ひし美 ゆり子(ひしみ ゆりこ[1]、1947年〈昭和22年〉6月10日[2][3] - )は、日本の女優。本名は境屋 地谷子(旧姓菱見)。 身長158センチメートル。
東京都[2][3]中野区鷺宮1丁目(現・若宮1丁目)生まれ[4]。父は北海道出身で戦時中は技術者として兵器の会社に勤務していたほか[4]、後の千葉工業大学で教えていたこともある[5]。父方の祖父は江戸出身で、彰義隊の残党として北海道に移り住み、ミス北海道の女性と結婚した[4]。
父は戦後、手動式拡大コピー機の会社「スミラ工藝社」を興して成功したが、やがて事業に失敗し、負債処理のために中野の家を引き払い、1954年8月、三鷹市牟礼(現・井の頭4丁目)に転居[5]。
1963年、中野区立北中野中学校から藤村女子高等学校に入学[注釈 1]。高校2年の終りの頃、東宝主催「ミス東京セニョリータ」の準ミスに選ばれ、ステレオセットや電気ミシンなどの賞品を獲得[6][3]。これがきっかけで東宝のカメラテストに呼ばれ、東宝ニューフェイスの後身の第6期オール東宝ニュータレントに選ばれ東宝に入社[6][2][3]。東宝俳優養成所を経て1966年に『パンチ野郎』でデビュー[7][3]。同期には牧れい、小林夕岐子、若原啓子などがいる。
デビュー当初は本名の菱見地谷子名義で活動し、1967年から菱見 百合子に改名。『ウルトラセブン』の友里アンヌ隊員役で知られる[2][1][3]。
1972年、東宝との専属契約が切れ、女優は辞めるつもりでいたが、個人的な記念のつもりで撮ったヌードが「週刊プレイボーイ」に流出し、これを切っ掛けに東映の『不良番長』に出演し女優を続ける。以降、フリーとなって気分一心で現在の名前に改名[8]。『ポルノ時代劇 忘八武士道』『好色元禄㊙物語』など東映の成人映画にも出演した。『新仁義なき戦い 組長の首』でも見事な肢体を披露し、主人公たちを翻弄する魔性の女を演じた[7]。その後も数多くのテレビドラマ・時代劇など各種作品に出演。
私生活では、1979年11月、8歳年下の中華料理店経営の一般男性と結婚し、4人の子供をもうけた[9]。
自伝『セブンセブンセブン ―わたしの恋人ウルトラセブン―』などの著作がある。
近年はトークショー「ゆり子の友達の和!」[注釈 2]やオンライントークショーを企画したり、円谷プロ関連のイベントに参加するなど、積極的にファンとの交流活動を続けている。
2020年代に入ってからは女優業を休業している[10]。
デビューのきっかけとなった「ミス東京セニョリータ」へは高校の友人の誘いによりともに参加した[3]。しかし、華やかな他の参加者に引け目を感じ、さらに人前で喋ることを苦手としていたため水着審査や演技審査を避けて途中で帰宅しようとしたが、ロビーに置かれていた豪華賞品を見て思い直し、我慢して審査を受けたという[3]。後にひし美が聞いたところによれば、1位は当初から決まっていた[3]。
本格的な初レギュラー作となったテレビドラマ『天下の青年』では、ワンカットの長台詞を覚えられず、監督の福田純からこっぴどく叱られ、四十数年後もトラウマのように覚えているという[3]。後に『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』で福田と再会した際は優しく接しられ、女優として認めてもらえたと感じたことを述懐している[3]。
『ウルトラセブン』のアンヌ役は、映画出演決定を理由に降板した豊浦美子の代役として急遽決まり[3]、撮影の前日に突然呼ばれたため、コスチュームの製作が間に合わず、やむを得ず豊浦のサイズに合わせて製作してあったものを着用した。しかし、菱見には小さすぎ、身体にぴったりとフィットしたものになったという[11]。なお、胸部の窮屈さから菱見はコスチュームの脇の下にある黒い蛇腹の部分を、こっそり切って使用していたという[12]。
後年はアンヌ役として知られるが、『セブン』放送当時は街中で声をかけられるようなこともなく、人気を認識するようなことはなかったという[3]。ひし美自身は、子供の視聴者が「アンヌが好き」というのは恥ずかしかったのだろうと推測している[3]。一方、自身が出演した『ゴジラ対ガイガン』を劇場で見た際に、観客の子供から「アンヌ隊員だ」という声が挙がったという[3]。
子供の頃からボクシングなどスポーツを見ることが好きで、アンチ巨人ファンとかつてウルトラセブンで共演した毒蝮三太夫のYouTubeチャンネル「マムちゃんねる」のラジオ対談のなかで語っている。
- 東宝俳優養成所(女優部)(1965年 - 1972年)
- 独立企画(1981年)[13]
- 糟谷企画(1993年 - 1995年)[14]
- アクセスエンタープライズ(1999年)[15]
- 鬼平犯科帳(NET / 東宝)
- 第1シリーズ 第5話「怪談さざ浪伝兵衛」(1969年11月4日) - お春
- 第2シリーズ 第10話「隠居金七百両」(1971年12月9日) - お順
- 東京バイパス指令 第56話「狙われた刑事」(1969年11月28日、日本テレビ / 東宝 / 国際放映)
- 金メダルへのターン! 第23話(1970年、フジテレビ / 東宝)
- ミラーマン 第7話「打倒! 人体侵略作戦」(1972年1月23日、フジテレビ / 円谷プロ) - 成瀬小夜子
- 旗本退屈男 第21話「笑う六地蔵」(1971年2月23日、フジテレビ / 東宝) - おきよ
- 弥次喜多隠密道中 第24話「過去を持つ男」(1972年3月16日、日本テレビ /歌舞伎座テレビ室) - お千代
- 荒野の素浪人 第1シリーズ 第21話「激闘 竜神峡の反乱」(1972年5月23日、NET / 三船プロ) - お福
- 飛び出せ!青春 第37話「結局はただの人間なのか先生も!!」(1972年12月31日、日本テレビ / 東宝 / テアトル・プロ) - 木本教諭の恋人
- プレイガール 第213話「裸女は楽園へ帰れ」(1973年4月30日、東京12チャンネル / 東映) - えり子
- 太陽にほえろ! 第53話「ジーパン刑事登場!」(1973年7月20日、日本テレビ / 東宝) - 大場清枝
- 帽子とひまわり 第13話「沼は汚れているか」(1974年7月3日、NHK)[19]
- ウルトラシリーズ
- 非情のライセンス 第2シリーズ 第26話「兇悪の友情」(1975年3月27日、NET / 東映) - 悠子
- プレイガールQ 第27話「女は裸で奇々怪々」(1975年4月7日、東京12チャンネル / 東映) - 赤木弘子
- ザ★ゴリラ7 第23話「死刑台へ急ぐ野郎ども」(1975年9月5日、NET / 東映) - ミキ
- 新・坊っちゃん 第13話「ゆらゆらゆらと紙の船」(1976年1月16日、NHK) - 桔梗
- 銭形平次 第567話「涙の帰り花」(1977年3月30日、フジテレビ / 東映) - お縫[20]
- 同心部屋御用帳 江戸の旋風 第3シリーズ 第28話「お百度詣りの女」(1977年11月24日、フジテレビ / 東宝)
- 人形佐七捕物帳 第27話「豆六に女難の相!」(1977年11月5日、テレビ朝日 / 東映) - お新
- 新幹線公安官 第2シリーズ 第6話「レイテ爺さんの始発駅」(1978年5月8日、テレビ朝日 / 東映) - ケイ子
- 土曜ドラマ / 鎌田敏夫シリーズ 十字路 第二部 第2話「富士山麓編 樹海の中の少女」(1978年12月9日、NHK)
- 水曜劇場 / 家路〜ママ・ドント・クライ(1979年、TBS)
- 薔薇海峡 第24話「さまざまな愛が今ほとばしる」(1979年6月1日、TBS / 大映テレビ)- みどり
- 熱中時代 刑事編 第13話「新婚旅行で大手柄」(1979年6月30日、日本テレビ / ユニオン映画) - 三千代
- ザ・スーパーガール 第17話「女囚脱獄 復讐に燃えた女体」(1979年7月23日、東京12チャンネル / 東映) - 山田ヒロ子
- 土曜ワイド劇場(テレビ朝日)
- 自画像の怪・夫の亡霊に脅える女(1979年9月8日、東宝映像)[21]
- 悪霊の住む家・危険な誘惑(1980年6月7日、東宝映像)[22]
- 大空港 第61話「兇悪密輸組織撃滅作戦」(1979年11月19日、フジテレビ / 松竹) - 林田美由紀(リン・コウラン)
- 必殺仕事人 第42話「隠し技 暗闇とどめ刺し」(1980年3月7日、ABC / 松竹) - おとよ
- 特命刑事 第5話「小さな亡命者」(1980年8月26日、日本テレビ / 東映) - マーサ・ミズシマ[23]
- 新五捕物帳 第113話「鈴哀し夢の故郷」(1980年9月2日、日本テレビ / ユニオン映画) - おふみ
- 特捜最前線(テレビ朝日 / 東映)
- 第226話「太鼓を打つ刑事!」(1981年9月16日)
- 第265話「遠い炎の記憶!」(1982年6月16日) - 内山佐和子
- 第334話「東京犯罪ガイド!」(1983年10月19日) - 木村ももえ
- それゆけ!レッドビッキーズ 第61話「ミルクと松葉杖の少女」(1981年11月29日、テレビ朝日 / 東映) - みどりの母
- 松本清張の内海の輪(1982年4月17日、TBS / 大映テレビ)
- ハウスこども傑作シリーズ / 「おとうさんのつうしんぼ 祐子の計画」(1982年11月9日、テレビ朝日) - 母・康子[24]
- 暁に斬る! 第7話「誤診の罠」(1982年11月16日、関西テレビ)
- 御宿かわせみ 第2シリーズ 第17話「梅一輪」(1983年2月23日、NHK) - お角
- 探偵・神津恭介の殺人推理2 / 影なき女(1985年2月2日、テレビ朝日 / 松竹)
- 迷宮課刑事おみやさん 第1シリーズ 第1話「10年前のボタン刺青死美人が今日…!」(1985年8月2日、ABC / STAFFアズバーズ)
- 刑事物語'85 第19話「少年はなぜ母を刺したのか?」(1985年8月18日、日本テレビ / ユニオン映画)
- スーパー戦隊シリーズ(テレビ朝日 / 東映)
- 電撃戦隊チェンジマン 第32話「ナナ! 危険な再会」、第33話「ギルークの最期!?」(1985年9月7日・14日) - 田村家・妻
- 光戦隊マスクマン 第6話「夢のゴッドハンド」(1987年4月4日) - ノリオの母
- 遠山の金さん 第1シリーズ 第154話「未婚の母! 愛の子育て夢日記」(1985年9月5日、テレビ朝日 / 東映) - お峰
- 火曜サスペンス劇場 / 「ガラスの家族」(1985年12月17日、日本テレビ / 松竹)[25]
- 牟田刑事官事件ファイル9 「岸辺に立つ女」(1988年10月29日、テレビ朝日 / C.A.L)
- 七瀬ふたたび 第11話・第12話(1998年、テレビ東京 / プラネットエンターテイメント) - 一瀬栄子[26][27]
- 仮面天使ロゼッタ 第7話「迷子の死体」・第9話「森の叫び」(1998年8月15日・29日、テレビ東京 / フォーサム / レイ・アップ / 円谷映像) - 安野部長
- BSドラマ「あした天気に」第1話・第5話(1998年4月 - 5月、NHK)[28]
- 幸せづくり 第30話・第32話(1999年1月4日 - 4月2日、東海テレビ / 東宝) - 篤子[29]
- はいかい indies film maker's B “Babble in the Night”(1999年、テレビ東京 / インターフレンド) - 占い師
- 匿名探偵 第1期 第5話「探偵とまぼろしの女」(2012年11月9日、テレビ朝日 / MMJ) - キャバクラのママ
- 怪獣倶楽部〜空想特撮青春記〜 第4話(2017年6月4日、MBS / 2017年6月6日、TBS / ドリマックス・テレビジョン) - ユリコの母
- 亡霊学級(1996年、大映) - 目黒ユリ(演:宮澤寿梨)の母
- THEウルトラ伝説 / ウルトラセブン映像大図鑑(TBSビデオ) - ナレーター
- ゲートキーパーズ21(2002年) - 池田(旧姓:浮矢)朗美(浮矢和子の娘の成長後)
- ^ 自著『万華鏡の女』p.32には「東京女子体育大学附属高校」とあるが、このような名称の学校は実在しない。公式掲示板における当人の発言によると、「東京女子体育大学附属高校」出身とは、新聞記者の勘違いのために生じた誤伝であるという。なお、東京女子体育大学と藤村女子中学校・高等学校は同じ学校法人が経営しており姉妹校にあたる。
- ^ 主なゲストとしてウルトラセブンで共演したモロボシ・ダン役森次晃嗣、フルハシ隊員役毒蝮三太夫、アマギ隊員役古谷敏、ウルトラセブン最終回はじめ同作品で多くの監督を務めた満田かずほ、ウルトラシリーズの音楽を手がけた作曲家冬木透、ウルトラヒロインの先輩後輩にあたる桜井浩子や西恵子、初代ウルトラマンハヤタ隊員役の黒部進、『プレイガール』で約1年半共演した戦友片山由美子など。
- ^ 出演シーンカットのため未出演。オープニング・タイトルにクレジットはされている。
- ^ この作品後に東宝を退社。
- ^ 「堤 杏子」名義で出演。
- ^ 米国版DVDには、特典映像にオリジナルのインタビュー映像が付属する。
- ^ 監督:近藤朋史。撮影は2011年夏に行われた。<Tomofumi Kondo(P)[@Tomopunks] 2011年8月23日のTwitterより>
- ^ 第11話「魔の山へ飛べ」・第13話「V3から来た男」には未登場。
- ^ 第14話からレギュラー。
- ^ 第22話からレギュラー。
- ^ 「愛と死と」(第16章 - 第20章)台本より
- ^ 第217話からレギュラー。レギュラー出演前、第213話「裸女は楽園へ帰れ」(1973年4月30日放送)に別役でゲスト出演している。レギュラーとして最後の出演は第286話「私にさわると地獄行きよ」(1974年9月23日放送)までで、第287話(最終話)「男見るべからず プレイガール最後の決闘」には出演していない。
- ^ 第135話で初登場。クレジットタイトルに名前が記載されているのは135話、146話、149話、156話の4話。
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