまっか
『Treasure : B'z Chronicle 1988〜1998 10th anniversary special issue』ROOMS RECORDS、1998年9月20日。
『music freak magazine & Es Flash Back B'z XXV Memories I』エムアールエム 、2013年。
オリコン 週間
アルバム チャート第1位(1994年3月14日 - 3月28日付・3週連続)
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月