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(2022年10月 )
「ウェールズ語」と呼ばれる言語については「ウェールズ語 」をご覧ください。
ウェールズ英語 (ウェールズえいご、英語 : Welsh English 、ウェールズ語 : Saesneg Gymreig )は、ウェールズ人 が話す英語 の方言 を総括して指す語である。この方言はウェールズ語 の文法 から著しい影響を受け、しばしばウェールズ語に由来する単語を含んでいる。独特の単語と文法に加えて北ウェールズ やカーディフ (英語版 ) 、南ウェールズ渓谷 (英語版 ) 、西ウェールズ (英語版 ) のものなど様々なアクセント がウェールズ中に遍在している。
ウェールズ東部の方言がイングランドで話されている英語 (英語版 ) の方言から影響を受けている一方で、ウェールズ西部のアクセントと方言はウェールズ語から大いに影響を受けてきた[ 2] 。東北ウェールズと北ウェールズ沿岸の一部はマーシーサイド英語 から影響を受けてきたが、東部と南東部では西地方 (英語版 ) 方言や西ミッドランズ (英語版 ) 方言から影響を受けてきた[ 3] 。
ウェールズ英語を指す話し言葉としてウェングリッシュ (Wenglish : Welsh とEnglish のかばん語 )があり、1985年から使われている[ 4] 。
アバークレイヴで発音するようなウェールズ英語の単母音(Coupland & Thomas (1990) , pp. 135–136より)
カーディフで発音するようなウェールズ英語の単母音(Coupland & Thomas (1990) , pp. 93–95より)。話し手により長い/ɛː/ は短い/ɛ/ と同じ高さになる場合がある[ 13] 。
アバークレイヴで発音するようなウェールズ英語の二重母音(Coupland & Thomas (1990) , pp. 135–136より)
カーディフで発音するようなウェールズ英語の二重母音(Coupland & Thomas (1990) , p. 97より)
トラップバススプリット (英語版 ) はウェールズ英語では変化しやすく、特に社会的地位によりそれが出やすい。カーディフ英語 (英語版 ) のような方言ではanswer やcastle 、dance 、nasty のような言葉はたいていTrap に含まれる短い母音のように発音される一方で、ask やbath 、laugh 、master 、rather のような言葉は普通Palm の母音と同じ長い音のように発音される。一方この相違はアバークラフ英語 (英語版 ) のような方言では完全に欠落している場合がある。
Car の母音はしばしば非円唇中舌広母音 [ɑ̈] として発音され[ 15] もっと多く長い非円唇前舌広母音 /aː/ として発音される[ 9] 。
更に広い範囲で使われている方言、特にカーディフではbird の母音は円唇前舌中央母音 [ø̞ː ] となっており、これは南アフリカ英語 やニュージーランド英語 と同様の音である[ 16] 。
ほとんどの長い単母音は容認発音 と同様であるが、容認発音における/əʊ/ を伴う言葉は時に[oː ] と発音され、容認発音における/eɪ/ は[eː] と発音される。この傾向を説明する例はアバークレイヴ (英語版 ) のplay [ˈpleɪ] - place [pleː s] の発音である[ 17] 。
北部 の方言ではcoat の/əʊ/ やcaught/court の/ɔː / は/ɔː / (音声学上は[oː ] )に統合される場合がある[ 8] 。
前舌化する二重母音は容認発音に似る傾向がある。ただしbite の母音[æ̈ɪ] は別で、もっと中央寄りで発声される[ 17] 。
後舌化する二重母音は更に多様である[ 17] 。
容認発音におけるlow の母音は、短母音で発音されるほかにも、上記したようにしばしば[oʊ̝] と発音される。
town という言葉は中舌狭めの広母音 [ɐʊ̝] で発音される。
下降二重母音[ɪʊ̯] として残るウェールズ英語は後期中英語の二重母音 /iu̯/ が決して/juː/ にならなかった(英語版 ) 数少ない方言の一つである。従ってyou /juː/ 、yew /jɪʊ̯/ 、ewe /ɪʊ̯/ はウェールズ英語では異形同音異義語ではない。音韻欠落 (英語版 ) のようなことは決して起こらず、殆どの英語の方言では区別されないchoose /t͡ʃuː z/ とchews /t͡ʃɪʊ̯s/ や、through /θruː / とthrew /θrɪʊ̯/ をウェールズ英語では区別して発音する。
ほとんどのウェールズ人のアクセントは有声歯・歯茎たたき音およびはじき音 [ɾ] (「たたき音およびはじき音 r 」)として /r/ を発音する。イングランドの殆どのアクセントのような接近音 [ɹ] の代わりに[ 18] [ 19] スコットランド英語 や一部の北部英語の (英語版 ) アクセントと南アフリカ英語の アクセントと同様のものである。一方で有声歯茎・後部歯茎顫動音 [r] もウェールズ語 の影響を受けて使われる場合がある。
ウェールズ英語は主として単語の末尾などで r 音が欠落している が様々な末尾などでの r 音の発音がウェールズ語特に北部 (英語版 ) 方言により影響されたアクセントに見出せる。更にポートタルボット英語 (英語版 ) が主としてウェールズ英語の他の方言のように末尾などでの r 音が欠落している一方で、一部の話し手はアメリカ英語 のように/ɚ/ のある bird の前舌母音に取って代わる場合がある[ 20] 。
H音の脱落 (英語版 ) は多くのウェールズ語のアクセント特にカーディフ英語 (英語版 ) のような南部 方言で一般的であるが[ 21] 、ウェールズ語の影響を受けた北部方言と西部 (英語版 ) 方言には見られない[ 22] 。
母音間ではしばしば長子音 化することがあり、例えば money は [ˈmɜn.niː ] と発音する。
ウェールズ語は Z という文字と有声歯茎摩擦音 /z/ が少ない為に pens (/pɛnz/ )と pence が特に西北ウェールズや西ウェールズ、南西ウェールズで /pɛns/ に統合される一方で、ウェールズ語を第一言語とする話者に cheese や thousand のような言葉に無声歯茎摩擦音 /s/ と共に置き換える人がいる[ 24] 。
ウェールズ語に影響された北部方言では、chin (/tʃɪn/ )と gin は /dʒɪn/ に統合される場合もある。
スカウス 訛りなどの影響を受けた東北部ではng 合体(英語版 ) が見られないため、sing は /sɪŋɡ/ と発音する。
北部のアクセントでも /l/ は強く軟口蓋化した [ɫː ] でしばしば発音される。南東部の多くの地域では明快で低く太い L は容認発音でみられるような発音にしばしばとって替わられる[ 20] 。
子音は一般に容認発音と同じであるが、/ɬ / や /x / (音韻学的には [χ ] )のようなウェールズ語の子音は、Llangefni や Harlech のような外来語に取り込まれている。
bach (少しのあるいはほんの少しの)、eisteddfod 、nain 、taid (それぞれ祖母 と祖父 )のようなウェールズ語 からの借用語は別にして、固有のウェールズ英語には独特の文法上のしきたりがある。この例として、一部の話者が先行する発言の形式によらず付加疑問 (英語版 ) “isn't it?”を使う例や、強調のために述語 の後に主語と動詞を配置する例(例えばFed up, I am あるいはRunning on Friday, he is. など)がある。
南ウェールズでは、where という言葉はしばしば疑問文でwhere to に拡大され、"Where to is your Mam?" のように用いられる場合がある。butty (ウェールズ語 : byti )という言葉は(恐らく「buddy」(仲間)に関係する[要出典 ] )「友人」の意味で使われる[ 26] 。
ウェールズに特有の英語の標準語はないが、ウェールズ英語の言い回しの翻訳である語句“look you ”(実際は稀にしか使われない)などの特徴は、イギリスの他地域 からの英語話者にウェールズ出身者っぽいものとして認識されている。
Tidy という単語は「最も使われすぎのウェングリッシュの単語の一つ」と言われていて、「素晴らしい」「長い」「かなり立派な」「沢山」などの幅広い意味に用いられる。tidy swill という言葉は、「最低限でも顔と手を洗う」という意味で使われる[ 27] 。
ウェールズが益々イングランド風になってきているので、コードスイッチング は益々当たり前のものになっている[ 28] [ 29] 。
ウェールズのコードスイッチャーは主として3分類のどれかになる。第一分類は第一言語がウェールズ語で英語に最も自信のない人々で、第二分類は反対で英語が第一言語でウェールズ語に自信が少ない人々で、第三分類は第一言語がどちらかで両方の言語で能力を発揮する人々から成る[ 30] 。
ウェールズ語と英語はコードスイッチングの為に共存させる構成に十分な重複部分があることを示す適合性を共有している。ウェールズ英語のコードスイッチングの研究では、ウェールズ語がしばしば母体言語の立ち位置を取り、そこへ英語の単語や語句が混入される。この使い方の典型的な例は、“I love soaps”と訳せる dw i’n love-io soaps などが考えられる[ 29] 。
ウェールズ語と英語のコードスイッチングに関する2005年のマーガレット・デューチャーが行った研究では、調べた文の90%が母語の体裁(MLF)に完全一致することが分かった。これはウェールズ英語がコードスイッチングの古典的な事例に区分されることを意味する[ 29] 。この事例は、母体となる言語が何か明確であり、コードスイッチングを使う文の中の節の大半が識別可能かつ互いと明確な区別ができて、文が主語・動詞の文型や修飾語といった点において母体となる言語の構造をとるときに、識別可能である[ 28] 。
ウェールズにおける英語の存在感は、1535年と1542年に成立したウェールズ法 (英語版 ) によって強化された。この法律 はウェールズで英語を優勢に向かわせ、ウェールズ語教育の中心となっていた修道院の閉鎖 と相まって、ウェールズ語を使う機会が減少することとなった。
ウェールズ語の衰退と英語の優勢は、産業革命 期により強まり、当時多くのウェールズ語話者が仕事を見付けにイングランドに移住し、当時発展しつつあった鉱山業 (英語版 ) や製錬業 に英語話者が就職していった。デヴィッド・クリスタル (英語版 ) はホリーヘッド で成長し、ウェールズで続く英語の優勢は世界各地での拡大とほとんど変わらないと主張している。ウェールズ語の使用の減退は、18世紀から19世紀の一部の学校で“Welsh Not ”が使われるなど日常的に学校で英語を話しウェールズ語 での会話を妨げる社会の動きも関係している[ 32] 。
イングランドからのイギリス英語のアクセントがウェールズ特に東部の英語のアクセントに影響している一方で、影響は双方に及んでいる[ 2] 。東北ウェールズと北ウェールズ沿岸部の一部のアクセントは、北西イングランド (英語版 ) のアクセントに影響されていて、南東ウェールズのアクセントが西イングランド (英語版 ) に影響されている一方で、中東部のアクセントは、西中部地方 (英語版 ) のアクセントに影響されている[ 3] 。前者の例ではイングランドとアイルランド の影響の方が良く知られているが、特にスカウス とブルーミー方言 (英語版 ) (口語体)アクセントは、共に移住を通じた広範なイングランド・ウェールズ間の導入がある。
ラーン (英語版 ) にある、ディラン・トマスの船小屋 (英語版 ) の書斎
「英語とウェールズ語で書く文学」と「英語で書くウェールズ語」は、ウェールズの作家が英語で書く著作を指すのに使う言葉である。20世紀以降独特のものとしてのみ認められてきた。この種の著作にとっての別個の独自性を求める需要は、現代のウェールズ語の文学 (英語版 ) が並行して発展したために増した。恐らくブリテン島における英語の文学の最も若い枝である故に。
レイモンド・ガーリック (英語版 ) が20世紀に先立ち英語で書いたウェールズ人男女69人を見出した一方で、ダフィッド・ジョンストンは「一般に英文学に対立するものとしてこのような作家が承認可能なイギリス系ウェールズ文学に属しているか議論の余地がある」と考えている。19世紀に入っても優に英語はウェールズでは比較的少数の人が話していて、20世紀前半に先立ち英語で書くのはウェールズ生まれの主要な3人(モンゴメリーシャー (英語版 ) 出身のジョージ・ハーバート (1593年–1633年)、ベックノックシャー (英語版 ) 出身のヘンリー・ヴォーガン (英語版 ) (1622年–1695年)、カーマーゼンシャー 出身のジョン・ダイヤー (英語版 ) (1699年–1757年))に留まっていた。
英語で書くウェールズ人は、15世紀の詩人イウアン・アプ・ハイウェル・スワッドワル (英語版 ) (?1430年-?1480年)に始まると言われることがあり、処女マリアへの賛歌 が1470年頃にイングランドのオックスフォード で書かれウェールズの詩の形式アウドル (英語版 ) やウェールズ語の正書法 を用いている。例えばこうなる。
O mighti ladi, owr leding - tw haf
At hefn owr abeiding:
Yntw ddy ffast eferlasting
I set a braents ws tw bring.
初めて創造的に英語を使ったウェールズ人作家に対する主張は、外交官で兵士で詩人のジョン・クランヴォー (英語版 ) (1341年–1391年)のために行われている[要出典 ] 。
ウェールズ英語の影響は、カラドック・エヴァンス (英語版 ) による1915年の短編小説集『我が人民 (英語版 ) 』に見られ、(物語形式ではなく)対話形式で使い、ディラン・トマス による『牛乳入れの下で (英語版 ) 』(1954年)は元々ラジオ演劇であり、ニアル・グリフィス (英語版 ) は殆どウェールズ英語で書かれた事実に徹した現実主義者であった。
ケルト系言語に大いに影響された英語の方言
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