キャンパス・ウォッチ(英語: Campus Watch)はアメリカ合衆国の親イスラエル・新保守主義系シンクタンク・中東フォーラムのプロジェクトの一つ。設立者はダニエル・パイプスで、現在の責任者はウィンフィールド・マイヤーズ。2002年、アメリカ合衆国・ペンシルベニア州のフィラデルフィアに設立された[1]。
キャンパス・ウォッチによれば、同プロジェクトは「北米における中東研究についてその改善を目的として検討・批判する」。また、プロジェクトはさらに「言論と行動へコメントすること自体の自由を主張し、それについて議論する言論の自由を完全に尊重する」としている[2]。
2002年、中東フォーラムはキャンパス・ウォッチを開始。同組織のアメリカの諸大学における中東学教育における問題として以下の5つの問題を設定している。すなわち、「分析の誤り、政治と学問の混同、異なる見解への不寛容、護教論、学生に対する権力の濫用」である[3]。
はじめ、キャンパス・ウォッチは学生に対して、教員、書籍、カリキュラムについてのレポートの提出を推奨した。このため、一部の教授はキャンパス・ウォッチを「マッカーシズム的」脅迫であると非難。さらに100名以上の研究者が、キャンパス・ウォッチへの抗議として、レポート対象となるリストに追加するよう求めた[4]。結果的に、キャンパス・ウォッチはウェブサイトからリストを削除している[5][6]。
批判的な人びとは、キャンパス・ウォッチは、アメリカ学界におけるいかなるイスラエル批判をも抑圧する試みであると、攻撃する[1][7][8][9]。
コロンビア大学中東研究所長で、キャンパス・ウォッチにおいて批判の標的となっているラシード・ハリーディー(Rashid Khalidi)は次のように述べている[10]。
この不快なキャンペーンは完全に正当な批判をも沈黙させることを目的とする。反ユダヤ主義、反米主義の汚名を大書きすることによってである。実に忌まわしい言いがかりである。キャンパスでの本当の議論で沈黙せねばならないと、その強制を明らかに感じるほどのことをしている。
当時スタンフォード大学教授(中東史)で、現在カイロ・アメリカン大学中東研究部長のジョエル・ベイニン(Joel Beinin)はいう[11]。
キャンパス・ウォッチは……彼らの基準を満たさない教授・大学の関連情報を収集・編纂しているのである。その基準とはジョージ・ブッシュとアリエル・シャロンの政策に対する無批判の支持である。これはとりわけ、中東研究での学術キャリアの追求に失敗したパイプスの学界への復習の手段なのかもしれない。……合衆国の中東政策とイスラエルへの批判について、公開された議論を押さえつけようとする努力は、新保守主義の本物の信奉者とイスラエル極右とのネットワークによって助長されている。アリエル・シャロンのパレスティナにおける蜂起に対する弾圧に対して不干渉のアプローチをとるブッシュ政権の熱狂的支持者なのである。そしてまた、イラクに対する合衆国の先制攻撃についても好戦的支持者であった
2006年3月には、政治学者ジョン・ミアシャイマーとスティーヴン・ウォルトが『イスラエル・ロビーとアメリカ外交政策』'で次のように述べている。キャンパス・ウォッチは、情熱的な「親イスラエル・新保守主義者2名」によって設立された。イスラエルに対して敵対的と思われるコメントや行動について、学生によるレポートを推奨する意図をもってのものである。そのうえで「明白にブラックリストを作成し、研究者を脅かすものである」としている[12]。『ロンドン・レビュー・オブ・ブックス』に抄録のかたちで掲載されたThe Israel Lobby and U.S. Foreign Policyに対して、パイプスは、マーティン・クレイマーとキャンパス・ウォッチの関係や、キャンパス・ウォッチに対するユダヤ・ロビーの影響力などの点を引いて「この報告は数カ所杜撰な点がある」としている[13]。