オキサライアはブラジル北東部に位置する São Luís-Grajaú Basin に分布するItapecuru層群のAlcântara層で発見された。地層の年代は後期白亜紀のセノマニアンである[2]。Itapecuru層の北部の露頭である Laje do Coringa locality は主に砂岩と泥岩からなり、植物化石と脊椎動物化石の断片を含む礫岩層を伴う[3]。これらの堆積層はスピノサウルスの化石が発見されたエジプトのバハリヤ層(英語版)と類似した海洋・河川環境で堆積した[2][4]。オキサライアの化石は1999年にLaje do Coringaで発見された[5]。ブラジル国立博物館の古生物学者 Elaine Machado は化石の保存の良さに衝撃を受けた[6]。この産地の堆積物は潮による顕著な浸食を受ける。波の作用で地層から除去された化石は発見されず、保存された化石も断片化する傾向にあるため、このように保存の良い化石が発見されることはレアケースであった[5]。一般に、Alcântara層で発見される化石の大部分は歯や単離した骨格要素からなり、Laje do Coringaにはそうした化石が夥しく埋没していた[2][5][7]。
オキサライアはブラジルで発見されたスピノサウルス科の恐竜の1つであり、他の例にはイリタトルとアンガトラマが居る。後者2属はいずれも部分的な頭蓋骨が発見されており、アラリペ盆地(英語版)に分布するサンタナ層群(英語版)のロムアルド層(英語版)から回収されている。微化石の年代から地層の堆積年代はアルビアン期と推定されており、これはオキサライアよりも600万年から900万年古いものとなる[5][8][9]。スピノサウルス科の化石記録は他の獣脚類のグループと比較して乏しい。既知の体の化石は非常に少なく、大部分の属は椎骨や歯といった単離した要素に基づいて設立されているのである[10][11]。Oxalaia quilombensis のホロタイプ標本 MN 6117-V は、左側の部分が母岩に埋没した状態で発見された。標本は大型個体に由来する癒合した前上顎骨からなる。単離した不完全な上顎骨の断片 MN 6119-V もスピノサウルス科の一般的な特徴を示したことからオキサライアに分類された。この上顎骨は岩の表面で発見されており、侵食によって元来の位置から移動した可能性がある。いずれの骨もブラジル北東部地域のマラニョン州の Cajual Island で発見されており、リオデジャネイロの国立博物館に所蔵された[5]。2018年に発生したブラジル国立博物館の火災(英語版)により[12]、おそらくオキサライアの標本もブラジル国内で発見された他の様々な標本と共に焼失したとされる[13]。部分的な頭蓋骨の他には、無数のスピノサウルス科の歯がLaje do Coringaから報告されている[5]。同じ地層から産出した2個の部分的な尾椎はシギルマッササウルスに分類されており[2]、アメリカの古生物学者ミッキー・モーティマーはこれらがオキサライアのものである可能性を指摘している[14]。
2011年3月、オキサライアは後期白亜紀の爬虫類であるペペスクス(英語版)とブラジリグアナ(英語版)と共にブラジル科学アカデミー(英語版)の発表で発見が報告された[15][16]。MachadoはオキサライアについてCajual Island の支配的な爬虫類として言及し、『ジュラシック・パーク』シリーズにも登場するスピノサウルス科は肉食恐竜の中でも別格であり、国内外から関心を集めると主張した[15]。オキサライアはブラジルの古生物学者アレクサンダー・ケルナーらが記載し、2011年3月にアカデミーから公表された[6]。タイプ種 Oxalaia quilombensis はブラジルから産出した獣脚類恐竜としては8番目に早く命名された種となった。属名は奴隷貿易時代にブラジルへ導入されたアフリカの神であるオクサラに由来し、種小名は逃亡奴隷が居住したQuilombo にちなむ[5]。
吻部の先端は大型化し、後端が狭窄され、スピノサウルス科を区別するロゼット状の終端をなす[5]。この構造は同じく拡大した歯骨の最前部と組みあう役割があったとされる[20]。オキサライアの吻部には幅広で深い孔が存在しており、これは血管と神経が通る栄養孔の可能性がある。オキサライアの上顎はMSNM V4047やMNHN SAM 124のように急角度で下側へ向くスピノサウルスの上顎よりも丸みを帯びる。上顎骨は口蓋の正中線に沿って前側へ延びる長く薄い1対の突起を持ち、この突起は左右の前上顎骨に挟まれ、その前端には複雑な三角形の穴が存在する。同様の突起はスコミムスやクリスタトゥサウルスおよびMNHN SAM 124にも存在するが、露出してはいない[5]。これらの構造はスピノサウルス科の二次口蓋を構成する[5][21]。オキサライアの前上顎骨の下側は顕著な修飾があり、これは他のスピノサウルス科の滑らかな状態とは対照的である[5]。
前上顎骨には左右それぞれに7個の歯槽が存在しており、アンガトラマ、クリスタトゥサウルス、スコミムス、MNHN SAM 124と一致する。スピノサウルスの別の上顎の化石であるMSNM V4047の歯槽は6個であり、これとは一致しない。この歯槽の数が個体発生の段階に起因するものであるかは判断ができず、さらなる標本数が求められる。第III歯槽と第IV歯槽を隔てる大型の離開は、スコミムスでは小型であるものの、他の全てのスピノサウルス科にも認められる。第V歯槽と第VI歯槽の間にもほぼ等しい長さの離開が存在しており、これはMNHN SAM 124やMSNM V4047に認められるが、スコミムスとクリスタトゥサウルスには存在しない。オキサライアに分類された上顎骨断片MN 6119-Vには2つの歯槽と、部分的な歯を含む破損した3個目の歯槽が存在する。前上顎骨と同様に、上顎骨には栄養孔が存在する。また中央部に浅い窪みがあることから、上顎骨は外鼻孔の付近に位置したことが示唆される。残された歯槽の内側にある小さな破片から、前期白亜紀のスコミムスやクリスタトゥサウルスとは異なり、オキサライアは歯に鋸歯が存在しなかったことが示唆される。それぞれの歯槽では、1本の機能的な歯とは別に、生え変わりを待つ2本の置換歯が存在する[5]。ケルナーによるとこれはサメやいくつかの爬虫類に共通する特徴であるが、獣脚類では普遍的に見られるものではないという[16]。歯の断面は他の獣脚類に見られる薄い形状ではなく、スピノサウルス科に典型的な楕円形である[5]。
Laje do Coringaから報告されたスピノサウルス科の歯は、2006年にブラジルの古生物学者Manuel Medeirosにより2つの主要なモルフォタイプに分類された。両者とも典型的なスピノサウルスの歯列を示すが、モルフォタイプIIはモルフォタイプIよりも歯のエナメル質が滑らかである[22]。オキサライアの歯はモルフォタイプIに近い形態を示す。2番目の歯のグループはモルフォタイプIの磨耗した歯か、アルカンタラ層産の未記載のスピノサウルス亜科の歯である[5]。
アルカンタラ層で発見される植物相と動物相の大部分はセノマニアン階にあたる北アフリカ・モロッコのケムケム単層にも存在する。アフリカに生息しないアルカンタラ層の生物はオキサライアのほか、ガンギエイ目のアトランティコプリスティス(英語版)や中正鰐類のコリンガスクス(英語版)が居る。Laje do Coringaの生物群集はスピノサウルスやカルカロドントサウルスおよびオンコプリスティスといった重要な分類群を抱えるエジプトのバハリヤ層と同時代である可能性もある。ブラジルとアフリカとの間でのこの極端な生物相の類似性は、巨大なゴンドワナ大陸の一部としての接続に起因する。この接続は約1億3000万年前から1億1000万年前ごろのリフティングや海洋底拡大によって開裂し、その後海に隔てられた両大陸では独立した進化が起こり、分類群間に僅かな差異が生じることとになった[2][28]。Machado 曰く、Cajual Island はセノマニアン期においていまだアフリカ大陸と接していた[6]。同様に Medeiros らは、諸島の存在や他の陸の接続の継続によって動物相の類似性の説明ができると指摘した[2]。
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