カナマイシン
IUPAC命名法 による物質名
2-(アミノメチル)- 6-[4,6-ジアミノ-3- [4-アミノ-3,5-ジヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル) テトラヒドロピラン-2-イル]オキシ-2-ヒドロキシ-シクロヘキソキシ]- テトラヒドロピラン-3,4,5-トリオール
臨床データ Drugs.com
monograph 胎児危険度分類
法的規制
薬物動態 データ生物学的利用能 very low after oral delivery 代謝 Unknown 半減期 2時間30分 排泄 腎臓 データベースID CAS番号
8063-07-8 ATCコード
A07AA08 (WHO ) J01GB04 (WHO ) S01AA24 (WHO ) PubChem
CID: 6032 DrugBank
DB01172 ChemSpider
5810 UNII
RUC37XUP2P ChEBI
CHEBI:17630 ChEMBL
CHEMBL1384 PDB ligand ID
KAN (PDBe , RCSB PDB ) 化学的データ 化学式 C 18 H 36 N 4 O 11 分子量 484.499
O([C@@H]2[C@@H](O)[C@H](O[C@H]1O[C@H](CN)[C@@H](O)[C@H](O)[C@H]1O)[C@@H](N)C[C@H]2N)[C@H]3O[C@@H]([C@@H](O)[C@H](N)[C@H]3O)CO
InChI=1S/C18H36N4O11/c19-2-6-10(25)12(27)13(28)18(30-6)33-16-5(21)1-4(20)15(14(16)29)32-17-11(26)8(22)9(24)7(3-23)31-17/h4-18,23-29H,1-3,19-22H2/t4-,5+,6-,7-,8+,9-,10-,11-,12+,13-,14-,15+,16-,17-,18-/m1/s1 Key:SBUJHOSQTJFQJX-NOAMYHISSA-N
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カナマイシン (Kanamycin、別名:カナマイシンA) はアミノグリコシド系 抗生物質 の一種。1957年 に梅澤濱夫 によってストレプトマイセス ・カナマイセティカス (Streptomyces kanamyceticus ) から発見された[ 1] 。日本で最初に発見された抗生物質である。有機化学 による全合成が可能であるが、工業的には微生物 による生合成により生産されている。白色の粉末で、水溶性(50mg/mL)で有機溶媒に対しては難溶。製剤としては硫酸塩 が経口と筋肉注射で用いられる。置換基の異なるベカナマイシン (カナマイシンB)等がある。分子生物学では、カナマイシン耐性遺伝子は選択マーカー として利用されている。細胞培養 ではマイコプラズマ の除去に用いられる。
細菌性のリボソーム と反応してその翻訳 および蛋白質 合成を阻害することにより毒性を発揮する[ 2] 。この毒性は真菌 類には発揮されない。
WHO必須医薬品モデル・リスト に収載されている[ 3] 。
カプセル[ 4] ・シロップ[ 5] ・ドライシロップ[ 6]
菌種:大腸菌 、赤痢菌 、腸炎ビブリオ
疾患:感染性腸炎
注射液[ 7]
菌種:ブドウ球菌属 、肺炎球菌 、淋菌 、結核菌 、大腸菌、クレブシエラ属 、プロテウス属 、モルガネラ・モルガニー 、インフルエンザ菌 、緑膿菌 、百日咳菌
疾患:表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、外傷・熱傷および手術創等の二次感染、乳腺炎、骨髄炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、淋菌感染症、子宮付属器炎、中耳炎、百日咳、肺結核およびその他の結核症
カナマイシンは特にグラム陰性菌である大腸菌(E. coli )、プロテウス属、セラチア属、クレブシエラ属の非耐性菌に抗菌活性を有する。代表的な菌種に対する活性の例を以下に示す[ 8] 。
Escherichia coli ― 0.05µg/mL 〜 >512µg/mL
Klebsiella pneumoniae ― 7.5µg/mL 〜 128µg/mL
製剤成分ならびにアミノグリコシド系抗生物質またはバシトラシン に対し過敏症の既往歴のある患者が禁忌となっている。特に、本人またはその血族にアミノグリコシド系抗生物質による難聴またはその他の難聴のある患者は原則として禁忌である。
重大な副作用として、第8脳神経 障害(主として蝸牛機能障害:耳鳴、難聴、眩暈等)、重篤な腎障害(0.1%未満)、ショック(0.1%未満)が知られている[ 9] [ 4] [ 5] [ 6] 。アミノグリコシド系抗生物質の副作用として代表的な聴覚神経毒性は、ストレプトマイシン と比較すると弱い[ 10] :12 。
カナマイシンは原核生物 のリボソーム 30S (英語版 ) サブユニットに相互作用する。その結果遺伝子の翻訳ミスが多く発生し、蛋白質 の組み立てサイクルが崩壊する[ 11] [ 12] 。
Streptomyces kanamyceticus が産生するカナマイシンは“カナマイシンA”が主成分であるが、“カナマイシンB”、“カナマイシンC”、“カナマイシンD”、“カナマイシンX”も同時に産生する。
カナマイシンの生合成経路は大きく2つに分かれる。第1のパートは、ブチロシンやネオマイシン等のいくつかのアミノグリコシドに共通なもので、独特なアミノシクリトールである2-デオキシストレプタミンがD -グルコピラノース-6-リン酸から4工程で合成される。その次のパートでは酵素の基質としてUDP-N-アセチル-α-D -グルコサミンまたはUDP-α-D -グルコースがランダムに選ばれて、カナマイシン合成経路は2つに分岐する。1つからはカナマイシンBとカナマイシンCが、もう1つからはカナマイシンDとカナマイシンXが生成される。その後カナマイシンBとカナマイシンDはカナマイシンAに変換され、結局両経路からカナマイシンAが産生される[ 13] 。
分子生物学において、カナマイシン耐性遺伝子(主にネオマイシンリン酸転移酵素II(NPT II、Neo))が細菌 (E. coli 等)の選択マーカー として利用されている。細菌はカナマイシン含有(50〜100µg/mL)寒天培地で耐性遺伝子を含むプラスミド と共に培養すると形質転換 して増殖する。形質を獲得できた細菌のみがこの培地で生存できる。
この様な例の1つにAtwbc19 が挙げられるが[ 14] 、植物由来のこの遺伝子は比較的大きく、植物から細菌への遺伝子の水平伝播 の可能性を減少させる方向性に機能する[訳語疑問点 ] 。この場合は遺伝子が伝達されても細菌は耐性を獲得しないかも知れない。
^ Umezawa, H.; Ueda, M.; Maeda, K.; Yagishita, K.; Kondo, S.; Okami, Y.; Utahara, R.; Osato, Y. et al. (1957), “Production and isolation of a new antibiotic, kanamycin”, Journal of Antibiotics (Tokyo) 10 (5): 181-188, PMID 13513509
^ Masarou Misumi; Nobuo Tanaka (1980), “Mechanism of inhibition of translocation by kanamycin and viomycin: A comparative study with fusidic acid”, Biochemical and Biophysical Research Communications 92 (2): 647–654, doi :10.1016/0006-291X(80)90382-4
^ “WHO Model List of EssentialMedicines ”. World Health Organization (October 2013). 22 April 2014 閲覧。
^ a b “カナマイシンカプセル250mg 添付文書 ” (2011年4月). 2016年5月6日 閲覧。
^ a b “カナマイシンシロップ5% 添付文書 ” (2011年4月). 2016年5月6日 閲覧。
^ a b “カナマイシンドライシロップ20% 添付文書 ” (2011年4月). 2016年5月6日 閲覧。
^ “硫酸カナマイシン注射液1000mg 添付文書 ” (2011年4月). 2016年5月6日 閲覧。
^ http://antibiotics.toku-e.com/antimicrobial_744_6.html
^ Consumer Drug Information: Kanamycin , (2 April 2008), http://www.drugs.com/cdi/kanamycin.html 2008年5月4日 閲覧。
^ “難聴(HP掲載版) ” (PDF). 厚生労働省. 2016年5月6日 閲覧。
^ Pestka S (1974). “The use of inhibitors in studies on protein synthesis.” . Methods Enzymol 30 : 261-82. doi :10.1016/0076-6879(74)30030-4 . PMID 4605358 . http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0076687974300304 .
^ Misumi M, Tanaka N (1980). “Mechanism of inhibition of translocation by kanamycin and viomycin: a comparative study with fusidic acid.” . Biochem Biophys Res Commun 92 (2): 647-54. doi :10.1016/0006-291X(80)90382-4 . PMID 6243944 . http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0006291X80903824 .
^ “kanamycin biosynthesis pathway in MetaCyc ”. MetaCyc.org . 30 September 2014 閲覧。
^ “Horizontal Gene Transfer: Plant vs. Bacterial Genes for Antibiotic Resistance Scenario's—What's the Difference? ”. Isb.vt.edu. 2013年6月24日 閲覧。