エプレレノン
IUPAC命名法 による物質名
pregn-4-ene-7,21-dicarboxylic acid, 9,11-epoxy-17-hydroxy-3-oxo, γ-lactone, methyl ester (7α, 11α, 17α)
臨床データ 販売名
セララ, Inspra Drugs.com
monograph MedlinePlus
a603004 胎児危険度分類
法的規制
薬物動態 データ生物学的利用能 69% 代謝 肝代謝 (CYP3A4 ) 半減期 6-8 時間 排泄 67% renal 32% biliary データベースID CAS番号
107724-20-9 ATCコード
C03DA04 (WHO ) PubChem
CID: 5282131 IUPHAR/BPS (英語版 )
2876 DrugBank
DB00700 ChemSpider
10203511 UNII
6995V82D0B KEGG
D01115 ChEBI
CHEBI:31547 ChEMBL
CHEMBL1095097 別名
Epoxymexrenone, SC-66110 化学的データ 化学式 C 24 H 30 O 6 分子量 414.49
COC(=O)[C@@H]4C\C1=C\C(=O)CC[C@]1(C)[C@@]65O[C@@H]6C[C@@]3(C)[C@@H](CC[C@]23CCC(=O)O2)[C@H]45
InChI=1S/C24H30O6/c1-21-7-4-14(25)10-13(21)11-15(20(27)28-3)19-16-5-8-23(9-6-18(26)30-23)22(16,2)12-17-24(19,21)29-17/h10,15-17,19H,4-9,11-12H2,1-3H3/t15-,16+,17-,19+,21+,22+,23-,24-/m1/s1 Key:JUKPWJGBANNWMW-VWBFHTRKSA-N
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エプレレノン (Eplerenone)は選択的 (英語版 ) アルドステロン 受容体 拮抗作用を持つスピロラクトン (英語版 ) 系高血圧治療薬である。商品名セララ 。慢性心不全 の補助薬としても用いられる国がある。心筋梗塞後の心血管イベント のリスクを低下させる。エプレレノンはスピロノラクトン よりも鉱質コルチコイド 受容体選択性が高く、性ホルモン 受容体や糖質コルチコイド 受容体への拮抗作用は小さい。そのためスピロノラクトンで見られていた女性化乳房 、月経異常 などがエプレレノンでは少ない。エプレレノンはカリウム保持性利尿薬 であり、血中カリウムを低下させずに水分を排泄させる。
エプレレノンはファルマシア 社が開発したが、2002年にファイザー が買収し、同社から販売されている。米国で販売承認されたのは2002年9月(高血圧)と2003年10月(心不全)[ 1] 、日本で製造販売承認されたのは2007年7月である[ 2] 。欧州でも承認されている[ 3] 。
日本で承認されている効能・効果は「高血圧症 」[ 4] 、慢性心不全 [ 5] である。
エプレレノンは単剤または他薬との併用で高血圧治療に用いられる[ 6] 。軽度・中等度高血圧の患者417名の患者を対象にエプレレノンを8週間投与したところ、収縮期 (英語版 ) 血圧と拡張期 (英語版 ) が共に用量依存的に低下した[ 7] 。エプレレノンの降圧効果はスピロノラクトン、エナラプリル 、ロサルタン 、アムロジピン よりも高いが、死亡率を低下させるか否かは判明していない[ 7] 。
エプレレノンは急性心筋梗塞 後3〜14日の心不全 および左心室 不全患者の死亡リスク低下に他薬と共に用いられる。他系統の鉱質コルチコイド受容体拮抗薬に共通するカリウム およびマグネシウム の枯渇を解消すべく、スピロラクトン (英語版 ) 構造が導入された[ 8] 。スピロノラクトン の代替薬としては最も高価である[ 9] 。NYHA (英語版 ) 分類I〜IVの患者6,632名を対象にエプレレノンを投与したEPHESUS臨床試験とNYHA分類IIIの患者1,663名にスピロノラクトンを投与したRALES臨床試験を比較した結果、エプレレノンの方がプロゲステロン 、アンドロゲン 、糖質コルチコイド 様作用が弱く、効果の持続時間はスピロノラクトンの方が長いことが判明した[ 6] 。
下記の患者には禁忌とされている[ 4] 。
重大な副作用として、高カリウム血症(1.7%)が知られている。
副作用は体内の水分、ナトリウム、カリウムの変動によるものが多く、主に心臓および中枢神経系に発生する[ 6] 。臨床試験では副作用は26.7%に見られ、主なものは頭痛(6.1%)、眩暈(2.6%)、嘔気(1.9%)、高カリウム血症(1.7%)、疲労(1.6%)、 ALT(GPT) 上昇(1.4%)、γ-GTP 上昇(1.3%)、消化不良(1.2%)、AST(GOT) 上昇(1.2%)、筋痙攣(1.0%)、高尿酸血症(1.0%)等であった。低血圧 、眩暈、腎機能変化、クレアチニン上昇も発生する[ 10] 。女性化 (英語版 ) 、女性化乳房 、勃起不全 、性欲減退、男性器萎縮などの性機能に関する副作用がスピロノラクトンよりも少ない[ 11] のは、構造上、プロゲステロン との類似性がより低く、プロゲステロン作用・抗アンドロゲン作用が弱いことによる[ 6] 。これらの薬剤を考える際には、アルドステロンの非ゲノム効果を様々に変化させることに注目することが重要である[ 6] 。
エプレレノンは主に肝臓 のシトクロムP450 のCYP3A4 で代謝される。したがって、 CYP3A4を誘導または阻害する薬剤と相互作用し得る。具体例を挙げると、ケトコナゾール やイトラコナゾール はCYP3A4阻害薬でありエプレレノンの血中濃度を増加させるので併用禁忌である。エリスロマイシン 、サキナビル 、ベラパミル などの併用にも注意が要る。
また代替塩、カリウムサプリメント、他のカリウム保持性利尿薬 などカリウム の血中濃度を上昇させる薬剤との併用は、高カリウム血症を引き起こす危険がある[ 12] 。
エプレレノンは抗鉱質コルチコイド薬 の一つであり、鉱質コルチコイド受容体 (MR)の阻害薬 である[ 13] 。化学名は Pregn-4-ene-7,21-dicarboxylic acid, 9,11-epoxy-17-hydroxy-3-oxo, γ-lactone, methyl ester (7α, 11α,17α) であり、スピロノラクトンからは9α,11α-エポキシ架橋と 17α-チオアセチル基のメトキシ カルボニル 基への置換で得られる[ 7] 。腎臓などの上皮細胞 に存在するMRに結合してアルドステロン が血液量を増加させる[ 3] 事を阻害して血圧を低下させる[ 14] 。エプレレノンのMRへの親和性 はスピロノラクトンの10〜20倍低く[ 13] 、in vivo では抗鉱質コルチコイド薬としての能力は低い[ 15] 。しかし、スピロノラクトンとは対照的にアンドロゲン受容体 、プロゲステロン受容体 、糖質コルチコイド受容体 への親和性はほとんどない[ 13] [ 15] 。非ゲノム的な抗鉱質コルチコイド作用がある事も知られている(膜ミネラロコルチコイド受容体 (英語版 ) 参照)[ 15] 。エプレレノンはスピロノラクトンとは排泄経路が異なり、不活性化物の組成が違う。また血中半減期はスピロノラクトンより短い[ 6] 。
エプレレノンの血中半減期は5.00±1.74時間である[ 4] 。糞中に32%、尿中に67%が排泄される[ 4] 。
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