WXIII 機動警察パトレイバー | |
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WXIII: Patlabor the Movie 3 | |
監督 |
高山文彦(総監督) 遠藤卓司 |
脚本 | とり・みき |
原案 | ゆうきまさみ |
原作 | ヘッドギア |
製作総指揮 | 高山文彦 |
出演者 |
綿引勝彦 平田広明 田中敦子 |
音楽 | 川井憲次 |
撮影 | 白井久男 |
編集 | 瀬山武司 |
制作会社 | マッドハウス |
製作会社 |
バンダイビジュアル 東北新社 |
配給 | 松竹 |
公開 | 2002年3月30日 |
上映時間 | 100分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
前作 | 機動警察パトレイバー 2 the Movie |
『WXIII 機動警察パトレイバー』(ウェイステッドサーティーン きどうけいさつパトレイバー)は、『機動警察パトレイバー』の劇場公開アニメ作品第3弾である。2001年製作の日本映画。上映時間100分。日本公開は2002年3月30日。同時上映は『ミニパト』のシャッフル上映(1〜3話のうちのどれか一作)。
タイトルの「WXIII」とは、ウェイステッド13 (廃棄物13号) を指している。
13号と呼ばれる謎の巨大生物を巡る陰謀と、それらを追う刑事2人の物語。人を襲う怪物を目撃した刑事の久住と秦は、事件を追ううち研究員冴子の秘密と禁忌の実験を知る。その裏では軍事的領域のアプローチが着々と進行していた。
声の出演は、綿引勝彦・平田広明・田中敦子・大林隆介など[1]。
本作品は、漫画版のエピソード「廃棄物13号」と「STRIKE BACK(逆襲)」を原作として制作されているが、その内容は大きく異なっており、特に主役やヒロイン、ストーリー、設定など、変更点は多岐に渡る[2]他、時代性の変化が反映されている[3]。
企画は1995年ごろに始まり、当初はOVAシリーズとして制作される予定だったが[4]、フォーマットを劇場作品に移すなど、完成までに複雑な経緯があった[5]。また、スピンオフの形をとっており、第二小隊のメンバーなど従来の主役たちから離れ、オリジナルの刑事を主人公としている[5]。
この節にあるあらすじは作品内容に比して不十分です。 |
2000年[注 1]、東京湾に輸送機(フロンティア航空236便)が墜落し、乗員全員が死亡する事故が発生した。事故後、東京湾岸の各所で何者かによるレイバー襲撃事件が連続して発生し、警視庁城南署の刑事である久住と秦は各所で聞き込み捜査を進め、墜落事件の後に巨大なハゼが釣れていたこと、墜落した輸送機の貨物コンテナに不審な点があることなどを突き止める。
その後、6月8日の雨の夜に若者の集うディスコクラブ「バビロン」で、車に乗ったカップルの惨殺死体が発見される。時を同じくして、「バビロン」の近隣にあるバビロン工区の水上コンテナ備蓄基地で突如警報が作動し、施設内が停電すると共に内部の職員と連絡がとれなくなる事態が発生した。
近くを走行中のパトカー(城南4)に偶然乗っていた久住と秦は、警備員の通報を受けパトカーに乗る警官らと共に現場に急行。警備員たちと共に施設内部へと分け入った。しかしそこで彼らが遭遇したのは、廃棄物13号(WXIII)と名付けられた異形の怪物だった。
※各登場人物の詳細は機動警察パトレイバーの登場人物を参照。
本作品に登場する全長約20メートルの巨大な怪物[注 3]で、別名ベイカーズ・ダズン[18]。ニシワキセルに冴子の娘・一美の癌細胞を組み込んで生まれた人工生物で、冴子からは「あの子」と呼ばれる[18]。強靭な生命力[注 4][注 5]と狂暴な捕食性を持ち、光を嫌う性質がある他、とある超音波に反応し、シャフト製のレイバー用超伝導モーターやレコードなどに引き寄せられる[18]。劇中、セイレーンIIの外装を着込んで鎧のように扱うシーンがあり、知能は高いと目されている[20]。
頭部に2本の触手があり先端に(暗がりでのみ)発光する球体が付いている[18]。これを利用し獲物などを判別する仕草があるが[20]、基本的には聴覚に頼った行動を取る[19]。幼生体時は前脚を使い移動し、後脚は未成熟だが成長体となってからは立ち上がることも可能なほど発達する[21]。太く長い尾の先は手のような形状になっており、物を掴むことが可能である[20]。また口元が特徴的で、歯には門歯・犬歯など哺乳類のような区別があり[21]、歯並びなども人間的[19]。最終局面では、胸部に乳房らしき器官が見られ、人間の細胞が使われていることが強調された[19]。原作では甲殻類のような外皮で多脚[19]。爬虫類のような複眼と歯を持ち、触手も数本ある[19]。
13号が特殊な超音波に反応する設定について、脚本のとり・みきによれば、山下達郎のラジオで聞いたレコードとCDの違いや、『ウルトラQ』に登場する怪獣ラゴンの設定などから着想を得ている[22]。
1995年、総監督の高山文彦と脚本のとり・みき(以下、とり)に企画参加の依頼が来る[5]。スーパーバイザーの出渕裕は漫画版のエピソード「廃棄物13号」を原作に決めており、当初は劇場版ではなく前後編2本の単体OVAという企画だった[5][注 6]。主人公たち登場人物に関しても、元々は完全なスピンオフの指示であり、従来の主役である第二小隊の面々は全く出演せず、脇役かオリジナルキャラクターを主人公に据える趣旨だった[5]。高山によれば『劇場版2』で片が付いた第二小隊は出せないためのスピンオフ企画だが、OVAなら気楽だと思い引き受けたという[5]。とりは、パトレイバーというタイトルは大きいがメディアミックスであり、OVAには出渕の脚本作品もあり、自分が書くものが1つあっても良いのではと引き受け[5][注 7]、自分や高山の起用についても、第二小隊の出ないほぼオリジナルの話と出渕が決めていたから既存のスタッフではなく自分たちに声が掛かったのではと述べている[5]。結果的に第二小隊を出したことについては、途中で劇場版へと企画がシフトしたため映画用の初稿の時点で彼らを出していたが、高山が削り、とりが増やしを繰り返し結局あの尺になっている[5]。この部分について、とりは「(高山は)潔くないと思って削ったのではないか」と述べている[5]。
とりによれば、脚本に関しては、初稿が出来る前の時点から苦労があったという[5]。先ず出渕が、完成した脚本を後から監督が変える流れにはせず、初めに各々で出し合ったアイデアを脚本に落とし込む方法を考えた[5]。しかし、それぞれの好みや意見はまとまらず苦心し[注 8]、最終的には、高山からの改変なら受け入れるつもりであったとりが一旦書き上げることを提案し、1998年ごろに初稿が出来上がる[5]。企画がOVAから劇場版に変更されたのは、このころである[5]。この変更にあたり、高山はダイアログはかなり変えたが、脚本の大まかなシークエンスなど構成自体は変わっていないという[5]。
逆にスムーズに出来た部分として、高山らは「物語の導入部」「久住が冴子を犯人として指摘し、秦が反発するシーン」「13号出現シーン」を挙げている[22]。見せ方や演出としてハリウッド的な方法を嫌い、特に13号出現シーンで逆光や衝撃音などを入れずにあえて何もせずリアリティを求めたという[22][注 9]。
本作品のジャンルについて、高山は、出渕が想定したのは怪獣映画ではなく怪獣の出るSF映画ではないかと述べており[22]、出渕は、アニメで怪獣もののテイストを試してみたかったがオリジナル企画では通らないためパトレイバーにしたと述べており、怪獣映画の可能性についての提言であると同時に自身が子供のころに好きだったジャンルへの恩返しであると位置づけている[4]。また、とりは、2人だけならバランスを欠くところ、高山・出渕と自分の3人いたから別々のベクトルが調和出来たと語り[22]、本作品の脚本執筆について「自分自身についての怪獣映画に対する憑きもの落とし」と発言している[4]。
本作品は、アニメがセル撮影メインからデジタルに移行する過程の最後期の作品だが、観覧車など動きのゆっくりした部分にはCGを使っている[22]。CGは完成品より少し多くなる予定だったが予算の都合でカットを削っており、仮にワンカットだけしか使えなかった場合、秦が写真を見るシーンに使っただろうと高山は話している[22][注 10]。
2009年のインタビューにおいて、高山は、公開当時にあった電話ボックスに貼られたピンクチラシなどの風景は記録する価値があるとして作品に取り入れており、実際、現存しない風俗のタイムカプセルとして機能する作品になっていると話している[22]。
本作品の評価と成果について、高山ととりは一様に「(その後の環境は)何も変わらない」と話す[22]。映画自体は、フランスの映画祭を始め高く評価され「これを観た映画関係者から脚本の仕事が来るのでは」という声も上がったが、仕事の話はまったく来なかったという[22]。
また、韓国映画『グエムル-漢江の怪物-』は本作品と類似点が非常に多く、盗作疑惑が指摘されたが、日韓両国の配給関係者はこれらの疑惑を否定している[23][24]。