くそったれ! 少年時代(くそったれ! しょうねんじだい、原題:HAM ON RYE[1])はアメリカの作家で詩人のチャールズ・ブコウスキーによる半自伝的小説[2]。
「ヘンリー・チナスキー」という、ブコウスキーの分身的存在について、彼の少年時代を辿っている。ブコウスキーのがさつな性格について平易な表現で描かれており、本作では彼の世界大恐慌中のロサンゼルスにおける成人前の姿を知ることができる。
ブコウスキーの前回の作品と同様に本作は作者が育ったロサンゼルスを舞台としている。ブコウスキーは故郷について事実に即して描写しつづけ、ロサンゼルスの都市そのものよりも、そこで暮らす人々についてより関心を払っている。彼と彼の家族がオレンジ果樹園から追い出される冒頭の場面のように、ロサンゼルス郊外の情景においてはチナスキーを侵入者のように描写している。
ブコウスキーの前回の作品と同様に、本作はヘンリー・チナスキーの生活について、彼の幼少期と少年時代を中心に据えている。作中を通じて、「ポスト・オフィス」や「パンク、ハリウッドを行く」で見られるような、ブコウスキーの人間嫌いなアンチヒーロー的性格が展開している。大不況下のロサンゼルスで貧しく育ったチナスキーは皮肉屋の独り者に成長する。 これはおもに彼の家庭生活に由来し、彼はそこで父親からしばしば(たいてい理由もなく)殴られる。彼がスポーツが得意でなく、そしてニキビが醜いことにより、やがて学校の子供たちから疎んじられるようになっていく。 彼はよく彼を疎んじる者に直面すると暴力に訴え、同級生たちにタフガイな印象を与える。
ヘンリー同様、ほかのチナスキー一家はブコウスキー自身の家族を手本にしている。たとえば、ヘンリーの両親はブコウスキーと同様、第一次大戦のあとにドイツで出会っている。
「くそったれ! 少年時代」中川五郎訳 河出文庫 1999年 ISBN 4-309-46191-3