アイゴ科 Siganidae は、スズキ目・ニザダイ亜目の下位分類群の一つである。下位分類はアイゴ属 Siganus 1属のみで、29種が知られている[ 1] 。インド太平洋 および地中海 東部に分布する沿岸魚のグループで、側扁した体型・小さい口と厚い唇・毒 腺の付属した鋭い棘 条などを特徴とする。
成魚の全長はどれも20-50cmほど。広葉樹の葉のような体型で、よく側扁する。背鰭は第一・第二背鰭が繋がって1基になっている。頭部は小さく、口も小さいが唇は厚い。顔つきがウサギ に似るため、英語では"Rabbitfish"(ラビットフィッシュ) と総称される。
背鰭は13棘10軟条、腹鰭は1棘3軟条、臀鰭は7棘9軟条からなる。棘条は極端に長くはないが太く鋭く発達し、全てに毒腺が付いている。棘条は容易にヒトの皮膚に突き刺さり、同時に毒が注入されてしばらく激しく痛む。死んでも毒は消えないので、漁獲時などの取り扱いには注意が必要である。
種類による大きさの差はあまりないが、体色は変異に富む。ヒフキアイゴ などサンゴ礁 性の種類には鮮やかな体色のものが多い。また同種でも精神状態や昼・夜で体色が異なる。
全てがインド太平洋の熱帯・温帯海域に分布する。紅海 産の種類にはスエズ運河 を越え地中海へ進出したものもいる。なお、日本は北西太平洋におけるアイゴ類の北限にあたる。南西諸島 や伊豆 ・小笠原諸島 では10種以上のさまざまな種類が見られるが、九州・四国・本州ではアイゴ 以外の種類を見ることは少ない。
沿岸の浅い海に生息し、海岸近くの藻場 ・岩礁域・サンゴ礁域などを主な棲み処とする。河口などの汽水域 に進入するものもいる。食性は雑食性で、糸状・葉状の藻類 を主に食べるが、甲殻類や多毛類などの小動物も捕食する。植食性の強さから、水族館 等で飼育する場合はしばしばコマツナ等の葉菜類 が餌として用いられる。
産卵行動はおもに夏に行われ、月齢 ・潮汐 に合わせた周期性がある。卵は分離粘着卵で、孵化した稚魚は最初にプランクトン を捕食しながら浮遊生活をする。全長3cm程度で沿岸海域に定着し、大群で生活するようになり、食性も藻類中心に変化する。成長につれ群れは分散し、成魚は単独かつがいで生活する。ただしハナアイゴ S. argenteus は分離浮性卵を産卵し、全長6-8cmになるまで浮遊生活をすることがわかっている。
ほとんどの種類が食用になり、刺し網 ・追い込み網、定置網 、釣り などの沿岸漁業で漁獲される。
沖縄では、旧暦 6月の大潮の頃に大群を成して接岸するアイゴ 、アミアイゴ などアイゴ類の稚魚 をスクまたはシュクと呼び、海藻を食べ始めて磯臭くなる前に漁獲する。これらはスクガラス という塩辛 に加工される他、酢締め でも食べられる。
香港 ではアイゴなどが良く釣れ、「泥鯭 」(広東語 ナイマーン)と呼んで、粥 、スープ 、唐揚げ 、ムニエル 、陳皮 蒸しなどの料理によく利用されている。また広東語 では、「釣泥鯭 」(ディウナイマーン、アイゴを釣る)という言葉が、タクシー に客の相乗りをさせて、多重に料金を取るという違法行為を意味する俗語 になっている。香港の釣りではアイゴは小物の代表であり、少額の客を釣り上げて数で勝負するというイメージからこう言われている。
大きく3つのクレード に分かれる[ 2] 。
moderately slender-bodied group
S. argenteus (Quoy et Gaimard, 1825) - ハナアイゴ
S. woodlandi Randall et Kulbicki, 2005 - セダカハナアイゴ
slender-bodied group
S. spinus (Linnaeus, 1758) - アミアイゴ
S. fuscescens (Houttuyn, 1782) - アイゴ
S. canaliculatus (Park, 1797) - シモフリアイゴに充てられた学名。現在ではシモフリアイゴと別種であることが分かっている。
S. luridus (Rüppell, 1829)
S. sutor (Valenciennes, 1835)
S. rivulatus Forsskål, 1775
deep-bodied group
S. labyrinthodes (Bleeker, 1853)
S. vermiculatus (Valenciennes, 1835) - ムシクイアイゴ
S. randalli Woodland, 1990
S. lineatus (Valenciennes, 1835)
S. guttatus (Bloch, 1787) - ゴマアイゴ
S. insomnis Woodland & R. C. Anderson, 2014
S. corallinus (Valenciennes, 1835) - サンゴアイゴ
S. trispilos Woodland et Allen, 1977
S. doliatus Guérin-Méneville, 1829-38
S. virgatus (Valenciennes, 1835) - ヒメアイゴ
S. javus (Linnaeus , 1766) - ストリークドスパインフット
S. puellus (Schlegel , 1852) - マジリアイゴ
S. punctatissimus Fowler et Bean, 1929
S. puelloides Woodland et Randall, 1979
S. punctatus (Schneider et Forster, 1801) - ブチアイゴ
S. stellatus (Forsskål,1775)
Siganus (Lo) ヒフキアイゴ亜属 - 吻 が著しく突出することを特徴とする[ 3] [ 4] 。
S. niger Woodland, 1990
S. uspi Gawel et Woodland, 1974
S. magnificus (Burgess, 1977)
S. vulpinus (Schlegel et Müller, 1845) - フォックスフェイス
S. unimaculatus (Evermann et Seale, 1907) - ヒフキアイゴ (フォックスフェイスと同種とする見解もある)
アミアイゴの群れ。グアム のサンゴ礁にて
アイゴ S. fuscescens
全長30cm。本州から琉球列島までの各地、オーストラリア沿岸に分布する。九州・四国・本州周辺海域では最も一般的なアイゴ科魚類である。西日本各地で食用に漁獲される。斑紋には多少変異があり、たとえばシモフリアイゴという和名のアイゴは本種と同種である。
ゴマアイゴ S. guttatus
全長40cm を超える大型種。全身に橙色の斑点があるのでこの名があり、他には背びれの最後部に黄色の斑点が1つあるのも特徴である。沖縄県では「カーエー」と呼ばれ、多く漁獲される。
アミアイゴ S. spinus
全長20cmほど。体側に網目に見える迷路状の模様がある。伊豆半島以南のインド太平洋熱帯海域に分布する。沖縄ではスクガラス の主な原料となる。
ヒフキアイゴ S. unimaculatus
全長30cm 。口が「ひょっとこ 」のように突き出ている。体が黄色で鰓蓋が白、顔と胸びれのまわりが黒で、胴体にも1-2 個の黒い斑点がある。チョウチョウウオ のような鮮やかな体色をしており、熱帯魚 として流通することもある。
ヒメアイゴ S. virgatus
全長25cm 。頭と鰓蓋の後ろに黒い斜めの帯があり、体の後半は黄色。
他、琉球列島から未記載種と思われるものが確認されているという。
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