アンドロメダ病原体 The Andromeda Strain | ||
---|---|---|
著者 | マイケル・クライトン | |
発行日 | 1969年 | |
ジャンル | SF小説 | |
国 | アメリカ合衆国 | |
言語 | 英語 | |
形態 | 文学作品 | |
次作 | アンドロメダ病原体-変異- | |
公式サイト | http://www.michaelcrichton.com/the-andromeda-strain | |
コード | ISBN 0-394-41525-6, 84-406-2955-9, OCLC 12231, 30832901 | |
ウィキポータル 文学 | ||
|
『アンドロメダ病原体』(アンドロメダびょうげんたい、原題;The Andromeda Strain、直訳では、strainは「病原体」ではなく「菌株」)は、1969年に出版されたマイケル・クライトンによるSF小説。この小説がテクノロジー小説の嚆矢とされている。また、フィクションをドキュメンタリーの手法で描く「モキュメンタリー」の嚆矢でもある。
マイケル・クライトン名義で初めて発表された長編小説であり、同時に出世作とされている。
1971年にロバート・ワイズの監督により映画化された(原題は原作と同じ。邦題は『アンドロメダ…』)。2008年には、リドリー・スコット/トニー・スコット製作によるテレビミニシリーズ(邦題『アンドロメダ・ストレイン』)が放送された。1971年版で監督自身が「主役はセットである」と隔離施設の出来に賞賛を送っている。
「アンドロメダ菌株(ストレイン)」という架空の「病原体」をめぐる5日間の出来事を書いた小説。
通常、小説は、地の文や会話、それに挿絵で構築されるが、この作品は、「科学的な危機を正確かつ客観的に記録した報告書」という体裁で成り立っており、学術的あるいは理論的な世界観、国家的危機の際に発動される政治・軍事プログラム[要曖昧さ回避]の厳格性を前面に出し、架空の科学理論(宇宙線の影響下での成層圏における驚異的な生命進化など)/写真/図(電算機出力のダイアグラムや軍事通信フォーマット、血液の分析結果)などの具体的資料を駆使して表現されている。
「SFファンは(クライトンに)希望を持ってよい(『ニューズウィーク』誌)」や「サイエンス・フィクションにおけるひとつの完成された形(『ライフ』誌)」という賞賛がある一方、科学技術上のリアリティーに較べて人間的興味が薄い、テーマが古臭い、結果がおざなりである、という批判も存在する。ただしニューヨーク・タイムズ紙は、そのような点も包括した上でこの作品を評価している。また、ワイルドファイア研究施設への入構時の、何重にも渡る厳格な「防疫・滅菌手続き」は、『サタデイ・レビュー』誌でジョン・リアが、当時進行中だったアポロ計画の隔離検疫手順の不備を引き合いに出して論評を行っている[1]。
なお、これに先駆け1964年に小松左京が発表したパンデミックを描いたSF小説『復活の日』は、1965年に映画化企画があがっていたが合作でないと日本では無理との東宝の判断で英訳され、20世紀フォックスへ渡されている。その後、当時フォックスに出入りしていたマイケル・クライトンが4年後の1969年に類似テーマの『アンドロメダ病原体』を出版してベストセラーとなり映画化され、小松左京は本作を絶賛した。『復活の日』もまた1980年に映画化されているが、原作としては『復活の日』のほうが先である。
スクープ計画という「宇宙空間の微生物を回収し、新しい生物兵器を作り出す」ことを目的とした人工衛星「スクープ7号」がアメリカのアリゾナ州の町「ピードモント」という砂漠の中の小さな町に着陸した。車両を使った回収部隊が予定通りピードモントに向かったが、町は全く沈黙しており、車上からはひと気が全く認められなかった。だが、誰かがいるという報告があった直後、回収部隊からの連絡は途絶えてしまった。スクープ衛星の司令部は軍用偵察機を発進させてピードモントを空中から撮影し、町の住人及び回収部隊が1人を除いて死滅していることを確認した。但し、家屋内にもう1人生存者がいた。事態を重視した計画責任者のマンチェック少佐は、ワイルドファイア警報の発令を上申した。
ワイルドファイアとは「地球外生物がもたらされた場合、その生物を調査・分析して地球上での伝播を防ぐ」ということを目的とした計画及びその実行機関の名称であり、研究施設はネヴァダ州フラットロックにある農業試験場の地下に建造されていた。地上とは完全に隔離されている上、万が一その生物が流出するような事態が起こった場合に備えて自爆用の核爆発装置まで設置されていた。
翌日、このワイルドファイア計画の発案者であり責任者でもある細菌学者のジェレミー・ストーン博士が、チャールズ・バートン博士を伴って気密服を着てピードモントを調査した。ピードモントの住人は全身の血液が凝固するという謎の症状によって死亡しているか、または奇怪な自殺をしていた。そうした異常事態の中、2人は町を探索してスクープ衛星が町の医師の元に運び込まれていることを突き止めた。衛星はその医師によって強引に蓋が開けられており、それがこの異常事態を引き起こしたらしいと2人は推察した。中にまだ「何か」が残っていることを願いつつ2人は衛星を回収したが、その過程で生存者が2人見つかった。1人は偵察機の画像に写っていた胃潰瘍を患った飲酒家の老人で、もう1人は健康的に何ら問題が認められない生後2カ月の乳児だった。健康状態が全く異なる2人が生き残ったことで、原因究明は困難を極めることとなる。最終的に、アンドロメダ菌株は狭いpH領域内でのみ生存/増殖する事が判明した。これに対して乳児は過呼吸によるアルカリ血症、老人はアルコールの過摂取による酸血症を持っており、この条件からは逸脱していたために生存していた。但し、この2名の症状が正反対のものであった為、なかなか生存条件が判明しなかった。
ストーンとバートンは2人を収容してワイルドファイア研究所に向かいつつ、核爆発によるピードモントの「核による焼却」を要請した。だが、政府は核を使用することの重大性を考慮してその要請を一旦留め、代わりに州兵を展開して当該地域の封鎖を行った。しかし、その連絡は通信機の機能不全により、ワイルドファイア研究チームに届くのが遅れてしまった。
様々な思惑が絡み合いつつも入院中のカーク博士を除く4人の研究員がワイルドファイア研究所に集結した。彼らは、後に「アンドロメダ菌株」と名付けられることになる未知の微生物を衛星内部で発見して調査研究を開始、同時に2名の「患者」のみが生存できた理由を探し始めた。だが、彼らの努力にもかかわらず成果はなかなか上がらない。そして、状況を打破する決断の末に病原体の特性が判明した時、彼らは予想もしなかった危機を自ら招いていることに気づく。
ダニエル・H・ウィルソンにより『アンドロメダ病原体-変異-』が執筆され、原著は2019年11月12日に出版された。和訳本は酒井昭伸訳で2020年5月26日に早川書房より出版。