生産時期 | 1997から1999まで |
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設計者 | Centaur Technology |
CPU周波数 | 180 MHz から 266 MHz |
FSB周波数 | 60 MHz から 100 MHz |
プロセスルール | 0.35 µm から 0.25 µm |
マイクロアーキテクチャ | Single, 4-stage, pipeline in-order execution |
命令セット | x86 (IA-32) |
コア数 | 1 |
ソケット |
Super Socket 7 |
コードネーム |
C6
W3 |
次世代プロセッサ | CyrixIII |
L1キャッシュ |
|
L2キャッシュ | マザーボード依存 |
L3キャッシュ | none |
WinChip (ウィンチップ) はかつてIDT社傘下であったCentaur Technology社が開発したx86アーキテクチャのCPUブランドである。
製品化されたシリーズには WinChip C6、WinChip 2がある。その他WinChip 3、WinChip 4も計画されたが量産には至らなかった。
外部とのインターフェースはPentiumと同じSocket 7であり、Cyrix 6x86シリーズ、AMD K5/K6シリーズに続く第3のSocket7互換CPUと位置づけられる。先行2社がPentiumより高性能な(Pentium IIに対抗しうる)CPUを目指したのとは異なり、WinChipアーキテクチャはPentiumと同程度の性能を可能な限り低コストに実現することに重点が置かれている。そのため、きわめてシンプルなアーキテクチャをとっており、Pentiumのようなスーパースカラアーキテクチャを採用せず1クロックあたり1命令しか実行できない(後述のとおりWinChip 2以降はMMX命令もしくは3DNow!命令のみ、どちらかを2命令同時実行可能である)。このことからPentiumよりむしろ1世代前のi486に近いと言われることもある[1]。コア部分がRISC方式になっており、各機械語命令を RISC 命令に変換してから実行する[2]:3が、使用頻度の高いx86命令のほとんどを単一のRISC命令に変換できるようにすることでレイテンシの低減を図っている。この事と64 KB(命令32 KB、データ32 KB)という大容量の一次キャッシュの効果によって、同クロックのPentiumに匹敵する性能を発揮する。内部構造が単純化されているため、他社の製品に比べて安価で消費電力が低いという特徴がある。ただしパイプラインが5段と浅いため動作クロックを高めることは困難であった。また初期の WinChip C6 から インテルのマルチメディア拡張命令セットである MMX に対応している。しかし、動作クロック周波数が最大240 MHzと低く、絶対的な性能が低いためメーカー製PCにはほとんど採用されなかった。
WinChip 2AまでVcoreとVioを分離しない単一電源仕様(電圧は3.3 V版と3.52 V版の2種類がある[1])になっていたため、保障外ながらSocket 5でも使用可能であった。また、Pentiumとの動作互換性が高く、Pentium以外のCPUを想定していない古いBIOSでも動作することが多かった[1](6x86やK6はBIOSによるサポートが前提であった)。さらにマザーボード側で1.5倍に設定するとWinChipは4倍として認識するため、倍率設定に制限のある古いマザーボードでも利用可能であった[1]。(WinChip2 rev.Aのみ3.5倍と認識する)このためPentium(P5系)の環境でも問題無く動作させられることが多く、値段が手ごろであったこともあって古いPCのアップグレードパーツとして人気があった。
1997年5月に発表された。
WinChip C6は整数演算に関しては同クロックのPentiumとほぼ同等の処理速度を発揮したが、浮動小数点演算に関してはFPU命令の一部しかパイプライン化されていないため、演算速度が劣っていた。またMMX命令にも対応するが実行ユニットが1個であるため、2命令を同時実行可能なMMX Pentiumと比較して処理能力は大きく劣っていた。
動作クロック周波数は180, 200, 225, 240 MHzの4種類がラインナップされた。内部クロック倍率は外部クロックの整数倍の設定しかないため、最上位の240 MHz版では外部クロックを60 MHzに落とさなければならず(60 MHz×4)、Pentium 233 MHz(66 MHz×3.5)と比較してIO性能が低下するという問題があった。
1998年5月に発表された。
WinChip 2ではWinChip C6の弱点であった浮動小数点演算とMMXに改良が加えられている[3]。浮動小数点演算に関してはFPUを全てパイプライン化することによりスループットを向上させた。またMMX処理ユニットが増設され、2命令同時実行可能となっている(整数および浮動小数点演算命令は従来と同じく1命令ずつの処理となる)。またこのMMX処理ユニットはAMD 3DNow!命令にも対応するように拡張された。
これらの改良により、整数演算、浮動小数点演算、MMXのすべてに渡って同クロックのPentiumに匹敵する処理能力を発揮するようになった。
動作クロック周波数および内部クロック倍率に関してはWinChip C6と変わっておらず、240 MHz版で外部クロックを60 MHzに落とさなければならない問題はそのまま残された。266 MHz版(66 MHz×4)もアナウンスされていたが結局出荷されることはなかった。
1999年にはマイナーチェンジ版であるWinChip2 Rev.A(以下、WinChip2Aと表記)が発表された[2]:3[4]。WinChip2Aは外部クロック周波数100 MHzのSuper Socket 7規格に対応し、動作クロック倍率は0.5倍刻みの設定が可能になった[4]。さらに2.33倍、3.33倍という変則的なクロック倍率もサポートしていた[4]。
WinChip2Aでは従来の実クロック表示ではなくスピードグレード(PRレーティングとほぼ同じもの)によるグレード表示がされており、最上位のWinChip2A-266は実クロック233 MHz(100 MHz×2.33)であり実クロックとグレード表示が一致しなくなった[4]。
Centaur Technology社はWinChip 2A以降のロードマップとして以下のものを発表していた。
しかし1999年8月、Centaur Technology社が台湾の VIA Technologies 社に売却されたため[2]:3、これらの計画は販売されることなく中断し、WinChip 2の製造も中止された。その後 WinChip 4のコア部分は、VIA社の C3 のコアとして使用されている[2]:4。
Processor | 周波数 (MHz) [P-Rate] |
FSB (MHz) | パッケージ | L1キャッシュ (KB) | FPU | 拡張命令 | パイプラインステージ | トランジスタ | 製造
プロセス (μm) |
コア電圧 (V) | 対応ソケット |
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WinChip C6 | 180 – 240 | 60/66 | CPGA 296ピン | 64 | 50% | MMX | 5 (4) | 540万 | 0.35 | 3.3 or 3.52 (single) | Socket 5 or 7 |
WinChip 2 | 200 – 240 | 60/66/75 | MMX, 3DNow! | 600万 | |||||||
WinChip 2 rev.A | 200 – 233 [200 – 266] |
60/66/75/100 | 0.25 | ||||||||
(WinChip 2 rev.B) | BGA | 2.8 (dual) | ? | ||||||||
(WinChip 3) | 200 – 266 | ? | CPGA 320ピン, BGA, MobileModule | 128 | 1,020万 | 2.2 – 2.8 (dual) | Socket 7 | ||||
(WinChip 4) | 450 – 700 | 100/133 | CPGA 370pin | 11 | 1,160万 | 0.25 – 0.18 | ? | Socket 370 |