アジアハイウェイ(英語: Asian Highway Network)とは、アジア32カ国を横断する全長14.1万キロメートル(km)[1]にわたる幹線道路網[2]。主に既存の道路網を活用し、現代のシルクロードを目指して計画されているものである。トルコからは欧州自動車道路に接続する。英語での略称はAH。国際連合アジア太平洋経済社会委員会が運営事務局をつとめている。
日本国内には唯一1号線(AH1)が通過しており、全長は1,108 kmである。
- 1959年:国際連合アジア極東委員会(ECAFE)により提唱された。
- 1968年:国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)に「AHP事務局」が設立される。
- 1969年:4月、第一回アジアハイウェイモーターラリーがビエンチャン - シンガポール間3400kmで開催された。
- 1970年:11月、第2回アジアハイウェイモーターラリーがテヘラン - ダッカ間で開催、9か国からの62台の車が6800kmを走る[3][4]。
- 1988年: 中国が参加。
- 1992年:1993年までの2年間、 日本が資金援助(日本ESCAP協力基金、JECF)を行い、道路網の見直し、設計基準の改訂、国際道路交通の促進のための方策の検討など道路網整備の調査を実施[5]。
- 2003年11月:AH政府間協定に関する政府間会合にて日本も路線参加を表明。
- 2003年11月18日:バンコクにて「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定」が採択される[6]。
- 2004年4月26日:国際連合アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)にて関係23ヶ国が調印。日本も確定的署名を行う[6]。
- 2005年7月4日: カンボジア、 中国、 日本、 ミャンマー、 韓国、 スリランカ、 ウズベキスタン、 ベトナム、 ロシアにて協定が発効[6][7]。
- 2005年9月5日: アルメニアにて協定が発効[8]。
- 2005年11月16日: ブータンにて協定が発効[9]
- 2006年1月17日: パキスタンにて協定が発効[10]
- 2006年3月9日: ジョージアにて協定が発効[11]。
- 2006年4月8日: アフガニスタンにて協定が発効[12]
- 2006年5月17日: インドにて協定が発効[13]
- 2006年6月11日: タイにて協定が発効[14]。
- 2006年7月8日: タジキスタンにて協定が発効[15]。
- 2006年11月3日:AH-7、AH-48、AH-63、AH-65の経路の一部が改定される[16]。
- 2006年11月28日: キルギスにて協定が発効[17]。
- 2008年1月30日: カザフスタンにて協定が発効[18]。
- 2008年3月17日: フィリピンにて協定が発効[19]。
- 2008年7月9日: ラオスにて協定が発効[20]。
主要幹線ルートとして、以下のような8本のルートがある。
- AH-1(延長:20,710km)
- 東京(Tokyo・起点)、福岡(Fukuoka)、釜山(Busan)、ソウル(Seoul)、平壌(Pyongyang)、北京(Beijing)、武漢(Wuhan)、長沙(Changsha)、広州(Guangzhou)、南寧(Nanning)、ハノイ(Hanoi)、ホーチミン(Ho Chi Minh City)、プノンペン(Phnom Penh)、バンコク(Bangkok)、ヤンゴン(Yangon)、インパール(Imphal)、ダッカ(Dhaka)、コルカタ(Calcutta)、ニューデリー(New Delhi)、イスラマバード(Islamabad)、カーブル(Kabul)、テヘラン(Tehran)、アンカラ(Ankara)、イスタンブール(Istanbul)、カプクレ(トルコ、ブルガリア国境・終点)
- AH-2(延長:10,711km)
- デンパサール(Denpasar インドネシア・起点)、スラバヤ(Surabaya)、ジャカルタ(Jakarta)、シンガポール(Singapore)、クアラルンプール(Kuala Lumpur)、バンコク(Bangkok)、チェンライ(Chiang Rai)、マンダレー(Mandalay)、インパール(Imphal)、ダッカ(Dhaka)、ヘタウダ(Hetauda)、ニューデリー(New Delhi)、ラホール(Lahore)、クエッタ(Quetta)、テヘラン(Tehran)、コスラヴィ(イラン・終点)
- AH-3(延長:6,286km)
- ウランウデ(Ulan-ude ロシア連邦・起点)、ウランバートル(Ulan Bator)、北京(Beijing)、天津(Tianjin)、上海(Shanghai)、長沙(Changsha)、昆明(Kunming)、チェンライ(Chiang Rai)・チャイントン(タイ、ミャンマー・終点)
- AH-4(延長:4,811km)
- ノボシビルスク(Novosibirsk ロシア連邦・起点)、ホブド(Hovd)、ウルムチ(Urumqi)、カシュガル(Kashi)、イスラマバード(Islamabad)、ラホール(Lahore)、カラチ(Karachi パキスタン・終点)
- AH-5(延長:9,842km)
- 上海(起点)、南京(Nanjing)、西安(Xian)、蘭州(Lanzhou)、ウルムチ(Urumqi)、アルマトイ(Almaty)、ビシュケク(Biskek)、タシュケント(Tashkent)、アシガバート(Ashkhabad)、トルクメンバシ(Turkmenbasi)、バクー(Baku)、トビリシ(Tbilisi)、イスタンブール(Istanbul)、カプクレ(トルコ、ブルガリア国境・終点)
- AH-6(延長:10,407km)
- 釜山(Busan・起点)、平壌(Pyongyang)、ウラジオストク(Vladivostok)、ハルビン(Harbin)、イルクーツク(Irkutsk)、ノボシビルスク(Novosibirsk)、オムスク(Omsk)、チェリャビンスク(Chelyabinsk)、モスクワ(Moscow)、クラスノエ(ロシア連邦、ベラルーシ国境・終点)
- AH-7(延長:4,776km)
- エカテリンブルク(ロシア連邦、起点)、チェリャビンスク(Chelyabinsk)、アスタナ(Astana)、オシ(Osh)、タシュケント(Tashkent)、ドゥシャンベ(Dushanbe)、カーブル(Kabul)、ヘラート(Herat)、クエッタ(Quetta)、カラチ(Karachi パキスタン・終点)
- AH-8(延長:4,435km)
- トルピュノブカ(ロシア連邦、フィンランド国境・起点)、サンクトペテルブルク(Sankt-Peterburg)、モスクワ(Moscow)、アストラハン(Astrakhan)、マハチカラ(Makhachikara)、バクー(Baku)、テヘラン(Tehran)、バンダレ・エマーム(イラン・終点)
路線番号の付与方法は以下のとおり[21]。
- 「アジアハイウェイ」を表す「AH」から始まり、一桁、二桁または三桁の番号がこれに続く。
- 1から9までの一桁の路線番号は、二以上の小地域を実質的に通過するアジアハイウェイの路線に割り当てる。
- 二桁および三桁の路線番号の組は、小地域内のアジアハイウェイの路線(隣接する小地域につながるものを含む。)および加盟国内にある道路の路線を示し、以下のとおり割り当てる。
※アルファベット順。なお( )内は各国におけるハイウェイの延長距離(単位km、総延長141,714km)
アフガニスタン(4,247)、 アルメニア(958)、 アゼルバイジャン(1,442)、 バングラデシュ(1,806)、 ブータン(1)、 カンボジア(1,340)、 中国(26,699)、 北朝鮮(1,320)、 ジョージア(1,154)、 インド(11,432)、 インドネシア(4,115)、 イラン(11,218)、 日本(1,108)、 カザフスタン(13,189)、 キルギス (1,695)、 ラオス (2,318)、 マレーシア(1,595)、 モンゴル(4,286)、 ミャンマー(3,003)、 ネパール(1,321)、 パキスタン(5,377)、 フィリピン(3,517)、 韓国(907)、 ロシア(16,869)、 シンガポール(19)、 スリランカ(650)、 タイ(5,101)、 タジキスタン(1,925)、 トルコ(5,254)、 トルクメニスタン(2,204)、 ウズベキスタン(2,966)、 ベトナム(2,678)
国土交通省は、2005年「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定」が発効したことを受け、協定に規定されたアジアハイウェイに係る標識を、順次設置することを発表している[22]。
日本橋を起点[23]とし、東京-福岡間の首都高速道路、東名高速道路、名神高速道路、中国自動車道、山陽自動車道、広島岩国道路、関門自動車道、九州自動車道、福岡都市高速道路の高速道路がAH-1に編入された。
中国は1988年にアジアハイウェイ・プロジェクトに参加[24]。1993年に中国国内に初めて路線が設定された[24]。
中国国内の路線は中国側からの提案に基づきESCAPで検討され、1993年に開催された専門家会議で基本的に合意されたが、最終承認段階でAH3号の北京 - 長沙間及びAH82号の長沙 - 深框間については承認するが、その他の区間については検討中であるとESCAPに回答があった[24]。そのためESCAPは正式承認された区間以外を候補路線(Possible Route)として扱う対応をとった[24]。
- 山内洋隆著「遥かなるアジアハイウェイ」JETROレポート、2004年。
- 文献内で引用されているUNESCAPのデータ。
- ^ Asian Highway Route Map [1]
- ^ アジアハイウェイとは 国土交通省総合政策局. 2022年10月11日閲覧。
- ^ JAFスポーツ. JAF出版社. (1970.8.1)
- ^ Lwin, UN Photo/Saw (1970年11月1日). “Second Asian Highway Motor Rally” (英語). www.unmultimedia.org. 2020年1月16日閲覧。
- ^ アジアハイウェイ・プロジェクトの概要 [2]
- ^ a b c 2005年(平成17年)6月21日外務省告示第464号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定の効力発生に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)3月1日外務省告示第110号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のロシア連邦による確定的署名に関する件」
- ^ 2005年(平成17年)8月15日外務省告示第778号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のアルメニア共和国による批准に関する件」
- ^ 2005年(平成17年)9月28日外務省告示第975号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のブータン王国による批准に関する件」
- ^ 2005年(平成17年)12月7日外務省告示第1136号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のパキスタン・イスラム共和国による批准に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)3月1日外務省告示第109号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のグルジアによる承認に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)3月1日外務省告示第111号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のアフガニスタン・イスラム共和国による批准に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)4月24日外務省告示第251号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のインドによる批准に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)4月24日外務省告示第252号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のタイ王国による批准に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)6月13日外務省告示第319号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のタジキスタン共和国による批准に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)9月27日外務省告示第557号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定の附属書の改正に関する件」
- ^ 2006年(平成18年)10月17日外務省告示第582号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のキルギス共和国による批准に関する件」
- ^ 2008年(平成20年)1月18日外務省告示第41号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のカザフスタン共和国による承認に関する件」
- ^ 2008年(平成20年)2月7日外務省告示第86号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のフィリピン共和国による批准に関する件」
- ^ 2008年(平成20年)5月27日外務省告示第298号「アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定のラオス人民民主共和国による批准に関する件」
- ^ アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定 付属書Ⅰ
- ^ アジアハイウェイ道路網に関する政府間協定に基づく標識の設置について 国土交通省 2010年6月22日
- ^ アジアハイウェイの標識について 国土交通省
- ^ a b c d “中国 (China)アジアハイウェイ路線とその現状”. 国土交通省. 2021年7月31日閲覧。