『アンの愛情』(原題:Anne of the Island、島のアン)は、カナダの作家L・M・モンゴメリが1915年に発表した、『赤毛のアン』シリーズの第3作にあたる長編小説。前作の『アンの青春』において、アヴォンリーでの賑やかな生活に対して、今作ではレドモンド大学における修士生(B.A.)として、勉学、社交、恋が焦点となっている。ロマンス的な要素が最も強く、また当時のカナダにおける大学生活の描写という点でも興味深い。アンの18~22歳時を描いている。
アンはギルバートやチャーリー・スローン、そしてクイーン学院時代の親友のプリシラと共に大学へ行くことになっており、親友のダイアナを始め、アヴォンリーの人々と名残を惜しむ。一方でギルバートはアンを変わらず愛していたが、アンはギルバートを親友としか見ていない上に、その先に進むのを拒絶していた。アンとプリシラは共に下宿し、共同生活に入る。アンとプリシラはフィリパ・ゴードンと出会い、友人となる。それがきっかけで大学の中心人物の一人ともなる。一方でギルバートはアンと成績を競いながら、実力が学生たちの間で認められていく。ギルバートはアンのもとへしばしば訪れるが、慎重に一線を越えないように配慮していた。アンの最初の帰郷では、幼友達のルビーの死、友人のジェーンの西部への旅立ち、初めての投稿小説の採用などがあった。ただし、これは他の出版社からは突き返された原稿が、製粉会社のための一文をダイアナに追加されて勝手に投稿されたため、アンにとっては良いものではなかった。2年生になると、アンはクイーン時代の友人のステラの提案で家を借り切る事にし、プリシラに加えフィリパも同居する事になり、賑やかな生活を送る。3年生の時に、名家の一族で、家庭の事情で欧州へ滞在していたロイ・ガードナーと運命的な出会いをする。風貌や声などすべてがアンの理想の男性であったため、やがて恋人同士となる。一方でギルバートにも恋人と噂される女性ができる。卒業を間近にアンはロイに求婚されるが、そこで初めて自分の恋が幻想であった事に気づき、断る。同じ頃、ギルバートは病の床にあり、死の危機に瀕していた。それを聞いて、アンは初めてギルバートに対する自分の感情に気づく。死の危機から脱したギルバートは、フィリパからの手紙でアンがロイからの求婚を断ったことを知る。ギルバートのほうも、恋人とされていた女性は恋人ではなく、他に婚約者がおり、ロイの出現後も相変わらずアンの事を思い続けていた。快復したギルバートは再びアンに求愛し、2人はやっとお互いの気持ちを確かめ合い、婚約する。
アンが通うことになるレドモンド大学のモデルは、著者が1895年から約1年間通っていたダルハウジー大学で、また同大学に校舎を構えるキングスポートのモデルは、ノヴァ・スコシア州の州都ハリファックスである。
各タイトルは村岡花子訳に準拠する(『アンの想い出の日々』のみ、その孫である村岡美枝[1]訳に準拠する)。通常、最初に上げられている9冊の本をアン・ブックスと呼ぶ。アン・ブックスをより狭い範囲に呼ぶ場合もあるが、9冊の本は、アンを主人公とするか準主人公とする「アンの物語」である。これに対し、追加の2冊は短編集で、「アンの物語」と同じ背景設定であるが、大部分の作品はアンとは直接に関係していない。アンが端役として登場したり、その名前が言及される短編もあるが、総じて、題名が示す通り、「アンの周囲の人々の物語」である。 なお、4冊目「アンの幸福」の原題はイギリス版とアメリカ版で異なり、イギリス版ではAnne of Windy Willows、アメリカ版ではAnne of Windy Poplarsで、内容も少し異なる。
書名 | 原題 | 出版年 | アンの年齢 | 物語の年代 |
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赤毛のアン | Anne of Green Gables | 1908 | 11〜16 | 1877〜1882 |
アンの青春 | Anne of Avonlea | 1909 | 16〜18 | 1882〜1884 |
アンの愛情 | Anne of the Island | 1915 | 18〜22 | 1884〜1888 |
アンの幸福 | Anne of Windy Willows | 1936 | 22〜25 | (1888〜1891) |
アンの夢の家 | Anne's House of Dreams | 1917 | 25〜27 | 1891〜1893 |
炉辺荘のアン | Anne of Ingleside | 1939 | 33〜39 | 1899〜1905 |
虹の谷のアン | Rainbow Valley | 1919 | 40〜41 | 1906〜1907 |
アンの娘リラ | Rilla of Ingleside | 1921 | 48〜53 | 1914〜1919 |
アンの想い出の日々 | The Blythes Are Quoted | 2009 | 40〜75 | 1906〜1941 |
以下はアンとの関連が薄い短編集 | ||||
アンの友達 | Chronicles of Avonlea | 1912 | ― | ― |
アンをめぐる人々 | Further Chronicles of Avonlea | 1920 | ― | ― |
ミーガン・フォローズの主演による『赤毛のアン』は、初めてプリンス・エドワード島でロケを行ったことで話題となった。 製作、監督、脚本はケビン・サリバン。第3作目はアンの愛情を元にしておらず、オリジナルなストーリーである。