のぼうの城 | ||
---|---|---|
著者 | 和田竜 | |
イラスト | オノ・ナツメ | |
発行日 | 2007年11月28日 | |
発行元 | 小学館 | |
ジャンル | 歴史小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | ソフトカバー | |
ページ数 | 338 | |
コード | ISBN 978-4-09-386196-0 | |
ウィキポータル 文学 | ||
ウィキポータル 書物 | ||
|
『のぼうの城』(のぼうのしろ)は、和田竜による日本の歴史小説。またそれを原作とする2012年の日本映画。
和田竜の小説家デビュー作であり、第29回城戸賞(2003年)を受賞した脚本『忍ぶの城』を、映画化を前提としたノベライズとして自ら執筆したものである。表紙イラストはオノ・ナツメが担当している。
2008年には花咲アキラの作画によりコミカライズされ、『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて連載された。
第139回(2008年上半期)直木賞ノミネート、2009年の第6回本屋大賞第2位。
2010年10月時点で累計発行部数70万部を突破している[1]。
周囲を湖に囲まれ、浮城とも呼ばれる忍城(おしじょう)。領主・成田氏一門の成田長親は、領民から「でくのぼう」を略して「のぼう様」と呼ばれ、親しまれる人物であった。
天下統一目前の豊臣秀吉は、関東最大の勢力北条氏の小田原城を攻略せんとしていた(小田原征伐)。豊臣側に抵抗するべく、北条氏政は関東各地の支城の城主に籠城に参加するよう通達した。支城の一つであった忍城主の氏長は、北条氏に従うように見せかけ、手勢の半数を引き連れて小田原籠城作戦に赴きつつも、裏では豊臣側への降伏を内通していた。
「武州・忍城を討ち、武功を立てよ」秀吉にそう命じられ、石田三成は大軍勢を率いて忍城に迫る。軍使として遣わされた長束正家は、成田氏がすでに降伏を決めていることを知りながら、戦を仕掛けるためにあえて傲慢な振る舞いをし、まんまと策略にはまった総大将・長親は「戦」を選択した。当主・氏長より降伏を知らされていた重臣たちは、初めは混乱するが覚悟を決め、かくして忍城籠城戦は幕を開けた。
三成率いる2万超の軍勢に、農民らを含めても3千強の成田勢。総大将たる長親は、将に求められる武勇も智謀も持たない、その名の通りでくのぼうのような男。だがこの男にはただ一つ、他人に好かれる才能、特に異常なほどの民からの「人気」があった。
地の利と士気の高さから、緒戦は忍城側の圧勝であった。三成は、近くを流れる利根川を利用し、総延長28キロメートルに及ぶ石田堤を建設、忍城と城下本丸を除いて水没させる水攻めを行うことを決定する。これに対する長親の策は、城を囲む湖に船を出して、敵兵の前で田楽踊りを披露することであった。
三成の指示で雑賀衆が田楽踊りを踊る長親を狙撃するが、長親は一命を取り留める。その後、城に入らず場外で堤作りに雇われていた百姓らも長親が撃たれたことの怒りから石田堤を壊す者が現れ、水攻めは失敗する。
水が引き、三成軍が総攻撃を行おうとする矢先、小田原城が落城したとの知らせが成田勢にもたらされ、忍城も開城する。小田原城落城時までもちこたえた支城は忍城だけだった。
のぼうの城 | |
---|---|
THE FLOATING CASTLE | |
監督 |
犬童一心 樋口真嗣 |
脚本 | 和田竜 |
原作 | 和田竜 |
製作 | 久保田修 |
製作総指揮 |
信国一朗 濱名一哉 豊島雅郎 |
ナレーター | 安住紳一郎 |
出演者 |
野村萬斎 榮倉奈々 成宮寛貴 山口智充 上地雄輔 山田孝之 平岳大 西村雅彦 平泉成 夏八木勲 中原丈雄 鈴木保奈美 前田吟 中尾明慶 尾野真千子 芦田愛菜 ピエール瀧 和田聰宏 ちすん 米原幸佑 中村靖日 市村正親 佐藤浩市 |
音楽 | 上野耕路 |
主題歌 |
エレファントカシマシ 「ズレてる方がいい」 |
撮影 |
清久素延 江原祥二 |
編集 | 上野聡一 |
制作会社 | C&Iエンタテインメント |
製作会社 | 『のぼうの城』フィルムパートナーズ |
配給 |
東宝 アスミック・エース |
公開 | 2012年11月2日 |
上映時間 | 145分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 28.4億円[7] |
犬童一心と樋口真嗣の共同監督で、2010年夏より製作開始、東宝とアスミック・エースの配給で2012年11月2日に公開された。TBS開局60周年記念作品。主演は野村萬斎。累計興行収入28.4億円を記録するヒット作となり[7]、第36回日本アカデミー賞で多数の優秀賞を受賞するなどの評価を受けた。
2010年8月15日、クランクイン。合戦シーンの撮影は、北海道苫小牧市でロケが行われた。主題歌「ズレてる方がいい」のPVも苫小牧市で撮影された。
VFXが多用され、VFXカット数は約350カット、マットペイントは約50カットに及ぶ。VFX制作にはモーターライズを中心としてマリンポスト、日本映像クリエイティブ、ピクチャーエレメント、およびマットペイント担当のFudeの5社が参加した[8]。
当初は2011年9月17日公開の予定だったが、「水攻め」のシーンがあることから東日本大震災による津波被害に配慮し、4月22日に公開を2012年秋に延期することが発表され[9]、2012年5月9日には正式な公開日が同年11月2日となったことが発表された[10]。震災の影響で公開が延期された映画の多くが比較的早期に公開決定したのに対し、本作は最も長期間延期されることとなった。プロデューサーの久保田修によれば、本作の「水攻め」描写は大震災を予見していたかのようなリアリティでありスタッフの優秀さに驚いたが、人間が水に飲み込まれてゆく描写がリアルすぎるため一部がカットされた[11]。また、映画公開直前の2012年9月11日には脚本完全版が発売され、原作者の和田竜は「オリジナルの脚本のまま上映しようとすると240分以上必要で、15億円以上の制作費が必要になってしまう」とコメントし、オリジナル版から大幅にカットして145分の作品に仕上げた。
キャッチコピーは「20,000人 VS 500人 豊臣軍にケンカを売った、でくのぼうがいた。」「この男の奇策、とんでもないッ!」。
TOHOシネマズスカラ座他全国328スクリーンで公開され、2012年11月2日 - 4日の初日3日間で興収5億490万1,150円、動員40万9,352人になり、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第1位となった[12]。続く公開2週も累計興収は11億8,404万5,250円、累計動員は98万2,363人となり2週連続第1位となっている[13]。
第36回日本アカデミー賞において、以下の10部門で優秀賞を受賞し、そのうち美術賞で最優秀賞を受賞した。
第34回ヨコハマ映画祭において、本作と『その夜の侍』『悪の教典』の3作品での演技により、山田孝之が助演男優賞を受賞している[14]。
ムービープラス・アワード2012映画ファン大賞作品賞邦画部門1位[15]。
ロサンゼルスで開催の「LA EigaFest 2012」にてクロージング映画として上映された。
2013年5月2日発売。発売元はアスミック・エース、販売元はハピネット。
回数 | テレビ局 | 番組名(放送枠名) | 放送日 | 放送時間 | 放送分数 | 視聴率 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | TBS | 新春プレミアシネマ | 2014年1月5日 | 20:54 - 23:18 | 144分 | 11.4% | |
2 | 月曜ゴールデン | 2016年1月18日 | 21:00 - 22:54 | 114分 | 5.7% | ||
3 | テレビ埼玉[16] | (放送枠名なし) | 2020年1月2日 | 18:00 - 20:45 | 165分 | - | 完全ノーカット |
4 | BS日テレ[17] | 木曜は!特選時代劇 | 2023年2月16日 | 18:00 - 20:54 | 174分 | - |
2010年度から2012年度にかけて、本作を題材とした田んぼアートが埼玉県行田市の古代蓮の里隣接地の水田にて制作された[18]。なお、同市の田んぼアートは「最大の田んぼアート(Largest rice field mosaic)」としてギネス世界記録に認定されている。
秩父鉄道では、7000系電車に本作と行田市の観光ビジュアルをラッピングした「行田市観光ラッピング電車」を、2012年10月8日から2013年1月6日まで運行した[19]。
劇中のクライマックスシーンで鉄砲足軽が右手で鉄砲を支える描写があるが、これは正規の右撃ち場面を逆方向から撃つ場面に使う演出意図から、映像を左右反転に加工しているためである。またそれ以外にも、石田三成ののぼり旗が裏表逆になっているなど、細部で史実と異なる描写がある[20]。
2017年1月、オトバンクの配信サービス「FeBe」でオーディオブック版が配信された[21]。