『イーハトーブ幻想〜KENjIの春』(イーハトーブげんそう ケンジのはる、海外タイトル:Spring and Chaos)は、当時開局25周年を迎えたテレビ岩手が初めてアニメーション制作に参加し、テレビ岩手開局25周年記念番組として1996年12月14日に日本テレビ系列(NNS)で放送されたテレビアニメ作品。56分。1997年に第23回放送文化基金賞(テレビエンターテインメント番組)を受賞した。また、2008年の東京国際映画祭アニメ部門animecsTIFFでも上映された。
詩人宮沢賢治の半生を丹念に追った伝記的作品(宮沢賢治生誕百周年記念作品)。グループ・タックが制作し、登場人物をますむらひろし監修の擬人化した猫のキャラクターに置き換えた点などは、1985年のアニメ映画『銀河鉄道の夜』と共通している。主題歌を含む音楽は上々颱風が手がけた。
監督・脚本の河森正治はマクロスシリーズなどのSFロボットアニメ作品で知られるが、本作では主人公ケンジを通して自然と人間の交感を描いた。詩的なファンタジー空間の表現にはペンシルアニメやCGを使用。鎌田東二は「ここまで宮沢賢治のシャーマニスティックな感覚を深くいきいきと描いた作品は知りません。」と感想を述べている[1]。 河森は本作の縁からCG制作に協力したサテライトの取締役となり、『地球少女アルジュナ』などのファンタジー色の濃い作品を発表している。
東北地方で質屋の息子として育ったケンジは、周囲に認められないまま詩や童話の創作活動に励んでいた。妹のトシは数少ない理解者だったが、重い病に侵され余命幾ばくもなかった。
やがてケンジは農村の小学校の教師となり、生徒達に自然との対話を教える。教職を辞した後は自ら畑を耕し、農民芸術の振興を図った。しかし、苛酷な自然環境の中で理想は揺らぎ、心身とも挫折しかけたケンジは不思議な世界に幻惑される。