この項目では、1973年発売のMF一眼レフカメラについて説明しています。AF一眼レフカメラEOS用レンズマウントについては「キヤノンEFマウント 」をご覧ください。
キヤノン EF
キヤノンEF は、1973年 (昭和 48年)にキヤノン から発売されたマニュアルフォーカス 一眼レフカメラ である。
当時小西六(現コニカミノルタ )が一眼レフカメラのAE 化においてリードしており、機械式シャッター のままシャッター速度優先AEとした、「コニカ・オートレックス」を発売していた。さらに旭光学(現リコーイメージング )からも世界初の電子シャッター による絞り優先AE一眼レフ「アサヒペンタックス ES」が登場、翌1972年 (昭和47年)には日本光学工業(現ニコン )からも絞り優先AEが可能な「ニコマート EL 」が登場していた。
キヤノンでは後にキヤノン AE-1 となる電子シャッターを用いたシャッター速度優先AE一眼レフを開発していたが、ワインダーやズームレンズ、マイクロコンピュータ といった先進装備を多数盛り込む予定であったため、開発に時間がかかっていた。そこで開発期間が短縮できるユニットシャッターに注目、コパル が開発した「コパルスクェアS」を使ったシャッター速度優先AEカメラを開発することになった。「コパルスクェアS」は機械式シャッターだったが、低速シャッターを充実させるため低速制御用機械ガバナー を電子制御に改造し、30秒までのシャッター速度をシャッター速度優先AEで使用できるようにしてこのモデルに採用した。コパルのユニットシャッターが使われたマニュアルフォーカス一眼レフはキヤノンではこのキヤノンEFだけだが、ずっと後のEOSシリーズではコパル製のシャッターユニットが積極的に使われることになる。
シャッター速度ダイヤル - レリーズボタン - 巻き上げレバーがいずれも同軸になるように設計されており、そのためカメラのホールド性向上を狙いファインダーがやや左手寄りに設置されている。
キヤノン F-1 の弟分として期待された機種であったが、後に世界的ヒットとなるキヤノン AE-1 が1976年 (昭和51年)に発売されたため、生産台数はさほど多くない。
形式:35 mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフカメラ。
画面サイズ:24 mm×36 mm。
レンズ:開放測光用信号レバーを持つFDレンズ(開放AE)およびFLレンズ。
レンズマウント:キヤノンFDマウント(リング締め付けのスピゴット式 )。
ファインダー:ペンタプリズム 使用アイレベル式。
ピントグラス:中央スプリットイメージ+マイクロプリズム、周辺マット。
視野率:上下92 %、左右93 %。
倍率:0.82倍(50 mm標準レンズ無限遠の場合)。
ファインダー内情報:スプリットマイクロプリズム距離計、メーター指針、シャッタースピード目盛、絞り目盛、露出警告マーク、絞込み測光用定点。
ミラー:ノンショッククイックリターンミラー 、ミラーアップ 可能。
測光方式:シリコンフォトセル(SPC)受光素子使用のTTL 式中央部重点・平均開放測光、シャッタースピード優先式AE。
測光範囲:ISO 100・FD50 mm F1.4S.S.CでEV-2 - EV18まで21段階。
使用フィルム感度:ISO 12 - ISO 3200。
露出記憶機構:押しボタンによるAEロック。
シャッター:上下走行式メタルフォーカルプレーンシャッター。
シャッタースピード:1/1000、1/500、1/250、1/125、1/60、1/30、1/15、1/8、1/4、1/2、1、2、4、8、15、30(秒)、B(バルブ)、X接点は1/125秒。
シャッターダイアル:巻上げ軸と同軸のダイアル上部一覧式、1/1000~1秒およびB(バルブ)は白字、1/125秒はオレンジ色字、2~30秒は黄色字、ファインダー内表示は1/1000 - 1秒およびB(バルブ)は黒字、2~30秒は白抜き字。
長時間露出指示ランプ兼バッテリーチェッカー:1秒以上のスローシャッター時にバッテリーチェック用のLEDが点滅する。
セルフタイマー:組み込み、シャッターボタンで始動、時限約10秒。
フィルム巻き上げレバー:一動作120度回転レバー、予備角13度、小刻み巻上げ不可能。
フィルム巻き戻し:上部クランク式、スプロケット解除は押しボタン式、ボタンは巻上げで解除。
フィルムカウンター:順算式、自動復帰。
多重露出:多重露出ボタンを押しながら巻き上げることにより行う、この間フィルムカウンターは停止。
自動空送り:シャッターを押さずに3回空送りで撮影準備可能。
CATシステム:オートリングおよびスピードライト133Dとの組み合わせにより可能。
シンクロフラッシュ:X接点 1/125秒以下で同調。
ソケット:アクセサリーシュー部に直結接点(CATシステム接点)、ボディ側面に感電防止カバーつきJIS ・B型ソケット。
使用電池:JIS・HD型1.35 V水銀電池 2個。
大きさ:ボディのみ147(幅)×47.7(奥行き)×96(高さ)mm。
重量:ボディのみ740 g、FD50 mm F1.4S.S.C.付き1,045 g。
モータードライブを装着することはできない。
キヤノンで最初のコパル製シャッターを搭載し、また高速側は機械式、低速側は電子式のハイブリッドシャッター[ 1] を採用した。
キャッチコピーは「太陽と影」。
スピードライト133Dと、FD50 mm F1.4 S.S.C.(スーパー・スペクトラ・コーティング)、FD50 mm F1.8 S.C.(スペクトラ・コーティング)、FD35 mm F2.0 S.S.C.またはFD35 mm F3.5 S.C.のいずれかを組み合わせた場合、撮影距離をレンズについているピンを使ってスピードライト側に伝え、ピントを合わせるだけで自動的に絞りが設定されるCATシステム(Canon Auto Tuning System )が使用できた。
^ 発売当時は「コンビネーション・シャッター」と称していた。