うお座54番星

うお座54番星 A / B
54 Piscium A / B
うお座54番星Aと褐色矮星うお座54番星B(円内)
うお座54番星Aと褐色矮星うお座54番星B(円内)
星座 うお座
見かけの等級 (mv) 5.88[1]
変光星型 Suspected
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  00h 39m 21.80589s[2]
赤緯 (Dec, δ) +21° 15′ 01.7081″[2]
視線速度 (Rv) -33.28 km/s[3]
固有運動 (μ) 赤経: -461.32 ± 0.33 ミリ秒/[2]
赤緯: -370.02 ± 0.28 ミリ秒/年[2]
年周視差 (π) 90.42 ± 0.32 ミリ秒[2]
距離 36.07 光年
(11.06 パーセク
絶対等級 (MV) 5.66
物理的性質
半径 0.944 ± 0.033[4] / 0.082[5] R
質量 0.90[1] / 0.051[5] M
スペクトル分類 K0V / T7.5V[5]
光度 0.498[1] / 2.5 ×10−6[5] L
色指数 (B-V) 0.85
色指数 (U-B) 0.57
金属量[Fe/H] 0.19(太陽比)[1]
年齢 6.4 ×109[6]
他のカタログでの名称
BD+20 85, GCTP 110.00, Gliese 27, HD 3651, HIP 3093, HR 166, LHS 1116, LTT 10224, SAO 74175
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うお座54番星は、うお座の方角に約36光年の距離にある橙色の主系列星である。2002年に、周囲を公転する太陽系外惑星の存在が確認されている。また2006年には、周囲を公転する褐色矮星が発見され、「連星系」を形成していることが明らかとなった。

恒星系

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太陽と比べたうお座54番星(左)の大きさ

うお座54番星の名前は、フラムスティード番号であり、ジョン・フラムスティードの観測記録がその起源である。視等級は5.88で、非常に暗い空の下では肉眼で見ることができる。スペクトル型はK0 Vで、での水素の熱核反応によってエネルギーを生成している。表面温度は5,062Kで、スペクトル型が示す特徴と概ね一致する。

うお座54番星の質量は、太陽の90%、光度太陽の50%である[1]半径は、CHARA干渉計を用いて干渉法で直接測定され[4]太陽の94%であった。自転周期は約40日間である[7]。年齢は、彩層活動と等時曲線の分析により、約64億歳と推定されている[6]水素より重い元素の割合、いわゆる金属量は、文献によってばらつきがあり、太陽の約7割[8]から約1.6倍[1]まである。

長期にわたる恒星磁場の活動の観測から、うお座54番星は、マウンダー極小期のような黒点の減少期にあるとみられる[7]。磁場の活動が活発だった直近の1992-1996年は、その前の活動期の1976-1980年に比べれば、やや活動は低調であった。

褐色矮星うお座54番星Bと太陽系外惑星うお座54番星bの想像図

2006年、うお座54番星の直接撮像観測により、うお座54番星Aの伴星として褐色矮星が存在することが明らかとなった[9]。うお座54番星Bはスペクトル型T7.5Vの「メタン褐色矮星」であると考えられている[5]。光度の比較により、亜恒星天体は質量が太陽の0.051倍(木星の50倍)、半径が太陽の0.082倍であることがわかった[5]。この褐色矮星はグリーゼ570Dとよく似ており、表面温度はおよそ810K(537)であると考えられている。

うお座54番星BがNASAスピッツァー宇宙望遠鏡で直接撮影されると、褐色矮星は主星から約476AU離れたところに位置することが明らかとなった[5]。うお座54番星Bは、系外惑星が存在することが分かっている恒星の周囲で見つかった、初の褐色矮星となった。

惑星系

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2002年1月16日ジェフリー・マーシーに率いられた天文学者のチームが、うお座54番星(A)の周りに太陽系外惑星を発見したと発表し、惑星はうお座54番星bと名付けられた[10][11]。惑星の質量の下限値は木星質量の23%程度と推定され、土星と同程度の半径と質量を持つとみられている。親星のうお座54番星Aは、自転の傾斜角が83 +7
−56
°と推定されており[7]、惑星の公転軌道は親星の赤道面に近いと予想されるので、うお座54番星bの質量は下限値に近いとみられるが[12]ホット・ジュピターには親星の自転軸とずれた運動をするものもあるので、より大きい可能性もある。

惑星は、水星の軌道半径よりも短い親星から0.28AUの軌道を、約62日間で公転している。軌道離心率は約0.6と高く、この扁平な軌道は、さらに遠い軌道に未知の天体が存在し、重力を及ぼしているためであると考えられたが、星系の中に褐色矮星が発見されたことで、この考えは証明された。

褐色矮星も考慮に入れた計算から、うお座54番星bの軌道運動によって、うお座54番星bの遠星点以内を円に近い軌道で公転する天体は、小惑星以下のものしか残らないことがわかった。その外側であっても、海王星級より質量の大きい惑星は存在しないことが、観測で確認されているが、地球サイズの惑星が、外側に存在する可能性は残されている[13]

その後、視線速度の詳細な分析から、惑星は1つよりも2つとした方が観測結果を良く説明できるとされ、第2の惑星うお座54番星cが存在する可能性が指摘されている[14][15]。ただし、両者の差はそれ程でもなく、惑星cの存在はあくまで候補の段階で、確証はない。

うお座54番星の惑星[16]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b > 0.229 ± 0.008 MJ 0.295 ± 0.003 62.218 ± 0.015 0.596 ± 0.036

出典

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  1. ^ a b c d e f Ghezzi, L.; et al. (2010-09), “Stellar Parameters and Metallicities of Stars Hosting Jovian and Neptunian Mass Planets: A Possible Dependence of Planetary Mass on Metallicity”, Astrophysical Journal 720 (2): 1290-1302, Bibcode2010ApJ...720.1290G, doi:10.1088/0004-637X/720/2/1290 
  2. ^ a b c d e van Leeuwen, F. (2007-11), “Validation of the New Hipparcos reduction”, Astronomy and Astrophysics 474 (2): 653-664, Bibcode2007A&A...474..653V, doi:10.1051/0004-6361:20078357, http://webviz.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-5?-out.add=.&-source=I/311/hip2&recno=3087 
  3. ^ 54 Psc -- Variable Star”. SIMBAD. CDS. 2017年9月29日閲覧。
  4. ^ a b van Belle, Gerard T.; von Braun, Kaspar (2009-04). “Directly Determined Linear Radii and Effective Temperatures of Exoplanet Host Stars”. Astrophysical Journal 694 (2): 1085-1098. arXiv:0901.1206. Bibcode2009ApJ...694.1085V. doi:10.1088/0004-637X/694/2/1085. 
  5. ^ a b c d e f g Luhman, K. L.; et al. (2007-01). “Discovery of Two T Dwarf Companions with the Spitzer Space Telescope”. Astrophysical Journal 654 (1): 570-579. Bibcode2007ApJ...654..570L. doi:10.1086/509073. 
  6. ^ a b Mamajek, Eric E.; Hillenbrand, Lynne A. (2008-11). “Improved Age Estimation for Solar-Type Dwarfs Using Activity-Rotation Diagnostics”. Astrophysical Journal 687 (2): 1264-1293. Bibcode2008ApJ...687.1264M. doi:10.1086/591785. 
  7. ^ a b c Simpson, E. K.; et al. (2010-11), “Rotation periods of exoplanet host stars”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 408 (3): 1666-1679, Bibcode2010MNRAS.408.1666S, doi:10.1111/j.1365-2966.2010.17230.x 
  8. ^ Cenarro, A. J.; et al. (2007-01), “Medium-resolution Isaac Newton Telescope library of empirical spectra - II. The stellar atmospheric parameters”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 374 (2): 664-690, Bibcode2007MNRAS.374..664C, doi:10.1111/j.1365-2966.2006.11196.x 
  9. ^ Mugrauer, M.; et al. (2006-11). “HD 3651 B: the first directly imaged brown dwarf companion of an exoplanet host star”. Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters 373 (1): L31-L35. arXiv:astro-ph/0608484. Bibcode2006MNRAS.373L..31M. doi:10.1111/j.1745-3933.2006.00237.x. 
  10. ^ Fischer, Debra A.; et al. (2003-06). “A Sub-Saturn Mass Planet Orbiting HD 3651”. Astrophysical Journal 590 (2): 1081-1087. Bibcode2003ApJ...590.1081F. doi:10.1086/375027. 
  11. ^ Butler, R. P.; et al. (2006-07). “Catalog of Nearby Exoplanets”. Astrophysical Journal 646 (1): 505-522. Bibcode2006ApJ...646..505B. doi:10.1086/504701. 
  12. ^ Planet HD 3651 b”. Extrasolar Planets Encyclopaedia (2019年3月4日). 2023年12月23日閲覧。
  13. ^ Wittenmyer, Robert A.; et al. (2007-09), “Dynamical and Observational Constraints on Additional Planets in Highly Eccentric Planetary Systems”, Astronomical Journal 134 (3): 1276-1284, Bibcode2007AJ....134.1276W, doi:10.1086/520880 
  14. ^ Wittenmyer, Robert A.; et al. (2013-09), “Forever Alone? Testing Single Eccentric Planetary Systems for Multiple Companions”, Astrophysical Journal Supplement 208 (1): 2, Bibcode2013ApJS..208....2W, doi:10.1088/0067-0049/208/1/2 
  15. ^ Antoniadou, Kyriaki I.; Voyatzis, George (2016-10), “Orbital stability of coplanar two-planet exosystems with high eccentricities”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 461 (4): 3822-3834, Bibcode2016MNRAS.461.3822A, doi:10.1093/mnras/stw1553 
  16. ^ Wittenmyer, Robert A.; et al. (2009-05), “A Search for Multi-Planet Systems Using the Hobby-Eberly Telescope”, Astrophysical Journal Supplement 182 (1): 97-119, Bibcode2009ApJS..182...97W, doi:10.1088/0067-0049/182/1/97 

関連項目

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外部リンク

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座標: 星図 00h 39m 21.8s, +21° 15′ 01.7″