エンニアチン類は、微生物が生合成する化合物群である。例えば、エンニアチンAはFusarium orthoceras var. enniatinumと呼ばれる菌株が産生する[2]。エンニアチンBはFusarium ETH 4363と呼ばれる菌株が産生する[2]。そして、これらの化合物は、抗酸菌やグラム陽性菌に対して、発育阻止作用が認められる[2]。すなわち、エンニアチンAやエンニアチンBなどは、抗生物質である[注釈 2]。なお、天然に産生する微生物が存在する抗生物質の中でも、イオノフォア抗生物質(英語: ionophore antibiotics)に分類される化合物の1つであり、特定の金属イオンに対して、選択的にキレートする事により、細胞膜におけるイオンの運搬に影響を与える[3][注釈 3]。イオノフォア抗生物質は、その化学構造により、どの金属イオンと結合し易いかが異なる[3]。エンニアチンの場合には、水溶液中でナトリウムイオンよりも、カリウムイオンと選択的に結合する[3]。参考までに、ノナクチンと同様にイオノフォア抗生物質として抗菌力を有し、かつ、カリウムイオンと比較的キレートを形成し易い化合物としては、例えば、バリノマイシン、ノナクチン、ニゲリシンなどが知られる[3]。
^Ovchinnikov, Yu. A.; Ivanov, V. T.; Evstratov, A. V.; Mikhaleva, I. I.; Bystrov, V. F.; Portnova, S. L.; Balashova, T. A.; Meshcheryakova, E. N.; Tul'chinskii, V. M. (1974). “Enniatin ionophores. Conformation and ion binding properties”. International Journal of Peptide & Protein Research6 (6): 465–498.
^ abc田中 信男・中村 昭四郎 『抗生物質大要―化学と生物活性(第3版増補)』 p.52 東京大学出版会 1984年10月25日発行 ISBN 4-13-062020-7
^ abcd田中 信男・中村 昭四郎 『抗生物質大要―化学と生物活性(第3版増補)』 p.239 東京大学出版会 1984年10月25日発行 ISBN 4-13-062020-7